第177話、アイアン仮面

 

2009年4月下旬。ネオガイア宇宙軍の士官、テッセウス(32歳)は、さざなみ刑務所を訪れた。元上司であるアルテミスに会うためである。

「囚人ナンバー999号と面会したい」

テッセウスが受付で、そう告げると、ネオガイア人の刑務官は敬礼した。

「はっ、では、こちらに記入をお願いします」

テッセウスは、地球に駐留している白兵戦コマンドの隊長である。特殊部隊であるコマンドは、総勢100名あまりで、一人一人が通常の兵士一個中隊分の働きをするエリート部隊だ。テッセウスの階級はかなり高い。

「999号は今どこに?」

「囚人ナンバー999号こと、鉄仮面は、現在、消毒室で洗浄中であります」

端末で、囚人の状況を確認した刑務官が言った。テッセウスは一人で歩き始める。ここには、しょっちゅう来るので案内はいらない。

(フフフ、アルテミス隊長、今日はどうやって責めてやろうかな)

独身のテッセウスは、未だにアルテミスの肉体に執着していた。彼の中では、アルテミスは、永遠に憧れの女隊長なのだった。消毒室でアルテミスは、鉄仮面を被った頭を、雑用アンドロイドの手で、消毒液の入ったバケツに突っ込まれている最中だった。

「うぎゃああああ!」

アルテミスが叫んだ。消毒液は、彼女専用の塩酸の入った特製のものだった。

「相変わらず、激しいな」

テッセウスが、アルテミスを監視しているシンディ・スコットランド刑務官(26歳)に言った。

「普通の囚人なら、皮膚が焼けただれて二目と見られないような状態になります。ところが、鉄仮面だけは、特別です」

シンディが説明した。全身にも塩酸を浴びせられ、炎症を起こしているアルテミスの裸体は、見る見るうちに、元の皮膚のみずみずしさを取り戻していく。

「何度見ても、驚異だな」

「ある意味、化け物としか言えません」

鉄仮面を被っているため、最も洗い難い頭部の消毒を終えたアルテミスは、二人の前に正座し、深々と頭を下げた。

「洗浄終わりました。ありがとうございます」

アルテミスが、鉄仮面の額をタイルに擦りつけて御礼を述べる。首元の鉄仮面の隙間から長い金髪が背中まで伸びていた。

「久々に、責めてあげに来ましたよ、隊長」

「私は、もう隊長ではありません。ただの囚人ですわ」

テッセウスは、土下座をしているアルテミスの背中に、片方の足を乗せて、グイグイと踏みつけた。

「相変わらず、いい筋肉をしているじゃないですか。現役時代と、ちっとも変っていない」

アルテミスの背中は、鍛え抜かれた固い筋肉に覆われ、踏み応えがあった。

「今でも、特訓は続けていますから」

「今日は、非番でね。退屈しのぎに、あなたを凌辱しにきたのですよ」

「どうぞ、お好きなようになさってください」

テッセウスは、シンディからアルテミスの身柄を譲り受け、拷問室へ向かった。マゾのアルテミスが抵抗したり、脱走を企てたりする恐れはないため、護衛は必要ない。拷問室で、テッセウスは、アルテミスの裸体を片足吊りにし、後ろ手に縛った。

「あなたの鉄仮面を外せないのが、残念ですよ。俺としては、もう一度、女神のような美しい顔を、拝みたいのですがね」

「申し訳ございません。この鉄仮面は、超合金製でしかも溶接されています。一生外せないでしょう」

肉体年齢32歳のアルテミスは、豊満な体つきをしていた。それでいて、なお且つ筋肉が盛り上がっている。テッセウスは、棘のついた鉄パイプで殴りつけた。

「ぐふっ!ぐふっ!」

アルテミスの胸や背中が切り裂かれ、鮮血が飛び散った。殴り続けていると、骨が砕ける音もした。

「あぎゃあああ!」

「このくらいじゃ、全然物足りないんでしょう?」

テッセウスは、呆れたように言った。ガスバーナーを点火し、アルテミスの太腿を焼き始める。

「ううううう!熱いいいいっ!」

「そりゃあ、ガスバーナーですから」

普通の人間なら、一生再生不能の傷痕が残る重傷だ。だが、アルテミスにとっては、全治15分程度でしかない。

「オマンコも焼いて上げますよ。あーあ、こんなに濡らしちゃって、うまく焼けるかなあ」

テッセウスは、青白い炎をアルテミスの、ハマグリに向けた。金髪の陰毛が燃え、溢れ出していた愛液が蒸発する。

「あおおおっ!もっと、もっと奥まで焼いて!」

アルテミスの本音が出た。マゾの血が沸騰し、耐え切れないくらいの快楽が押し寄せてきたのだ。

「やれやれ、わかりましたよ。こんな風でいいですか」

テッセウスは、火が付いたままのガスバーナーの先端を、アルテミスの割れ目に押し込んだ。

「ぎゃおおおおおっ!いいっ、とってもいいっ!」

アルテミスは絶叫した。

「普通なら死にますよ、こんなことしたら。良い子は絶対に真似しないでね、ってか」

テッセウスは、狂乱するアルテミスに呆れ果てた。しばらくして、テッセウスは、火傷と裂傷から回復したアルテミスの体を、M字開脚両足吊りの形に吊り直し、自分も全裸になると、洪水のように愛液が溢れ出ているアルテミスのオマンコに肉棒を突き刺した。

「いい香りだ。成熟したメスの匂いがしますよ、隊長」

テッセウスは、ピストン運動をしながら、アルテミスの豊満なGカップの胸に顔を埋めた。

「あうっ。あううう、気持ちいいです」

鉄仮面の隙間から、アルテミスの喘ぎ声が漏れた。

「一応、普通のセックスでも感じるんだ」

テッセウスが、からかうように言った。

「今の私は不死身です。どんなに肉体を傷つけられてもダメージはありません。あたしの今の望みは、精神を壊して頂く事です」

アルテミスは告白した。

「つまり、気が狂いたいと?だが、それも、あなたには難しいでしょうね。精神的にも、あなたは驚く程、タフだ」

「ええ・・・自分の生まれついての性が、恨めしいですわ」

テッセウスは、休憩をはさみながら、合計3回、アルテミスの体内に放出した。テッセウスも特殊部隊の隊長だけあって、体力も精力も一般人よりは旺盛だ。

「今晩から任務があるのです。今日は、このくらいにしておきますよ。また、気が向いたら来ます」

テッセウスは、拷問室に備え付けられたシャワーで体を洗浄し、雑用アンドロイドに後片付けを任せると宿舎への帰途についた。

 

 その晩のテッセウスの任務は、東京を視察するピタゴラス博士の護衛だった。白兵戦コマンドの3分の11個小隊30人を率いて護衛にあたる。エアカーで東名高速道路を東へ向かうピタゴラス博士を、反重力バイクや、装甲車で取り囲み、不測の事態に備えるのだ。ピタゴラス博士は高級エアカーの後部座席で、秘書の山瀬梨奈(28歳)に捧げ持たせた地球製のノートパソコンで、日本政府へ向けての書類の決裁を行っていた。

「総督という仕事は、どうも忙しくていかん。拷問の研究をする時間を捻出するにも一苦労だ」

ピタゴラス博士は、出来上がった文書の印刷ボタンを押した。USBケーブルの端が梨奈の口に咥えられている。梨奈の体がビクンと痙攣し、慌てて梨奈は、座席の上にA4のコピー用紙を置くと、パンティを降ろして、その上にしゃがみこんだ。

「あっ、いくっ、いくっ、だめええ!」

「いつも思うんだが、もっと静かに印刷出来んのか」

梨奈の股間から染料インクを含んだ愛液が溢れ出し、クリトリスに仕込まれた印字ヘッドが、紙に文字を印刷していく。こういう風に梨奈の肉体を改造したのは、他ならぬピタゴラス博士なのだが。

「日本の政府に渡す文書だから、地球製のノートパソコンで作成しているのだ。以外と良心的だろ、わし」

「え、ええ・・・あっあっ」

梨奈は喘ぎながら相槌を打った。清楚なOL風の制服のスカートを乱し、汗ばんでいる。その時、いきなり車列の前方で、爆発音と共に、閃光が走った。

「きゃあっ!」

梨奈が悲鳴を上げた。ピタゴラス博士は、割と落ち着いている。

「どうした?」

運転手は、急ブレーキを踏み、エアカーが停車した。周囲の白兵戦コマンドの車両も、停車し、武器を持ったネオガイア人兵士が、飛び出して来て、ピタゴラス博士のエアカーを守るために散開する。通信機が鳴った。隊長のテッセウスからだった。

『上空に未確認飛行物体が3機です。迎撃態勢を取ります。エアカーからは、出ないで下さい』

「わかっとるよ。わしは、秘書のオマンコに悪戯でもしておるから、よろしく頼む」

ピタゴラスは平然としていた。拷問に慣れた彼は、鋼のような神経の持ち主でもある。上空に現れた、物体をサーチライトで照らすと、円盤型の機体にハーケンクロイッツのマークが浮かび上がった。

「くそっ、また、あいつらか!」

テッセウスは、悪態をついた。この、本拠地がどこか判らない謎の戦闘集団には、何度も何度も、襲撃を受けている。円盤機は、車列の退路を断つように、高速道路の前方と後方を砲撃で破壊してから降下し、黒ずくめの全頭マスクを被った戦闘員を大量に吐き出した。

