第125話、幕末自衛隊(その2)

 

1853年(嘉永6年)、6月2日、ペリー艦隊を攻撃し、歴史を改変しようとした海上自衛隊の護衛艦『あらなみ』は、目的を達する前に、時間管理局のタイムマシンによって撃沈された。間一髪で海に飛び込んだ久石千鶴は、陸地を目指して泳ぎ続けていた。

(くっ・・・まだ陸地が見えない・・・かなりの沖合いだったのね。)

もう2時間以上も、泳ぎ続けている。『あらなみ』は沈没し、他の自衛隊員達がどうなったのかは判らない。千鶴は、1900年に及ぶ人生で、常人を超える持久力と忍耐力を身につけていたが、それでも、ただの人間である事には変わりなく、体力は次第に限界に近付きつつあった。

(まだ・・・死ぬわけにはいかない・・・あと、150年生き延びなければ・・・)

千鶴の頭の中では、宇宙人に対する迎撃プランが、漠然とではあるが形成され始めている。陸地にたどり着きさえすれば、すぐに、土台となる組織の立ち上げに着手するつもりだった。千鶴が、疲労困憊で泳ぎつつけていると、頭上から、バラバラバラ・・・というヘリの爆音が聞こえてきた。そして、千鶴のすぐ傍の海面に、縄梯子が垂らされた。

「つかまって下さい!」

見上げると、哨戒ヘリSH60Kが、ホバーリングしていた。千鶴は、最後の力を振り絞って縄梯子の端を掴み、よじ登っていった。ヘリの内部に這い上がると、そこには、救助されたずぶ濡れの自衛隊員が、他にも数人いた。その中には真鍋副長の姿もある。ヘリを操縦しているのはパイロットの原田一尉だった。

「あのUFOは、一体何ですか?」

原田一尉が操縦シートから尋ねた。千鶴はぐったりと座り込みながら答えた。

「あれは、時間管理局のタイムマシンよ。やつらは、歴史を守るためなら、手段を選ばず、どんな事でもやるわ・・・あたしも今まで何度も襲われた・・・」

千鶴が、時間管理局の活動目的や、存在理由を知らされたのは、16世紀のフランスで出会った、ノストラダムスという男からだった。なぜか、ノストラダムスは時間管理局について詳細な情報を持っているようだった。

「時間管理局・・・信じられない。そんなものがあるなら、歴史を変えようとした我々は、重大な犯罪者ってことになるのか・・・」

真鍋副長が、愕然として呟いた。

「あらなみを撃沈した後、UFOは消えました。現在ヘリで、海岸まで何度も往復して、漂流している乗組員の、救助を行っています」

原田一尉が説明した

「ペリーは浦賀に来航し、歴史は、決められた通りに進むってわけか」

機内は、重苦しい空気に包まれた。

 

甲斐の国の山深くにある奥滝村は、戦国の時代より続く隠れ里だった。人口100人足らずのその村は、人里はなれた秘境にあり、幕府の政治機構にも、組み込まれていない。年貢の取立てもなく、数百年来、平和に暮らしていたその村に、ある日、突如ヘリに乗った男達が襲撃してきた。

「うわあああっ、な、なんだああ!鉄の鳥だあああ!」

「助けてくれええ!」

突如現れたヘリの爆音に驚き、逃げ惑う村人達の頭上に、上空から機銃掃射が加えられた。

「無駄な抵抗はやめろ!この村は我々が占拠する!命が惜しければ抵抗するな!」

村全体に響き渡るよう、拡声器から聞こえてきた声に、さらにパニックは大きくなる。ヘリは集落近くの畑の真ん中に着陸し、銃を持った自衛隊員達が、ヘリから降りてきた。

「化け物め!わしは、この村の村長ずら。ご先祖様は、武田信玄公にも仕えたサムライだったずら!この村に何の用だ?」

村長と、その手下が、先祖代々伝わる錆び付いた刀を構えて、ヘリを取り囲んだ。真鍋副長は、無言であっさりと村長を射殺した。

「今日から、我々が、この村を支配する。他に抵抗するものはいるか?」

村長を殺された手下たちは、どうしていいか判らない。外部の人間と接触する事さえも滅多にない村なのだ。真鍋副長は、硬直して刀を持ったままの手下達を、無言で次々に射殺していった。

「いいのかなあ。こんな事して」

ヘリの操縦席で原田一尉が呟いた。21世紀から来た人間達は、過去の人間を殺す事に実際、それほど抵抗を感じていないようだ。

「おそらく、あとは、大人しい村人です。村の支配層さえ始末すれば残りは従うでしょう」

千鶴が、真鍋副長に言った。この村を千羽鶴教団の新しい本拠地にする計画なのだ。ここから、全国に信者を増やし、150年後には、宇宙人に対抗する組織に育て上げる、という壮大な計画を心に秘めている。いずれにせよ、生き残った自衛隊員たちは、もう二度と現代に戻る事は出来ない。千鶴は、彼らを教団設立に利用する事にしたのだ。

「村人を集めて、忠誠を誓わせましょう」

計画は、ほとんどの部分を千鶴が立て、巧みに自衛隊員をそそのかしていた。やがて、恐れおののく村人達が、老若男女を問わず、全て村の大広場へ集められた。

「我々は、時空を超えてやってきた神だ!逆らうものには、たちどころに天罰を与える事が出来る。死んだ村長達のようにね!お前たちも見ただろう?空を飛ぶ鉄の駕籠で、自在に大空を飛び、奇跡を起こす事も出来るのだ。さあ、お前達、神の前にひれ伏しなさい!」

巫女のような白装束を着た千鶴が、仰々しく叫んだ。その脇を、銃を持った自衛隊員が固めている。無力な江戸時代の村人に抵抗する術など、あろうはずもなかった。

「今から、神降臨の宴を執り行う。ありったけの食料と酒、女を差し出すのだ!」

「ははあーっ!」

村は騒然となった。千鶴達が神だと、すっかり信じ込んだようだった。神の逆鱗に触れぬよう、村人達は、われ先にと、なけなしの酒、食料、女房、娘を差し出した。

「俺達は、神だ!この時代では、俺達は神なんだ!」

自衛隊員たちは、タガを外された武力の行使に酔っていた。彼らは、おびえる村人を尻目に、狂ったように酒を飲み、女を犯した。まるで現代に戻れない不安をかき消したいかのように、酒池肉林の饗宴にのめり込んでいた。

 

広報官の牧村真沙子三尉(25歳)は三日三晩、海上を漂ったあげく海岸に打ち上げられた。『あらなみ』から退艦する際に、救命用の浮輪を持ち出す事が出来、それに掴まって生き延びる事が出来たのだ。泳ぐ気力もないままに潮の流れに身を任せ、伊豆半島の浜辺にたどり着いた。

(ここは、どこ?みんなは、どうなったの?)

咽喉の渇きと空腹感で、立ち上がる気力もなかった。海水が染み込んだ海上自衛隊の制服が嫌に重く感じられる。やがて雨が降ってきて、真沙子は、顔を打つ雨水を口に含んだ。

(ああ・・・まだ、生きている・・・)

真沙子は、のろのろと立ち上がると、砂浜に打ち上げられている海藻を手に取った。

(これ、食べられるのかしら)

そっと口に運ぶ。噛んでみたがまずかった。しかし、空腹には勝てず、胃の中に呑み込む。真沙子は吐きそうになりながらも、雨水をすすり、海藻を生のまま貪り食った。

(惨めだわ・・・他にも生き残った仲間がいるかもしれない・・・探さなくっちゃ)

降りしきる雨に、ずぶ濡れになりながら、真沙子は海岸を東へと歩き始めた。どれぐらい、歩いたかは判らない。いくつもの漁村を通り過ぎる。ある漁村では、浦賀に来航したペリー艦隊の噂で持ちきりだった。

