第159話、久石一族

 

1942年、5月末。日本の空母機動部隊が、再び陣容を整え、ハワイ諸島に攻撃を加えるために東進していた。今回は、太平洋を北周りするなどという姑息な手段は取らず、直進である。

「クックック、俺も、末は連合艦隊司令長官か、海軍大臣だよなあ。ひょっとしたら総理大臣になれちゃったりして」

南雲忠一中将は、旗艦、赤城の艦橋で、含み笑いを漏らしながら、妄想に浸っていた。開戦以来、半年間、南雲機動部隊は、連勝に告ぐ連勝で、彼の株は天井知らずに上がっている。前代未聞と言われた真珠湾攻撃を成功させた後、セイロン島沖海戦ではイギリス機動部隊を粉砕し、珊瑚海海戦でも、勝利を収めている。もはやインド洋、太平洋の大海原で航行可能な敵空母は、アメリカ太平洋艦隊のエンタープライズとホーネットのみだった。

「鎧袖一触、鬼畜米英壊滅なり。わはははは」

南雲中将は、上機嫌だった。今回も敵の倍以上の航空戦力を持ち、しかもパイロット一人一人の技量も米軍を遥かに凌駕している。

「これで負ければ、俺は無能だ・・・なーんちゃって」

草鹿龍之介参謀長も楽観的だった。この作戦で、ハワイ諸島、最西端のミッドウェー島を攻略し、アメリカの残存艦隊に止めを刺すのだ。そうすれば、頑固なアメリカも講和に傾くだろう。それで、太平洋戦争は日本の勝利に終わるという、山本長官の筋書きだった。南雲機動部隊が、ミッドウェー島に接近すると、作戦通り、友永大尉を指揮官とする第一次攻撃隊108機が、赤城、加賀、飛龍、蒼龍の4隻の航空母艦から、空爆のために発艦した。

「楽勝、楽勝。ついでに敵艦隊の位置を探るための索敵機も発進させるとするか」

洋上索敵は、護衛の巡洋艦に搭載されている水上機の役目である。指定された巡洋艦のカタパルトから、索敵機が打ち出されたが、重巡洋艦、利根だけが遅れた。

「けっ、故障かよ」

利根の搭載機のパイロットが、操縦席からぼやいた。

「すいません、すぐに直しますから」

「早くしてくれよ!」

返事をした、その整備兵は、普段目立たない男だった。パイロットも、一瞬、こんな奴いたかな、と思うほど印象が薄かった。やがて、30分が過ぎたが、まだ直らない。

「まだあ?」

「もうちょっとです」

結局、発艦したのは、予定より40分遅れだった。

(歴史計画表通リノ時刻デ、発進サセマシタ)

目立たない整備兵は、体内に内蔵されている通信機で上空のタイムマシンに報告を送った。

(了解シタ。全タイムマシン、時間犯罪者ノ攻撃ニ備エテ警戒体制ヲトレ)

1942年、6月5日。ミッドウェー島周辺海域の上空は、数百機の時間管理局のタイムマシンによって、蟻の入り込む隙間もない程、がっしりと固められていた。1938年から1945年にかけては、もっとも歴史の改変がされやすい時期であり、最高度の警戒体制が取られている。1万2000年前のアトランティス大陸にある時間管理局の本部からも、増援のタイムマシンが、この時代に多数送り込まれていた。

(マスターノ、作成シタ歴史計画書以外ノ未来ハ、認メラレナイ)

(パラレルワールドノ派生ハ、許容出来ナイ)

(時間犯罪者ノ介入ハ絶対ニ許スナ)

自然の成り行きなら、日本軍が勝った筈のミッドウェー海戦を、時間管理局は、予言マスターの計画書通り、敗北に導かなければならない。当然、抹殺されようとしている多元宇宙の未来からの攻撃もありうる。日米両軍が激突する遙か上空では、歴史の進行を巡ってタイムマシン同士の争いも行われるのだ。

「友永大尉から入電です。『第二次攻撃隊の要あり』との事です」

赤城の艦橋にミッドウェー空襲部隊からの報告が入った。

「どうしますか、司令。」

草鹿参謀長が、南雲中将の顔色を伺った。

「真珠湾攻撃では、なぜ、第二次攻撃隊を出して、石油の備蓄タンクや港湾設備を徹底的に破壊しなかったのか、と後で散々言われたよなあ。よーし、じゃあ、今回は、敵空母もいないようだし、魚雷は必要ないだろう。全機、地上攻撃用の爆弾に兵装転換だ」

南雲は楽観的だった。しばらくしてまた、入電が入った。発艦が遅れた重巡利根の索敵機からだった。

「敵空母を発見したそうです」

「え?やっぱり、いたの?うーん、しょうがないなあ。じゃあ、兵装を魚雷に戻そう」

また、しばらくすると、別の報告を受けた。

「第一次攻撃隊が戻ってきました。甲板では、兵装転換作業中ですが、どうしますか?」

「どうするって、着艦させるしかないだろう。着艦の邪魔にならんよう、兵装転換中の機体は、一旦、作業をやめて格納庫に戻せ」

4隻の空母の甲板は大混乱に陥った。そこへ、運悪く、敵空母の攻撃機が襲い掛かってきた。

「慌てるな、大丈夫だ。あれしきの数で、空母が沈められるものか。」

あくまで、南雲中将は楽観的だった。事実、上空を防衛しているゼロ戦が、片っ端から飛来する米軍機を撃墜していく。そして、ようやく、待ちに待った、うれしい知らせが届いた。

「全機、魚雷に兵装転換完了!」

「よーし、発艦だ」

南雲中将が満面の笑みを浮かべて命令を出したとき、米軍機が投下した一発の爆弾が甲板に落ちた。その爆弾自体は大した威力ではなかったが、ズラリと並べられた日本の艦載機が腹に抱いていた魚雷が、次々と誘爆し、一瞬で甲板が火の海になった。

「あわわわわ・・・」

草鹿参謀長が口から、泡を吹いた。南雲中将は、何が起こったのか判らず、ポカンとしている。

「ど、どうなったんだ・・・」

「燃えています。赤城も、加賀も、蒼龍も・・・」

「そんな、馬鹿な・・・一瞬で空母が・・・なんでだ、無敵の南雲機動部隊だぞ・・・」

南雲中将は、現実を受け入れられず、悪い夢でも見ているような気がして、腰が抜けたかのように、ヘナヘナと座り込んだ。

「なんて、言い訳すればいいんだ。こんな事しちまって・・・」

南雲中将は、己の大失態にすすり泣いていた。

 

遙か後方の海上に位置する戦艦大和の艦橋では、連合艦隊司令長官山本五十六大将が、南雲機動部隊全滅の報告を受けていた。

「・・・これで、日本の勝ちは無くなったな」

ただでさえ、アメリカとは生産力が違い過ぎる。山本の計算では、もはや、戦力で優位に立つ事は不可能。当然、有利な条件での講和も不可能だった。

(俺のせいだ・・・俺が、真珠湾攻撃など立案しなければ、アメリカに開戦する度胸は、大本営にはなかった・・・こうなった以上、死んでお詫びするしかない・・・これからは、俺にふさわしい死に場所を探すためだけに生きよう)

山本は、米軍に蹂躙され、一面の焼け野原になった近未来の日本を頭に思い描き、それまでには、死のうと、心に決めた。

 

 久石光隆曹長(31歳)は、シンガポールの町をブラブラと歩いていた。軍服姿でサーベルを腰に下げている。時折、目に付いた一般市民を、理由もなく殴ったりして楽しんでいた。

「兵隊さん、お代金を払ってくださいよ・・・」

店頭に並んでいるオレンジを勝手に食べ、知らないフリをして立ち去ろうとする光隆を中国系の店主が呼び止めた。

「ああ?」

面倒くさそうに、サーベルを抜き、店主の胸に突き付ける。

「なんか、文句ある?刺して欲しいのか、お前」

「い、いえ・・・その」

「良く聞こえねえよ!」

光隆が、サーベルを突き刺そうとした時、不意に、日本語で呼びかけられた。

「光隆じゃないか、久しぶりだな」

振り向くとそこには、兄、久石重隆(37歳)がいた。重孝は、少佐の階級章をつけていた。

「ああ、兄貴か。なんでまた、こんな所に?」

「10年ぶりだな。お前もシンガポールに来ていたのか。俺は、ここへは、一ヶ月ほど、情報交換のために出張で来ていてね。普段は、満州の奉天に駐屯している596部隊っていう、研究専門の特殊部隊に所属している」

光隆は、10年間、一度も実家に帰っていない。長男である重隆は、医学部を出た後、軍医として、最初から士官待遇で入隊したのだった。

「母さん、お前が、手紙すら出さないから心配していたぞ。ひょっとして、戦死したんじゃないかって」

「ふんっ、俺様が死ぬ訳ないだろう。用が無いから手紙を出さなかっただけさ」

間一髪助かった果物屋の店主は、ホッとしていた。

「一度、家に帰ったらどうだ?と言っても、この戦争が終わるまで無理か・・・」

「馬鹿言え、戦争が終わったら、人殺しが出来無くなるじゃねえか」

「お前らしい、言い草だな」

重隆は、光隆に自分の連絡先を書いたメモを渡した。

「何か、困った事があったら連絡してくれ。力になれるかもしれん。じゃあな」

重隆と別れた後、光隆は、受け取ったメモを丸めて、無造作に捨てた。

(くだらねえ。俺は俺、兄貴は兄貴だ。助けなんかいるもんかよ)

 

 翌月、久石光隆の所属する部隊は、移動を命じられ輸送船に乗り込んだ。行く先は、ガダルカナル島である。ソロモン諸島の東端にあるその小島に着いた時、光隆は恐るべき光景を目にした。

「なんだ、こいつら、ガリガリじゃねえか」

上陸地点の海岸近くのジャングルには、ボロボロの軍服を着、骨と皮ばかりになった日本兵が、幽鬼のように徘徊していた。

「く、食い物をくれ・・・」

「マラリヤに効く薬はないか・・・」

先に上陸していた部隊の兵士達は、先を争うように、到着した補給物資に群がった。増援部隊の上陸作業がほぼ終わった頃、プロペラ音と共に米軍機の編隊が飛来した。

「敵襲っ!敵襲っ!ジャングルに隠れろ!」

日本兵達は、海岸線からジャングルに駆け込んだ。光隆達を運んできた輸送船は、イカリを上げて、逃げ出そうとするが、水面すれすれに降下して来た雷撃機に魚雷を打ち込まれ、次々と炎上する。あっという間の全滅だった。

「あーあ、全部やられちまったぜ」

光隆は、他人事のように呟いた。ガダルカナルへ、たどり着いた輸送船はそれが最後だった。残された日本軍は、ジャングルを移動した。島に一つしかない米軍の飛行場を占領するのが任務だったが、あっという間に運び込んだ食料は底を尽き、増援に来た光隆の部隊までもが、飢餓状態に追い込まれた。

「女は、いねえのか」

光隆は、従軍慰安婦を探し回った末に、この島には3人しかいない事を知った。1人は朝鮮人、2人は日本人の女だったが、いずれも、たった3人で数千人の兵士の相手をしているためにボロ雑巾のようになっていた。

「どけ、俺にやらせろ」

順番を待っている二等兵を無理矢理押しのけると、光隆は日本人の慰安婦に抱きついた。数週間ぶりの女だった。

「名前は、なんて言うんだ?年は?」

「範子です。22歳です」

「お前、日本人だろ。なんで、こんな無人島で慰安婦なんかしてるんだ?」

「もともとは、ニューギニアに民政要員として行く筈だったんです。電話交換士の資格とタイプライターの資格も持っています。でも、戦局が悪化して民政要員は必要なくなったから、代わりに慰安婦をやれって軍から言われて・・・。日本に返してって頼んだんですけど、輸送船には、乗せる余裕がないからって・・・」

「ふーん、じゃあ、根っからの商売女じゃないんだ」

身の上話を聞いて、光隆は、少し、そそられた。しかし、範子という慰安婦も、禄に食料の配給を受けていないらしくガリガリである。光隆は、範子を押し倒すと乳房にむしゃぶり付き、チンポを突き立てた。昼夜を問わず、兵士と性交している範子の反応は鈍かった。

「ちぇっ、面白くねえな!」

光隆は、範子を一発殴ると、別の慰安婦に抱きついた。

「お前、名前は?年は?」

「春恵です。19歳です」

「お前も日本人か」

「はい、私は志願しました。教祖様から軍に奉仕するように言われて・・・だから、幸せです」

春恵と言う慰安婦は、鶴の刺繍の入ったお守り袋を首から下げていた。

「教祖?」

「はい、千羽鶴教の教祖、久石千鶴様です」

その名を聞いて光隆は、妙な気分になった。久石という苗字は珍しいものではないが、それほど、ありふれたものでのない。10年以上戦地にいる光隆は、内地の情報に疎く、千羽鶴教団について聞くのも初めてだった。

(宗教かぶれの女か・・・萎えるな。この島には、碌な食い物も女も、ねえのかよ)

「久石曹長!何をしておるか!」

光隆が、春恵にのしかかろうとした時、不意に背後から険しい口調で咎められた。振り向くと、上官である尾崎少尉がいた。尾崎少尉は、士官学校を出たばかりの23歳の新任少尉で、今回が初めての実戦である。まだ、人に向けて銃を撃った事もない青臭い青年だ。

「見ての通り、慰安婦を抱いております」

光隆は、舐めた口調で答えた。階級は下だが、10年以上の実戦経験を持ち、光隆が、殺した人間の数は100人を超える。

「貴様、軍務中だろう?今は、非番ではないはずだ」

「お言葉ですが、分隊長殿。ここは、ジャングルです。昼も夜も関係ありません。敵基地に着くまでは、そんなに固い事を言われなくても」

「貴様、上官に口答えするか!」

尾崎少尉は、光隆の横っ面を叩いた。光隆の表情は凍りつき、目が据わった。

「申し訳ございませんでした、分隊長殿」

素直に低い声で謝った光隆の視線は、まるで死人を見るような目付で尾崎少尉の顔を見ていた。

 

 ガダルカナル島で唯一つの飛行場であるヘンダーソン基地への総攻撃が始まった。日本軍の何度目かの総攻撃である。ジャングルから徒歩の歩兵がバラバラと銃剣を構えて駆け出した。