「ヒー!ヒー!」

「奴らを、ピタゴラス博士のエアカーに近付けるな!それから、さざなみ市の軍司令部に連絡を!」

テッセウスは、部下に指示しながらレーザー銃を取り出すと、雲霞のように押し寄せて来るザコ戦闘員に向けて撃ち始めた。正確な射撃で敵を撃ち殺していくが、数が多すぎた。

「ヒー!ヒー!」

「一体奴ら、何人いるんだ?」

前方と後方に100人ずつ降下したようだ。円陣を組んでいる30人のネオガイア特殊部隊に、情け容赦なく襲いかかる。敵の武器は先から光線の出る短剣だ。

「ピタゴラス博士を、頂きに来たぞ」

敵の指揮官は、改造人間のウナギ男だった。ウナギ男は、後退しようとしたり、突撃を恐れて尻ごみしているザコ戦闘員の背中に蹴りを入れて回る。

「おめえら、ビビってんじゃねえよ!ザコ戦闘員は、戦いの前座で死ぬのが仕事だろうが!」

「ヒー!ヒー!」

後方から攻める部隊を指揮しているのは、ウナギ男の妹分であるドジョウ女(22歳)だった。元テニスプレーヤーの彼女は、先月改造手術を受けたばかりで、今回が初めての実戦だ。

「やるニュル!宇宙人なんかブチ殺すニュル!」

元は、かなり美人だったのだが、今では顔に2本のヒゲを付けられ、全身がヌメヌメと粘液で光っている。洗脳されて、少し精神異常の兆候も出ていた。

「そーら、ニュルニュルしちゃうわよ」

ドジョウ女は、ザコ戦闘員にボコボコにされて重傷を負っておるネオガイア人兵士に全身を押し付けた。

「やめろ!やめてくれ!」

余りの気持ち悪さに絶叫するネオガイア人兵士の口を、手で塞いで窒息死させた。

「あん、もう死んじゃった。つまんないの」

死傷者は、襲撃者の方が多く、個人の戦闘力もテッセウスの部下達の方が上だったが、死を恐れず、仲間の屍骸を乗り越えて迫ってくるザコ戦闘員に、ネオガイア人側も、一人、また一人と倒されて行った。

「何人やられた?」

「5、5人です・・・」

「このままじゃ、ジリ貧だ。上空の円盤が、攻撃して来ない所を見ると、奴らピタゴラス博士を生け取りにするつもりだぞ」

テッセウスは、反重力装甲車に飛び乗ると、急発進させ、ドジョウ女を轢き殺そうとした。彼女を守るザコ戦闘員を跳ね飛ばし、超合金のボンネットで、ドジョウ女のボディに体当たりする。 しかし、ニュルっと滑っただけだった。

「危ないじゃないの。お仕置きよ、ニュルニュルしなさいっ!」

ドジョウ女が、口から粘液を吐いた。装甲車の車体が粘液まみれになり、操縦不能になった。

「うわっ、センサーが効かない。反重力装置もやられた!」

ドジョウ女の吐く粘液には、精密機械を狂わせる成分が含まれているようだった。

「ナノマシン入りのニュルニュル液よ。どう?」

テッセウスは、使い物にならなくなった装甲車のドアを開けて飛び出し、群がるザコ戦闘員を押しのけて、血路を開こうとした。しかし、3人撃ち殺したところでレーザー銃を叩き落とされ、短剣で脇腹を刺された。

「ぐはっ!こ・・・ここまでか・・・」

テッセウスも軍人として、常に死ぬ覚悟は出来ている。しかし、自分の事よりも、残された部下とピタゴラス博士の身の上が心配だった。

「最後にニュルニュルしてあげるわ」

ドジョウ女が、瀕死の重傷を負ったテッセウスの体にすり寄って来た。

「や・・め・・ろ・・」

おぞましい感触だった。死ぬ前に発狂しそうだった。ドジョウ女の手が、テッセウスの口を塞いだ。

「窒息しなさい」

テッセウスの肺が、空気を求めて痙攣し、意識が切れかけた時、後方から突入してきたエアバイクを視界の隅で見た。

「ヒー!ヒー!」

バイクに轢かれて、ザコ戦闘員の何人かが倒された。ドジョウ女だけが、ニュルッとかわす。テッセウスの口を塞いでいた手が離れ、肺に新鮮な空気が流れ込んで来た。

「ゼエ・・ゼエ・・・き・・君は・・・」

エアバイクに跨った裸の女が、両手に武器を持ち、縦横無尽にザコ戦闘員を蹴散らしている。鉄の仮面を被った頭部から背中にかけて長い金髪が風になびいていた。

「正義の戦士。アイアン仮面参上!」

謎の女が叫んでいた。

「アルテミス・・・」

助け起こされ、エアバイクに引き上げられたテッセウスが呟いた。

「しっ、その名前は言わないで下さい。公式には死んだ事になっています。あたしの名前は、正義の戦士アイアン仮面です」

テッセウスは、味方の陣地の真ん中に降ろされた。部下のネオガイア人兵士が、重傷を負った自分達の隊長の身柄を回収する。アルテミスは、再び右手にレーザーサーベル、左手にレーザー銃を構えて、鉤十字団の戦闘員達に向き直った。エアバイクの操縦は、座席に生えたレバー二つをオマンコとアナルで操作する事によって行っている。だから両手が自由に使えるのだ。

「宇宙の平和を乱す悪党ども。ネオガイア星の名にかけて、正義の戦士アイアン仮面が一人残らず成敗いたしますわ!」

アルテミスは、腰を動かしてエアバイクのレバーを前に倒した。ドジョウ女目掛けて突進する。

「なにをっ!ニュルニュル液!」

ドジョウ女が口から放った粘液を、神技とも言える操縦テクニックで、バイクごとあっさりかわした。

「すげえ」

テッセウスが感心した。常人なら死に至るくらいの過酷な訓練を繰り返してきたアルテミスの戦闘能力は、白兵戦コマンドの常識すら遥かに超えている。群がるザコ戦闘員の短剣が、時折アルテミスの裸の皮膚を、ザックリと切裂くが、気にせず戦い続けながら見る見るうちに治していった。

「あれじゃ、防具が必要ない訳だ・・・」

テッセウスは、アルテミスが敢えて全裸で戦っている理由が判った。自分の肉体を保護しなくてもいいのだ。そして、ついにアルテミスのレーザーサーベルが直撃し、ドジョウ女の首を切り飛ばした。

「やられたニュル・・・」

ドジョウ女の生首がアスファルトの上に転がった。指揮官をやられたザコ戦闘員達が浮足立つ。アルテミスは、エアバイクの機首を反対側から攻撃しているウナギ男の部隊に向けた。

「ドジョウ女がやられたのか!」

ウナギ男が悲痛な叫び声を上げていた。

「かくなる上は・・・」

ウナギ男は、上空の円盤機に合図を送った。

「バッタ男、ギガント・バッタロボを出動させろ!」

『おう』

3機の円盤機からパーツが射出され、空中で合体する。全長20メートルの巨大なバッタ型ロボットが出現した。

「なんなんだ、あれは!」

テッセウスが、絶望的な叫びを洩らした。アルテミスの登場でせっかく見えた希望が、再び打ち砕かれたのだ。

「慌てるでない。こっちにも用意がある」

エアカーの窓が開き、ピタゴラス博士がテッセウスに声をかけた。ピンチだと言うのに平然と梨奈のオマンコをいじって楽しんでいる。エアバイクのアルテミスが、反重力装置の出力を全開にし、夜空に上昇していった。

「キュクロプス1号機、発進せよ!」

アルテミスが叫ぶと、山間から、一つ目の巨大ロボット、キュクロプス1号機が姿を現した。アルテミスのエアバイクからのリモートコントロールで動いているのだ。

「インサート!」

アルテミスの乗ったエアバイクが、キュクロプス1号機の股間の穴に挿入されていった。もともと、このエアバイクはキュクロプス1号機のコクピットとして開発された物だった。

「インサート完了!」

コクピットの天井に備え付けられた一本鞭が、アルテミスの背中に振り下ろされ、ピシリと小気味のいい音を立てた。パイロットの搭乗が正常に完了した合図だ。戦闘前に気合を入れる意味もある。

「あうっ!・・・いくわよっ!」

アルテミスの乗るキュクロプス1号機は、バッタ男の乗るギガント・バッタロボと対峙した。

 

 アルテミスは、キュクロプス1号機の左腕に装着されている大口径のレーザー砲を、バッタロボに向けて放った。バッタロボは、ピョーンと跳躍してよける。

『必〜殺、ギガントバッタ、キーック!』

バッタロボの拡声器から、操縦者であるバッタ男が、そう叫ぶ声が聞こえ、バッタロボの空中からの蹴りが、キュクロプス1号機のボディ上部に命中した。キュクロプス1号機の巨体が、何百メートルも吹っ飛ばされ、市街地に落ちる。下敷きになったビルや自動車が押し潰され、たまたまそこに居た地球の一般市民数百人が、死傷した。

「うぐうう・・・こ、これしきの事で・・・」

アルテミスは、キュクロプス1号機を立ち上がらせた。再び、天井の鞭が背中に振り下ろされる。

「ナニヲヤッテイル、アイアン仮面。オ前ノ体ト違ッテ、キュクロプスノ機体ハ壊レテモ修復サレナイノダゾ!」

キュクロプス1号機の人工知能が、怒っていた。パイロットを補佐するために会話機能が付加されているのだ。

「ごめんなさい」

アルテミスは謝ったが、人工知能は、怒りが収まらないようで、鞭を雨あられのように、浴びせかけてきた。被虐の悦びを感じたアルテミスのオマンコが、じっとりと濡れる。

「ごめんなさい、ごめんなさい・・・許して下さい」

アルテミスがひたすら人工知能に謝り続けていると、バッタロボの口からミサイルが発射されてきた。

「とう!」

アルテミスが、キュクロプス1号機の右腕に装着されたレーザーサーベルで薙ぎ払う。そそして、道路に停車していた、地球人の家族連れが乗った自動車を、バッタロボ目掛けて蹴飛ばし、怯んだ隙に、レーザー砲で狙い撃った。