「南蛮人が、黒船に乗ってやって来たんだとよ」

「異国人は、お上が、打ち払っちまうんじゃなかったのかい?」

「それが、そう簡単には、打ち払えねえくらいの大船らしい」

「どうなるんだ?」

「知るか。そんな事は、役人の考える事だ」

真沙子が、フラフラと歩いていると漁民の誰かが叫んだ。

「な、なんだ、あの女!南蛮人みたいな着物を着ているぞ。黒船と関りがあるかもしれねえ。お役人に知らせた方がいい」

漁民の通報を受けて代官所の役人たちが、駆けつけてきた。

「そこの女、待てい!怪しい奴、神妙にいたせ」

「きゃあああ!」

日本刀を抜いたサムライに追い回されて、真沙子は逃げ惑った。護身用に持っていた拳銃は、漂流している間に火薬が湿って、役に立たなくなっている。

「いやああっ!助けてっ!」

助けなど来るはずもなく、真沙子は、追い詰められ、白刀を突きつけられて、しゃがみ込んだ。

「御用だ!御用だ!」

「引っ立ていっ!」

真沙子は、捕縛された。見知らぬ時代の役人に、丸腰で捕まるほど、心細いものはない。真沙子の身柄は、地元の代官所から黒船の対応に当たっている浦賀奉行所に引き渡されて、取調べられる事になった。囚人護送用の駕籠に入れられて、沿道の人々に晒されながら、奉行所に到着した真沙子は、衣類を剥ぎ取られ、後手に縛られて、ギザギサの波型が刻まれた板の上に正座をさせられた。

「女。黒船について知っている事を白状せい」

「あたしは、黒船とは関係ありません。未来からタイムスリップして来た日本人です!」

「た、た、たいむ・・・・なんだ、その言葉は!やはり、南蛮人の言葉ではないか!」

「違います!あたしは、日本人ですっ!」

役人は、重さ30キロはあるかと思われる長方形の石を運ばせ、正座している真沙子の太股の上に乗せた。

「うぎゃああああ!」

石の重量が、真沙子の体重に加算され、ギザギザの板の背が、正座している向う脛に、食い込んでくる。これが有名な石抱きの刑だった。

「白状せい!このまま続くと、足が使い物にならなくなるぞ!」

「あ・・・あたしは、南蛮人とは関係ありません・・・」

「ええい!まだシラを切るか」

さらに、もう一枚の石が上積みされた。

「ぐぎゃああああ!」

向う脛の皮膚が破れ、血が流れ出した。骨まで食い込んでいるかのような苦痛だった。真沙子は、髪を振り乱して絶叫し、涙を流した。

(現代に帰りたい・・・)

なぜ、過去に飛ばされて、こんな事になってしまったのかが、判らなかった。

 

真沙子の取調べは何日も続いた。奉行所も江戸幕府始まって以来の大事件のため、少しでも情報を得ようと必死である。ペリー艦隊は江戸湾を遊弋しつつ、時折、大砲を撃ったりして威嚇行動を繰り返している。旧式の装備しか持たない幕府はなすすべもない。

「しぶとい、女だ!」

拷問役の与力は、真沙子を海老責めの格好に縛り上げた。両足を胡坐縛りにし、顔の前まで反り返らせるのである。真沙子の秘所が丸出しになった。与力は、長い棒で、その姿勢のままの真沙子の肉体を打ち据えた。

「ぎゃうっ!ぎゃうっ!」

全身ひどい打撲傷で、あばら骨にヒビが入ったのか、脇腹に鋭い痛みを感じた。

「・・・あ、あたしは何も知りません・・・」

本当に何も知らないので答えようもない。真沙子はこの拷問がいつまで続くのかと絶望感に苛まれた。何度も気を失い、その度に頭から水をかぶせられて起こされる。一人の若いサムライが真沙子の拷問を見物するために、拷問蔵にやってきた。

「土佐藩士、坂本竜馬でござる」

真沙子は、うつろな表情でその男の顔を見た。歴史の教科書の写真で見覚えのあるその男は、紛れもなく若き日の坂本竜馬(19歳)だった。

「それがしは、品川で沿岸警備のお役目についておりましたが、黒船に関わりのある女が捕らえられたと聞き、居ても立ってもおられず、見物に参りました。」

竜馬は、何に対しても好奇心を抑えられないタイプの人間のようだった。血液型はB型だったと鑑定されている。

「ほう、これが南蛮人の女ですか、どう見ても日本人にしか見えませんが」

「しぶとい女で、なかなか白状せず、自分は日本人だと言い張っておる。わしもそろそろ、拷問に疲れてきた」

「では、しばし、それがしが責めてみましょうか?」

「ああ、頼む」

竜馬は、棒を受け取ると、真沙子の剥き出しの局部を狙って、痛恨の一撃を加えた。

「ぎゃおっ!」

「日本人を、舐めたら、いかんぜよっ!」

拷問蔵に竜馬の怒声が響き、真沙子は再び失神した。

 

坂本竜馬は、拷問蔵の与力と共に、散々真沙子を拷問した。逆さ吊りで水の入った桶に頭部を沈められ、水責めにされた真沙子は、苦しさの余り意味不明な言葉を口走り始めた。

「あなた坂本竜馬でしょっ!あたしの生まれた時代では、あなたは日本を明治維新に導いた英雄として、大河ドラマや映画で何度も、その功績をクローズアップされているわ!そのあなたが、無抵抗な人間を一方的に痛めつけてもいいのっ?」

「何を言っておるのか、判らんちや。確かに黒船の威容は、品川で目の当たりにしたぜよ。あんなもんに対抗するには、日本でも黒船を造らなければならん、ちう事だけは判ったき!」

竜馬は、興奮して土佐弁に戻っていた。桶から引き上げられた真沙子の顔は、うっ血して膨張し、紫色になっている。

「いい事を教えてあげるわ。あなたは、今後、土佐藩を脱藩し、勝海舟に弟子入りするのよ。そして、海援隊という海運会社を設立して倒幕運動の黒幕となる。最後には薩摩藩と長州藩が幕府に対して反乱を起こすのだけど、それを影で操るのは、あなたよ!」

「何だと・・・」

竜馬は真沙子の言葉に愕然とした。19歳の竜馬には、まだ、想像もしていない自分の将来の人生をいきなり聞かされたのだ。一緒にその言葉を聞いていた与力は逆上した。

「倒幕だと!恐れ多い言葉を軽々しく口にしおって!このイカレ女め!」

与力は、棒で逆さ吊りにされた真沙子の体を滅多打ちにした。真沙子の体が海老のように空中で跳ね回り、内臓が傷ついたのか、口から吐血する。

「ぎゃうっ!ぎゃうううう・・・そ、そしてあなたは、明治維新を目前にして京都の近江屋で暗殺されるのよっ!」

真沙子は、血を吐きながら錯乱状態で叫び続けた。

「馬鹿な・・・なぜ、そんな先の事がわかるのだ・・・」

「それは、あたしが未来で生まれたからよっ!これから起こる事は全部知っているわ!」

「ええい、黙れ!たわごとなど聞きたくはないっ」

与力は再び、真沙子の頭部を桶の水に沈めた。水中でも真沙子は喋り続けているのか、ブクブクと気泡が泡立っている。竜馬は、くらくらと目眩を感じて、気分が悪くなった。

 

 ペリー艦隊の来航で、二百数十年に渡る太平の惰眠を貪っていた日本中が、騒然となった。幕府は、ペリー艦隊が引き上げると、直ちに、江戸時代初期に制定された大船禁止令を解除し、各藩に近代式の軍艦の建造を命じた。同時に狂ったように外国から最新兵器の輸入を始め、鎖国は事実上、終わりを告げた。

「外国人の言いなりになってはいかん!」

「黒船など、打ち払ってしまえ!」

「日本は神の国だ。幕府は弱腰すぎる。メリケンやエゲレスに対して、もっと強靭に対応するべきだ!」

尊皇攘夷の嵐が、全国に吹き荒れた。実際に欧米列強との交渉に当たっている幕府は、あまりの軍事力と科学力の差に愕然とし、とても強靭姿勢など取れるはずもなく、国内世論との板挟みになって苦悶した。やがて幕府の上層部は、外国の情報を収集するにつれ、日本が鎖国している200年の間に、外の世界では科学が急速に進歩し、今や地球上の80パーセント以上が、欧米の白人国家の植民地になっている事実を知った。

「思ったより状況が悪いでござる」

1858年、大老に就任し、事実上日本の最高権力者となった井伊直弼は、絶望感に苛まれた。

「欧米人は、我々日本人を含め有色人種を、白人と同等の人間ではなく、むしろ猿に近い生き物だと思っておる」

この時点で、欧米支配の影響を受けていない有色人種の独立国家は、日本、エチオピア、タイのみだった。清王朝の中国は、イギリスとのアヘン戦争に敗れて半植民地化し、朝鮮半島はもとより清の属国である上、北方からロシアの侵略を受けつつある。南北アメリカ大陸とオーストラリアの原住民は絶滅寸前に追い込まれ、アフリカ大陸は分割されて黒人奴隷が輸出されている。日本が鎖国から目覚めた時代は、白人至上主義が世界を覆いつくす寸前の段階だった。