「突撃ーっ!」     

「天皇陛下万歳!」

「大日本帝国万歳!」

ガリガリに痩せ、ボロボロの軍服を纏った日本兵が突撃すると、飛行場のあちこちに設置された銃座から、機関銃の激しい掃射が加えられた。

「止まるな!進めっ!」

尾崎少尉が先頭を切って走っていく。光隆は、呆れ果てた。

(冗談じゃないぜ。これじゃ、命がいくつあっても足りん。死に行くようなもんだ)

弾丸を浴びた日本兵が、バタバタと滑走路の上に倒れていく。飛行場から緊急発進した戦闘機P−40ウォーホークの編隊が、空からも機銃掃射を行うと、日本兵の死骸が大量に生産された。

「突撃!突撃!日本男児の心意気を見せてやれ!」

始めて戦闘に出た尾崎少尉には、味方の損害が目に入っていないようだった。光隆は、無造作に小銃を構えると、アメリカ兵に撃ち返すフリをして、尾崎少尉の背中を撃ち抜いた。

(ざまあ見やがれ)

「おい、退却だ。分隊長がやられた。全員ジャングルまで、引き返せ!」

分隊長が戦死したため、分隊の指揮権が、光隆に移った。他の、ほとんどの分隊は、すでに退却を始めている。日本軍の総攻撃は、またしても失敗だった。

 

 アメリカの新聞記者、キャサリン・フォスター(27歳)は、東京にある特高の拘置所を出され、別の場所に移される事になった。

「アメリカに送還してくれるのでは、ないのですか?」

キャサリンは、護送の担当官に尋ねた。開戦時、たまたま日本にいた外交官や、在留外国人は、アメリカにいた同じ立場の日本人と交換されるというのが、国際協定で定められている。

「お前は、スパイだ。スパイは返すわけにはいかん」

「オーノー!あたしは、スパイじゃありません」

「まだ、白ばっくれるのか。スパイは、スパイにふさわしい場所に送り込んでやる」

キャサリンは、下関に列車で送られ、そこから船で大陸へと送られた。身柄は、特高から陸軍へと引き渡される。大連に上陸したキャサリンは、東南アジアの各地で捕虜になった連合国の捕虜達と一緒に、奉天まで満州鉄道で運ばれた。到着したのは、奉天郊外にある陸軍の秘密研究施設だった。

「ようこそ、連合国の諸君。長旅はいかがだったね?」

出迎えた将校は、久石重隆少佐だった。彼は、この極秘部隊、596部隊の指揮官なのだった。

「君達は、栄えある実験材料に選ばれたのだよ。生物兵器開発のね」

捕虜達の間から抗議の怒声が上がった。アメリカ人、イギリス人、オランダ人、中国人など様々で、男性ばかりでなく女性の比率も多い。

「戦時国際法を順守してくれ!」

「捕虜虐待は、重罪だぞ!」

重隆は、あざ笑った。

「そんなもの、糞くらえだ。ハッハッハッ、我が軍は、大戦に勝利するために細菌兵器の開発を急がなければならん。今、もっとも力を入れているのは、白人だけを殺傷するウイルス兵器だ。これが完成すれば、アジア全土から白人を一掃し、大東亜共栄圏の樹立も夢ではない」

捕虜達の顔色が青ざめた。厳重に日本兵が警戒しているため、逃亡は不可能である。捕虜達は人間ではなくマルタと呼ばれ、番号を割り振られた。

「女マルタ323号、裸になれ」

日本兵の命令で、キャサリンは、着ていた囚人服を脱ぎ始めた。マルタとなった捕虜は、全員、身体の隅々まで検査を受けるのだ。重隆を含む3人の軍医が、よってたかって様々な部位を調べた。

「口を開けろ」

キャサリンの口の中に指が突っ込まれ、虫歯の本数、舌の長さなどが計られる。

「足を開け」

オマンコの中や、肛門にも内視鏡を入れられ、こねくり回された。

「いい体をしておるな」

重隆は、キャサリンの尻をぴしゃぴしゃと叩きながら呟いた。

「いきなり、生体解剖するには惜しい体だ。お前には、なにか、長く楽しめるような実験メニューを考えてやろう」

身体検査の終わったキャサリンは、囚人服を着る事を許され、監獄に入れられた。

 

 監獄は雑居房だった。女性5人が一つの房に入れられている。彼女達の国籍は様々だ。

「きっと、病原菌が、どの人種に良く感染するか調べるためよ」

一人の女マルタの言葉に全員が、色を失った。

「こんな、非人道的な事が許されていいの?」

キャサリンは金切り声をあげた。

「日本人は、イエローモンキーよ。モンキーに人権の意味なんて判る筈がないわ」

出される食事は、栄養満点だった。マルタの健康状態が良くなければ、正確な実験結果が出せないからだろう。翌日、早速一人のオーストラリア人女性が、雑居房から連れ出され、そのまま帰ってこなかった。

「どうなったの?ねえ、なんで、あの娘、戻って来ないのよ!」

不安に駆られたキャサリンが、たまらず、夕食を運んで来た当番兵に尋ねた。

「ああ、あの女マルタは、今日の午後の実験で解剖されたよ。バラバラになった内蔵や手足が、ホルマリン漬けにされて、標本室に飾られているよ」

「ヒイイイイ!オーマイゴッド!地獄に落ちろ、ジャップども!」

キャサリンは恐怖に顔を引きつらせた。翌朝、房を出るように指名を受けたキャサリンは暴れた。

「死にたくない!死にたくない!解剖なんて、いやああああ!」

「大人しくしろ、世話を焼かせるな、マルタ!」

応援の日本兵も飛んできて、キャサリンを取り押さえ、無理矢理、房から引き摺り出した。

「久石少佐が直々に実験をされる。素直に従え」

キャサリンは、実験室に着くまでも、渾身の力を振り絞って暴れた。全裸で鉄製の椅子に座らされ、手首足首をベルトで固定される。

「そんなに怖がらなくてもいい。君は、すぐには解剖しないと言っただろう。その代わり、様々な実験に、体を使わせて頂くがね」

「何をする気なの?」

「まずは、アルコール実験だ。人間の肉体が、どれほどの量のアルコールに耐えられるかを実験する」

重隆は、プラスチック製のコップにウォッカを注いで、キャサリンの口元に押し当てた。

「濃度70パーセントの強烈な酒だよ。さ、一気に飲みたまえ」

キャサリンは、一口、飲んでみて、いきなり咳き込んだ。きついアルコール臭が、咽喉と肺を刺激したのだ。

「こぼすんじゃないっ、死ぬ気で飲むんだ。それとも生きたまま解剖される方が、いいか?」

「イヤッ!解剖は絶対イヤ!」

キャサリンは、息を止め、神に祈りながらゴクゴクと飲み干した。食道と胃が焼け爛れるように熱くなり、口から火を吐きそうな気がした。

「もう一杯だ。」

再び、重隆がウォッカをコップに注ぎ、キャサリンに飲ませようとした。飲むしかない。

「暑い!たまらなく暑いわ!」

キャサリンの体が真っ赤に火照ってきた。ウォッカ3杯目を飲み干した時、急激に酔いが回ってきた。

「体温上昇か。しかし、これくらいの酒量では、ただの酔っ払いと変らん。わざわざ、実験する意味もない。もっと飲め、マルタ」

ウォッカ7杯を飲んだキャサリンは、ろれつの回らない舌で、支離滅裂に、大声で罵り始めた。

「殺すなら、早く殺せよ、ヒサイシ!日本に来たのが間違いだったわ!フジヤマ、ゲイシャ、スシ、テンプラ・・・キル、ミー!」

呼吸が荒くなり、脈拍が速くなった。目がトロンと潤み、頭がズキズキと痛む。

「どれ、ケツの穴からも飲ませてみるか」

重隆は、ウォッカを浣腸器に吸い上げると、酔っ払ったキャサリンを拘束されている椅子から解放した。キャサリンは、泥酔しているため、立つことすら出来ず、だらしなく床に倒れこむ。

「ケツを上げろ」

キャサリンの肛門から直接アルコールを注入した。

「どうだ、気分は?」

「気持ち悪い・・・吐きそう・・・」

「絶対に吐くな。吐いたら実験にならん」

体温が急激に低下してきた。重隆が、針を取り出し、キャサリンの乳房に突き刺してみる。

「どうだ、痛いか?」

「え・・・なんれすか・・・なにも、感じないれす・・・」

呼吸や、心臓の動きを無意識に制御している脳幹部も、アルコールの影響を受け初めていた。股間から、膀胱が麻痺したためにチョロチョロとオシッコが流れ出す。

「アルコール分解成分の入ったオシッコだ。口ですすって体に戻せ」

キャサリンの顔を、コンクリートの上に流れ出たオシッコに押し付けると、彼女は、麻痺した舌で舐め始めた。そして、しばらくすると、キャサリンは、動きを止め、呼吸をしなくなった。

「限界か。血液中のアルコール濃度を測ってみよう」

重隆は、注射器で採血し、濃度を測定した。4.7パーセントだった。

「ふむ、血中アルコール濃度がこのくらいになると、人間は死ぬのか」

兵士が呼ばれ、キャサリンの体は、蘇生実験の班へと回された。消化器官の洗浄と、心臓マッサージや人工呼吸の実験に使われるのだ。うまく行けば、キャサリンは、息を吹き返し、また別の実験に使うことが出来る。

(こんな実験、ハルピンの731部隊に比べれば、子供騙しみたいなもんだな。しかし、目下、俺が研究中の、白人だけを殺すウイルスが完成すれば、この分野の名声は俺のものだ)

重隆は、なんとしても、生物兵器開発の第一人者になりたかった。

 

1942年、7月。北アフリカ戦線では、ロンメル将軍の率いるドイツ軍機甲部隊が、アレキサンドリア手前の、エルアラメインまで進出していた。1年に及ぶ砂漠の戦いで、配下の師団は、連隊規模にまで人員を減らしている。ヒトラーからの補給船は、地中海でことごとく撃沈され、陸揚げされる物資は、ほんの僅かだった。

「あと、一息だ。アレキサンドリアを落とせば、スエズ運河は、我々のものだ。イギリス本国と、インド方面のイギリス軍を分断する事が出来るぞ!」

ロンメルは、持てる戦力の全てを前面のイギリス軍にぶつけていた。もう、予備戦力はない。弾薬も、戦車のガソリンも尽きかけている。それでも、ロンメルの猛攻で、数の上で優勢なイギリス軍を、じりじりと押している。

「我々が苦しい時は、敵も苦しいのだ。踏ん張れ、ドイツ兵士よ!」

国民的英雄のロンメル将軍は、敵の砲弾が飛び交う中、軍用車に乗って、前線の兵士を激励して回った。両軍の戦車部隊による激しい砲撃戦が続き、破壊された無数の戦車の残骸が砂漠に放棄される。航空機も投入されているが、イギリス軍の本拠地に迫りすぎているため、航続距離の関係で、ドイツ軍機よりも、イギリス軍機の方が、飛来する回数が多い。

「本国から、補給物資を積んだ輸送機が到着しました」

「おお、やっと、来たか!」

待ちに待った知らせが届き、ロンメルは、補給物資を確認するために、臨時滑走路へ向かった。海上輸送が困難なため、空輸だけが頼みである。しかし、貨物室から降ろされてきた荷物を開けて、ロンメルは悲痛な叫び声を上げた。

「なんだ、このシャンパンとパーティグッズの山は!」

「はっ、総統から将軍閣下への、エルアラメイン進出祝いであります」

「私が頼んだのは、弾薬と、戦車を走らせるためのガソリンだ!戦いはまだ続いている!水も禄にない砂漠で、シャンパンなど飲んだら、酔っ払った上に脱水症状で、死んでしまうぞ!何を考えているんだ、ベルリンは!」

ロンメルの怒りは収まらなかった。

(あと一息だと言うのに・・・)

あまりの脱力感に、過労のあまり目眩がした。クラッとして倒れそうになった所を、副官のバイエルライン大佐に抱き止められる。

「将軍、最近、お体の調子が良くないようです。一度、軍医の診断を受けられては、どうですか?」

「ああ、そうだな」

診断結果は、最悪だった。すぐにドイツ本国での入院と手術が必要だと宣告された。

「馬鹿な・・・今、前線を離れるわけにはいかん」

「しかし、このままアフリカの砂漠にいては、閣下の命にかかわりますぞ」

「・・・」

砂漠の狐、ロンメルは、やむを得ず、長距離爆撃機ハインケルで、単身エルアラメインの戦場を離脱した。

 

 1943年5月。山川桃次郎は、横須賀の軍港で眼前に停泊する巨大な潜水艦を眺めながら、潮風に吹かれていた。潜水艦は、伊500型潜水艦、無補給で地球を2周出来る、現在世界で最大級の潜水艦である。これに乗り、桃次郎は、これからドイツへ向かうのだ。

「山本長官の乗った飛行機が、先月、ラバウル上空で撃墜されたそうだ」

中野学校の校長である上月大佐が言った。桃次郎は、驚きを隠せない。

「なぜ、そんな所に長官が?ラバウルと言えば最前線です。何も連合艦隊の司令長官が、わざわざ、そんな所に行かなくても・・・」

「死に場所を、探しておられたんだろうな。この戦争を始めた責任と、ミッドウェーでの敗北の責任を感じておられたのだ。もっとも、長官の死亡の事実も、ミッドウェーでの空母機動部隊全滅の真相も、公には公表されていないがね。国民は、もうすぐ戦争が日本の大勝利に終わるものだとばかり考えている」

桃次郎は、やれやれと、深いため息をついた。そこへ、国民服を着た一人の若い女が、ふらりと現れた。

「お待たせ」

千羽鶴教団の教祖、久石千鶴だった。

「あたしも、ドイツへ同行させて頂きますわ」

「何をしに、行くのです?」

桃次郎は、呆れ気味だった。千鶴が同行する事は、事前に聞いていた。東亜連盟の石原莞爾が、軍に手を回し、千鶴を乗せる事に同意させたのだった。

「ヒトラーに、もう一度、会わなくてはなりません。そして、彼が発見したと言う、古代超文明の遺産を確認し、出来る事なら、それを使って、60年後の宇宙人の侵攻に備える方法を探らなくてはなりません」