『小癪な!』

バッタロボが突進して来て、キュクロプス1号機の股間に頭突きを喰らわせた。アルテミスの搭乗するコクピットが直撃を受けて爆発し、操縦パネルがスパークする。

「ううっ!なんてこと。コクピットを狙うなんて卑怯よっ!」

普通のパイロットなら重傷を負うか、死んでいる。しかし、アルテミス自身は、瓦礫と化したコクピットの中で、すぐに傷が回復して立ち直った。

『ギガントバッタ、ジャ〜ンプ!』

バッタロボが、後ろ脚で地面を思い切り蹴り、空中高く舞い上がった。何か、止めの必殺技を繰り出すつもりだろう。

「く・・やられてたまるもんですか!」

アルテミスは、必死に、半分麻痺した操縦系統を操作し、キュクロプス1号機の右手で、停車していたタンクローリーを掴むと、運転手を乗せたまま、降下してくるバッタロボに投げつけた。続いてレーザー砲を乱射する。流れ弾に当たったタンクローリーが、空中で爆発し、広がった炎がバッタロボのコクピットにいるバッタ男の視界を奪った。

「チャンス!」

キュクロプス1号機のレーザーサーベルが、目標を視認出来ないまま、無造作に落ちて来たギガントバッタロボの巨体を貫いた。

『ま・・まさか・・・エリート改造人間の、この俺がやられるなんて・・・』

バッタロボのスピーカーから、バッタ男の無念の声が聞こえた。レーザーサーベルに中心部の動力を貫かれ、大爆発するバッタロボの機体のハッチからバッタ男が脱出していく。

「勝ったのね!」

「オメデトウ、御褒美ダ、アイアン仮面」

人工知能が褒め湛え、天井から熱蝋が、ポタポタと降ってきた。

「ああん、快感・・・熱くて気持ちいい」

マゾのアルテミスが、豊満な肉体を悶えさせ、狂喜した。

 

 アイアン仮面とキュクロプス1号機の活躍で、鉤十字団を撃退したものの、ピタゴラス博士の東京視察は中止になった。急遽、さざなみ市に引き揚げた一行は、総督府ビルの会議室で今後の対策について協議した。

「ああ!いく、いくうう!」

梨奈が、汗だくになって写真を印字していた。戦闘の間中、ピタゴラス博士にオマンコをいじられながら、目に仕込まれたカメラで、エアカーの窓から一部始終を撮影していたのだ。

「こんな物まで、出現するようになった」

重傷を負ったテッセウスは、応急手当を受け、車椅子に乗って会議に参加している。彼は、ギガントバッタロボの写真を指さして、忌々しげに吐き捨てるように言った。

「このマーク。地球の秘密結社ネオナチスのマークだ」

ギガントバッタロボの背中にペイントされたハーケンクロイツを、梨奈に、拡大して印刷させる。

「むむむ・・・いく、いくううう」

「奴ら、一体どこで、こんな科学力を手に入れたのでしょう?」

テッセウスは、ピタゴラス博士に問いかけた。

「判らん。しかし、我々の科学水準を超える程のものではない。その証拠に、キュクロプス1号機が、あっさり撃退した」

「奴らの本拠地を突き止めなくてはなりません。このままでは、やられっ放しです」

「うむ、だが、ネオガイア人は、地球全体を支配下に置いているわけではない。アメリカ合衆国やEUは我々に敵対行動を取っている。本拠地を突き止めるのは難しかろう。それより、ネオナチスの科学力が地球人全てに渡るとやっかいだな」

ピタゴラス博士は、地球総督に就任してから、地球の政治情勢にも詳しくなっていた。しかし、その可能性は、ペルセウス長官が即座に否定した。

「その心配は当面ないでしょう。ナチスと、アメリカ合衆国を裏で操る委員会は、歴史的にも不倶戴天の敵です」

ペルセウス長官も、かなり地球の事情に詳しくなっている。地球はネオガイア人の故郷なのだが、同時にグレイの自然保護地区でもあるため、これ以上の侵略は、第二十六管区の銀河警察から中止するよう勧告されている。

「もうすぐ、あれが完成する」

不意にピタゴラス博士が言った。

「と言いますと?」

「数年前から建造を進めている時空戦艦『アルゴー』。あれが完成すれば、この星の過去に何があったのか、全て暴いてやる事が出来る。ひょっとすると歴史を操作する事だって出来るかもしれん」

ピタゴラス博士が、何を考えているのかは、他のメンバーには窺い知る事すら出来なかった。

第178話、ブラック企業

 

2008年4月、4年生の大学を無事卒業した高原家の長女、沙貴(22歳)は、極楽商事という会社に就職した。元々志望していたマスコミ関係とは程遠い、社員数30人程度の零細企業だった。

「本日より、お世話になります、新入社員の高原沙貴です。よろしくお願いします」

沙貴は、朝8時半に出社すると、お辞儀をして挨拶した。狭い事務所に既に社員全員が出社し、慌ただしく電話をかけている。社長は、胡散臭いオーラを発散している脂ぎった初老の男で、一人だけ豪華なデスクに座り、コーヒーを飲みながらゴルフ雑誌を読んでいた。

「ああ、頑張ってくれたまえ。横田君」

社長が、電話をかけていた50歳くらいの社員を呼んだ。横田は、面倒くさそうに電話の受話器を置くと、立ち上がって近付いてくる。

「今日から、うちで働く、高原君だ。面倒見てやってくれ」

「はあ」

横田は、好色そうな眼で、沙貴の紺色のスーツに包まれた全身を、舐めまわすような目つきで眺めた。

「よろしくお願いします」

沙貴は、ペコリと横田に頭を下げる。

「じゃあ、こっち来て、電話して」

横田は、自分のデスクに沙貴を連れて行くと、ボロボロに使い込まれたNTTの電話帳を手渡した。

「片っ端から電話して、商品を売り込んでいくんだ。普通は一日300件がノルマなんだけど、君は、初日だから200件に負けておいてやるよ」

沙貴は、面接で、仕事内容は、教材セットや健康食品の販売だと聞いていた。

「電話でアポが取れたら、自宅まで訪問販売に行くんだよ。ま、ベテランの俺でも、そう簡単には、アポは取れないけどね」

沙貴は、商品の乗ったカタログに目を通した。DVD付きの英語の教材セットが、10万円だった。電話応対マニュアルにも一通り目を通す。

「このデスクと電話、使っていいよ。先週辞めた奴のだから」

(がんばらなくちゃ)

沙貴は、横田の隣に与えられたデスクで電話をかけ始めた。

「もしもし、お早うございます。極楽商事の高原と申します」

『は?極楽?』

マニュアル通りに話すと、主婦らしい女性が電話に出た。

「突然、お電話して、申し訳ございません。英会話とかに、興味はございませんでしょうか?」

『ないない!忙しいから、かけてこないで!』

いきなりガチャリと電話を切られた。沙貴は、自分の全存在が否定されたような悲しい気分になった。気を取り直して電話帳の別の番号に電話をかける。

「もしもし、お早うございます。極楽商事の高原と申します」

『はい』

今度は、機嫌悪そうな男の声だった

「突然、お電話して、申し訳ございません。英会話とかに、興味はございませんでしょうか?」

『はあ?ねえよ、そんなもん』

「英語が喋れると、海外旅行も楽しくなりますし、御自身のスキルアップにも役立ちます」

『何が言いたいんだ、あんた?』

「最新版の英語の教材セットの御紹介をさせて頂いているのですが」

『いらねえよ。何だ、要するに押し売りかよ』

「少し、お時間を頂けないでしょうか?御説明にだけでもお伺いさせて頂きます」

『しつこいと、警察に通報するぞ!』

ガチャリと、叩きつけるように電話を切られた。沙貴は、ショックでしばらく3件目の電話をかける気力すら湧かなかった。

 

 沙貴は午前中、ずっと電話を、かけ続けたが、1件もアポイントが取れなかった。横田をはじめ何人かの社員は、アポが取れたのか、商品とカタログをカバンに詰めて出かけて行く。残った社員に焦りの空気が漂い始めた。

「売れなかったらどうなるの?」

沙貴は、隣の若い社員に尋ねた。

「帰りに、メチャクチャ説教されるから、覚悟しておいた方がいい」

沙貴は、昼食も取らずに電話をかけ続けた。残っている社員は、誰も昼食に行かないので、自分だけ席を立つ雰囲気ではなかったのだ。夕方、外出先から戻ってきた社員が、社長に売り上げの報告をしている。

「教材セットAが売れました。かなり、高齢なジジイだったんですが、強引に契約書にハンコを押させました。」

「そうか、よくやった」

「健康食品Cが売れました。気の弱そうな主婦だったので、顧客リストに入れておきます。今後も、いいカモになりそうです」

「でかしたぞ」

午後7時を回ると、売上の上がった社員達は退社していく。一方、半分以上が、まだアポイントも取れず電話をしていた。

(今日は、もう無理よ。どうなるの?帰れないの?)