「一時的に、欧米に頭を下げてでも時間稼ぎをし、その間に我が国の近代化を成し遂げなければならん。そのためには、今は尊皇攘夷派を押さえ込まなければ!」

井伊直弼は、幕府の弱腰を批判する者達を徹底的に弾圧した。世に言う『安政の大獄』である。欧米列強相手に、綱渡り外交を続けなければならない直弼にとって、国内の意見を一枚岩にする必要があったのだ。

(俺は、悪者と思われても構わない。後世にどのような誹りを受けようとも、日本の植民地化を避ける事が出来れば、これこそ武士の本分)

井伊直弼の悲痛な決意も、尊皇攘夷派には理解されず、彼は、大老就任のわずか2年後に『桜田門外の変』で、暗殺される事になる。

 

 1853年に、久石千鶴と生き残りの自衛隊員達によって占拠された奥滝村は、その後、千羽鶴教団の総本山へと変貌を遂げていった。村の若い女は全て教団幹部である自衛隊員12名の愛人となり、日夜セックスに励んでいる。一方、村の男達は、食糧確保のための農作業や、教団施設の造営に酷使された。村の中央部に建設された大本殿には、自衛隊員達を運んできた哨戒ヘリ、SH60Kが御神体として安置され、未来から持ってきた拳銃やライター、ボールペンなどが神器として保管された。そして、それまで外部との接触を断っていた村だったが、布教活動のために甲州街道へ抜ける道も切り開かれた。

「さあ、お前達、教祖様の御聖水を有り難く頂くのだ!」

教団のナンバー2である真鍋敏晴(元自衛隊三等海佐)が本殿にひれ伏している村人に叫んだ。すっかりマインドコントロールされてしまった村の女達が、盆に載せた杯を村人達に配っていく。その杯に入っているのは千鶴のオシッコを井戸の水で薄めた透明の液体だった。村人達は、恐る恐る杯を口にした。

「よいか、教団の教義を信じれば、死んだ後に極楽へ行く事が出来る。お前達の財産、生命、身体、全てを投げ出して教祖様に奉仕をするのだ。そうすれば150年後に宇宙の彼方より襲来する宇宙人の侵略から、この世を救う事が出来るのだ!」

「あ、あのう、宇宙人って何ですか?」

村人の一人が恐る恐る尋ねた。上座に座った白装束の千鶴が、キッとその村人の顔を睨みつける。

「宇宙人って言うのは、人間を生きたまま食べたり、悪ふざけで、手足を切り刻んで付け替えたりする悪魔のような存在よ!お前が、捕まったら犬のような姿にされるかもね」

「ひいっ!恐ろしい事です・・・南無阿弥陀、南無阿弥陀」

村人達は、ガクガクと震えだした。

「そうならないためにも、信者を増やさなくてはならないのよ。お前達の中でも、あたしの教義をよく理解出来て、位が上がった者には、村の外に出て布教活動を行ってもらうわ」

教団組織は、ピラミッド型の体制で、教祖である千鶴を頂点とし、次に12人の自衛隊員が『使徒』と呼ばれる称号を与えられており、その下は現在の所、一般信者である。千鶴は一般信者である村人の中から、理解力のある者を選び出し、『伝道師』という位を与えて全国に送り出すつもりだった。なるべく早く、信者を集めて組織を拡大するために、修行には男女のセックスを取り入れるつもりである。

「人間の本性を、剥き出しにして男女の営みを行いなさい。そうすれば、少しはお前達の汚れた魂も解放されるでしょう」

千鶴の号令で、村人達は一斉に着物を脱ぎ捨て、誰彼構わずセックスを始めた。と言っても、彼らは元々、千鶴達が来るまで夫婦であり、親娘であり、兄妹であったのだ。村人達が我を忘れて乱交にのめり込んでいる様を、千鶴と12人の自衛隊員達は、冷ややかに眺めていた。

(フフフ・・・人間は誰でも異性とセックスをすれば、スッキリして魂が解放されたと錯覚するものよ)

千鶴は、1900年の人生で世界各地を放浪し、ありとあらゆる宗教が信者を獲得していく手法を目の当たりにしていた。その中には世界の3大宗教と言われる教団も入っている。

(全ての宗教は、最初こうやって、無知な人々に奇跡を見せたり、マインドコントロールで財産を寄進させたりする事から始まったのよ。そして時代が下れば、時の権力者から弾圧を受けながらも、政治や社会に浸透し、人々の生活とは、切っても切れないものになる。教義も、研究に研究が重ねられ、次第に肉付けされて、やがて分厚い教典が完成するのよ。例え、それが教祖の思惑とは、全くかけ離れた内容になっていたとしてもね)

千鶴は、眼前に繰り広げられる乱交を眺めながら、深い追憶に沈んでいった。1900年分の追憶だった。

(でも、千羽鶴教団が、他の宗教と違う点が二つあるわ。それは、教祖であるあたしが不老不死だと言う事。そして、もう一つは宇宙人の侵略が2003年には実際に始まると言う事・・・)

それまでに教団の規模をなるべく拡大し、全世界の国家や民衆を動かせるほどの強固なものにしなくてはならない。そのためには、利用できる物は全て利用し、考えられる手段は全て実行する。信者同士のフリーセックスを奨励すれば、セックスやりたさに入信するものも増えるだろうし、資金集めのためには、法外な金額で、壷やグッズを売ったりもしなくてはなるまい。より財産を多く持つ者にターゲットを絞って勧誘し、全財産を教団に寄進させると言う手もある。

(歴史が、変わらなければ・・・150年後には元いた世界にたどり着く・・・)

そこまで考えて、千鶴は、はたとある事に気付いた。

(・・・歴史が変わらなければ・・・・決められた歴史は守らなくてはならない・・・未来はあらかじめ決まっている・・・私の予言通りに世界は動くのだ・・・確か、ノストラダムスはそう言っていた・・・時間管理局の目的も同じ・・・そして、あたし自身もそう願っている・・・)

千鶴はおぼろげながら頭の中に浮かんで来た、ある関連事項に気付いた。そして具体的には、それが一体どう言う事なのか、答えを見つけようとしたが、いくら考えても、これこそが正解だ、と思えるような解答に行き当たる事は出来なかった。

 

 牧村真沙子に対する拷問は、数ヶ月間に渡って続いた。しかし、ペリー艦隊が去り、真沙子からは何の情報も得られないと判ると、浦賀奉行所は、真沙子を女牢に放り込んだ。

「新入りかい?」

女牢の労名主である、およねが珍しそうに真沙子を眺めた。女牢は10畳ほどの広さに10人余りの女囚が詰め込まれている。女囚達は、真沙子を取り囲んだ。

「裸に剥いて、新入りの挨拶をさせるんだ」

およねの合図で、女囚たちが、よってたかって真沙子の着ている灰色の着物を剥ぎ取った。元々着ていた海上自衛隊の制服や、拳銃などの装備品は奉行所に没収されてしまっている。

「やめてよっ!」

真沙子は抵抗しようとしたが、拷問によって体中がボロボロにされており、満足に手足を動かす事すら出来ない状態だった。

「あれまあ、随分と痛めつけられたんだねえ!」

およねが、痣だらけの真沙子の裸身を見て笑った。石抱き拷問のため真沙子の両足は皮膚が潰されて骨が見えそうである。一人では、足を引き摺りながら、杖をついてゆっくり歩く事しか出来ない。上半身も背中、腹、胸と、紫色の痣に覆われていた。およねは肉食獣のように鋭い視線を投げかけながら、舌なめずりをした。

「この牢では、新入りは、入牢の挨拶代わりに、全員のオマンコに奉仕する事になっているんだ。まずは、牢名主のあたしからだよ!」

およねは、着物の裾を捲り上げた。夫殺しの罪で、20年以上この牢で暮らしているおよねの年齢は、40代後半で、オマンコも黒ずんでいる。

「まず、最初にお前の名前を言ってから、よろしくお願いしますって、言うんだよ」

「う・・・ま、牧村・・・真沙子です・・・よろしく、お願いします・・・牢名主様・・・」

真沙子には、抵抗する気力も体力もなく、言われるがままの、言葉を口にした。

「お前、苗字があるって事は、武家の出身かい!」

およねの顔が、怒りの形相に変わった。過去に何かあったらしい。

「あたしは、武家の女が大嫌いなんだよっ!」

無抵抗な真沙子の顔にビンタを食らわせる。

「ひいっ!」

「おらっ、舐めるんだ!手を抜いたら、何度でもやり直しをさせるからね」

およねが、黒ずんだオマンコを真沙子の美しい顔に押し付けた。真沙子は、むせて吐きそうになりながら、同性の性器の奥に舌を伸ばした。

(現代に帰りたい・・・『あらなみ』の他の乗組員は、どうなったのかしら・・・)