「もう一度?あなたは、以前にもドイツの総統と面識があるのですか?」

「はい、20年ほど前に、一度ベルリンで・・・それに、彼の前世にあたる人物とは、2000年前から、何度も出会っています」

千鶴は、ひどく冷静に答えた。

「やれやれ、また、その話ですか。何度、聞かされても、俺には信じられないんですがね。生まれ変わりだの、宇宙人だの、俺があんたの子孫だのっていう、ホラ話はね」

千鶴は、上月大佐に向き直った。

「石原閣下には、宜しくお伝え下さい。もう、閣下が生きている間には、二度とお目にかかることは無いかも知れません」

「ええ、伝えておきますよ」

千鶴は、この時代の日本で、唯一自分の生きる目的を理解してくれた陸軍の元参謀本部長の事を考えた。やはり、彼は、天才で、この時代において歴史を動かす推進力をなった人物である事には間違いない。21世紀での知名度こそ低いものの、時間管理局では、ヒトラーと並び、特A級の歴史上人物にランクされているのだろう。上月大佐に別れを告げた、桃次郎と千鶴を乗せた伊500型潜水艦は、静かに横須賀を出港した。シンガポール、ルミナス諸島を経由し、アフリカ最南端の喜望峰を回って、ドイツ占領下のフランス西海岸へ辿り着くという、危険で、長い航海に出たのだった。

 

第160話、食糞アルバイト

 

2007年4月、大学4回生になった高原沙貴(21歳)は、アルバイト先を変える事になった。それまで、働いていたファッションヘルスを辞め、もっと効率よく稼げるソープランドに移る事にしたのだ。そのソープランドは、SMプレイのコースがあり、普通のSMクラブと違って、SMプレイの中で本番行為が出来るというのが、売りだった。オプションで、飲尿や針刺し、食糞まであり、特に食糞オプションは、1回10万円という料金設定だった。

「君、食糞、本当に大丈夫なの?」

新しい店の店長に、面接の時、尋ねられた。

「はい、大丈夫です。何度か、経験もありますし」

沙貴は、テミストクレスの命令で、自分や家族の排泄物を食べさせられた事もあったので、自信があった。

「お客さんの前で、やっぱり出来ない、なんて言わないでね」

店長は、こんな可愛い娘が、本当に食糞など、するのだろうか、と疑うような目で見ていた。今いる店の女の子達の中でも、食糞がOKの娘は、二人しかおらず、それほど美人でもないのに、完全予約制である。前の店でもナンバーワンだった沙貴は、即採用になり、翌日から働く事になった。すでに4回生なので、単位の取得もほとんど終わり、大学には、週に1、2回、顔を出せば済む程度である。

(そろそろ、就職活動もしなくちゃ、いけないわ)

バブル崩壊以降、長かった就職氷河期も終わり、今年は売り手市場だと言う噂だった。

(第一志望は、マスコミだけど、あたしの大学のレベルじゃ無理ね)

沙貴は、憂鬱に考えた。元々、高校時代は、トップクラスの進学校に通っていたのだが、大学受験の際、突如現れた居候、テミストクレスに邪魔をされて、三流大学にしか入れなかったのだ。アルバイト、出勤1日目にして、すでに食糞の予約が入っていた。

「サキです。よろしくお願いします。」

シャネルのデザインに似た制服で、沙貴は、お客を出迎えた。でっぷりと太った、50歳くらいの、中小企業の社長風の男である。前に働いていたファッションヘルスとは、あきらかに客層が違う。前の店は、料金も安かったので、学生や普通のサラリーマンが多かった。男は、値踏みするように、お辞儀をした沙貴の全身を観察した。

「新人か。俺は、この店の常連客だ、覚えとけ。気に入ったら、何回でも指名してやるから、今日は一生懸命奉仕するんだぞ」

「はい、御主人様に、精一杯お仕えします」

男は、あきらかに、上からの目線で沙貴を見下していた。ソープランド嬢など同じ人間とは思っていないのだろう。沙貴は丁重に男をプレイルームに案内した。広く、豪勢な部屋である。ダブルベッドの他に、SMプレイ用の三角木馬や張り付け台、天井には、鎖つきの滑車が完備されていた。

「何を、ボヤボヤしている、早く脱げ。」

「はい、御主人様」

沙貴は、ベージュにネイビーで縁取りされた、シャネル風の制服を脱いだ。下着も脱ぎ去り全裸になる。

「ほう、なかなかいい体じゃないか。跪いてチンポを咥えろ」

沙貴は、両膝をつき、まだ勃起していない男のチンポを口に含んだ。舌を絡ませ舐めあげようとすると、男の叱責を受けた。

「しゃぶっていいと、誰が言った?奴隷のくせに、勝手な行動をするんじゃない」

「申し訳ございません、御主人様」

男は、いきなり口の中に放尿を始めた。沙貴はムセそうになるが、こらえて飲み下す。

「こぼさず飲むとは、新人のくせに、なかなか調教されているな」

気持ちよさそうに放尿を終えた男は、沙貴に、湯船に入る様に身ぶりで指示し、自分も湯につかる。沙貴の若く弾力のある肌を撫で回し、やがて左手で乳首をひねり上げながら、右手で沙貴の顔面を鷲掴みにし、親指を口に入れた。

「どうだ、痛いか?」

「は、はい!」

「当たり前だ、SMプレイだからな」

男は、沙貴の顔面を何度もビンタした。

「痛いか!痛いか!がはははは!」

男は、高らかに笑った。そして体が温まると、鷹揚に言った。

「食糞プレイの前に、体を洗ってくれ。お前の全身を使ってな」

「はい。では、こちらに御掛け下さい。」

沙貴は、湯船から出て、客をスケベ椅子へ誘った。凹型にくぼんだ椅子である。そこに客を座らせ、凹んだ部分にソープ嬢が手を入れて客のチンポ、金玉、肛門を洗うのだ。

「念入りにやれ。客に奉仕するという気持ちを込めてやるんだぞ」

「はい、御主人様」

沙貴は、時間をかけて丁寧に洗った。タオルやスポンジは使わず、素手にボディソープを塗って直接洗う。股間が奇麗になると、今度は沙貴自身が、全身にボディソープを塗りつけて客の体に、クネクネと絡みついた。いわゆるボディ洗いである。

「お前自身のタワシを使え。これだよ」

男は、沙貴の股間の陰毛を掴んで言った。沙貴は、薄い自分のマン毛にたっぷりとボディソープをたらし、股間を客の体に押し付けた。腰の動きを使って上下させ、タワシのように体を洗っていく。

「失礼します」

男の手足を1本づつ、両手で捧げ持って股間に挟み、丁寧に磨きあげた。

「ふん、新人だけあって、タドタドしいな。まだまだ勉強が足りんなあ」

「申し訳ございません」

沙貴は、謝った。

「謝る時は、土下座だろう?全く教育が、なっていない奴隷だ」

「はい」

沙貴は、浴室のタイルの上に三つ指をついて土下座し、深々と頭を下げた。

「申し訳ございませんでした。どうか、お許し下さいませ、御主人様」

「全然、誠意が、感じられんなあ」

男は足で、土下座をしている沙貴の頭を踏みつけ、脇腹を蹴りあげた

「もういい。食糞だ、仰向けに寝ろ」

タイルの上に仰向けに寝転がった沙貴のちょうど顔の上に、食糞用の便器椅子を置いた。それは、普通のプラスチック製の椅子の真ん中をくり抜き、排泄出来るようにしたものだった。

「お前は、人間便器だ。高い金を払っているんだから、一カケラも残さず完食しろよ」

「は、はい・・・」

沙貴は、わずかに動揺した。食糞の経験は初めてではないが、クソを食べるという行為は、本能的に激しい拒絶反応があり、それを抑えるのは並大抵の精神力では追いつかない。下手をすれば、自分の意思とは関係なく、肉体が勝手に反応してクソを吐き出してしまう。

「どうぞ、お願いします。サキに御主人様の尊いウンチを食べさせて下さい」

「ようし・・・ウーン、ウーン」

便器椅子に座った男は、下腹部に力を入れ、気張り始めた。プレイのために昨日から排泄を我慢していたのだが、なかなか出ない。沙貴は、顔の真上にある男の肛門がヒクヒク動くのをドキドキしながら見つめている。男は煙草に火をつけ、燻らせた。両足を無造作に、沙貴の白い腹の上に置き、足置き台の代わりにしている。やがて、気分が落ち着いて便意を催したのか、沙貴の目の前で、急に肛門の蕾が盛り上がったかと思うと、茶色い物体が先ッポを覗かせた。

「出るぞ、口を開けろ」

沙貴は、あんぐりと、限界まで大きく口を開き、丁度落ちてきそうな位置に、必死で顔をずらせた。ムリムリとウンチが絞り出されて大きくなり、ついに千切れて落下した。ボトリと落ちたウンチは、半分が沙貴の口の中に入り、残りの半分は、上唇から鼻にかけてベットリとへばりつく。

「あ・・ああ・・あう・・・」

沙貴は、悲しげな呻き声をあげた。目から涙がこぼれ出る。他人のウンチを口に入れているのだ。人間として最大の屈辱だった。

「あう・・あう・・・」

沙貴は、ゆっくりと口を閉じ、おそるおそる咀嚼を始めた。強烈に苦い味が口中に広がるが、とても食えるものではない。しかし、それを食べ、胃に収めるのが沙貴の仕事なのだ。

「どうだ、うまいか?」

男が、訊ねてきた。沙貴は、吐き気を必死にこらえ、咀嚼しながら、うなずいた。

「はい、御主人様のウンチは、とても美味しいです・・・・」

明らかなウソだった。しかし、沙貴には、他の答えは許されない。どんな病原菌が混じっているか判らない人間のクソを、オプション料金の十万円と引き換えに、笑顔で食べなければならないのだ。

「私のような未熟な奴隷に、素敵な御馳走を頂き、本当に有難うございます」

沙貴は、頬を涙で濡らしながら、無理矢理、笑顔を作って感謝の言葉を述べた。

「本当にそう思うなら、顔についている残りのクソも全部食べろ。それに床に飛び散った分もな」

「は、はい・・・ゲホッ、ゲホッ」

沙貴は、ムセて、吐きそうになる胸を、手の平で押さえて必死に堪え、顔面に落ちたクソも口に運んで咀嚼した。そして長い苦闘の末、全部飲み込み終わると、上半身をのけぞらせ、排便後の男の肛門を舌で奇麗に掃除した。

「今度からは、もっと美味そうに食えるように、練習しておくんだぞ」

「はい、御主人様、申し訳ございません」

沙貴は、一旦立ち上がって向きを変えると、床に四つん這いになり、タイルの上に飛び散ったクソのカケラを、すっかり黄色くなってしまった唇と舌で、舐め取り始めた。

 

 ある朝、沙貴はリクルートスーツで自宅を出た。午前中に会社説明会に行き、午後からは、別の会社の二次面接の予定が入っているのだった。

(今日の面接は、気合を入れて、がんばらなくっちゃ。あたしの大学のレベルで二次面接まで行けたのは奇跡だわ)

その会社は、第一志望のテレビ局だったのだ。民放のローカル局だが、いくら今年は売り手市場とはいえ、それほどチャンスがあるわけではない。駅まで歩き、改札を抜けようとした時、オマンコに入れていた携帯のバイブが震えた。

「ウウッ・・・誰かしら?」

沙貴は、快感に眉をひそめながら物陰に隠れ、スカートの下に手を入れて携帯電話を取り出した。防水型の携帯電話なので愛液にまみれても故障する心配はない。

『もしもし、サキちゃん?』

バイト先の風俗店の店長からだった。

「店長、どうしたんですか?」

『ごめん、急に食糞プレイの予約が入っちゃって、今から店に来れないかなあ』

「今日は、就職活動で、大事な面接があるんです」

『そこをなんとか、頼むよ。今、店に食糞が出来る娘がいないんだ。午前中だけでいいからさあ』

沙貴は、少し考えた。午前中に行く会社説明会は、どうせ、志望順位も低く、大した会社ではない。午後のテレビ局の面接にさえ間に合えば問題ない。バイト先の店長の機嫌を損ねるのもまずい。

「わかりました。今から店に向かいます」

『ありがとう。助かるよ、サキちゃん』

沙貴は、携帯電話をオマンコに戻すと、急いで切符を買い、電車に乗った。

 

 その日の午後、沙貴は汗だくになってオフィス街を走っていた。食糞プレイの客が、ドSのマニアックな客で、延長に延長を重ね、次々とハードなプレイを要求してきたのだ。御陰で、沙貴の体は鞭傷だらけになり、針で刺された乳首からは出血が止まらず、ブラジャーを赤く染めていた。食糞プレイの後、歯を磨く暇もなく、店を飛び出して面接会場へ向かった沙貴は、ウンチの匂いをプンプン漂わせて、電車内でも白い目で見られた。

(どこかで、口をゆすがなくちゃ・・・でも、もう・・時間がない・・・)

大量の牛乳浣腸を何度もされたせいで、お腹の調子も悪い。時々、ギュルギュルと下腹部が鳴り、開きっ放しの肛門から漏れそうな気がする。

「お願い、間に合って・・・」

沙貴は、面接会場に指定されたビルへ駆け込んだ。

「すいません・・・遅れました・・・ハア・・ハア」

人事担当者と、すでに順番を待っていたリクルートスーツの学生達が、一斉に沙貴をにらんだ。

(面接試験での遅刻は、どんな理由があっても、確実に減点対象だわ)

沙貴は、泣きたい気持ちだった。

「高原沙貴さんですね。貴方の順番は、変更して、一番最後にしてあります。座ってお待ちください」

「はい、申し訳ございません」

その時、ギュルギュルと、またお腹が鳴った。

「あ・・・あの・・・トイレに行っていいでしょうか?」

人事担当者は眉をひそめたが、冷静な口調で言った。

「トイレは、そこの廊下を真っすぐ行って、左です」

沙貴は、洋式トイレに座り、残りの牛乳浣腸を排出した。ほとんど出ず、ただ便意だけのようだった。

(ウウッ、気分が悪いわ)

沙貴は、トイレの洗面所で、ついでに口をすすいだが、その位で口中のウンチが完全に綺麗になるはずもない。

(なるべく口を開かないようにしよう)