疲れ果てた沙貴は、チラチラと時計を見ながら、夢遊病のように電話をかけ続けた。そして、午後9時を回り、社長の説教タイムが始まった。

「てめえら、それで済むと思ってるのか!」

社長が、いきなり暴れ出した。机を蹴飛ばし、手当たり次第に物を投げ、罵声を上げる。

「能無し!穀潰し!」

残っていた男性社員の一人が、いきなり殴られた。

「申し訳ございません社長・・・」

その、男性社員は、うつむいたままジッと耐えている。

「高原君」

「はい」

社長が沙貴に刃を向けてきた。

「うちの会社は、完全実力主義だ。新入社員だろうと、容赦はしない」

「はい・・・」

社長が、スカートの上から尻を叩いた。

「スカートの丈が、長すぎる。明日から、もっと短いスカートを履いて来い。色仕掛けで、客に、商品を売り込むんだ」

「・・・はい」

「女には、男にない武器がある。一発やらせて、商品を買って貰え」

「・・・はい」

「返事が小さい!」

「はいっ!」

説教は1時間以上続き、解放されたのは午後10時過ぎだった。終電ギリギリである。沙貴は、疲れ果てて家路についた。この会社にいる限り、毎日電話を、かけ続けなくてはならない。最初のやる気も失せ、沙貴は、極楽商事に入社した事を、激しく後悔し始めた。

 

 沙貴は、次の日から、股下15センチの超ミニのスカートを履いて出勤する事にした。電車で座席に座れば、対面からパンティが見える短さである。なるべく、ピッタリと太腿を閉じ合わせ、奥が見えないようにするしかない。ストッキングも履いていない、白い生足が、常に周囲の視線を集めた。

「お早うございます」

昨日と同じ、朝8時半に出社すると、すでにかなりの社員が電話をかけていた。社長が、スカートの丈をチェックする。

「もう少し、短い方が、わしの好みだが、まあ、こんな物かな」

しゃがんで、下からスカートの中身を覗き込む様に、沙貴のピンクのパンティを見上げ、ワザとらしく、生の太腿を撫でまわした。

「二日連続、売上無しじゃ、済まされんからな」

社長が、ピシャピシャと尻を叩いて、脅しをかけて来た。

「はい、頑張ります」

沙貴は、自分のデスクに座り、電話をかけ始めた。

「押し売りトークでやらないと駄目だ」

その日も、なかなかアポイントが取れない沙貴に横田がアドバイスした。極秘のマニュアルを沙貴に渡す。沙貴は、それに目を通し、電話をかけた。

「もしもし、極楽商事と申します。英会話に興味はございませんでしょうか?はい、英会話です。少しは、興味ございますよね。お役に立てると思いますので、今から伺います」

『あ、あの・・・』

沙貴は、相手に考える間を与えさせず、一気にまくし立てた。

「お電話では、何ですので、今から伺います」

『ちょ・・・待って・・・』

沙貴は、電話を切った。住所は電話帳に載っている。

「アポイントが取れました」

「そうか。なら、今すぐ行って肉体関係に持ち込むんだ。その後で断ろうとしたら、警察を呼ぶと言って脅迫すればいい」

横田のアドバイスを受けて、沙貴はカバンに商品を詰め、出かけた。これで、今日は、外出のついでに、昼御飯が食べられる。地下鉄とバスを乗り継ぎ、目的地のワンルームマンションにたどりつくと、インターホンを鳴らした。

「極楽商事の高原と申します」

ドアが少し開いた。出てきたのは若い男だった。

「学生さんですか?」

沙貴は、ニッコリと笑いかけた。超ミニのスーツ姿の沙貴に、いかにも女性に縁の無さそうなメガネをかけた男は、ドギマギしている。

「え、ええ・・・でも、僕、英会話とか、あんまり・・・」

「あんまりって事は、少しは興味あるんでしょ?」

沙貴は、そう言いながら、強引に部屋に上がり込んだ。

「説明だけでも、聞いて下さらない?」

散らかった部屋の、真ん中に置いてあった万年コタツに勝手に座ると、鞄からカタログを取り出して広げた。ワザと立て膝になり、股間のパンティを見せる。男子学生は赤くなった。

「この英会話セットは、アメリカのブラウン博士と言う有名な学者が考案したものなのよ。DVDを見て、聞いているだけで英語がペラペラに喋れる様になるの」

「でも、僕、DVDを見る機械、持ってないし・・・」

「大丈夫よ。オプションでポータブルプレーヤーもあるから」

沙貴は、コンパクトな、持ち運び出来るサイズの液晶画面付きのプレーヤーをカバンから取り出すと、DVDディスクをセットした。

「試してあげるわ」

沙貴は、男子学生の横に座り、ピッタリと体を密着させて、ヘッドホンを頭にかけてあげた。

「あ・・・」

沙貴の香水の匂いに、男子学生は完全にイカレてしまったようだった。DVDの画面を見ながら、ボーッとしている。

「どう?自然に頭に入ってくるでしょ」

「え、ええ」

沙貴は、男子学生の手を、そっと握った。緊張して正座をしている腰には、生の太腿を押し付ける。さらに、耳元に顔を近付けて息を吹きかけた。

「うふふ。英語が喋れると、就職にも有利よ。自分の将来に投資しなくちゃ」

「そうですよね・・・」

「バイリンガルな男の子って素敵よ」

沙貴は、男子学生の唇に、自分の唇を重ねた。男子学生は、ウットリとして抗わなかった。次いで舌を入れ、絡める。

「う・・・」

沙貴が、ズボンの上から股間を撫でると、固くなっていた。

「お姉さんが、教えて、あ・げ・る」

沙貴は、そのままメガネの男子学生を押し倒した。

「触って」

沙貴は、男子学生の手を、自分のミニスカートの奥へと導いた。パンティの上から股間の膨らみを触らせる。

「どう?」

「ぼ、僕・・・初めてなんです・・・」

沙貴は、男子学生の指を、パンティの中の割れ目へ入れさせた。

「グチョクチョでしょ?さあ、あなたも、ズボンを脱いで」

沙貴は、男子学生のズボンのベルトを外し、ズボンをパンツごと降ろさせた。若く勃起した包茎気味のチンポが屹立していた。

「入れるわよ」

沙貴は、仰向けに寝た男子学生の上に馬乗りになった。ミニスカートは、短かいので挿入の邪魔にはならない。パンティの股間部分を少し横にずらし、隙間からチンポを割れ目へと導き入れた。

「あうっ」

ニュルッとした感触で、抵抗なく入る。ソープランドでアルバイトをしていた沙貴は、セックス経験だけは、豊富だった。

「気持ちいいでしょ?」

マグロ状態の男子学生の上で、沙貴は腰を振り始めた。興奮して顔を真赤にした男子学生は、すぐにも昇天しそうだった。

「あ・・・僕もうダメ・・・」

3分も持たなかった。沙貴は不妊症であるため、膣内に射精させても妊娠する危険はない。沙貴自身はイッてなかったが、この際、どうでもよかった。

「満足した?」

「は、はい・・・」

「じゃあ、これ、契約書にハンコ押して」

沙貴は、カバンから書類を取り出した。教材セット10万円に、オプションのDVDプレーヤーが5万円だ。

「15万円なんて、僕払えません・・・」

「安心して、分割も出来るから。30回ローンにすれば月々5000円よ。それに金利が上乗せされるけどね」

「無理です・・・」

「あなた、今、あたしとセックスしたでしょ?警察に言うわよ。無理矢理、部屋に引き摺り込まれてレイプされたって!」

沙貴の形相が鬼のように変わった。一気に興奮が冷めた男子学生は、半ベソ状態になった。

「そんな・・・お姉さんが、勝手に上がり込んで・・・」

「いいから、ハンコ押しなさい!」

「ひっ」

男子学生は、タンスの小物入れから印鑑を取り出すと、泣きながら捺印した。

「じゃあ、商品を置いて行くわ。書類は、ローン会社に回しておくから。もし、一回でも支払いが滞ったら、怖い兄さんが来るからね」

「ひいい・・・」

男子学生は、テーブルの上に置かれた教材セットを呆然と眺めていた。今日朝、電話に出たばかりに、こんなハメになってしまったのだ。契約書のコピーには、商品代金15万円と、金利が3万円と書かれていた。

 

 沙貴が、外食で昼御飯を済ませて、極楽商事に戻り、売上の報告をするために社長の姿を探した。

「社長は、ゴルフに行ったよ。今日はもう、会社には戻らないかもな」

電話をかけていた社員の一人が言った。報告はせず、事務職の女性に、契約書を渡す。その女性は、社長の愛人だという20代後半の女だった。

「はい、御苦労さん」

面倒くさそうに受け取り、新入社員の沙貴に上から目線で言った。社長がいない時は、この事務職の女が、会社を取り仕切っている。とりあえず、1セット販売した沙貴は、残りの時間、電話をかけて過ごし、7時頃退社した。

(疲れたわ。ソープランドのアルバイトと両立させるのは、無理かも・・・)

募集要項には、土日祝日は、休みと書かれていたのだが、実際は土曜日も出勤で、日曜日も、呼び出される事が多かった。社長は、会社にいない事が多く、ゴルフやクルージングやらで、土日平日、関係なく遊び歩いている。

(辞めたい・・・でも、せっかく就職したんだから、もう少し頑張ってみよう)