真沙子の目から涙が流れた。このまま、150年も過去の時代で、一生を終えなければならないのだろうか。真沙子は、何度もやり直しを命じられながら、翌日の朝までかかって、女囚全員のオマンコを舐め終えた。新入りに対するいじめは、毎日の事なので牢番も見てみぬフリをしている。それどころか、面白がって時折、格子の外から、さりげなく見物していたりもする。女囚全員への挨拶が終わり、顎を舌が痺れてグッタリしている真沙子を牢番が呼び出した。

「挨拶は済んだか?新入り、出ろ。可愛がってやる」

真沙子は、這うようにして、開けられた格子のくぐり戸から牢を出た。これから何をされるのか、薄々気がついていた。牢番が、気に入った女囚を呼び出してセックスの相手をさせる事も頻繁にあるらしい。連れて行かれた牢番の詰め所には、当直のサムライが3人いた。

「へへへ・・・取調べでかなり痛めつけられているみたいだが、なかなかの別嬪じゃねえか。」

牢番の一人が、痣だらけの真沙子の乳房を鷲掴みにした。打撲傷に激痛が走り、真沙子が顔をしかめる。

「退屈な牢番役の唯一の役得だな・・・女牢でよかったぜ。男牢だと、ケツに穴掘るしかねえからな!」

3人の牢番が下品に笑った。身動き出来ない真沙子の股間に、一人目のサムライがチンポを挿入してくる。

「アオッ」

押さえつけられた真沙子は、体中の打撲傷から激痛を感じた。サムライが腰を降り始めたが、真沙子は快楽など一切感じず、ただ恐怖が募ってくるだけだった。真沙子はこの女牢で、この後、5年間を過ごす事になる。その間、牢番の子供を何度も妊娠しては、女囚達によって堕胎され、牢内ではイジメを受け続けた。拷問によって付けられた上半身の傷は、やがて治ったが、両足だけは普通に歩けるようには回復しなかった。武家嫌いの、およねによって、真沙子は徹底的にイジメ抜かれ、後から入ってきた新入りの女囚にも奉仕するように命じられた。牢内の女囚には、およねを筆頭に暗黙の了解で順列があったが、真沙子は常に、一番最下位だった。毎日の食事も全員が食べた後の残飯か、食器にこびりついている食べカスを舐め取らなければならないと、およねが決めた。この広さ10畳の女牢では、およねが法律なのだ。真沙子の精神は次第に死んでいき、深い闇の底に落ちていった。

 

第126話、アンデッドソルジャー

 

 2006年8月、宇宙人に割譲された、さざなみ市の軍事基地の敷地内にあるウラノス博士の研究所に、一人の実験体が運び込まれた。ウラノス博士は、運び込まれた実験体を全裸にしてDNA変換カプセルの中に横たえ、体の隅々を検査した。実験体は、若い美貌の女で、年齢は33歳、名前は中津絵里子、さざなみ署の女刑事だとカルテには書いてある。犯人逮捕の際に腹部に3発の銃弾を受けており、死後4時間が経過していた。

「今度の実験は、死体の蘇生実験じゃ。ヒヒヒ・・・」

ウラノス博士は、銃弾の跡に黒く血が凝固している、絵里子の腹部を手の平で撫で回した。これまで、不老不死実験、人体の透明化実験、不死身の再生能力を持つパーフェクトソルジャーの作成実験と、続けてきたウラノス博士だったが、どれもプロトタイプの試作に成功しただけで、汎用化には至っていない。ネックになっているのはDNA変換時の実験体の耐久力だった。どの実験も、DNA変換時の苦痛に耐え切れず、実験体が発狂してしまう確率が非常に高い。にもかかわらず、ウラノス博士は、次々と新しい実験にチャレンジしていた。

「わしは、天才なのじゃ。汎用化出来るかどうかは、別の木っ端科学者どもや、軍人に任せれば良い!」

ウラノス博士は、DNA変換機の蓋を閉め、スイッチを押した。必要なプログラムはすでに完成し、入力してある。カプセルの中は紫色の光で満たされ、絵里子の死体に電磁波が照射された。通常、生きた人間を実験体に使った場合、細胞の隅々まで分解されるような恐ろしい苦痛に襲われるのだが、今回は死体なので、何の反応も示さない。DNAの変換作業は、静かに行われた。

「DNA変換の終了までは、27時間ってとこか・・・」

ウラノス博士は、装置のある部屋を出て、別の仕事をしながら待つ事にした。そして翌日、実験終了の時間が近付くと、ウラノス博士は、変換機のある部屋へと戻った。万が一に備えて護衛のアンドロイド兵を2体同行させている。死体が、蘇生した途端に暴れ出さないとも限らないのだ。電磁波の照射が終了し、ウラノス博士がカプセルの蓋を、用心深く離れた場所からリモコン操作で開けると、絵里子の死体がムックリと上半身を起き上がらせた。

「成功だ。生き返った!」

ウラノス博士は歓声を上げ、直も油断せずに距離を置いて、生き返った死体を観察した。体全体は青白くて、生気が全く無く、目は死んだ魚のようである。腹部の銃弾の跡はそのままだ。

「ココハ、ドコ・・・アタシ・・・犯人ニ撃タレテ・・・マダ生キテイルノ?」

死体の口から篭った声が発せられた。その声はかすれて抑揚も無く、生きた人間の声とはとても思えない。

「君は、死んだのだよ。だが、わしの科学力のお陰で、生前と同様、動き回ることが出来るし、それ以上腐敗する事もない」

「死ンダ?ドウイウコト・・・ワカラナイ・・・」

「判らなくてもいい。君の脳には生前に埋め込まれたコンピューターチップがそのまま残してあるから、君が判断出来なくても、外部から遠隔操作で君の肉体を操る事が出来る」

「犯人ハ・・・ドウナッタノ・・・優作・・・」

絵里子は、元同僚の名前を口にした。生前の記憶はそのまま残っているようだ。

「ふむ、これから君の体を詳しく、検査するとしよう。実験結果のレポートを書いて学会に提出せねばならんからな。これで、今年の最優秀科学技術賞も、間違いなくわしのモノじゃな!」

ウラノス博士は、アンドロイド2体に絵里子を精密検査室へ連れて行くように命令した。

 

 精密検査室では、蘇生された絵里子の死体が、念入りに検査された。いつ暴れ出さないとも限らないので、脳内コンピューターには厳重な、肉体の抑制命令が出され、さらにアンドロイドが両脇から絵里子を押さえ込んでの検査である。

「体温は、全く無いな。完全に冷え切っておる。まさに死体だ。呼吸もしていない。妙に筋肉が硬いのは、死後硬直のせいかな」

ウラノス博士は、カッターナイフで絵里子の腹部の皮膚を薄く切り裂いてみた。

「傷を付けても血がほとんど出ない。血流も極めてゆっくりだ。実験の予測データでは、損傷を受けた傷の治癒力はゼロのはずだ」

ウラノス博士は、緑色の液体の入った注射器を取り出した。ゾンビ用に事前に造っておいた栄養剤である。これを定期的に打たないとゾンビは、人間を襲い、脳ミソを食べようとする。

「これが、お前の食料ってわけだな」

栄養注射をした後、数時間かけて詳細なデータを取ったウラノス博士は、監視カメラ付の別室に絵里子を移すよう、アンドロイドに指示を出した。その部屋には、さざなみ刑務所から連れてこられた政治犯の若い男が全裸で監禁されていた。男は、入ってきた絵里子の無表情な顔と、生気のない青白い裸体に、ただならぬ気配を感じたようだった。

「な、何をしようってんだ。この顔色の悪い女は一体、何なんだ!」

「さあ、食事だよ。」

ウラノス博士とアンドロイドは、部屋の扉を閉めてロックすると、隣の部屋から、モニターで様子を観察する事にした。男は、棒立ちになっている絵里子に対して、拳を固めて身構え、恐怖の表情を浮かべている。