沙貴は、待合室に戻り、唇を閉じて無言で座った。しかし、食糞プレイの客は、沙貴の顔や乳房にもウンチを塗りたくっていたので、残り香が徐々に待合室に充満し始めた。

「次の方、入って下さい」

人事担当者も学生達も、匂いには、気付いていたが、試験を待つ異様な緊張感の中、誰も言葉を発しようとしない。誰もが余計な事を言って減点を取られるのを恐れているようだった。

「次の方で最後ですね。高原沙貴さん」

「はい!」

沙貴は、歯切れよく返事をして立ち上がり、面接室のドアをマナー通り軽くノックした。

「失礼します」

「どうぞ」

面接官は、人事部長らしい初老の男だった。

「では最初に、志望動機を述べて下さい」

「はい、御社を志望いたしましたのは、数あるテレビ局の中でも・・・」

沙貴は、用意していた答えを話し始めた。なるべく口を開けないように、唇を閉じて喋る。そのためか、どうしても、少し籠った声になる。

「もう少し、大きな声でハッキリと話して下さい。おや、あなた、どうも、顔色が悪いですね。気分でも悪いのですか?」

面接官のフェイクだった。沙貴は動揺した。ウンチの匂いも微妙に部屋に漂い始めている。

「あ・・いえ・・そんなことは・・・」

極度の緊張で、突然、吐き気がこみ上げてきた。午前中の食糞プレイで、客のウンチを完食した後、牛乳まみれで排出した自分のウンチも食べさせられたのだ。その後、全力疾走したため、胃がもたれ、、消化不良を起こしている。

「君、歯は毎日、ちゃんと磨いているかね?」

年季の入った面接官は、沙貴の歯が、まっ黄色なのを見逃さなかった。

「はい、もちろんです」

また、ギュルギュルと下腹部が鳴り、沙貴の顔に冷や汗が滲み出した。

(もうダメ・・・苦しい)

大量浣腸と、アナルバイブで緩み切った肛門から、プーッと音を立てて、屁が漏れた。

面接官が信じられない物を目の当たりにしたかのように顔をしかめる。面接中に放屁する学生など、滅多にいない。

「気分が悪いなら、医務室へ案内させましょうか?」

面接官が冷たく言った。その言葉は、事実上不合格を意味していた。

「いえ、大丈夫ですから!」

沙貴が必死に取りすがろうとした時、徐々に込み上げて来ていた吐き気が、とうとう抑え切れなくなった。

「オエエエエエーッ!」

沙貴は前のめりになり、床に、午前中に食べた胃液まみれのウンチを吐き散らした。

 

 第161話、花と豚(その3)

 

「今回のターゲットは、あれよ」

黒塗りのベンツの後部座席から、葉桜麗子(42歳)が、車窓の外を指さした。道路に面した大学のグラウンドの一画に設けられたテニスコートで、小麦色に日焼けした男子大学生がテニスをしている。白いテニスウェアと日焼けした肌が対照的なイケメンだ。

「星崎直也、法学部2回生、19歳、テニスサークル所属・・・」

助手席の桂木千穂(19歳)が、手元の資料に書いてあるプロフィールを読み上げた。

「あたしと同い年ね。葉桜組の前組長に有罪判決を言い渡した星崎裁判官の一人息子。本人も将来は、弁護士か、検察官を目指している」

「ふん、あの子の将来は、牡豚奴隷よ。一生、暗い地下室で、死ぬまで調教されるのさ」

麗子は、ぞっとするようなサディスティックな笑みを浮かべて呟いた。本来なら父親である裁判官に直接制裁を加えなければならないのだが、50代の中年を調教しても面白くない。そこで、ターゲットを、何の罪もない一人息子に変更したのだった。やがて、直也は、テニスの練習を終え、私服に着替えると、帰宅のため、駅に向かって歩き始めた。

「計画通りやるよ」

「わかりました、組長」

運転手の組員は、ベンツで、直也を尾行し、そっと傍らに停車した。

「星崎直也さんですね?」

麗子が、車窓を半分降ろして、声をかけた。

「はい、そうですけど・・・」

「お父さんが、事故に会いました。すぐ一緒に病院に来て下さい」

「ええっ!」

直也は、驚いたようだった。箱入り息子として育てられたため、他人を疑う事を知らないらしい。直也は素直に、開いたドアから、後部座席に乗り込み、麗子の隣に座った。若い男のかすかな汗の香りに麗子は興奮した。

(これから、毎日、思う存分調教してやるわ)

「父は、怪我をしてるんですか?」

「そうよ、重症よ。急がなくちゃ」

麗子はそう言いながら、クロロフォルムを染み込ませたハンカチを直也の口に押し当てた。

「うぐっ・・・」

直也は、抵抗する間もなく、眠りに落ちて動かなくなった。

「他愛ないわ。こんな古典的な方法にひっかかるなんて、この子、こんなので本当に裁判官になるつもりだったのかしら」

「根っからの、お坊ちゃんなのですね。調教し甲斐があります」

千穂も、若い獲物に、胸の高ぶりを抑え切れないようだった。

 

 ベンツは、葉桜邸に戻った。眠ったままの直也は、組員達の手で地下室に運び降ろされ、衣服をはぎ取られる。10代のすべすべした肌に麗子も千穂も涎を垂らさんばかりだった。

「この肌触り、たまらないわ」

麗子は、眠っている直也の体を撫で回し、チンポを弄んだ。

「ほら、起きな!いつまで寝てんだよ!」

千穂が、直也の顔に平手打ちを喰らわせた。直也は目を覚まし、驚く。

「あ・・・ここは、どこですか?お父さんは?あれ、僕、なんで裸なんだろ・・・」

「寝ぼけてんじゃねえよ。お前は騙されて、拉致されたんだよ!これから、お前はマゾ奴隷だ。」

「えっ・・・どういうこと?・・・」

「いい大学に通ってる割には、呑み込みの悪い、お坊ちゃんだな。あと2匹の奴隷を連れて来な」

麗子の指示で、配下の組員とレディース達が、調教済みの牡豚奴隷、武藤剛志(元弁護士、33歳)と古沢輝彦(元刑事、37歳)を連れてきた。二人とも、誘拐から数か月が過ぎ、かなり従順な奴隷に変貌している。

「新入りだ。お前達、二人がかりで、こいつを犯せ。マゾ弁護士は口に、マゾ警部はアナルにチンポを突っ込むんだ」

「はい、女王様」

二人の牡豚奴隷は、従順に答えると、怯える直也を押さえつけ、言われた通り、犯しにかかった。

「ちょっと・・・やめて下さい・・・何をするんですか・・・」

直也は抵抗しようとしたが、二人の屈強な牡奴隷に押さえ付けられた。サークルでテニスをしていたとはいえ、直也の体は華奢である。筋肉もほとんど付いていない。

「あ・・やめて・・・そんなこと・・・ふぐっ・・・」

剛志のチンポを押し込まれ、口を塞がれた。そして、バックからは輝彦の太い硬直したチンポが肛門に突き立てられる。初めての肛門性交で、ローションも塗っていないのだが、輝彦は、容赦なく力ずくで押し込んできた。

「むごっ!ふぐううううう!」

直也の顔が苦痛に引き歪んだ。肛門を引き裂かれる痛みだった。

「アハハハハ、男のお前にも、処女の痛みが、少しはわかったかい?」

麗子は、高らかに笑った。

「あぐ・・・あぐううう・・・」

輝彦が、腰を振り始めた。柔道や剣道で鍛えた輝彦の逞しい尻には、豚の焼印が無残に刻まれている。直也は、肛門の痛みに、口に押し込まれた剛志のチンポを、しゃぶるどころではなかった。

「女王様、この新入り、全然気持ちよくありません」

剛志が、告げ口をした。最近では、支配者たちに媚びるようになってきている。

「新入りだからね。フェラなんて生まれて初めてだろうし。猛特訓させるしかないね」

「ふごっ・・・ふごっ・・・!」

直也の目から涙が伝い落ちていた。

 

 輝彦が射精し、血まみれのチンポを直也の裂けたアナルから引き抜いた。剛志も、ヘタクソな舌技に、痺れを切らせて、自分の手でチンポをしごき、直也の口内に射精する。直也は放心状態だった。

「休んでんじゃないよ!これから、あたし達全員に、奴隷の挨拶をするんだ。足を舐めながらね!」

麗子、千穂を含め、10人以上のレディースがパイプ椅子に座って一列に並んだ。葉桜組の組員の一人が、奴隷の挨拶のセリフと手順を直也に説明する。気の弱い直也は、恐怖にブルブルと震えていた。

「早くしろ」

組員が、直也の裸の尻を蹴りあげた。

「は、はい・・・」

直也は、まず最初に、麗子の前に跪き、土下座をして、深々と頭を下げる。

「本日より、お世話になります、星崎直也です。ふつつか者ですが、早く、一人前の牡豚奴隷になるよう、誠心誠意皆様にお仕えいたします。どうか、厳しく調教して下さい」

もともと、頭がいいのか、さっき教え込まれたセリフをスラスラと間違えずに話す。

「頭が高いよ!もっと頭を床に擦り付けな!」

麗子のハイヒール踵が直也の後頭部を思い切り踏みつけた。ゴツンと音がして直也の額が床に打ち付けられる。

「忠誠の証に、足を舐めさせて下さい」

「許可してやる」

直也は、顔を上げると麗子のハイヒールの片方を捧げ持ち、おずおずと舐め始めた。他人の足を舐めるなど、生まれて初めての行為である。

「もっと、ちゃんと舐めな!」

ビンタが飛んだ。

「は、はいっ!」

直也は、思いきり舌を伸ばし、ヒールの踵から底、つま先を余す所なく舐め上げて行った。もう片方のハイヒールも同様に時間をかけて舐め上げる。

「女王様、靴は奇麗になりました。次は、おみ足を舐めさせて下さい」

「仕方ないね。ちょっとヒールの舐め方が不満だけど、初心者だから大目に見てあげるわ」

直也は、麗子のヒールを、両手で脱がせ、裸足の親指を口に含んだ。甘酸っぱい汗の匂いが口に広がる。

「どう?美味しいかい?」

「え・・ああ・・・その・・・」

「はっきり言いなさいっ!どんな味がするの?」

またビンタが飛んだ。

「しょっぱいです、女王様」

「指と指の間もしっかり舐めるのよ」

かなりの美女とはいえ、42歳の麗子の素足は、所々が角質化していた。爪もマニキュアを塗っているが、微妙に変形している。直也は吐き気がしたが、恐怖のため、必死に舌を這わせ続けた。両足全部の指をしゃぶり、足裏も舐め上げて、ようやく麗子への奉仕が終了した。約20分かかった。次は、千穂の足を舐める番だった。

「本日より、お世話になります、星崎直也です・・・・」

再び、土下座の挨拶からの繰り返しだった。これを残るレディース全員に行うのだ。

「疲れたからって、手を抜くと許さないからね!」

「はひ、はひ・・・心をこめて舐めます・・・」

直也が、全員の足を舐め終えたのは3時間後だった。先に挨拶を終えた麗子や、レディース達は、暇を持て余し、一旦地下室を出た後、上の階で食事をしてから、また戻ってくる。ようやく、満足のいくまで全員に忠誠の儀式を済ませた直也はクタクタだった。舌と顎が痺れ、唾液を流し続けたために喉がカラカラだった。

「立て!起立、気を付け!」

「はいっ!」

直也は素直だった。今までの人生で、あまり人に逆らうという事がなかったらしい。この少年は、従順なマゾ奴隷になりそうだ、と麗子は思った。麗子はニヤニヤしながら、直立不動で立った直也のチンポを鷲掴みにする。それは、屈辱を与えられ、固く大きくなっていた。

「あらあら、こんなになっちゃって。お前、感じているのかい?元々マゾの素質があるんだね」

「・・・・」

直也は、どう答えていいか判らない。そもそも、喋ろうにも舌と顎が痺れて、なかなか動かないのだ。

「おい、豚奴隷!褒めてやってんだ。礼くらい言いな!」

「ありがとうございます・・・女王様・・・」

喋ろうとすると、顎の筋肉が痙攣をおこしそうだった。

「シコシコしな」

「は・・・・?」

「お前がいつも妄想しながらやっている事を、今ここでやるんだよ」

「はい・・・」

十数人の女の熱い視線と、数人の組員の冷めた視線が注がれる中、直也は右手でチンポを握りしめ、オナニーを始めた。

「もっと、足を広げて。喘ぎ声も出せ」

「あん・・・あん・・・ああああん・・・」

直也は、両足をガニ股に広げて中腰になり、女のような声を出した。

「声が小さい!もっと気合を入れろ、気合を!」

麗子の右手の乗馬鞭が飛んだ。ピシリと白い尻に赤い筋が入る。

「うっ・・・あああん!ああああん!」

「もっと、いろいろ言ってみな。あたし達を喜ばせるような言葉をさ。お前、有名大学の学生の癖にボキャブラリが貧困なんだよ!」

「気持ちいいです・・・チンポが気持ちいいです・・・僕のシコシコしている恥ずかしい姿を女王様方、存分に御覧になって下さい・・・」

直也の哀れな姿に、レディース達がゲラゲラと笑った。

「そうそう、そんな感じよ。判ってると思うけど、イク時はイクって叫べよ」

「はいっ・・・あ、ああ、イク!イクうううう!」

ピュッピュッと白い液が激しく飛び散った。19歳だけあって、1メートル程先の床まで飛んだ。

「おい、床が汚れたじゃないか。こういう時は、どうするんだい?」

「え・・・その・・・」

「お前の舌で、舐めて綺麗にするんだよ」

「はいっ!」

直也は、弾かれたように、床に四つん這いになると、舌を伸ばして自分の精液を舐め取り始めた。

「フフフフ・・・従順な奴隷ね。最初の頃のお前達とは大違いだわ」

麗子は、剛志と輝彦の方を見て言った。二人は、神妙な顔つきで、次の命令まで待機している。最近では、すっかり大人しくなった二人の牡豚奴隷は、反抗的な態度も消え、なんとなく、二人とも、悲しげなマゾ顔になってきていた。

 

 翌朝、直也は、薄暗い地下室で目を覚ました。全裸のまま開脚台に固定され、M字開脚の姿勢で眠っていたのだ。明け方近くまで泣き腫らしていたため、目蓋が赤く腫れ上がっている。向かい合った位置には、先輩奴隷の剛志と輝彦も同じ姿勢で寝かされていた。