沙貴が、入社して1週間程経った頃、最初に販売した教材セットが、クーリングオフされた。

「てめえ、なんて事してくれたんだ!客の両親が、警察に訴えると言っているぞ!」

社長は、大激怒していた。

「申し訳ございません」

沙貴は、平謝りするしかなかった。

「本当に判っているのか!お前は会社の看板に泥を塗ったんだぞ!」

社長が、沙貴の黒髪を鷲掴みにし、顔を殴った。他の社員は、見て見ぬふりをしている。

「申し訳ございません・・・本当に、申し訳ございません・・・」

「キャンセルになった商品は、買い取りだからな!今月の給料から天引きしておく!」

沙貴の手取りは、18万円くらいの筈だった。15万円を天引きされれば、3万円しか残らない。

「そんな・・・」

「文句あるのか!」

社長は、何度も何度も、沙貴の顔を殴った。

「い、いえ、ありません・・・」

沙貴には、学生時代にソープランドのアルバイトで貯めた貯金があった。それを取り崩して、やり繰りするしかない。サービス残業が多く、土日もサービス出勤が多いため、結局、両立させようと考えていたソープランドのアルバイトは辞めざるを得なかった。

(これじゃ、アルバイトに専念するか、ボランティアをやっている方が、まだマシだわ)

就職して2ヶ月目に、沙貴は、その事に気付いた。学生時代に比べて収入も激減している。

(辞めよう。会社選びを間違えたんだわ)

ネットの某巨大掲示板では、極楽商事は、極悪商事と仇名され、ブラック企業として名指しされていた。

「私、この会社に付いていけません。辞めさせて頂きたいのですが」

沙貴は、意を決して社長に辞表を提出した。

「あーん?」

社長は、沙貴から受け取った辞表を胡散臭そうに眺め、読みもせずに、ピリリと沙貴の目の前で破り捨てた。

「こんなもんで、うちの会社を辞めれると思ってるのか?退職の事務手続きは、してやらんよ。離職票がなければ、ハローワークにも行けんし、年金手帳も返す気はない」

「辞めるのは、私の自由です」

「なんだと?そんな生意気な口を聞くのは、10年早い。こっちへ来い、お前の、その軟弱な精神を叩き直してやる」

社長は、沙貴の髪の毛を掴むと、応接室へと、引き摺っていった。そこは、社長がいつも、女子社員にセクハラをするために使っている部屋だった。

「ヒイイイッ・・・私、もう、こんな会社、いやあああ!」

沙貴は、絶叫しながら応接室のドアに、引き摺り込まれて行った。

 

第179話、ラグナロック(その2)

 

1999年9月3日、ニューアーク・リバティ国際空港に、城山朋子(24歳)は、降り立った。ボリビアの首都ラパスから、コンチネンタル航空の便で到着したのだ。

(ネオナチスのラグナロック作戦・・・なんとか、阻止しなくては)

ハドソン川を挟んだ対岸のマンハッタン島には、かすかにニューヨークで最も高いビルである、世界貿易センターのツインタワーが見えた。

「あのビルは、資本主義の象徴よ」

CIAのヘレン(25歳)が言った。リチャード・ファーマーも同行している。

「1999年、7の月。恐怖の大王が空からやってくる。アンゴルモワの大王を復活させるために。その前後の期間、マルスが支配するだろう」

リチャードが、有名なノストラダムスの四行詩を復唱した。

「つまり、ネオナチスの総攻撃を予言したものだと?」

ヘレンが尋ねた。

「多分、だが、ミッシェルは、4行目のマルスは、火曜日を意味すると言っていた。1999年の9月11日は、土曜日だ。火曜日じゃない」

「オー、どうでもいいじゃない、そんな細かい事。ハインリッヒ・リヒターは、今年の9月11日に、作戦が決行されると言っていたのよ。間違いないわ」

ヘレンは、イライラしていた。明白な証拠をつかんでいるにもかかわらず、ペンタゴンやアメリカ政府の対応が鈍い。

「攻撃目標が、決まっているなら、避難命令を出して、その日の全航空機の離発着を禁止すればいいのよ!」

「そこまで、やるには大統領令の発布が必要だ。民主党のクリントン政権は、軍事よりも経済優先政策をとっている。無用の混乱で、アメリカ経済への打撃が心配なんだろうな」

事態は、経験不足の朋子には、重過ぎるようだった。もうすぐ、日本の公安庁からも応援が来る筈だったが、いずれも女性で、銃器の扱いには、それ程、慣れていない筈だ。

「まずは、入国しているネオナチスのテロリストを、あぶり出す所からね」

ヘレンは、空港のゲートで入国手続きを済ませながら、そう言った。

 

 ゲッペルス4世は、ラパスのネオナチス本部へ到着した。表向きは、ここが、秘密結社ニュルンベルク騎士団の総本部と言う建て前になっている。

「ハイヤー!ハイヤー!ほれ、進め!」

ゲッペルス4世は、全裸の久美子(27歳)を馬代わりに使っていた。

「長旅、御苦労様です」

出迎えたネオナチスの将校は、敬礼をした。

「リヒターが、死んだそうだな」

「はい、チチカカ湖に死体が上がっていました。体内から大量の自白剤が検出され、解剖の結果、死因は、薬物による心不全だと断定されました」

「リヒターが知っていたのはラグナロック作戦の第一段階だけだ・・・が、それは、敵側に、漏れたと考えなければならん」

ゲッペルス4世は、渋い顔をした。

「作戦を変更なさいますか?」

「いや、しない。ヒトラー3世閣下は、予定通りの速やかな決行を望んでおられる」

ゲッペルス4世は、司令室に落ち着くと、久美子に靴を舐めさせた。

「閣下、お願いがございます!」

奴隷の久美子が必死の形相で、頼み込んできた。

「なんだ?俺は、今、忙しい」

「お願いです。ここには、娘の綾香がいる筈です。一目・・・一目、綾香に会わせて下さい」

「は?娘・・・勝手にしろ」

「ありがとうございます!」

久美子は、ラパス本部の中を探し始めた。数か月前にも、滞在していた場所なので、迷う事はない。1時間くらい探し、施設内の託児所で遊んでいる綾香の姿を見つけた。

「綾香!」

久美子は叫んだ。綾香は、日本から持ってきていた、クマの縫いぐるみで、遊んでいた。それは、今は亡き、夫の片桐秀雄が、綾香の3歳の誕生日に買ってやった代物だった。

「ああ、綾香・・・無事だったのね!」

「ママ・・・」

久美子は涙を流し、駆け寄って来た娘の小さな体を抱きしめた。

「ママ・・・どこに行ってたの?アヤカ、さみしかったよ・・・」

綾香も堰を切ったように泣き出した。3か月ぶりの再会だった。

「もう、どこにも行かないでね、ママ・・・」

「ええ、ええ・・・もう離さないわ、綾香ちゃん・・・」

久美子は、歯の無い口で、そう誓った。豚の刺青が彫られた背中が、嗚咽で上下に揺れていた。

 

 JAM航空503便、成田発、ニューヨーク行の旅客機に、公安庁の久石千鶴(25歳)と木之本恵美(22歳)の二人は、搭乗していた。約13時間の長旅である。

「あなた、海外出張は、初めて?」

千鶴は、隣の座席の恵美に尋ねた。恵美は、落ち着かないようだった。

「はい、ここ2、3日、緊張して、よく寝れなくって・・・実は、飛行機も苦手なんです。落ちたらどうしよう、とか、ハイジャックに合ったら、どうしようとか、つい考えてしまって・・・」

「あたし達、そのハイジャックを阻止しに行くのよ」

「ええ・・・そうでした」

この娘、丈夫なんだろうか、と千鶴は思った。

「ちょっと、トイレに行ってくるわ」

千鶴は立ち上がった。ふと、数列後ろの座席に奇妙なオーラを放っている東洋人の女がいる事に気付いた。さりげなく近寄って囁きかける。

「あら、偶然かしら?」

その女は、もう一人の久石千鶴(2023歳)だった。

「奇遇ね、あたしもアメリカに用事があるのよ」

相手は、ぬけぬけとそう言った。

「1999年、7の月。恐怖の大王が空からやってくる。アンゴルモワの大王を復活させるために。その前後の期間、マルスが支配するだろう・・・ノストラダムスの4行詩よ」

千鶴(2023歳)は、千鶴(25歳)に言った。

「それが、どうかしたの?」

「7の月は、9月を表し、アンゴルモワの大王は、アナグラムで、モンゴリアンの大王を意味している。つまり、これは、日本の天皇を指している」

「・・・」

「3行目は、日本の真珠湾攻撃のような出来事が、再現されると言う意味で、間違いないわ」

「詳しいのね」

「ええ、ノストラダムス本人に会った事もあるから。で、4行目のマルスは、火星、つまり火曜日の前後に、それが、起こるって意味なの」

「火曜日なら、9月7日、もしくは9月14日・・・でも、公安庁の情報では、決行は9月11日だと聞いている」

千鶴(2023歳)は、ミステリアスな笑みを浮かべた。

「フフフ・・・本来の歴史では、今年の9月11日じゃないのよ。でも、ここはパラレルワールド・・・あなたとあたしが出会った瞬間から。歴史が、どうなるかは、誰にも判らない」

「チッ、遠回しな言い方は止めて、もっと、ハッキリ言ったらどうなの!」

千鶴(25歳)は、イライラした。自分自身と対面する事が、こんなに、うっとおしい気分にさせるとは思わなかった。年長の千鶴(2023歳)は、笑っているだけだった。

『アテンションプリーズ。当機は間もなく、着陸態勢に入ります。乗客の皆様は、席に戻って、ベルトをお締め下さい』

スチュワーデスのアナウンスが流れ、千鶴は、トイレに行くのを諦めて席に戻った。恵美が、焦ってベルトを締めている。この娘は、心底心配症のようだった。

(やれやれ、思いやられるわ。アメリカで、あたしの足だけは引っ張らないでね)