「な、なんだ、てめえ!俺とやろうってのか!」

ゆっくりと絵里子は歩き出した。口を開け、歯を剥き出しにしている。男は向かってくる絵里子に対して、回し蹴りを食らわせた。

「ぎえっ!」

叫んだのは男の方だった。死後硬直した絵里子の肉体に弾き返され、足の骨が砕けたかと思った。

「なんて固えんだ!」

足を押さえてうずくまった男に、絵里子が覆いかぶさっていった。

「うわあっ!やめろおおおっ!」

絵里子は、男の頭にかじりついた。頭蓋骨を殴って陥没させ、歯で頭皮を引き剥がす。そして、頭蓋骨の割れ目から脳ミソを貪り始めた。

「ぐぎゃああああ!」

脳幹をかじりとられて、男は絶命した。絵里子は一心不乱に脳ミソを喰らい続けた。

「恐ろしい光景じゃな・・・」

別室のモニターで観察していたウラノス博士が呟いた。地球の映画に登場するゾンビのように、噛まれたからといって感染する事はなく、食われた男もゾンビになるわけではない。死体を蘇生させるためには、DNA変換カプセルでの処理が必要なのだ。

「栄養剤のアンプルを切らさないようにしないといかん」

ウラノス博士は、カルテの備考欄に書き加えた。

 

 青山優作刑事(36歳)は、コンビを組んでいた中津絵里子が、殉職してからというもの、気の抜けた炭酸飲料のような、虚ろな日々を送っていた。そして時々、殉職時の様子を思い出すと、発作のように荒れ狂い、人間警察犬のヘレンを虐待した。

「代わりに、お前が死ねば良かったんだ。なぜ、お前が盾にならなかった?ああっ?」

優作はヘレンの体を思いっきり蹴っ飛ばした。ヘレン(30歳)は、鈍い悲鳴をあげて飛び退った。ヘレンの脳には、どんなに虐待を受けても、刑事には逆らえないように、プログラムされたコンピューターチップが埋め込まれている。

「薄汚い豚犬め!犬のくせに、そんなに命が惜しいのか?なんなら、俺が殺してやろうか!」

意味不明な言葉を口走り、優作は拳銃を取り出すと、銃口をヘレンの豚鼻に押し当てた。

「ブヒー、ブヒー・・・助けて惜しいワン・・・」

ヘレンは哀願した。かつての誇り高い、エリート工作員の面影はどこにもない。

「フン、お前なんか撃ったら、弾がもったいないぜ!」

優作は、拳銃の台尻で、いまいましげにヘレンの頭を殴りつけた。ヘレンが、悲しげな鳴き声を上げた。優作の鬱憤は、情報屋の矢萩麻衣(21歳)にも向けられた。

「お前の情報のせいで、絵里子は死んだんだ!」

優作は、浮浪少女の住家であるバラックに蹴りを入れ、壊そうとした。

「やめろよっ!関係ないだろっ。あんたが、自分から、あたしの情報を欲しがったんでしょっ!」

麻衣は、必死に、バラックを壊す優作を止めようとした。

「おいっ、お前、今俺の体に触ったな?公務執行妨害だ。逮捕してやるっ!」

「ふざけんなよ!この悪徳警官っ!」

バラックの柱が折れて、ペシャンコになった。残骸の下から、下敷きになったケーブル人間、木之本恵美(28歳)の呻き声が聞こえてきた。

「あ・・ああ・・重い・・苦しい、死ぬう・・・」

その時、優作の上着の携帯電話が鳴った。上司の課長からだった。

「は・・はい、青山です。えっ、中津刑事が復帰?どう言う事です?・・・ええ、すぐに署に戻ります!」

優作は、もう浮浪少女など眼中になく、あわてて覆面パトカーに乗り込むと、猛スピードで署に戻るために、走り去って行った。

 

 刑事課のオフィスに優作が息を切らせて駈け込んで行くと、そこには以前と変わらない服装の中津絵里子刑事が立っていた。さざなみ署の服装規定通り、上半身にはベージュのスーツを着ているが下半身は剥き出しである。

「絵里子!助かったのか?」

優作は、絵里子の肩に手をかけた。妙に冷んやりとした。

「ユ・・・ユウサク・・・」

絵里子の口から篭った声が発せられた。以前の、か細くカン高い絵里子の声とは似ても似つかない、人間離れした低い声だった。

「怪我はもう大丈夫なのか?それにしても、生きているなら、どうして早く教えてくれなかった?水臭いぞ!」

「中津刑事は、ネオガイア星宇宙軍の研究施設で治療されていたそうだ。以前のようにまた、君とコンビを組んで働いて貰う。これが、取り扱い説明書だ。よく読んでおいてくれ」

課長が、冊子を優作に手渡した。

「取り扱い説明書?」

優作は、パラパラと、めくって目を通した。

「24時間に1回、必ず栄養注射を打つ事。食事、水分補給、睡眠は必要なし。体組織には、治癒能力がないので外傷には注意する事・・・なんですかこれは?」

「中津刑事の取り扱い説明書だよ。彼女は治療の副作用で、少々、特殊な肉体になったようだ。君に預けておくから、粗相の無い様に頼むよ。なにか不祥事が起きて、私がクビになるのは困るからね」

前任の課長は、ネオガイア星人からクビを言い渡されて、文字通り断首されたのだ。優作は取り扱い説明書を読み進むに連れ、眉間に皺を寄せ、苦悩の表情を浮かべた。

 

 青山優作と中津絵里子の刑事コンビは復活し、早速、ヘレンを連れて聞き込み捜査に出る事にした。さざなみ市に潜入している各国のスパイを洗い出し、逮捕しなくてはならないのだ。先日のミサイル事件での容疑者も、まだ市内に潜伏している可能性がある。2人と1匹が、街の中を歩いていると、通行人達が、彼らに目を合わさないように、避けて通っていった。この町で下半身を露出して、外をうろついているのは警察関係者だけである。間違って、すれ違いざまに肩でも触れ合おうものなら、公務執行妨害だと言いがかりをつけられ、豚箱に放り込まれかねないのだ。

「豚犬、何か臭うか?」

「何も臭わないワン」

2人と1匹が、何の収穫もないまま、いつもの公園にたどり着くと浮浪少女が懸命にダンボール箱やビニールシートで、バラックの小屋を建て直している所だった。

「浮浪少女、何か新しい情報はないか?」

「フンッ、誰がお前なんかに教えるもんか」

バラックを壊された麻衣は、怒っていた。

「チッ、ちゃんとした家も無い癖に、生意気な女だなっ!」

優作は、建ち直りかけていた小屋の柱に蹴りを入れ、再びバラックは倒壊した。

「てめえっ!何しやがる!」

麻衣は怒り狂って、両腕を振り回し、優作に掴みかかった。しかし、格闘なれした優作はヒョイと身をかわすと、麻衣の鳩尾にパンチをブチ込んだ。

「げふっ!」

「ハハハハ、今日は気分がいい。パクるのは勘弁してやるよ」

「くそ・・・覚えてろっ!悪徳警官!」

目に涙を浮かべながら、悪態をついている麻衣を尻目に、優作達は覆面パトカーへと戻っていった。優作はいつになく上機嫌である。すでに死んでいる絵里子は無表情だった。覆面パトカーを走らせてしばらくすると、パトカーの無線が鳴り始めた。

『全パトカーに告ぐ。緊急事態発生です。さざなみ北3丁目のメイド喫茶、いちごレイヤーズにて、人質籠城事件発生!所轄内の全パトカーは現場に急行してください。繰り返します・・・』

「事件だ。急ごう!」

優作は目を輝かせた。彼は刑事課でも最も血の気の多い刑事なのだ。ヤマが大きければ大きいほど、はしゃぐタイプだった。優作は、マグネット式の赤い警報ランプを車体の天井の上に吸着させると、サイレンをボリューム一杯に鳴らして、急ハンドルを切った。不意のUターンで、後続の車が追突事故を起こしていたが、気にも留めない。約18分後に現場に到着すると、すでに数台のパトカーが到着し、メイド喫茶の入居しているテナントビルを包囲している最中だった。

「状況はどうだ?」

優作は、顔見知りの制服警官に尋ねた。

「人質は、従業員のメイド4人と、たまたま居合わせた客が10人程度です。犯人の人数や素性は、まだ判明していません」

「メイドを人質か・・・今、犯人が、中で何をやっているかは、想像出来るな・・・」

優作の心配は、的中していた。店の内部では、アーミーナイフやピストルを持って押し入った犯人の男達3人が、メイドにあらん限りの陵辱を加えていた。テーブルに手をつかせて並ばせたメイドをバックスタイルで順番に、代わる代わる犯している。客はオタク系の男性客ばかりで、誰も止める勇気のある者はいない。犯人が入店してきて、