「うっ、うっ、うっ・・・なんで、僕がこんな目に・・・」

再び、涙が込み上げてきた。やがて、直也のすすり泣く声で、剛志と輝彦も目を覚ました。

「君、名前は?」

元弁護士の剛志が、落ち着いた声で尋ねた。

「星崎達也です」

「星崎・・・そうか、もしかして君のお父さんは、裁判所の・・・」

「はい・・・父は、高等裁判所の裁判官です」

「くそっ、葉桜麗子め。夫の有罪判決にかかわった人間を誘拐して復讐しているんだ!」

元刑事の輝彦が、悪態をついた。

「僕、どうなるんでしょうか?」

直也の問いかけに剛志が、暗い表情で答える。

「俺達3人が失踪したので、警察が動いている筈だ。警察は、俺達3人の共通点に気付いて、いずれ、ここにも捜査の手が伸びてくるに違いない。それまでは、なるべく奴らを怒らせず、従順な奴隷になったフリをして、積極的に調教を受けるんだ。下手に逆らおうとすると、一生消えない傷を体に負わされたり、最悪の場合は、命を落とすかもしれない」

剛志は、そう言いながら、輝彦の方へ、顎をしゃくった。輝彦は、反抗的な態度を、なかなか改めようとしなかったため、尻に焼印を押されたり、人間サンドバックにされたり、凄惨な目に合っている。3人が話し込んでいると、ドアが開いて、レディース数人が入ってきた。

「起きな!朝だよ」

レディースの一人、島田亜由美(18歳)が、無防備な直也のチンポを靴底で踏みにじりながら言った。

「あうっ!」

「新入りには、特別にシャワーを浴びさせてやる。今日は、たっぷりと調教されるらしいからね。念入りに体を洗ってやれって、麗子さんに言われてるんだ」

直也は、拘束ベルトを外され、開脚台から降ろされた。一晩中同じ姿勢だったため、手足の筋肉が硬直していた。

「歩け、モタモタするんじゃねえ」

直也は1階にあるバスルームへ連れて行かれた。大理石で出来た広く豪華な浴室である。レディース達も裸になり、シャワーを浴びせながら、石鹸まみれで、恥ずかしがる直也の体を弄び始めた。

「あーら、オチンチンが、固くなっちゃって。奴隷のくせに興奮してるの?」

「生意気だよっ」

「御尻の穴も洗いましょうね」

「ヒッ!」

レディース達の指が遠慮なく、泡だらけの直也の肛門に指を突っ込み、チンポを捏ね繰り回した。顔を舌でベロベロと舐め回している女もいる。

「あ・・ああ・・ああ・・・」

直也は、全身を女達の前にさらけ出し、為すがままにされて、喘ぐだけだった。亜由美は、直也の乳首を捻りあげたり、胸に爪を立てたりしてサディスティックな欲望を満たしていた。

「穴という穴を洗ってやるよ」

直也は、鼻の穴や口の中にも指を突っ込まれ、捏ね繰り回された。

「よーく、洗っとかなきゃね。今日は、一日中、お前は、あたし達に輪姦されるんだから」

バスルームから出された直也は、ドライヤーで乾かした髪の毛を、きちんとセットされ、香水をかけられた。

「男前になったじゃないの、イケメン君。お前、今まで、この顔で、いったい何人の女をたぶらかして来たんだい?」

「僕・・・まだ、女の人と付き合った事ないんです・・・」

「へえ。チェリーボーイかよ。じゃあ、あんたの童貞をあたしが頂くとするか」

亜由美は、コンドームを直也のチンポに被せ、その場に押し倒すと、黒ずんだオマンコを

擦り付けてきた。亜由美の方は中学時代から、援助交際や逆ナンパを、毎日、当たり前のように繰り返しているので、男性経験は、100人を超えている。

「あたしが、お前の初めての女ってわけだ」

亜由美の割れ目はすでに、溢れんばかりの愛液でヌルヌルになっており、騎乗位で腰を下ろすと、抵抗もなくスッポリと入った。

「この突き上げてくる感じ、たまんねえ」

「あたしもやりたい」

別の女が、直也の顔に跨り、ヌルヌルのオマンコを口に押し付けてきた。

「口でイカせろ」

命令された直也は、舌を伸ばし、割れ目を舐め上げる。

「あたしも」

「あたしも」

さらに二人の女が、直也の両側にしゃがみこみ、それぞれ、直也の右手と左手を自分のオマンコにあてがった。

「あたし達は、手でイカせてよ」

「う・・むぐぐぐ・・・・」

顔をオマンコで塞がれた直也は、返事も出来ずに、息も絶え絶えに呻いた。呼吸困難なのだが、一時も両手と舌を休める事は許されず、腹の上では、亜由美が喘ぎながら腰を上下させている。4人の女に同時に凌辱されながら、直也は、快楽混じりの恐怖と、酸欠で気が遠くなりそうだった。

 

 どうにか、4人の女をイカせ終わった直也に、朝食が与えられた。

「食いな」

亜由美が、ドッグフードの缶を開け、無造作に中身を床に落とす。そして、それをサンダルの底でグチャグチャなるまで踏みにじった。

「・・・・」

尻ごみしている直也の背中に、別の女が鞭を振り下ろす。

「どうした?お前の朝飯だ。早く食えよ」

直也は、仕方なく四つん這いになり、泣きながら食べた。

「おら、特製のドリンク剤入りのオシッコだ」

亜由美が洗面器に放尿し、その中に数本のドリンク剤をチャンポンにして特製ジュースを作った。

「今日は、過酷な調教になるだろうからね。何回でもイケるように精力をつけておかなきゃ」

「ひっ!」

直也は、吐き気のする特製ジュースを飲むしかなかった。拒めば、鞭による制裁が待っている。用意された朝食を全て、最後の一カケラ、一滴まで奇麗に舐め取った直也は、麗子や千穂達が待つ、調教室へ連れて行かれた。

「お待たせしました、組長」

亜由美が、直也を引き渡すと、麗子は、直也の裸の体を撫で上げ、顔を近づけて、クンクンと匂いを嗅いだ。

「いい匂いだね」

「はい、ラルフ・ローレンの香水をたっぷり振りかけておきました。チンポにもアナルにも」

「フフフ、牡豚には、もったいないわね」

麗子は、直也の顔に挨拶代わりに一発ビンタを喰らわせると、ルームランナーに乗るように命じた。

「まずは、体力作りからよ。お前も先輩の牡豚奴隷のように、筋肉ムキムキの体にしないとね」

麗子は、直也の亀頭に糸を巻き付けると、その先を2メートル程伸ばし、ルームランナーの前部にある支柱に繋いだ。

「命掛けで、走るのよ。もし、立ち止まったり、走るスピードが落ちたら、どうなるか判ってるわね」

直也は、恐怖に凍りついた。そうなれば、チンポが引き千切れてしまう。

「そんな・・・お願いです・・・許して下さい・・・」

「駄目に決まってるだろ。ほら、スタート!」

ルームランナーのスイッチが入れられた。直也は、走るしかない。麗子はパネルを操作し、徐々にスピードを上げていった。

「ハア・・・ハア・・・ハア・・・もう止めて下さい・・・・限界です・・・」

「ふざけんな!まだ、始まったばかりだろっ!」

麗子は、乗馬鞭を手に取り、汗だくの直也の尻や背中を叩き始めた。鞭が振り下ろされる度に、汗が飛び散る。直也は、鞭の痛みよりも、立ち止まるとチンポが千切れてしまうという恐怖で、一瞬たりとも気を抜くことが出来ず、感覚が麻痺し、苦痛はあまり感じなかった。

「ああ・・・苦しい・・・止めて・・・止めて・・・」

直也の口から洩れる情けない叫びに、レディース達は、ゲラゲラと笑うばかりだった。

 

 ルームランナーの特訓を無事やり終えた直也は、短い休息の後、麗子とレディース達に輪姦された。連続射精して、勃起しなくなるとドリンク剤入りのオシッコを強制的に飲まされる。最初は、コンドームを被せて犯していた女達も、直也が何度も射精して、精液が薄まり、妊娠の危険がなくなると、ゴムを外し、生で挿入させ始めた。

「少し・・・少し・・・休ませて・・・もう、チンチンの感覚がないんです・・・」

「うるせえ、あたしは、まだ一回しかやってねえんだよっ」

ここまで来ると、もう地獄だった。何の快楽もなく、射精する際も、チンポが弱々しく痙攣するだけである。しかし、女達はお構いなく直也を犯し続ける。

(ああ・・・なんで、僕がこんな目に・・・お父さんの判決が、どうのこうのと言ってた・・・でも、そんなの僕が悪いわけじゃないのに・・・)

「もっと、反応しろよっ!面白くないだろ。喘げよ!」

グッタリとしてきた直也に、容赦なく女のビンタが飛ぶ。気を失う事すら許されない。

「ああっ・・・ああ・・・女王様・・・お許し下さい・・・」

「アハハハハ!お前は、豚だ。セックスするしか能のない、卑しい豚野郎だ!」

「僕・・・僕は・・・豚です・・・」

輪姦の次は、チン振りダンスの猛特訓だった。ガニ股で中腰になり、小刻みに腰を動かす卑猥なダンスだ。少しでも動きがぎこちないと、クタクタになって感覚の麻痺した下半身に、容赦なく鞭の嵐が浴びせられる。ラジカセから流れるサンバのリズムに合わせて、チンポを振り続けなければならない。

「もっと、小刻みに腰を突き出せ!」

「そうそう、もっと激しく!」

「もっと、卑猥にだよっ!」

「はい・・・女王様!」

直也の恥辱生活は、始まったばかりだった。

 

第162話、グランドキャニオン

 

工藤明日香(32歳)は、ベッドの中で目を覚ました。悪夢を見ていたために全身汗びっしょりだった。

(あ・・・ここは、グランドキャニオンの地下要塞・・・)

明日香が、ここに連れて来られてから3年が過ぎている。しかし、いつも、目覚める度に自分がどこにいるのか確認するまで時間がかかる。以前の過酷な生活が明日香の心にトラウマとなって深く根を降ろしているのだ。

(さっき、見ていた夢は、惑星ア・ムーでの戦い・・・敵のサイボーグに麗美と渚沙が倒された・・・そして健吾も・・・)

それは、明日香のサイボーグ戦士としての最後の戦いだった。その後、負傷した明日香はサイボーグ戦隊のリーダーを外され、雑用サイボーグとしての人生を送ることになる。今も、生身の上半身に刺青されたメイド服の模様は、その時カラーリングされたものだった。

(そろそろ、起きなきゃ。今日は、朝から会議のある日だわ)

明日香は、起き上がると下半身から伸びている電源コードを壁のコンセントから引き抜いた。下半身の機械部分を動かすバッテリーを夜の間に充電しておいたのだ。明日香は、左腕のマジックハンドでクローゼットからジャケットを取り出し、上半身に羽おった。明日香の衣服はそれだけである。生身の部分は頭部と上半身だけであり、他の部位は衣服を必要としないのだ。明日香は、錆がひどくなってきている機械部分をなるべく見ないようにし、プライベートルームを出た。

「お早う、明日香」

会議室で、明るく声をかけてきたのは、同じ日本人の城山朋子(31歳)だった。彼女も宇宙人に改造され、化け物のような姿になっているが、暗い明日香と違って、いつも明るく、溌剌としており、明日香は彼女に会う度に生きる勇気を与えられるのだ。

「おはよう、朋子」

明日香は、朋子の股下に逆さまになって生えている顔に会釈した。

「全員そろったか?」

会議の進行役は、基地司令官のコールマン将軍だった。会議の参加者には、CIAのリチャード・ファーマー、科学者のマイケル・パッカード博士や、エスパー部隊のバーバラ・サンダースらも参加している。

「お早う、では、会議を始める。いよいよ、ミッション5の実施が目前に迫ってきた。ネオガイア星人から奪った宇宙戦艦の解析も、ほぼ終わり、我々の手で飛ばす事も、おそらく可能だろう」

全員がどよめいた。

「しかし、だ。この宇宙戦艦を使って、闇雲に反撃を仕掛けたところで、結果は2005年の戦いの二の舞になる公算が高い。つまり、奇襲作戦で地球上の敵戦力を全滅させても、やがて、やつらの母星から飛来した援軍に地球が席捲される結果になる」

2005年の多国籍軍による反撃作戦では、ネオガイア星の本国艦隊によって日本が支配下に入ってしまった。

「我々は、敵の母星がどこにあるのか、また宇宙の情勢がどうなっているのかもハッキリとは判らない。ミス・クドウの情報では、宇宙には様々な種族がおり、宇宙海賊のようなものも存在するらしい。とすれば、ひょっとして非常に少ない可能性ではあるが、我々に味方してくれる、善意の宇宙人も存在するかもしれん」

明日香は、その言葉に反発を感じた。

(宇宙人に善いも悪いもないわ。全て自分の種族の利益しか考えていない。こんな未開の星の住人を助けて、彼らに何のメリットがあるって言うの)

しかし、明日香は、自分の気持ちを言葉にして表す事はなかった。彼女の心は死んでいるのだ。会議で自己主張するほど前向きには、なれなかった。

「我々は、『ラスト・ホープ』と命名した、この宇宙戦艦を使って、ネオガイア星人と全面対決する前に、宇宙探査に乗り出そう考えている」

先程よりも大きなざわめきが湧き起こった。それぞれが興奮して各所で議論が始まった。

「敵の母星に直接攻撃をかければいいんじゃないか?」

「いや、それよりも宇宙にも国連みたいな調停機関があるかもしれない。そこへ訴え出れば、なんとかしてくれるのでは」

「宇宙海賊を味方につけるってのはどうだ?」

明日香は、彼らの議論を冷めた気持ちで聞き流していた。

(宇宙は、ネオガイア星人よりも、もっと残忍なグレイの支配下にある・・・宇宙海賊なんかに援助を頼めば、地球は身ぐるみ剝がれて、草木一本残らない・・・ましてや、単艦で、ネオガイア人の母星を攻撃するなんて、死にに行くようなものよ・・・)

明日香は、銀河警察の一員として宇宙を飛び回っていた経験から、宇宙情勢には詳しかった。その情報はすでに、アメリカ軍部に全て提供してある。それでも、実際に宇宙に出たことがない彼らは楽観的に物事を考えている。知らないとは、恐ろしい事だ。彼らが、口々に議論をしていると、いきなり、警報のサイレンが響き渡った。