千鶴が、席に座って自分のベルトを締めていると、一人のスチュワーデスが見回りに来た。若く綺麗な女だった。

「お客様、大丈夫ですか?」

スチュワーデスが、焦っている恵美に声をかける。

「え、ええ、大丈夫です」

千鶴は、ふと名札に目を止めた。『工藤明日香』と書かれてあったが、千鶴は、それ切り、その名前を忘れてしまった。

 

 ニューヨーク、マンハッタン島の南端にあるウォール街を10人のドイツ人が、肩を並べて歩いていた。いずれもビジネススーツを着こんでいるため、近くの証券会社に勤めるサラリーマンにしか見えない。

「あれがニューヨーク証券取引所、あれが連邦準備銀行・・・」

リーダーらしき男が、建物を一つ一つ指差しながら説明していた。他の9人は比較的無口である。

「そして、あれが世界貿易センターのツインタワーだ」

リーダー、ヴォルフガング・フォルツ(42歳)は、天に向かって、そびえ立つ2本の柱を仰ぎ見た。

「全てが、ユダヤ人どものために建設された資本主義の象徴だ。我々は、ユダヤ人の金融支配より、世界を解放せねばならん。そのために、死んでくれるか」

「ハイル、ヒトラー」

9人のドイツ人の部下は、小声で誓った。彼ら10人は、数年前から偽造パスポートで、アメリカに入国し、この日のために待機していたのだ。全員が、総統ルドルフ・ヒトラーの親衛隊SSの隊員だった。

「ハンバーガーでも食おう」

ヴォルフガングは、死を覚悟した部下達を、アメリカで有名なハンバーガーショップへ誘った。

「好きな物を頼んでくれ、今日は、俺の奢りだ」

「ハイル・ヒトラー」

店員の女性が、怪訝そうな目で見るのも、お構いなしに、それぞれ、好きなセットを注文していく。一度にたくさんの注文を受け過ぎて、慌てていた女性店員が、6人目の男にアイスコーヒーを渡す際に、コップを倒してしまった。

「ナイン!ディ、カルテ!」

手に、アイスコーヒーがかかったドイツ人が叫んだ。

「ソーリー、ミスター」

女性店員が、謝ったが、ドイツ人の怒りは収まらなかった。

「薄汚い、資本主義の手先め!」

ドイツ人は、いきなり女性店員の胸倉を掴み、殴りかかった。顔面にストレートパンチが炸裂し、店員の体が、厨房まで吹っ飛ばされる。店内にいた、他の客達の間から悲鳴が上がり、たちまち騒然となった。

「止めろ、大事の前だぞ。騒ぎを起こすのはマズイ」

ヴォルフガングが、制止しようとしたが、怒りの収まらないドイツ人が、オートマチックを抜き、倒れた女性店員の体に連射した。

「止めろって!」

「すいません、つい気が立っていたもので」

「いい訳は、後だ。とにかく、ポリスが来る前に、逃げるぞ」

ドイツ人達は、ハンバーガーとポテト、飲み物の入った紙コップをひったくると、口に押し込みながら、金も払わずに、その場から逃げだした。

 

 「あれが、自由の女神だ」

遊覧船のデッキから、ヴォルフガングが指差した。9人のドイツ人の部下達は、先程の騒動も、忘れたかのように、神妙な顔付きで高さ90メートルの銅像を見上げている。左手に独立宣言書を持ち、右手に松明を掲げたその姿は、まさに自由の象徴だった。

「総統は、アメリカ占領の後、自由の女神を破壊し、変わりに屈辱の女神を建てると、おっしゃられている」

「それは、素晴らしい」

「ナチスによる支配と抑圧を象徴する、奴隷の女神だ」

「ハイル、ヒトラー」

会話を聞いていた、周囲の観光客が、ぎょっとしてドイツ人達を見る。

「何、見てんだよ!」

血の気の多い、親衛隊の一人が、新婚夫婦らしきカップルに、言いがかりをつけた。

「いや、その・・・別に・・・」

「綺麗な足、してるな。ネエチャン」

ドイツ人が、新婦のスラリと伸びた足を撫で回した。親衛隊の隊員達は、口にこそ出さないが、生きて帰れない特攻作戦が目前に迫っているため、理性のタガが外れ、見境がなくなっていた。

「ちょっと、君達。無礼な真似は、止めたまえ」

「おめえは、すっ込んでろ!」

新郎が、腹に膝蹴りを入れられてノックアウトされた。新婦に、ドイツ人達が群がる。

「いい、オッパイじゃん」

「いやああ!」

新婦は、胸をこねくり回されながら、唇を強引に奪われた。別の親衛隊員は、背後から、スカートを引き裂き、パンティの中に手を入れようとしている。ヴォルフガングは、肩をすくめて、ため息をついた。

「やれやれだ・・・ま、来週には全員死んでいるんだ。大目に見てやるか」

止めに入ろうとした、遊覧船の船員が、海に叩き込まれ、他の乗客達は、蜘蛛の子を散らすように逃げて行った。

 

 空飛ぶ司令室、エアフォースワンの機内では、大統領が真っ青になっていた。

「月の裏側で、無数の発行体が確認されています」

国防長官が、NASAの撮影した写真を大統領に見せた。

「こちらは、バミューダ海域のものです。深海に、国籍不明の潜水艦らしきものが」

「ネオナチスだ。ラストバタリオンが、とうとう動き出したのだ・・・」

大統領は、両手で髪を掻き毟った。

「先制攻撃を加えますか?」

「月にいる敵にどうやって、攻撃を加えるんだね?」

「核を撃ち込む事は出来ます」

「奴らだって、迎撃してくるだろう。古代アトランティスの科学力を手に入れているんだ。UFO相手に、我々のスペースシャトルじゃ、太刀打ち出来んだろう・・・」

「大気圏内に防衛線を引きます。我々の保有する戦闘機の数は、ナチスを大幅に上回ります。勝ち目がない訳ではありません」

「国内のテロに対する備えはどうなのかね?」

「目下、CIAとFBIが、共同でテログループの摘発を行っています。非公式ですが、MI6とモサドも、独自にアメリカ国内で活動を開始したようです」

CIA長官が説明した。

「経済が、やっと回復して来たというのに・・・」

その時、大統領補佐官の一人がコードレス電話の受話器を持ってやってきた。

「委員会からです」

大統領が、椅子から転げ落ちそうになる。

「す、すまないが、君達、席を外してくれ」

大統領は、慌てて執務室から長官達を追い出し、一人になった。

『ミスタープレジデント、調子はどうだね』

受話器の向こう側から聞こえてきたのは、ボイスチャンジャーの声だった。大統領が、ハンカチで額の冷汗をぬぐう。

「良くありません。我が国、始まって以来の悪夢です」

『わかっているだろうが、負けは許されんぞ。ナチスに、我々の造り上げた世界が蹂躪される事態など、あり得んからな』

「決して、そのような事の無いように全力を尽くします」

『こう言う時のために、お前に世界最大の軍事力を預けてあるのだ。いずれ、アメリカが中心となって、我々のワンワールド構想を実現せねばならん』

「はっ、自由、平等、博愛のために!」

『70年前、我々は、ヒトラーという男を見くびっていた。奴は只、ヨーロッパからユダヤ人を追い出し、約束の地にユダヤ人の国を作るように仕向けるだけでよかったのだ。だが、奴は、途中から暴走し、我々のコントロールを離れてユダヤ人の虐殺を始めた。奴自身がユダヤ人であるにも、かかわらずだ!』

「・・・・」

『そのツケが、今に回ってきておる。元々、アトランティスの科学は全て、ナチスではなく、正当なる後継者である我々が受け継ぐ筈の物だ。アトランティスの崩壊後、文明を忘れ退化し、野蛮化する一途の人間達の間で、自由と平等の精神を、ひたすら守り続けてきたのは、この我々だからな。その灯は、何があっても、この地球上から消すわけにはいかん。頼むぞ、大統領』

「ははーっ、この身に変えても!」

ホットラインが切れ、大統領はため息をついた。ナチスとの戦いに負けは許されない。

 

 CIA、ニューヨーク支局で待機中のリチャードとヘレンの元に、FBIからの通報が入った。

「ウォール街のファーストフード店で、発砲事件があった。犯人は、ドイツ語を話す不審者の一団だ」

通報を聞いたリチャードが言った。ヘレンは立ち上がりガンベルトを体に巻きつける。

「いかにもって感じね。テロリストである可能性が、限りなく高いわ」

「ニューヨーク市警の水上署からも、通報が入っている。ハドソン川の遊覧船で、ドイツ人が騒ぎを起こしているらしい」

「行くわよ!ヘリを用意させて!ハリーアップ」

リチャード、ヘレン、朋子は、屋上のヘリポートから、軍用ヘリ『アパッチ』で飛び立った。操縦は、リチャードである。

「リチャード。ヘリの操縦も出来るの?」

朋子が、尋ねた。

「ああ、俺は何でも出来るよ。年の功かな」

数分で、ハドソン川上空に到着した。自由の女神から少し離れた水域に遊覧船が航行している。ヘレンが身を乗り出し、双眼鏡で下を見ると、遊覧船の展望デッキで、ビジネススーツを着た複数の男達が、一人の若い白人女性を裸に剥いて、輪姦している所だった。