「お帰りなさいませ、御主人様」

と最初に挨拶をした途端に刺されたメイドの一人は、血を流して、床にうずくまっている。

「おらおら、俺達は、御主人様だぜ!粗相のないように奉仕しな!」

犯人の茶髪の男達は、あきらかにこの店の客層とは違う種類の人間であり、バイオレンスチックな雰囲気を振りまいていた。可愛らしいメイドの女の子達は、自分の愛液のついたチンポを口に含まされ、懸命に奉仕しなくてはならなかった。

「どこに立て籠もったって、良かったんだがよう。リーダーが、どうせならメイド喫茶にしようって言い出したんだ。悪く思うなよ」

犯人達は、メイドを散々弄び、数回づつ射精して満足すると、やっと包囲している警察相手に要求を突きつける事にした。

「現金10億円と逃走用の車を用意しろ!いいか、1時間以内だ。10分遅れるごとに人質を一人ずつ殺す!わかったか?」

リーダー格の犯人が、店の外へ大声で怒鳴った。包囲している優作は顔をしかめた。

「調子に乗りやがって・・・よし、強行突入しよう」

「えっ、今すぐにですか?まだ1時間経ってませんよ。まず、犯人と交渉とかしないんですか?」

周りの警官達があっけにとられた。

「交渉はしない。時間の無駄だ。どうせ、こういう場合、いつも最後には強行突入する事になる。俺は、結果が同じなのに、モタモタと時間を費やすのが大嫌いなんだ」

「しかし、人質の安全が・・・」

「もう、ここは日本の領土じゃない。多少の犠牲が出ても、どこからも文句は言ってこないさ」

優作の勢いに巻き込まれる形で、強行突入する事に決定した。ジュラルミンの盾を持った警官隊が正面を包囲している間に、優作達突入班は、裏口に回る。

「ガ・・・ガガ・・・アタシガ、先頭デ突入シマス・・・」

絵里子が、篭った聞き取りにくい声で言った。

「それは、危険だ。そういう役はヘレンにやらせればいい」

「大丈夫デス・・・アタシノ体ハ、モウ死ンデイルノデスカラ・・・」

優作が止めるのも聞かず、絵里子は裏口のドアを開けた。メイド喫茶の中では、犯人達が面白がって、客のオタク青年達にメイドを強姦させている最中だった。絵里子がのっそりと入っていくと、犯人達は慌てふためいた。

「しまった、サツだ!なんでこんな早くに・・・」

リーダー格の男は、とっさにピストルを構え、絵里子の肉体に撃ち込んだ。弾は確かに胸、腹などに命中したが、絵里子は痛みを全く感じない様子で、歩みを止めず、犯人に迫った。

「化、化け物だ・・・」

別の男がアーミーナイフを振り回した。ナイフの切っ先が、絵里子の腕や顔面を切り裂いたが、パックリと開いた傷跡からは、流れ出る筈の血潮が噴出しなかった。

「ガ・・・ガガ・・・傷害、オヨビ婦女暴行、監禁容疑デ逮捕スル・・・」

絵里子が、犯人の一人を捕まえると頭部に噛り付いた。

「うぎゃああ、助けてくれえっ!」

脳ミソをかじられて男は、すぐに絶命した。その様子を見ていた他の2人の犯人は戦意を失くしたようだった。

「ひっ、ひいいい・・・・命だけは助けてくれ。自首するからよう」

絵里子に続いて突入してきた警官達は、やすやすと犯人を逮捕する事が出来た。優作は、脳ミソを貪っている絵里子の姿を見て度肝を抜かれた。

「し、しまった・・・注射を打つのを忘れていた」

あわてて上着のポケットから無針注射器を取り出すと、剥き出しになっている絵里子の太股に押し付けた。栄養剤が注入されると、ようやく絵里子は犯人の死体から手を離した。

「ふう、なんてこった・・・」

優作は、絵里子の右頬にパックリと開いた傷跡を眺めてため息をついた。ゾンビ人間の肉体に付けられた外傷は永遠に治癒することがないと聞いている。犯人に撃たれた腹部の銃創の数も、増えたはずだった。

「だから、言わんこっちゃない・・・君の体が傷つくのを見るのは耐えられないんだよ・・・頼むから、もう、こんな無茶はやめてくれ・・・」

優作は泣き声になっていた。

 

第127話、東条志津子の華麗なる日常生活

 

 東条志津子(37歳)は、毎朝、7時ちょうどに目を覚ます。

「志津子様、朝でございます」

ベッドの脇に、全裸で正座をし、三つ指をついて声をかけてきたのは、3ヶ月前に、美男オークションで購入した奴隷の渡部則之(20歳)だった。則之は、ついこの前まで、某有名大学の法学部に在学していたフレッシュボーイである。志津子は、眠い目をこすりながらベッドから起き上がった。

「志津子様、朝食の用意が出来ております」

「その前にオシッコがしたいわ」

「では、私の口へどうぞ」

則之はベッドに腰掛けたままの志津子のネグリジェの裾を巻き上げ、派手な紫のラメ入りパンティを脱がせた。そして熟女の蒸れたオマンコにピッタリと唇を押し当てる。最近、志津子はトイレでオシッコをする事はめったにない。いつも連れ歩いている則之の口を、携帯用トイレとして使っているのだ。朝一番の濃いオシッコを平気な顔でゴクゴクと飲み下した則之は、1滴たりともこぼしたり、むせたりする事はなかった。よく調教されている。

「クンニ」

寝ぼけながら、志津子がつぶやいた。則之は放出されたオシッコを完飲すると、オマンコに口をつけたまま、舌を割れ目の奥へと這わせていった。眠気覚ましの代わりにクンニをさせるのも、ほぼ、毎朝の習慣になっている。

「アウ、アアッ・・・もっと奥まで舌を伸ばしなさい・・・」

「はひ、ひずこさま・・・」

則之は懸命に、痛いくらいに舌を伸ばしてオマンコをしゃぶり続けた。3ヶ月前までの、弁護士を目指して勉強に励んでいた大学生活が、遠い昔の出来事のようである。則之の人生は、表の社会から消え、志津子に飽きられれば再びオークションにかけられて、死ぬまで転売され続ける運命なのだ。

「アッ・・・ウッ!」

志津子は、オルガスムスを迎えた。そして、弾んでいた胸の呼吸が落ち着いてくる頃には、すっかり眠気も覚めていた。ゆっくりとした足取りで、寝室からキッチンへ移動し、則之が1時間前に起きて用意していた朝食に手を付ける。朝食は少し多めに用意されており、志津子の食べ残したものを則之が食べるのだ。志津子は、満腹になるとテレビをつけ、経済紙の朝刊に目を通した。自分の会社の記事が掲載されている。

『AVメーカー、初のマザーズ上場!買い気配のまま値がつかず!』

志津子はほくそ笑んだ。話題が話題を呼び、雑誌などでも特集が組まれるに違いない。ここ数日来、マスコミから、社長である志津子への取材要請が相次いでいた。

(絶好調ね!)

志津子は、排便を催してきた。トイレへと入る。さすがに大便は、則之の口には出さない。以前、何度か試みた事はあるが、排便後の則之の口臭がひどく、連れ歩くのが、はばかられたため、よほど我慢が出来ない時以外は、普通にトイレを使用している。それでも、排便後の肛門洗浄だけは、則之の口でやらせていた。

「終わったわよ」

志津子が声をかけると、則之が飛んできて、便座から立ち上がった志津子の御尻に顔をうずめ、ペロペロと舌で洗浄をする。水洗レバーを引いて水を流すのも則之の役目だ。トイレットペーパーの役目を終えた則之は、トイレの水で何度も口をすすぎ、口臭スプレーで念入りに臭いを消すようにする。これから出勤する志津子に、影のごとく付き添わなければならないからだった。志津子の着替えや、化粧を手伝うのも則之の仕事だった。

「今日は、これとこれを着ていくわ」

志津子がクローゼットの中から選んだ服に、手取り足取り着替えさせていく。毎日の事なので手馴れたものだった。朝8時30分、準備が整った志津子は全裸の則之を連れて、自宅の高級マンションを出た。地下駐車場からマイカーに乗り、車で15分の距離にある会社のオフィスへと向かう。マイカーは志津子が運転をし、則之は後部座席のシートの下にうずくまった。こればかりは、表の社会から消された則之が、免許を持っていないので仕方がない。