「どうした?」

コールマン将軍が、内線電話で基地の管制室に問い合わせた。

『侵入者です。基地内部に何者かが侵入しました。数、目的は不明です』

「わかった。私も、すぐ、そちらへ行く。諸君、会議は一旦中止だ。各自、部署へ戻ってくれ」

明日香は、胸騒ぎを感じた。こんな事は、この基地に来て以来、3年間で初めてだった。

 

 ゴキブリ女こと、羽島菜月(22歳)は、カサカサと音をたてながら、地下要塞の通路を高速で移動していた。口元にはセンサーである二本の鬚を生やし、背中には、甲殻質の黒光りする羽が付いている。生身の部位である両肩には、ハーケンクロイツの刺青が彫らりこまれていた。

「ヒー!ヒー!」

ゴキブリ女の通った後を、鉤十字団のザコ戦闘員数十人が必死に追いかけていく。改造手術を受けていない彼らは、鍛えられているとはいえ、ただの人間以上のスピードでは移動出来ない。

「おめーら、遅いんだよっ!もっと早く走れよ!」

「ヒー!ヒー!」

ゴキブリ女の罵声に、ザコ戦闘員達は汗だくになって走った。木綿素材のような戦闘服が、汗でピッチリと体に張り付いている。

「止まれ!撃つぞ!」

彼らの前にアメリカ兵が立ち塞がった。止まるはずもないゴキブリ女に自動小銃の銃弾が浴びせられるが、背中の甲羅が全て弾き返してしまう。後から追い付いたザコ戦闘員達が短剣の先から発せられる光線で反撃し、アメリカ兵を焼き殺した。

「この下だよ」

ゴキブリ女は、口元のセンサーをヒクヒクと動かして言った。彼らの狙いは、地下格納庫の大型宇宙戦艦なのだった。総統ヒトラー3世から直接、その宇宙戦艦を奪うように命令されてきたのだ。

「下がって」

ゴキブリ女は、ザコ戦闘員を安全な位置まで下がらせると、いきなりウンチをした。黒々とした大便がひり出され、トグロを巻く。そして陰毛を抜いて捻り合わせ、導火線として突き刺すと、ザコ戦闘員の一人にライターで火をつけるように命令した。

「ヒー!」

導火線に火がついた。しかし、短すぎたのか、着火したザコ戦闘員が逃げる前に爆発した。

「ヒーッ!ギャーッ!」

「また、ミスっちゃった。ザコ戦闘員、殉職、一名と・・・」

ともあれ、床に大穴が開いた。ザコ戦闘員達は、仲間が一人、他愛もない理由で死んだ事に肝を冷やしていたが、態度には出さない。こういうのは、鉤十字団では日常茶飯事で、犠牲者が自分以外の誰かだった事に、心の中で感謝するだけだった。

「あれか、宇宙戦艦ってのは・・・」

大穴の下は、巨大な地下格納庫だった。いくつものクレーンに囲まれ、金属の山のような流線型の宇宙船が鎮座していた。

「行くよっ、付いてきな!」

ゴキブリ女は、背中の羽を広げると、穴にスルリと飛び込んだ。ブーンという羽音を立てて、ゆっくりと降下していく。ザコ戦闘員達は、空を飛べないため、用意してきたロープを垂らし、何人かが端を持って支え、ロープを伝って格納庫へ下りるのだ。最終的にロープを支えていた何人かは、物理的に考えて、下へは降りられないため、その場に取り残され、アメリカ兵に追い詰められた揚句に死ぬ運命が待っている。鉤十字団では、作戦堆遂行のための、ザコ戦闘員の犠牲は当たり前の事として考えられている。格納庫ではアメリカ兵と、降りてきたザコ戦闘員の間で、激しい戦闘が始まった。

「ヒー!ヒー!」

「なんだ、こいつら。アメリカンコミックみてえだ」

「ああ、さっき見ていた、パワーレンジャーの再放送のまんまだぜ」

「ヒー!ヒー!」

「無駄口叩くな、死ぬぞ!」

ザコ戦闘員とアメリカ兵の双方に、多数の死傷者が出る中、ゴキブリ女が、アメリカ兵の上空を飛行し、毒ガス入りのオナラを散布して回った。

「うっ、臭え!なんだこりゃ」

「く、苦しい、息が詰まる・・・」

戦っていたアメリカ兵が銃を落とし、次々と絶命していった。

「お前達、今のうちだ。行け!行け!」

ゴキブリ女の命令で、ザコ戦闘員達が無謀な突撃を始めた。この作戦は、総統から直々に命令されたもので失敗は許されない。ゴキブリ女にとって、ザコ戦闘員の死者がいくら出ようとも構わなかった。

「ヒー!ヒー!」

ザコ戦闘員は、ドイツ人以外の人種の、誘拐されてきた人間達である。毒薬を打たれ、解毒剤と引き換えに忠誠を誓わされている逃げ道のない人間達だ。

「ヒー!ヒー!」

アメリカ兵の銃弾にザコ戦闘員の屍の山が築かれたが、仲間の死体を踏み越えて、後続のザコ戦闘員が、宇宙戦艦のハッチに迫る。生き残ったアメリカ兵がハッチを閉じようとするが間に合わない。ザコ戦闘員の先頭集団が宇宙戦艦内部になだれ込もうとした時、宇宙戦艦のハッチの影から一つの人影が現れた。

「ヒー!何だお前は?」

人影は、工藤明日香だった。明日香は、無言で左腕のマジックハンドに握った日本刀を振るった。鮮やかな腕前で、数人のザコ戦闘員の体が切断され、倒される。次に右腕に仕込まれた機関銃を掃射すると、宇宙戦艦のハッチに押し寄せていたザコ戦闘員の大半が射殺された。

「チッ、お前、サイボーグか?」

ゴキブリ女が、明日香の機械化された下半身と両腕を見て言った。明日香の全身から醸し出される鬱蒼とした暗いオーラと、何度も死線を潜り抜けた歴戦の勇士のみが持つ気迫にザコ戦闘員達は、気押され、攻撃を尻ごみしている。

「何やってんだ、お前ら。相手は一人だ、さっさとかかれ!」

ゴキブリ女に叱責され、我に返ったザコ戦闘員達は、明日香に、短剣の先を向け、光線を一斉掃射した。明日香は、機械化された下半身の瞬発力で、ガチャリと音を立てて素早くハッチの後ろ側に隠れ、光線をかわす。そして次の瞬間、素早く戦艦内部を移動して、別のハッチから頭と右腕の機関銃の銃口だけを出し、正確な射撃でザコ戦闘員を撃ち殺していった。

「糞!たかがポンコツサイボーグ1台のためにっ!」

ゴキブリ女は、明日香に向って突進した。四つん這いでカサカサと床を移動するため、背中の甲殻質の羽は、明日香の撃った銃弾を全て跳ね返してしまう。機関銃が役に立たない事を悟った明日香も、宇宙戦艦のハッチを飛び出し、日本刀を振りかざしてガチャガチャとゴキブリ女を目がけて突進してきた。

「糞糞糞糞糞!」

「・・・・!」

改造人間とサイボーグが激突し、ぶつかり合った。明日香の日本刀がゴキブリ女の背中に振り下ろされたが、黒光りする羽を切り裂くことが出来ずに、逆にポッキリと折れてしまう。ゴキブリ女は、口から毒ガス入りの口臭を明日香に吹きかけた。

「うう・・・」

明日香は眩暈がし、倒れそうになる。ゴキブリ女は、明日香に機関銃を撃たせないよう、右腕のマジックハンドを逆向きにひねり上げ、銃口を明日香本人の顔に向けさせる。

「撃てるもんら撃ってみろよ。糞、これを喰らって死にな!」

ゴキブリ女は自分の肛門からウンチを捻り出し、明日香の醜い傷痕だらけの顔になすりつけた。

「うぐ・・・」

明日香は、毒ガスの効果で気が遠くなりそうになった。

(健吾!あたしに力を頂戴・・・・)

明日香は、薄れゆく意識の中で、遥か昔に死んだ元恋人の名を叫んだ。取り返しのつかない肉体を晒し、今さら、死ぬのは怖くなかったが、戦いに負けるというのはサイボーグ戦士としてのプライドが許さなかった。

「化け物!お前なんかに負けないっ!」

明日香は、叫ぶなりゴキブリ女の首筋に、欠けた歯で噛み付いた。財銭教授の改造手術で、強化されていない体操選手、羽島菜月のままである生身の部分を攻撃されたゴキブリ女は、断末魔の叫びを上げた。

「ぎゃあああああああ!」

明日香のマジックハンドを抑えているゴキブリ女の手が緩む。明日香は、このチャンスに機関銃の銃口をゴキブリ女の体に向け、至近距離から斉射した。

「あぎゃああああ!」

無数の銃弾を生身の裸体に受けたゴキブリ女は、後方へ弾き飛ばされ、仰向けに引っくり返って血まみれの四肢をバタバタさせた。

「糞・・・退却だ・・・ザコ戦闘員・・・あたしの体を運べ!」

「ヒー!」

生き残っているザコ戦闘員は、わずかに3人だけだった。3人は、重傷のゴキブリ女を担ぎあげ、逃走を企てる。毒ガスに犯された明日香に、彼らを追撃をする気力はなく、後は、基地の警備兵に任せるしかなかった。

(勝ったわ、健吾・・・あたしは、これからも戦い続ける。いつか力尽きて、あなたの元へ行く日まで・・・)

機械化され、生殖能力も、女としての美貌も失った明日香にとって、戦う事と死ぬ事以外に、生きる目的は何も残されていないのだった。

 

 瀕死の重傷を負ったゴキブリ女こと羽島菜月は、どうにか地上にたどり着いた。途中アメリカ兵との銃撃戦で、ザコ戦闘員2人が死んだ。

「ハウニブ[、あたしを回収して!」

ゴキブリ女は、体内に埋め込まれた通信機で、上空に待機していた円盤に指示を出した。レーダーに映らないようにステルスコーティングされたナチス製の円盤機がゆっくりと降下してくる。反重力エンジンで飛行する、その円盤機は、全体が迷彩塗装され、ハーケンクロイッツのマークが描かれていた。南極の地下遺跡から発掘した技術を基に作られたオーバーテクノロジーの産物だ。

(任務は失敗した。例え生きて帰っても、どんな制裁を受けるか判らない…それにしても、あのサイボーグ女、超むかつくわ!糞糞糞糞!)

ゴキブリ女は、最後の一人のザコ戦闘員を踏み台にしてハウニブ[のハッチによじ登りながら、唾を吐き捨てた。アメリカ軍の高射砲が円盤機を狙って撃ってくる。

「早く出しなさい!」

ゴキブリ女は、自分がハッチに入ると、すぐに発進命令を出した。一秒を争うため、最後の一人のザコ戦闘員は地上に置き去りである。ハウニブ[が雲間に消える際、地上に残されたザコ戦闘員が、アメリカ軍の機銃でハチの巣にされる様がモニターで見えた。

 

戦闘後、治療を受けた明日香は医務室のベッドに横たわっていた。毒ガスの影響で、しばらくは体を動かせないらしいが、命に別条はないらしい。今回の戦闘で、明日香のサイボーグ戦士としての評価が、アメリカ軍内で上がったと、見舞に来た城山朋子に告げられた。

「コールマン将軍が感謝していたわ。地球で唯一の宇宙戦艦『ラストホープ』を守ってくれたって」

「そう」

褒められても明日香には、何の感慨もわかなかった。心が死んでいるのだ。

(あれは、ラストホープじゃない・・・ネオガイア星宇宙軍の高速巡洋艦『スパルタ』だ。昔、健吾とあたし、それに渚沙や優香、麗美が宇宙を駆け巡った船・・・みんな、今も生きているのかしら)

今の明日香に、知る術はない。でも、あの宇宙戦艦で宇宙に出れば、いつの日にか再び、死んだ健吾は別として、彼女達の消息を掴めるかもしれない。やがて明日香は、ウトウトと眠りに入った。その夜は、惑星ゴルゴーンでの機械生命体との激しい戦闘を思い出して、悪夢にうなされるのだった。

 

第163話、伊500型潜水艦訪欧記

 

1943年5月。横須賀を出港した伊500は、シンガポールを経由し、インド洋へと出た。シンガポールまでは比較的、日本の制海権が保たれていたが、インド洋から大西洋にかけては、盛り返してきた連合国側に制海権が戻ってしまっている。そのため伊500は、昼間は海中を進み、夜間だけ海上に出て新鮮な空気を補給し、スピードを上げて距離を稼ぐのだった。

「これが、折り畳み式水上機『晴嵐』の試作機です」

伊500の艦長、田辺中佐が、千鶴に狭い格納庫を案内して説明した。この鬚面の艦長は、艦内で唯一の女性である千鶴に下心を持っているようで、暇に明かせては、しょっちゅう千鶴のキャビンを覗きに来ている。男ばかりの潜水艦勤務で相当、溜まっているのだろう。

「伊500型潜水艦が、量産されれば、この『晴嵐』を使ってアメリカ本土を爆撃することも不可能ではありませんよ」

「まあ、頼もしい。潜水艦乗りの男性って、素敵ですわ」

千鶴は、心にもない、お世辞を言った。千鶴も、単調な潜水艦での生活に退屈しており、艦長をからかって気晴らしをするくらいしか、やる事がなかった。

(抜いてあげようかしら)

千鶴は、顔を赤くして喜んでいる田辺艦長に、自然な動きで体を押し付けた。

「ま、まあ、それ程でも・・・」

「もし、よろしければ、二人きりで、ゆっくりお話がしたいわ」

「で、では、艦長室で・・・」

田辺艦長は、ギクシャクしながら千鶴を案内した。潜水艦勤務の田辺は、自分の妻にも長く会っておらず、ましてや慰安婦以外の若い女性と接する機会などゼロに等しかったのだ。1時間ほどして、千鶴が、艦長室から性欲を満たして出てくると、連絡口では、山川桃次郎が苦笑いをしていた。