「リチャード!低空で飛んで。狙撃するわ」

「オーケイ」

ヘレンが、ライフルを構えた。遊覧船の左後方から、斜めに接近する。ヘリのモーター音に気付いたドイツ人達が、訓練された素早さで身を伏せた。

「ヘル、トゥ、ユー!」

ヘレンが、引き金を引いた。弾は、一人だけ棒立ちになっていた被害者の白人女性に命中した。

「オーノー!外れたわ」

「ヘレン、バルカン砲を使おう。その方が早い」

リチャードが、ヘリの機首を展望デッキに向け、ヘリに備え付けの30ミリ、バルカン砲を掃射した。すさまじい威力で、展望デッキの備品が破壊され、火柱が上がった。

「やり過ぎじゃないの?」

朋子が、咎めた。

「これが、アメリカ式のやり方よ。テロリストに慈悲は無用なの」

「でも、関係ない人が・・・」

「シャラップ!平和ボケの日本人は、口を出さないで!」

ヘレンは興奮していた。炎上する遊覧船の展望デッキに動く人影目掛けて、ライフルを撃ち続ける。遊覧船は、ハドソン川の西岸に進路を変えた。

「逃げようとしている!そうはさせない。リチャード!遊覧船の上にホバリングさせて。甲板に降りるわ」

ヘレンは、ヘリの右側のドアを開け、縄梯子を垂らした。

「朋子、あなたも来る?」

「ええ」

ドイツ人達は、爆風で血だらけになりながらも、統率された動きで、甲板上から退却し、瞬く間に、客室とブリッジを占拠した。観光会社の社員である船員達は、銃で脅され、従うのみである。多数の乗客が人質に取られた。

「何人やられた?」

リーダーのヴォルフガングが叫んだ。

「怪我はしていますが、全員無事です」

「そうか。船を岸に付けさせろ。人質を盾に脱出する。ラグナロック作戦の前に、こんな所で捕まるわけには行かん」

M92ベレッタを構えた二人の女が、甲板からタラップを伝って降りてきた。白人と東洋人である。激しい撃ち合いになり、流れ弾に当たった乗客が、次々と倒れた。

「手強いわね。奴ら、訓練されたプロのテロリストよ」

ヘレンが言った。ベレッタを握る、朋子の手が震えている。

「朋子、気分でも悪いの?」

「慣れてないから」

ドーンという音がして、激しい衝撃波が伝わってきた。遊覧船が川岸に乗り上げたのだ。船体が傾き、乗客が将棋倒しになる。

「逃げるぞ!煙幕を張れ」

ヴォルフガングの指示で、ドイツ人の一人がスーツケースから煙幕弾を取り出し、床に投げつけた。数秒で、船室には視界を完全に遮るほどの黒煙が立ちこめ、居合わせた全員が涙を流して、激しく、むせ込む。

「ゴホッ、ゴホッ!朋子、ありったけの玉を煙に撃ち込むのよ!」

ヘレンと朋子は、弾創が空になるまで乱射した。煙が晴れた時、テロリストの姿は一人もなく、流れ弾に当たった乗客達の死体の山が築かれていた。

 

 「やれやれだわ」

CIAのニューヨーク支局に戻ったヘレンは、まだ興奮が冷めていないようだった。遊覧船から脱出したドイツ人テロリスト達は、待ち構えていたニューヨーク市警の警官隊と撃ち合いになり5人が射殺された。しかし、残りは逃がしてしまった。

「9月11日まで、もう日がないわ。なんとかそれまでに、テロリストを捕まえなくては」

ヘレンの目の色が変わっていた。一般人に多数の犠牲者が出た事は、気にも留めていないようだ。

「日本の公安関係者が来ました」

CIA職員が、二人の東洋人女性を案内してきた。いずれも若く20代に見える。

「はじめまして、日本の公安庁の久石です」

千鶴(25歳)が、挨拶をした。もう一人の、疑い深そうな眼をしているのは木之本恵美である。朋子は、二人ともよく知っていた。

「ハーイ、あたしは、CIAのヘレン・マンスフィールドよ。よろしく」

ヘレンは、新たに現れた二人の日本人女性と握手をした。しかし、ヘレンが、内心では銃器の扱いさえ碌に出来ない日本人を、足手まといに感じているのを、朋子は、ひしひしと感じた。

「実は、もう一人、ゲストを連れて来たわ。ここへ来る飛行機の中で偶然、出会ってね。今回のテロに関する有力な情報を持っているそうよ」

千鶴(25歳)が、廊下に待たせていた、もう一人の女を招き入れた。女は久石千鶴(2023歳)だった。

「千羽鶴教団の教祖、久石千鶴さんよ。あたしと同姓同名なんだけど、まあ、実際に遠い親戚みたいなものかしら」

千鶴(25歳)が紹介した。朋子には、千鶴の親戚が千羽鶴教団の教祖だとは、初耳だった。確か、千羽鶴教団は、公安庁の監視対象団体にも指定されていた筈である。

「はじめまして・・・」

千鶴(2023歳)が、挨拶をしようと一団を見まわし、リチャード・ファーマーの姿を見た瞬間、その表情が氷付いた。

「ちょっと、あなた・・・」

喋ろうとした千鶴(2023歳)の口を、慌ててリチャードが押さえた。

「オー、お久しぶりです、ミス・ヒサイシ。ロズウェル以来ですね」

リチャードは、千鶴(2023歳)の口を塞いだまま、一団と引き離し、別室へと強引に連れて行った。

「ミッシェル!あなた、こんな所で、何をやってるの?」

小声で問い正す千鶴(2023歳)に、リチャードはバツの悪そうな笑顔で答えた。

「ここでは、CIAのリチャード・ファーマーで通っているんだ。僕が、ミッシェルだって事は、内緒にしてくれ」

「なんだか、わからないけど、わかったわ。でも、あなたがCIAにいるんなら、わざわざ、あたしが情報を持ってくる必要はなかったのに」

「まあ、そう言わずに、君の口から、みんなに教えてやってくれ」

リチャード=ミッシェルと千鶴(2023歳)は、ヘレン達のいる部屋に戻った。

「どうしたの、リチャード?」

ヘレンが、怪訝そうに質問した。

「いや、実は、ミス・ヒサイシとは、以前、あるミッションで接触していてね。その時、偽名を使っていたものだから、今、突然再会して、驚かせてしまったんだ」

「ふーん、まあ、あたし達の業界じゃ、よくある話ね」

ヘレンは、それ以上追及しようとはしなかった。

「ミス・ヒサイシが、今回のテロに関する重要な情報を提供してくれるそうだ」

リチャード=ミッシェルが言うと、全員の視線が千鶴(2023歳)に集まった。千鶴(2023歳)は、年齢相応の冷静な口調で話し始めた。

「ノストラダムスの予言は御存じですよね?」

「オー、イエス。それが、今回のテロを予言したものだと言いたいの?」

ヘレンが問い返した。

「実は、そうではないのです。1999年、7の月。恐怖の大王が空からやってくる。アンゴルモワの大王を復活させるために。その前後の期間、マルスが支配するだろう・・・この詩を正確に解読するとこうなります。2001年9月11日、空から旅客機が落ちてくる。日本の天皇が、かつて行った神風、真珠湾攻撃を再現させるために。それは、火曜日の前後」

千鶴(2023歳)が言うと、まず朋子が反論した。

「1999の年が、なぜ、2001年なの?」

「セプトマンスが、9月。つまり2ずれます。だから年も2ずらさなければならない。これは、ノストラダムスが仕掛けた暗号で、2は標的のツインタワーを暗示しています」

「そうなの?リチャードはどう思うの?あなた、ミッシェルに会ったんでしょ?」

ヘレンが同僚に振った。リチャードは、はにかみ笑いをした。

「あ、いや・・・そうだな。多分そうだと思う。ノストラダムス本人だと名乗るミッシェルも、そう言っていたから・・・」

「2001年・・・じゃあ、今起ころうとしている事は、何・・・」

千鶴(25歳)が、当然の疑問を口に出した。

「今起ころうとしているテロは、本来の歴史には、なかった現実です。9.11事件は、民主党のクリントン政権下ではなく、2001年に共和党のブッシュ政権下で起こるはずの現実です。つまり、ここは、私から見るとパラレルワールドなのです」

千鶴(2023歳)の説明に、リチャードを除く全員の頭が、より一層、混乱した。ヘレンが、ヒステリーを起こしそうになっている。

「オー、ノー!歴史に、トゥルーもイフもないわ。あたし達の任務は、今、起ころうとしているテロを止める事よ!」

「あなたの言う通りです。9月11日に、テロの実行犯が乗り込もうとしている旅客機のリストを持ってきました」

千鶴(2023歳)がショルダーバッグから封筒を取り出し、中の書類をデスクの上に広げた。

「テログループの実行犯の中に、私が、数年前から潜り込ませている千羽鶴教団の教団員がいます。彼からの情報です」

その書類には、4機の旅客機の便名と出発空港と時間が記されていた。

「グレートブリテン航空42便、イーストアメリカン航空57便、エル・シャローム航空102便、JAM航空73便・・・」

ヘレンが読み上げた。象牙色の顔がさらに青くなる。

「イギリス国籍やイスラエル国籍の航空機も入っているわ」

「我々だけでは、手に負えんな。MI6や、モサドにも、この情報を提供して協力を要請しよう。情報機関の多国籍軍だ」

そう言ったリチャードの顔を千鶴(2023歳)は、不思議そうに見つめた。

(ミッシェル、あなたは、歴史を守ろうとしているの?それとも歪めようとしているの?)