(今日は、来年の新卒社員採用の、社長面接の日だわ)

志津子は、目を輝かせて、舌の先でペロリと唇を舐めた。AVメーカーと言えども、上場企業になれば有名大学から優秀な学生が入社試験を受けに来る。志津子はまず、書類選考で美男ばかりを選び、さらに人事担当者による1次面接で10名まで絞り込ませていた。

(青田買いが激しい昨今に、こんな時期まで、就職活動を行っている学生が本当に優秀かどうかは、疑問符だけどね・・・まあ、AVメーカーだと判っていて受けにくるんだから、少し人とは違う価値観を持っている事は確かかな・・・)

志津子が、オフィスビルの駐車場に車を止めると、年配のガードマンの男がうやうやしくお辞儀をした。しかし志津子は意識にも止めず、無言でガードマンには一瞥もくれない。上場企業の社長である志津子にとって、ガードマンの男など、人格を持った人間ではなく、朝の風景の一部でしかないのだった。

 

 新卒社員の社長面接は午後からだった。5人ずつの集団面接方式で実施される。面接官は、社長である志津子と人事担当者、実質的に副社長である制作部長、会計関係を任せている経理マンの4人だった。それと志津子のプライベート奴隷の則之が、全裸で面接会場の隅に直立不動の姿勢で立っている。人事担当者に誘導されて面接会場に入ってきた5人のリクルートスーツを着た学生は、全裸の則之の姿を見てギョッとしていたが、必死に冷静さを保って、顔に出ないようにしているようだった。

「おかけ下さい」

「失礼します」

4人の面接官と向き合って、パイプ椅子に腰掛けたのは、4人の男子学生と1人の女子学生だった。いずれも一次面接を通過した美男美女である。志津子は手元にある履歴書と、実物とを見比べた。

「ではまず自己紹介と志望動機を述べて下さい。1番山下さんからどうぞ」

人事担当者が司会進行役を努めた。

「はいっ、丸都大学経済学部経営学科4回生の山下俊二です。私は幼い頃より、映画が大好きで、将来映画監督になるのが夢でした。大学では映画同好会に所属しており、ホームビデオを使った自作映画の制作もやっています」

「今まで、どういう映画を撮ったの?」

興味を持った志津子が質問をした。

「アクションものです」

「アダルトは?」

「さすがに大学のサークルでアダルトビデオを制作するというわけには参りません。でもアダルトビデオも非常に好きで、ぜひ制作に携わりたいと考えております」

俊二は、聡明な学生らしく、物怖じせずにハキハキと答えた。

「ふーん。うちの会社では社員に男優をやってもらう事もあるのよ。あなた人前で裸になれる?」

俊二は少し戸惑ったようだった。

「な・・なれます」

「じゃあ、今ここでズボンとパンツを脱いでみて」

俊二は顔面蒼白になった。ある程度、予測はしていたが、緊迫感の漂う面接会場で実際に脱ぐとなると恥ずかしさは想像を絶するものがあった。しかも自分がトップバッターなのだ。やりとりを聞いていた他の4人の学生も緊張が頂点に達しているのがわかった。次は自分たちの番なのである。俊二は、気力を振り絞って椅子から立ち上がった。体の感覚がなく、今にも平衡感覚を失くして倒れてしまいそうである。そして、ズボンのベルトに手をかけ、冷や汗でヌルヌルになった指で金具を外した。ズボンを下ろし、片足づつ抜き取る。その間、わずか数秒だったが、永劫の時間が流れたような気がした。

「パンツも下ろしなさい。あなたのオチンチンが、わが社のビデオにふさわしいかどうか見てあげるわ」

俊二は、パンツを下ろした。この異様な状況に興奮したのか、チンポは勃起し、そそり立っていた。

「あら、勃起しているの?いい度胸ね。緊張のあまり立たないかと思ったわ。亀頭がいい色をしている。でもサイズが小さ過ぎる」

俊二は、女社長にサイズが小さいと言われ、一瞬、不合格かと思った。

「オナニーしてみて」

「えっ・・・」

俊二はそこまでやるのか、と思った。しかし、減点を取り返さなくてはならない。震える右手を屹立したチンポに添えると、直立姿勢で立ったまま、しごき始めた。

「ビデオに出演する男優は、決められた時間丁度で、射精しないといけないのよ。時間を計ってあげるから3分丁度で射精しなさい」

志津子は用意していたストップウォッチのボタンを押した。俊二は、どうしていいか判らない。過去にこんな難題をふっかけられた事はなく、気が動転してしまっている。4人の面接官や、残りの学生達の視線と注意力が、痛いほど自分に注がれているのを感じた。

「イク時はイクッて言うのよ」

「はいっ!」

俊二はしごき続けた。下半身の筋肉が小刻みに痙攣している。

「あっ・・・あああっ!」

俊二はのけぞり、目の前が真っ赤になった。そして射精した。パッパッと白い精液が勢いよく飛び散り、1メートルほど先のカーペットを汚した。

「2分38秒。それにイクって言わなかったわね。もういいわ、座りなさい」

俊二はヘナヘナとパイプ椅子に座り込んだ。落ちた、と思った。

 

 俊二の後、3人の男子学生が面接された。志津子の思いつくままにオナニーをさせられたり、裸でポーズをとらされたりした。会社への忠誠心を示すということで、志津子のヒールを舐めさせられたものもいる。3番目と4番目の男子学生は、互いに、互いのアナルを犯すように要求された。

「うちは、ホモビデオも力を入れているのよ」

学生たちは、社員になろうとしているのであって、男優を志望しているわけではないのだが、面接に合格するためには、志津子の要求を拒否する事は出来ない。ノン気の男子学生達は、吐きそうになりながら、互いのチンポをしゃぶり、肛門を犯し合った。そして最後に5番目の女子学生の番がきた。

「緑山学園大学文学部国文学科4回生の芦沢友里です。志望動機は、女性の性欲を解放し、社会的に認知させる、という御社の経営方針に共鳴いたしました」

「うちのビデオ、見たことある?」

「はい、あります。『パイロット肉欲飛行』と『美男教師、壮絶レイプ』を見ました。とても興奮しました」

「どこで購入したの?」

「通信販売です」

「そう。わが社の制作するビデオのほとんどは、通信販売か、ネットのダウンロード販売で売られているのよ。一般の女性が、店頭では買いにくいのね。でも、これからは、ビデオ販売店や、レンタルショップでの販売経路の開拓にも力を入れていくつもりです」

「私も、採用の暁には、営業部門で頑張りたいと思っております」

「頼もしいわね。あたしは、実を言うと、女性の裸には興味がないのよ。あなたは服を脱いだりしなくてもいいわ。その代わり、あそこにいる男を思いっきり、いじめてみて」

志津子は、面接会場の隅に立っている全裸の則之を指差した。

「彼は、あたしがオークションで買ったプライベート奴隷だから、何をしてもいいわ」

友里は戸惑いを見せなかった。黒髪で清楚な顔に、残忍な表情を浮かべると、すっくと立ち上がり、つかつかと則之の方へ歩み寄って行った。そしていきなり、則之の髪の毛を鷲掴みにした。

「てめえっ!ボケッと突っ立ってんじゃねえよ!」

友里は、それまでの態度からは、到底予想できない豹変ぶりで、叫ぶなり、則之の腹に膝蹴りを食らわせた。ぐふっと呻き、お腹を押えた則之の体が鯖折になる。友里は左手で則之の髪を鷲掴みにしたまま正面を向かせ、右手で往復ビンタを見舞った。パチーン、パチーンと小気味のいい音が面接会場に響き渡る。友里は根っからのS女性のようだった。

「何、泣いてんだよっ!あたしの目をしっかり見な!」

則之が、涙ぐんだ瞳を、必死に友里の視線に合わせようとした。力一杯ビンタを受けた頬がズキズキと痛み、顎の骨にヒビが入ったような気がして、則之は生まれたての子馬のように怯えていた。目を合わせたまま、十数発のビンタを見舞った友里は、今度は則之の裸の胸に両手の指で爪を立てた。そして、肉に食い込ませたまま、下腹部まで引き下ろしていく。十本の赤い筋が則之の胸から下腹部まで刻まれ、うっすらと血が滲んだ。