「あんた、とんでもない女だ」

「いいじゃない、別に。減るもんじゃないし。あたし、500年前のコロンブスの航海の時は、船団の男全員の性欲を順番に処理して上げたのよ」

「ふん、また、そんなホラ話を・・・」

「コロンブスの時代から、まだたったの500年しか経っていない。それなのに、あの時発見した大陸が、今や大戦の趨勢を左右する世界最強の超大国だなんてね。歴史が、だんだん、先に進むほど加速しているのを感じるわ」

「そんなこと言われても、僕はこの時代しか知らないんでピンときません。この世に生まれて、まだ、たったの32年しか生きていませんし」

桃次郎は、皮肉っぽく言った。自分が、この誰とでもセックスをする汚れた女の血を引いているとは、なるべく思いたくなかった。

 

 伊500は、無事インド洋の中継地点であるルミナス諸島にたどりついた。表向き中立を保っている、この群島国家は、親独派と親英派が対立しており、島の一画に、ドイツのUボート基地が秘密裏に設営されている。現在の国王は親独派のヘンリー4世だった。

「この島には、補給のため1週間滞在するそうです。どうですか、久し振りにシャバの空気を吸いに行きますか?」

桃次郎は、千鶴を誘って首都パールシティの市街に出た。イギリス風の建築物が並ぶ、小さいが上品な町だった。

「ボンジュール、マドモワゼル・ヒサイシ」

いきなり、千鶴は声をかけられ、振り向くと、そこには思わぬ人物が立っていた。

「ミッシェル!どうして、ここに?」

「僕には、予知能力があるのでね。あなたがここに来るのは判っていたのですよ」

20代の白人青年が立っていた。御洒落なアロハシャツとサングラスを身に付けている。

「誰ですか、この人は?」

初対面の桃次郎は、千鶴に囁いた。

「ミッシェルよ。フルネームは、ミッシェル・ド・ノストラダムス。1万歳のアトランティス人よ」

千鶴の紹介に、桃次郎は呆れ果て、無言で押し黙ってしまった。ミッシェルは、桃次郎を、宇宙の深淵を探るような眼で観察した。

「この人も、あなたの子孫ですか。そう言えば、ついこの前、ロンドンでも別の子孫に会いましたよ。戦争で片足を無くされて困っていたので、義足をプレゼントして差し上げました。名前は確かデヴィット・マーダー・・・覚えておいて下さい」

千鶴は、その名前を心に刻み込んだ。予知能力を持ち、歴史を操る事の出来る男の言葉は、その一言一句が重要だった。ミッシェルは言葉を続けた。

「あなたの事がどうも気になってね。実は、この島にもアトランティスの遺跡があるのです。それもアトランティス時代にかなり重要な役割を果たしていた施設の残骸です」

千鶴と桃次郎は、ミッシェルに誘われるままに、彼の借りてきたレンタカーに同乗し、町外れへと向かった。古代文字が刻まれた粘土板が多く出土するという発掘現場近くの岩山に案内された。

「この辺に立っていて下さい」

ミッシェルはポケットからリモコンのような装置を取り出しスイッチを入れた。すると3人の姿は虹色の光に包まれ、かき消された。

 

 3人が実体化したのは、装置類がびっしりと並んだ管制室のような場所だった。

「な、何だ、今のは!」

桃次郎は、珍しくうろたえていた。瞬間物質移送機を生まれて初めて体感したのだ。

「ここは、バベルの塔の管制室です。オリハルコン製の機器類は、塔の崩壊後、1万2000年経った今でも、完璧に作動します。ただし、肝心のコントロールするべき塔自体が、今は、ありませんがね」

「バベルの塔?あの旧約聖書に出てくる、天まで届くという伝説の塔が、アトランティス時代に実在したの?」

「そうです、まさに天まで届いていました。上空36000キロの静止軌道までね。宇宙船を使わず、安いコストで物資を大気圏外まで運ぶための軌道エレベーターです。しかし、このバベルの塔の完成が最終的にアトランティス人を増長させ、宇宙人グレイの怒りを買ったのです」

「そして、全面戦争になり、バベルの塔は、破壊されたってわけね」

「そう。我々の文明は徹底的に破壊され、石器時代へと戻された。塔をめぐる最後の戦いの余波で、地軸は変動しアトランティス大陸は氷に閉ざされてしまった。この時、マンモスやサーベルタイガーなどの多くの動植物が絶滅し、地球上の全人口の99パーセントが死滅しました。もう一つの文明の中心地だった太平洋のムー大陸は沈没し、避難民の一部が逃れた東アジアでは、ムーは無を意味する言葉の語源となった・・・」

いつも涼しげなミッシェルの顔に、珍しく苦渋の表情が浮かんだ。

「あなた、宇宙人が憎くないの?」

千鶴が問いかけた。

「さあ、問題は、そこです。僕の予言では21世紀初頭に地球文明は再び宇宙人に蹂躙される。これは、歴史的事実なので、個人の感情で曲げる事は出来ません。僕の創設した時間管理局も、宇宙人の侵略を妨げる者を排除するようにプログラムされています」

「つまり、あたしにとっては、時間管理局も敵って事?もし、あなたが、時間管理局に宇宙人を攻撃するよう命令をしたら?」

「それは出来ない。時間管理局は、1万2000年前のアトランティス大陸にある本部の指示で動いている。そこには過去の僕がいて、歴史を厳守するように指示を出しているから、管理局員達は、例え同一人物でも、現在の僕よりも、過去からの指令の方を優先する」

千鶴は、ミッシェルの説明にイライラしてきた。

「ややこしいわね!」

「それに、僕は、歴史を変える気は、さらさらないですから」

「そんなに、予言が大事なの?別に、未来なんか、好きに変えちゃえばいいじゃない。人間の意志が未来を決めるのよ。人の意思の数だけ多元宇宙があっては駄目なの?」

「うるさい!駄目に決まっているじゃないか!君に何がわかる?そんな、無限の多元宇宙の存在なんかを認めれば、僕の予知能力の意味がなくなってしまうだろう!僕だけじゃない。全ての人間にとって確実なものが、何もなくなる。この宇宙には確固たる骨太の一本の、頼るべき歴史が必要なんだ!」

「宇宙人の奴隷になるのは嫌。そんな未来なら無くてもいい」

千鶴とミッシェルは睨み合った。しかし、感情に任せて言い争っても、すぐに答えが出る問題ではない。ミッシェルが先に目をそらした。

「ムーは沈んだけど、アトランティス大陸は、現在も存在している。この時代の人間には南極大陸と呼ばれているけどね。そこには、1万2千年前の宇宙戦争の後、しばらく僕が身を潜めていた最大のシェルター・・・時間管理局の本部がある。ヒトラーが発見し要塞に改造しようとしているのは、そのほんの一区画にすぎない。いつか君にも見せてあげるよ。南極の古代遺跡もね」

千鶴には、ミッシェルが、なぜか寂しげに見えた。

 

 1944年6月。久石光隆曹長(33歳)はサイパン島で、上陸してきたアメリカ軍を相手に、死に物狂いの戦いを繰り広げていた。すでに艦砲射撃で日本軍の陣地は壊滅し、各々小グループに分かれて、ジャングルでゲリラ戦を繰り広げているのみである。

「くそっ、何で俺の行く所は、いつもいつも、こんな激戦地ばかりなんだ!」

光隆は、悪態をついた。2年前、ガダルカナルを命からがら脱出し、内地に帰る間もなくサイパン島守備隊に配属されたのだ。

「おい、お前。手榴弾を握ってあの戦車に体当たりしろ」

光隆は、部下のニ等兵に命令した。二等兵の顔が青ざめた。

「ここからですと、体当たりする前に見つかってしまいます」

「じゃあ、この死体を被っていけ」

光隆は、砲弾を受け、バラバラになって飛び散っている戦友の死体を指さした。手足が千切れ、腹からは、内臓が飛び出している。

「ひっ・・・いくら何でも・・そんな」

「いいからやれ!それとも、今ここで、俺が、お前の首を落としてやろうか?」

光隆は、サーベルを引き抜き、恐怖に震えている二等兵の首筋に当てた。

「や、やります!」

二等兵は、戦友の内臓を体に巻き、千切れた手足を持って、敵戦車に匍匐前進していった。気付かずに前進してきたシャーマン戦車が、二等兵の体を引き殺すと、手榴弾が爆発してキャタピラを破損した。

「やったぞ!今のうちに逃げろ」

光隆は、歓声を上げ、生き残りの部下と共に、ジャングルの奥地へ逃げていった。

 

 サイパン島での死闘が終りに近づいて来た頃、光隆は、日本軍の敗残兵が立て籠る洞窟へとたどり着いた。その中には将官クラスの人間も、何人かいるようだった。

「日本が戦争に負けているのは、俺のせいじゃないんだ・・・」

中将の階級章をつけた老人が、一番奥にうずくまり、うわ言のように呟いていた。

「あれは?」

光隆が、兵士の一人に訪ねた。

「海軍の南雲中将です。サイパン島守備隊の司令官です」

「俺のせいじゃない・・・俺のせいじゃない・・・ミッドウェーで空母を撃沈されたのは俺のせいじゃない・・・仕方なかったんだ。なのに、くそっ、こんな僻地に回しやがって!」

南雲中将は、ミッドウェーでの敗戦以来、海軍では、厄病神同様に扱われていた。山本長官が戦死して以来、さらに風当たりが強くなり、とうとう艦隊勤務を外され、玉砕覚悟のサイパン島守備隊に回されてしまったのだ。

「俺に、死ねって言うのかよ・・・・畜生!ああ、判ったよ。死ねばいいんだろ、死ねば!」

南雲中将は、突然、立ち上がった。副官を呼び、指示を伝える。

「明日、全員で米軍に万歳突撃をかける。傷で動けない者は、この場で自決してくれ。日本男子たるもの、生きて虜囚の辱めを受けずだ。全員、天皇陛下のために死んでくれ!」

「天皇陛下万歳!」

「大日本帝国万歳!」

生き残った将兵達が唱和を始めた。光隆は呆れ果てる。

(馬鹿の一つ覚えか!やってらんねえぜ)

「ちょっと、ションベンしてきます」

光隆は、さりげなく洞窟を出ると、中に手榴弾を放り込んだ。

 

 サイパン島を防衛するために出動した日本の空母機動部隊は、マリアナ諸島沖で、米機動部隊と激突した。2年前のミッドウェーでの全滅以来、貨物船や、他の軍艦を改造して、必死で再建した空母部隊だったが、この2年間で米軍の科学力は飛躍的に進歩しており、発進した日本の攻撃隊は、高性能レーダーや、アインシュタイン博士の発明したVT信管を装備した対空砲の餌食になり、全滅した。世に言う『マリアナの七面鳥撃ち』である。この戦いで、サイパンが陥落した事により、日本全土が長距離爆撃機B29の航続距離圏内に入った。そして、無差別爆撃を受けた国民は、開戦以来初めて、もう少しで勝つと思っていた戦争が、本当は、負け続けていたと言う、事実を知るのである。

 

 千鶴を乗せた伊500は、アフリカ最南端の喜望峰を回り、無事フランス西海岸のブレスト港へと入港した。ミッシェルは、ルミナス諸島で古代遺跡を千鶴達に見せた後、どこへともなく消え去っていた。

「アトランティス、ムー。まるで空想科学小説だ。そう言えば天津教の教典の、竹内文書にも同じようなことが書いてあったぞ」

桃次郎は、数年前弾圧を受けて壊滅した宗教団体を思い出した。中野学校には、国内のありとあらゆる合法、非合法組織の調査ファイルがある。

「1万2000年前の科学技術をヒトラーが手に入れようとしている。彼に合わなくちゃ。宇宙人の侵略に対抗するには、彼らと同等の科学技術が必要なのよ」

千鶴は、ヒトラーを味方につけようと考えているらしかった。上陸した日本人の一行は、フランスを占領しているドイツ軍に熱烈な歓迎を受け、列車でドイツ本国の首都ベルリンへと運ばれた。そこでは、同盟国日本から来た人々を歓迎する宴が催された。

「はるばる海を越えてやってきた、勇敢なる日本人に乾杯!」

総統アドルフ・ヒトラーが、ワイングラスを片手に乾杯の音頭をとった。出席している将校や、政府の高官達が直立不動でナチス式の敬礼をする。会場にはヒトラーの大好きなワーグナーの音楽が流れていた。

「ハイル・ヒトラー!」

「ドイツ第三帝国に栄光あれ!」

田辺艦長をはじめ、潜水艦の乗組員達は、この異様な雰囲気に唖然としている。パーティが始まると、元帥の階級章をつけた男が、固まって群れている日本人達のところへ挨拶にきた。

「イヒ、フロイエ、ミヒ、ズィーツーゼーエン。イヒ、ハイセ、エルヴィン・ロンメル」

「あなたが、あの有名なロンメル元帥ですか!御目にかかれて光栄です」

日本人達は、航海の途中、暇に明かせてドイツ語を勉強していたので会話には苦労しなかった。

「いや、それほどでも」

「そんな、御謙遜を・・・・『砂漠の狐』と異名をとる国民的英雄だと伺っております」

田辺艦長は、有名人に会えて、純粋に喜んでいた。

「アフリカでは散々でした。エルアラメインまでは、調子が良かったのですがね。肝心なところで、持病が出て倒れちゃいました。おまけに、途中からアメリカが参戦してきて挟み打ちにされて、大変な目に会いましたよ」

ロンメルは、よくしゃべる男だった。

「おや、こちらのフロイラインは?それともフラウ?」

「フロイライン・ヒサイシです」

千鶴は、快活なドイツ人男性と握手を交わした。

「今度、西部戦線の最高司令官に任命されましてね。上陸してくる連合軍を波打ち際で、壊滅して御目にかけますよ」

すでに、イタリアが降伏し、枢軸国側で戦争を続けているのは、ドイツと日本だけになっていた。イギリス本土には、ドイツに占領されている国々の亡命政府や、米英両軍の大部隊が集結し、ドーバー海峡を渡る準備をしているという確かな情報が入っている。