いくつもの顔を持つこの男の真意は、2000年の人生を生きた千鶴にさえ推し量る事が出来なかった。

 

 マサチューセッツ州ボストンのオフィス街にある隠れ家に、集合したドイツ人は、ヴォルフガング・フォルツを始めとする合計15人だった。ニューヨークでの騒ぎで5人が射殺され、その直後にバックアップ要員の10人と合流したのだった。15人は、拉致してきたアメリカ人の女を輪姦していた。女は、空港の地上勤務の女で、男の征服欲をかきたてる制服を着ている。

「思わぬ事態で、人数が減ってしまったが、明日はいよいよ、決行の日だ。全員、この世に思い残すことのないよう、今日は存分に楽しんでくれ。死んだ後、戦士の魂は天国、本物のヴァルハラへと召喚されるだろう」

「ハイル、ヒトラー!」

南極の地下要塞で育ったドイツ人達は、ほとんどが無宗教である。強いて言えば北欧神話を取り入れた、ゲルマン民族の優性人種理論の影響と、総統ヒトラーへの忠誠心で満たされていた。

「ユダヤ人に死を!」

「アメリカの世界支配に終止符を!」

青い目と金髪の男達は、口々に唱和した。1945年当時、南極大陸に逃れたのは、ナチスの政治家、軍人、科学者達が多かったが、生殖用に徴発された若い女は、ドイツや北欧を中心とする地域に住む、ゲルマン系のDNAを持った者ばかりだった。そのため、第3世代、第4世代に当たる彼らは、ほとんどが金髪碧眼である。

「しゃぶれ、このっ、このっ」

引き裂かれた制服を、半裸の肉体にまとわり付かせたアメリカ女は、涙を流していた。15人の屈強な男に、前後から責め立てられているのだ。輪姦が始まってから4時間が過ぎているが、明日死ぬ事を運命付けられている男達の性欲は尽きる事がない。

「ヘルプ!少し休ませてよっ!」

「俺達には、もう今日しかないんだ」

ヴォルフガングも加わった。女の肛門もオマンコも擦り切れて血が流れて出している。

「壊れちゃう・・・お願い、もう止めて・・・」

「ナイン!疲れたのなら、覚醒剤を打ってやる」

ヴォルフガングは、注射器を、女の右腕の静脈に打ち込んだ。。死の恐怖から逃れるために実行犯の中にも、薬物中毒になっている者も多い。マンハッタン島での、騒ぎの発端になった男も常習者だった。

「ハイル、ヒトラー!ネオナチスの勝利のために!」

翌朝、15人の男達は、死の覚悟を胸に秘め、空が白み始める前に、数週間を過ごした隠れ家を後にした。もう、ここに戻ってくる事はない。それぞれ、ボストン、ニューヨーク、ワシントンの各空港で、別々の旅客機に乗り込み、離陸直後の、ほぼ同じ時間帯にハイジャックする。そして、乗客もろとも、ターゲットの建造物に自爆テロを仕掛ける作戦なのだ。男達のいなくなった隠れ家の部屋には、散々レイプされた揚句に、眉間を撃ち抜かれて射殺された、精液まみれのアメリカ人女の死体が転がっていた。

 

 1999年、9月11日、午前8時1分。ニューヨーク発東京行き、JAM航空73便は、ジョン・F・ケネディ国際空港を離陸した。スチュワーデスの工藤明日香(23歳)は、旅客機が高度1万メートルまで上昇する間、乗務員用のシートにベルトを締めて座っていた。明日とあさっては連休で、東京に戻り次第、彼氏とデートする予定だった。

(今頃何しているのかしら?日本は、まだ夜中ね。きっと寝てるわ。あたしの夢でも見ながら・・・ウフフ)

国際線のスチュワーデスになってから、明日香の体内時計が狂ってしまっている。週に何度も日付変更線を越えなければならない不規則な生活が、明日香の性欲を以前よりも強くしていた。

(オナニーしたい。ダメダメ、明日香、勤務中に不謹慎なこと考えちゃダメ・・・)

明日香が、上昇する飛行機の中で、股間に伸びそうになる右手を必死に堪えていると、突然、乗客が数人立ち上がった。いずれも金髪の白人男性だった。

「お客様!当機は、只今、上昇中です。席にお座り下さい!」

先輩のスチュワーデスが、慌てて静止しようと、駆け寄っていった。男の一人がいきなり、カッターナイフを取り出し、そのスチュワーデスの首筋を切裂いた。

「きゃああああ!」

客席に、噴き出した鮮血が飛び散り、悲鳴が上がった。

「ハイル・ヒトラー!操縦室を占拠しろ!」

立ち上がった男は4人だった。訓練された素早い動きで、客席と操縦室を仕切っている扉に突進してくる。

(ハイジャックだわ!)

明日香は、動揺した。スチュワーデスになって2年になるが、事件に巻き込まれるのは初めてだった。

「お前、操縦室のドアを開けろ!」

カッターナイフを突きつけられた明日香に、抵抗する余地はなかった。

「早く開けろ!お前も死にたいか!」

「ゆ、許して・・・」

明日香は、ロックを解除し、ドアを開けた。4人の金髪男は、操縦室に飛び込んだ。

「なんだ、お前ら!上昇中だぞ!」

「殺れ」

リーダー、ヴォルフガングの指示で、操縦士と副操縦士が、シートに座ったままカッターナイフで殺された。金髪男の一人が変わってパイロットシートに付く。

「急旋回だ、ターゲットは、世界貿易センタービル、ツインタワー!」

JAM航空73便は、機体を大きく傾け、アパラチア山脈上空を急旋回した。

 

 エアフォースワンの司令室で、大統領はペンタゴンからの報告を受け取っていた。

「4機の旅客機が、ハイジャックされました」

「空軍には、スクランブルをかけています」

大統領の顔が、引きつっていた。

「CIAの情報通りだな。旅客機が、自爆目標に接近したら撃ち落とせ!他に選択の余地はない」

大統領補佐官や、オペレーター達が、きりきり舞いで全米の関連施設と連絡を取り合っている。エアフォースワンの周りには、4機のF15戦闘機が護衛に張り付き、万一、エアフォースワンが、破損した場合に備え、エアフォースツーも並行飛行していた。

「ハイジャックされる便が、判っているなら、事前に阻止できなかったのかね?」

大統領が、CIA長官に不満を漏らした。

「その場合、テログループは、別の便を乗っ取るだけでしょうな。御安心ください、ハイジャックされた4機には、こちら側の工作員も乗り込んでいます」

CIA長官が、誇らしげに言った。

「しかし、彼らが、ハイジャッカーの制圧に失敗した場合はどうなる?」

「乗客もろ共、撃墜するしかありませんな」

「そんな事をしたら、国民が黙ってないぞ。私の支持率は、ゼロになる」

CIA長官は、肩をすくめただけだった。その場合は、委員会が、もう一つの党から、別の大統領を用意するだけの話だ。

 

 月面、月の裏側にあるネオナチスの秘密基地では、基地司令官のゲーリング2世(56歳)が、捕獲したNASAの女性宇宙飛行士を調教していた。アポロ39号のパイロットだったその女性は、全裸に剥かれ、首に大型犬用の首輪と鎖を付けられている。

「うっひっひっひ!全裸で、月面を散歩させてやろうか?」

宇宙飛行士エイミー・マクダネル(26歳)は、怯えた表情で、四つん這いの身を縮めた。彼女が、月面活動中にナチスの円盤機の攻撃を受け、アポロの着陸船が破壊されたのだった。同僚の男性宇宙飛行士がどうなったかは、判らない。

「月面車に、クリトリスをつないで、引き回すと言うのも面白いかもな」

「止めて、クレイジーよ!全裸で月面に出たら死んでしまうわ」

「我々は今、体に塗るだけで宇宙服の代わりになるクリームを開発中だ。完成したら、お前を第一号の実験材料に使ってやろう」

「いやあっ!」

ゲーリング2世の悪魔的な微笑みに、エイミーは絶叫した。

「ほれ、エサだ。ジャンプして咥えろ」

ゲーリング2世は、宇宙食であるチューブを放り投げた。地球の重力の6分の1しかない月では、物は、ゆっくりと放物線を描いて飛ぶ。

「バウバウ!」

エイミーは教え込まれた通りに犬の鳴き真似をしてジャンプした。体が軽く、ふわりとした感じである。空中でうまくチューブをキャッチしたが、慣れない重力下でバランスを崩し、背中から落下して、大股開きになり、オマンコをさらけ出した。

「アウッ!」

「ウハハハ、宇宙飛行士の癖に情けない」

ゲーリング2世は、大笑いした。その時、地球から通信が入った。

「ラパス本部のゲッペルス4世閣下です」

「モニターに出せ」

大型スクリーンに若いゲッペルス4世の姿が映った。彼も、四つん這いになった東洋女を調教し、椅子代わりに使っている。

『もうすぐ、作戦の第一段階の結果が出ます。ゲーリング閣下、出撃の用意を』

「わかっておる。すでにハウニヴの大半は月軌道上に上げてある。地球からは見えない裏側の位置にな」

『第二段階への移行は、総統が決断されます。おそらく数時間後には』

「では、わしも、宇宙へ出るとするか。それにしても、この月というのは、便利な所だな。常に地球に同じ側を向けておる。月の裏側で何をしようが、まず地球から探知される事はない」

『過去に、何者かが月の軌道を修正したのでは?』

「おそらくそうだろうな。地球に対しての宇宙要塞として利用するためにな。アトランティス人辺りが・・・」

月の裏側には、アトランティス時代の遺跡がごろごろしている。しかし、中には、アトランティスの遺物ではない、別の宇宙文明の物も見つかっていた。

(銀河は、知的生命体で満ち溢れていると言うことか)

ゲーリング2世は、微弱重力下で、すっかり訛ってしまった手足を伸ばしながら、そう考えた。

 

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