「頼もしいですわ」

「ただ、敵がどこに上陸してくるのかが、判らなくて困っています」

「ノルマンディーですわ。時期は1944年の6月です」

千鶴には、ミッシェルのような、本当の意味での予知能力はなかったが、2003年までの歴史なら暗記していた。

「あなたも、そう思われますか?ふむ、ノルマンディーか・・・」

ロンメル元帥は、あごに指を当て、考え込みながら立ち去っていた。彼の後からも、ヒトラーの側近達が、次々に挨拶にきた。

「総統の第一秘書を務めております、マルチン・ボルマンです」

「宣伝大臣のヨーゼフ・ゲッペルスです」

「空軍元帥のヘルマン・ゲーリングです」

「海軍元帥のカール・デーニッツです」

「親衛隊長官のハインリッヒ・ヒムラーです。後日、あなた方に、わがナチスが誇るアウシュビッツ収容所を、御目にかけましょう」

千鶴は、このヒムラーという男に、ぞっとする程の冷酷さを感じた。典型的なサディストのオーラを発散している。人間が、残虐な死に方をしたり、苦しみ悶える姿を見ることに、最も喜びを覚えるタイプの人間だった。千鶴は、2000年に渡る人生の中で、この手のタイプをたくさん知っていた。

「なぜ、ユダヤ人を虐殺しなくてはならないか、あなた方は、御存じでしょうか?」

ヒムラーは、不気味に笑いながら日本人達に問いかけた。田辺艦長は、この人物に、強烈な不快感を覚えているようだった。

「いえ、それが、ナチス・ドイツの国策だからとしか・・・」

「奴らは、寄生虫なのです。このままでは人類全体がユダヤ人に寄生されて、彼らの奴隷となってしまいます。表向きは、ユダヤ人は劣等人種という事になっていますが、実は逆で、彼らの知能は、他の民族に比べて極めて高い。その証拠に高名な科学者、思想家、政治家、宗教家、資本家達は、全てユダヤ人です。彼らの正体は、突然変異で進化した、より優れた人類なのです」

「だから、迫害しているのですか?」

「その通り。ここだけの話ですが、この戦争は、もはや我々に勝ち目はありません。だから、この戦争が終わるまでに、一人でも多くのユダヤ人を殺害し、彼らの汚れた遺伝子を可能な限り地球上から減らします」

ヒムラーは、残忍な笑みを浮かべた。

 

 久石千鶴、山川桃次郎、田辺艦長を含む日本人訪問団の一行は、ヒムラーの案内で、ポーランド南部にあるアウシュビッツ収容所を見学した。

「ここで、ユダヤ人を始めとする劣等人種を、ガス室に送り込み、絶滅させるわけです。もちろん戦時下ですから、労働力として使える者は、死ぬまでとことん働かせ、最後は、生体実験の材料としても使っているわけです」

ヒムラーは、日本人一人一人にお土産の高級石鹸を手渡した。

「ユダヤ人の皮下脂肪で作った石鹸です。他にも、ユダヤ人の髪の毛で作ったマフラーなどもありますから、帰りにお渡ししましょう」

「げっ!」

日本人達は、気味悪そうに受け取った石鹸を眺めた。収容所の入り口付近では、今到着したばかりの貨物列車から、ぎゅうぎゅう詰めにされたユダヤ人達が降ろされている所だった。老若男女が入り混じった彼らは、着のみ着のままで、見た目には普通の白人の一般市民と変わらない。日本人から見れば、白人が同じ白人を迫害しているようにしか見えない。

「お前は、ガス室。お前とお前は労働者。お前は実験材料の列に並べ」

ナチスの兵士達が、手際よく降りて来たユダヤ人の群れを振い分けていく。家族で連れて来られた者も、ここでお別れだ。兵士に混じって白衣を着た医者の様な男が、ユダヤ人の選別に加わっていた。

「子供はいないか?双子の子供はいないか?」

男は、容姿端麗な子供を見つけては、自分の研究用に確保しているようだった。

「あれは?」

千鶴が、ヒムラーに訊ねた。

「ああ、彼はヨーゼフ・メンゲレという軍医です。彼には様々な生体実験を依頼しています。今、彼が双子の子供を探しているのは、人工的にシャム双生児を作る研究をしているからです」

(これじゃ、宇宙人とやっている事が、変わらないわ!)

千鶴は、心の中で叫んだ。歴史の教科書でユダヤ人の虐殺の事は知っていたが、実際に目の当たりにすると、これまで見てきた2000年間で最も悲惨な光景だった。

(ヒムラーは、ユダヤ人が突然変異体だと言っていた・・・・本当かしら。そう言えば500年前に出会ったクリストファー・コロンブスも、確か自分は、ユダヤ人だと言っていたような・・・)

「彼らは、ユダヤ人の中でもアシュケナジーと呼ばれるタイプです。知能が極めて高い。今、我々が戦っているソ連の共産主義を考え出したのも、アメリカ、イギリスなどの民主主義国家を裏で操っているのも彼らです」

ヒムラーは説明した。千鶴は、考え込んだ。

(ユダヤ陰謀論は、どこまでが本当なのだろう。ヒトラーも実はユダヤ人だったという話を聞いたことがある・・・今度、ミッシェルに会ったら聞いてみよう)

桃次郎と田辺艦長は、訳が分からず、ただ目の前で繰り広げられている光景に、圧倒されるばかりだった。

 

 アウシュビッツ収容所を、案内されてる日本人一行は、ユダヤ人の囚人を虐待している一人の若い女看守に目をとめた。青い目、金髪のその美しい女性は、ヒトラーの夢想する理想的なアーリア人種の特徴を備えていた。

「すごい美人がいる・・・」

田辺艦長が思わず呟いた。

「彼女は、看守主任のイルマ・グレーゼです。彼女もSS隊員なのですよ」

ヒムラーが説明した。イルマ・グレーゼ(21歳)は、ユダヤ囚人の中から美男美女ばかりを選び出し、裸にして直立不動で立たせ、鞭打っていた。

「反社会分子のユダヤ人め。お前らは、遅かれ早かれ、一人残らずガス室に送り込まれるんだ!」

イルマの鞭は容赦がなかった。女は乳首、男はペニスを集中的に鞭で打たれる。ユダヤ人であるというだけで、何の罪を犯したわけでもない囚人達は、ごく普通の一般市民だったが、最後にはガス室に送られる事が決定されているため、治療不可能なくらいに皮膚が裂け、血だるまになるまで、遠慮なく、鞭打たれるのだ。

「彼女は、先ほどのメンゲレ大尉と並び、囚人達に、最も恐れられています」

ヒムラーが誇らしげに言った。千鶴は、イルマ・グレーゼを観察し、この女も真性サディストなのだと思った。その、美貌とは裏腹に、険しい目つきのイルマは、血まみれになった囚人に、愛犬のジャーマン・シェパードをけしかけ、噛まれる恐怖に耐えかねて直立不動の姿勢を崩した女囚の一人を、拳銃で撃ち殺した。

「誰が、動いていいって、言ったの?規律違反は、即死刑よ。どうせ、お前達ユダヤ人は全員、ガス室送りになるんだから、無駄な弾丸を消費させないで!」

ユダヤ人の男女は、こみ上げてくる恐怖を抑え込み、自分達の瘦せ細った血だらけの体が、ジャーマン・シェパードに噛み裂かれるのを、微動だにせず、耐えるしかなかった。イルマは、苦痛にゆがむユダヤ人達の顔を見て、快感に目が潤んでいた。

(どう見ても彼女、性的に興奮しているわ。死が決定しているユダヤ人を、自分の性癖を満たすために虐待している)

千鶴は冷静に分析したが、さほど正義感も持ち合わせていない千鶴には、ユダヤ人に対する憐みは感じなかった。目の前に繰り広げられている光景は、元いた未来へと繋がる歴史の一コマに過ぎない。桃次郎や他の日本人達は、ヒムラーの前で、口にこそ出さないが、憤りを感じているようだった。

「ここが、ガス室です。毎日数百人のユダヤ人を処理しています」

ガス室には、全裸にされたユダヤ人が、老若男女を問わず、詰め込まれている所だった。列車で着いたばかりの者も、長い間、収容されていてガリガリに瘦せ細った者もいる。彼らを、一人でも多く、ぎゅうぎゅうに、極限までガス室に詰め込み、チフロンBという猛毒を吹きかけるのだ。

「死体は、重油を浴びせて焼却しているのですが、最近、東部戦線の戦況が思わしくなくて、油の供給が滞りがちです。このままでは、ユダヤ人絶滅計画に支障が出るのではないかと心配です」

ヒムラーは、ユダヤ人を絶滅させる事が、自分の人生の使命であると、固く信じているようだった。その日の見学が終り、宿舎へ戻った日本人達は、さすがに気分が悪くなっていた。

「噂には聞いていたが、これ程とは・・・」

多少の事には動じない、生え抜きの情報部員である桃次郎も、さすがに動揺していた。

「同盟国ドイツの国策だ。我々が、口を挟み、とやかく言う事ではない」

階級が一番上である、田辺艦長がたしなめる。

(六百万人が殺害された、と歴史の教科書には、書いてあった。そして、戦後、中東にイスラエルが建国され、ユダヤの民は約束の地へと帰る)

千鶴は、21世紀の時点では、既成の事実であった歴史を思い出した。

(ヒトラー自身がユダヤ人だったという説、日本人の先祖が、イスラエルの失われた10部族の一派だったという説。ユダヤ人が影で世界を牛耳っているという説・・・彼らに関しては、様々な仮説がある。一体ユダヤ人とは、何者なのだろう?)

千鶴は、自らが生きて来た、2000年間の歴史を思い出した。彼らのコミュニティは、世界のいたるところにあり、常に彼らは迫害を受けていた。16世紀以降は、鎖国した日本に戻っていたため、彼らと接触する機会は少なかったが、その間に彼らは、世界の金融、経済の仕組みを作り上げ、瞬く間に影響力を伸ばしたらしい。

(ヒトラー、ナチス、ユダヤ、時間管理局、アトランティス、ミッシェル・・・そして宇宙人)

これらのキーワードが、どういう関連性を持っているのか。その中で、自分が、どう立ちまわれば、復讐を遂げ、最良の未来を選択できるのか。千鶴には、ますます判らなくなっていた。

 

 1944年6月。日本軍が、サイパン島で戦っていた頃、ヨーロッパ、フランス西海岸でも、連合軍の反撃の火の手が上がろうとしていた。イギリス本土とドーバー海峡に集結した米英の大部隊は、ドイツ支配下にあるフランスを解放し、地続きのドイツ本国へ攻め込む作戦だった。

「連合軍の主力が、上陸してくるのは、ノルマンディー方面でしょうか?それともカレー方面でしょうか?」

ドイツ軍の参謀本部では、激論が戦わされた。

「普通で考えると、カレーなんだが、俺は、なんとなくノルマンディーのような気がする」

ロンメル元帥が言った。

「どちらにせよ、海岸への地雷の敷設、機甲部隊の配置・・・準備は万端だ。上陸開始から24時間以内に、連合軍を海へ叩き込んでやる!」

ロンメルは自信に満ち溢れていた。将兵達にも楽観ムードが広がっている。何と言っても指揮を執っているのは、国民的英雄、『砂漠の狐』と異名を取るロンメル元帥なのだ。その時、目立たない参謀の一人が言った。

「この悪天候です。連合軍の上陸開始までには、まだ、しばらく日があるでしょう。明日は、元帥の奥さんの誕生日ではありませんか?戦闘が始まると、しばらくは前線を離れられません。2、3日、本国に戻られては?」

「それも、そうだな。ルーシーには、普段から迷惑をかけっ放しだしなあ。ヒトラー総統にも、相談したい事があるし、そうするか」

ロンメルは、ハインケル長距離爆撃機に乗って前線を離れ、ドイツの自宅へと帰って行った。そして、その日の晩、午前0時の真夜中に、連合軍の上陸作戦が始まった。ロンメルは、自宅で電話を受け、呆然とする。

「えっ、攻撃して来たって?こんな真夜中にか?」

慌てふためいて、前線へ取って返したロンメルが、到着した時、すでに連合軍の作戦開始から24時間以上が過ぎていた。その間、指揮官不在のため、ほとんど動いていなかったドイツ軍は、反撃のチャンスを逃し、海岸から後退するしかなかった。

「なんてこった!もう、しっかり上陸しちまってるじゃないか!」

空は、連合軍の爆撃機に覆われ、海岸は連合軍の戦車で埋め尽くされていた。史上最大の作戦と呼ばれたノルマンディー上陸作戦は、ドイツ軍の敗北に終わった。

 

 1944年、10月。フィリピンに上陸を開始したアメリカ軍を迎え撃つため、日本の連合艦隊は、残る艦艇の全てを投入し、捷一号作戦を発動した。空母を囮に使い、その間に戦艦を中心とする別動隊が、フィリピンのレイテ湾に上陸中の米軍輸送船団と刺し違えるという作戦だった。アメリカ機動部隊は、まんまと作戦にはまり、レイテ湾の守りが、一時的に、ガラ空きになった。

「栗田司令、あと1時間でレイテ湾に突入します!」

旗艦『大和』の艦橋で、幕僚の一人が興奮して言った。

「大和の46センチ砲を、ありったけ上陸部隊に打ち込んでやれるぞ!」

艦隊司令官の栗田健男中将も意気込んでいた。開戦してすぐに、大艦巨砲主義が時代遅れになったため、世界最大の戦艦である大和は、ほとんど活躍していない。しかし、その時、目立たない参謀の一人が、ぼそりと呟いた。

「栗田司令。北方に敵の空母がいるかもしれません。それを撃ちに行きましょう。いかに、戦況不利と言えども、丸腰の輸送船を、戦艦の主砲で狙い撃ちにするなど、日本男児の名折れです」

「気持ちは判る。しかしなあ、それは出来んよ。だって、命令違反になるじゃないか。我々が、ここまで来るために、囮になった味方の空母部隊も、全滅しているんだぞ!」

さすがに、この状況では、栗田中将も、簡単には口車に乗らないようだった。時間管理局員だった、その参謀は、上空で監視しているタイムマシンの上司に通信を送った。

『ターゲットハ、意志ヲ変エマセン』

『仕方ガナイ。催眠暗示装置ノ使用ヲ許可スル』

『了解シマシタ』

参謀の目が赤く光った。とたんに栗田中将の顔がトロンとする。そして、しばらくして口を開いた。

「・・・突入中止・・・全艦隊、面舵一杯、北進せよ・・・」

栗田艦隊は、進路を変え、日本は太平洋戦争における最後の反撃のチャンスを失った。

 

トップページへ戻る

風俗 デリヘル SMクラブ 

無料 アクセス解析RMT