「うっ・・・ああ・・・」

則之が恐怖に震えている。その顔面に、友里がペッと唾を吐きかけた。

「どう?あたしに虐めてもらって、うれしい?」

「は・・はい・・」

「返事は、もっとハッキリ言いなさいよ!」

「はいっ!」

「じゃあ、もっと虐めて上げるわ。仰向けになって、横になりなさい」

従順に、床に寝転がった則之の股間を、友里は片足を上げて、パンプスの靴底で踏みにじった。リクルートスーツの女子学生が、全裸の若い男性を苛め抜いているその光景は、そのまま撮影すれば、1本のアダルトビデオとして商品になりそうだった。

「凄くいいわ。あなた、SMクラブで女王様のアルバイトをした事があるの?」

志津子が言った。

「いえ、SMプレイの経験はありません。御社のビデオを見た記憶を元に、見よう見まねでやってみました」

「でも、Sの素質はあるのね?」

「はい、S願望は、かなり強い方だと自覚しております」

「あなたには、営業よりも製作部門の方が、合ってるかもね」

「ありがとうございます」

5人の面接が終了した。合否の結果は後日電話連絡されることになる。学生たちは乱れた服装を直し、身だしなみを整えて退出していった。そして、その後の面接会場の床には友里に痛めつけられた則之がグッタリと横たわって泣いていた。

(ああ・・・お、俺も、本当は、あいつらと同じ、将来に夢を持った大学生だったんだ・・・来年、司法試験を受けようと思ってたのに・・・どうしてこんな事に・・・)

則之は、大学近くの路上で、睡眠薬を嗅がされて誘拐された時の事をまざまざと思い出した。その少し前から、美男オークションを主催している組織にターゲットにされていたのに全く気が付いていなかった。しかし、いずれにしても一旦組織に目を付けられたら、こうなるのは、逃れようの無い運命だったのだ。死ぬまで美男奴隷として所有者に奉仕する、それが則之の残された人生の全てだった。

 

第128話、M女漂流記

 

2005年の初春、梅本由梨香(25歳)は、インド洋を航行中のマグロ漁船『第4小竜丸』から海に投げ込まれた。ヤクザによって売られ、マグロ漁船で乗組員の性欲処理に使われていた由梨香は、マグロ漁が終わり、証拠隠滅のため消される事になったのだ。海に突き落とされた由梨香は妊娠7ヶ月であり、大きく膨らんだ腹が浮き袋の役目を果たして、すぐに溺れ死ぬという事はなかった。赤道直下であるため、海水も暖かい。

(体中の傷に海水が染み込んで痛いわ・・・なんて快感なの・・・)

由梨香は、重症マゾだった。1年半前、宇宙人に拉致されて、普通の人間を重症マゾに変える薬品を投与されたのだ。由梨香の体には、いたるところにピアッシングの跡や、卑猥な文字が刺青されている。元イベントコンパニオンだった由梨香は美人でスタイルも良かったが、それが一層、痛々しさと淫靡さを醸し出している。

(ああ、神様!こんなに酷い目に合わせて頂いて、あたし、なんて幸せなのかしら)

由梨香の脳内には、エンドルフィンが充満しているため、死を目前にしても何の恐怖も感じない。逆に、全身の傷の痛みを楽しみながら、来る日も来る日も由梨香は、南海の海を漂い続けた。時折降るスコールで咽喉の渇きを癒す事も出来る。そして5日目、大嵐に巻き込まれた由梨香の裸体は、気がつくと海岸に打ち上げられていた。砂にまみれてヨロヨロと立ち上がった由梨香は、辺りを見回してみる。どうやら島のようだった。

(無人島かしら。それなら大変!あたしを虐めてくれる人が、誰もいないって事だわ)

由梨香は自分の体を見下ろした。5日間何も食べていなかったせいか、全体的に痩せたような気がするが、胎児の入っている下腹部だけは大きく突き出ている。海に放り込まれる直前に、船員達によって、体中のピアスを引き千切られたため、唇、鼻、乳首、耳たぶ、、大陰唇などの皮膚が無残にも引き裂かれていたが、クリトリスと舌を貫通しているリングだけはそのまま残っていた。

(自分で自分を虐めなきゃ)

南国のせいか、食料になるようなものは、ふんだんにあった。椰子の実や、貝、蟹、海藻など、由梨香一人では食べきれないくらいの量を、砂浜付近で簡単に獲る事が出来る。熱帯なので住居も特には必要なく、由梨香は、それらの食料を、生のまま腹一杯食べると、裸のまま砂浜に寝転がって眠った。そうして体力が回復すると、由梨香は沸き上がってくるマゾの衝動を満足させるために、自分で自分の体を痛めつけ始めた。椰子の葉を束ねて作った手製の縄で自分の両手を後手に縛ってみる。自分でやると、なかなかうまくいかない。そうして両手を縛ったまま、内陸の草むらの中を走り回り、木の枝や草、棘などで自分の体を痛めつけるのだ。一日中オマンコを濡らしながらジャングルの中を走り回った由梨香が海岸へ戻ってくると、全身、引っかき傷だらけで、由梨香が望んでいた理想の姿になっていた。

(ああ、気持ちいい。幸せ・・・)

由梨香は全身のかきむしるような痛みをオカズに、砂浜で、一人何回も何回もオナニーにふけるのだった。

 

 来る日も来る日も由梨香は、人知れぬ浜辺で、ひたすら自虐に励んだ。捕まえたカニにピアスで裂けた自分の乳首を挟ませたり、生きたままオマンコにねじ込んだりした。夜はわざと険しいギザギザの岩の上で眠ったり、得体の知れない草の葉を絞った汁を傷口にすり込んで、激痛を楽しんだりした。脳下垂体から、常にあふれ出しているエンドルフィンは、体の耐性や免疫力を高める効果があるらしく、由梨香がどんなに自分の肉体を痛めつけても、快楽を感じ続けている限り、体調を崩したり病気にかかったりすることもなかった。これは、驚異的な人体の不思議である。お腹の胎児も順調に成長を続けていた。父親はマグロ漁船の船員の中の誰かである事は間違いない。彼らは今頃、日本の港に帰りつき、収穫したマグロを売り払って借金を返済しているのだろう。浜辺に打ち上げられて1ヶ月が過ぎた頃、由梨香は自分以外の誰か、他の人間に虐められたくて我慢が出来なくなってきた。

(誰か、いないのかしら。ここは本当に無人島?探検してみなくちゃ)

由梨香は、自分を虐めてくれる人間を探すために島の内陸部へ、探検旅行に出る事にした。住み慣れた浜辺を後にし、8ヶ月のお腹を抱えて全裸で、前人未踏のジャングルの中へと分け入っていく。密生した植物の中を全裸で進み、虫に噛まれたり、草木に体を傷付けられるのも、また快感だった。そして1週間の間、ジャングルをさ迷い続け、とうとう由梨香は人間の住む集落を発見した。住んでいるのは腰蓑を身に纏っただけの、半裸の黒人のようだった。

(島の原住民だわ。人食い人種かも!)

由梨香は期待に胸を膨らませた。彼らなら、自分を苛め抜いてくれるかもしれない。由梨香が、カヤブキの粗末な小屋が立ち並ぶ集落の中に、ノコノコと入っていくと、平和に普段の生活を営んでいた黒人達は慌てふためき、やがて腰蓑と槍で武装した男達が由梨香を取り囲んだ。

「ケチャ、クチャ、コチョカ!」

訳の判らない言葉で原住民の男が叫んだ。怒っているようだ。今まで、明らかに自分達とは違う人種の妊婦が、裸で、突然現れる事など無かったのだろう。由梨香は歓喜にむせび泣いた。

「ああ、黒人様!あたしを思いっきり虐めて!」

由梨香は、敵意を剥き出しにしている黒人戦士の足元に土下座をする。何十本もの槍の矛先が無防備な由梨香の裸身に突きつけられると、恐怖が快感へと変換されて由梨香の脳髄を焼き尽くした。由梨香は服従の証に、黒人戦士の埃まみれの足に口漬けをし、目の前でピヤス付きのクリトリスをいじってオナニーを始めた。

「チャンゴ!」

黒人戦士は、金属光沢を放つピアスに興味を示したようだった。彼らの持っている槍も石槍であり、金属は見たことがないらしい。部族の権力者らしい、派手な野鳥の羽飾りを付けた年配の男が、由梨香の所有権を主張した。

「チョモ、ケチャ、キザーラ!」

身振り手振りから、これは俺の物だと言っているらしい。由梨香は念願が叶って、赤道直下の島で、新しいご主人様を見つけることが出来たのだった。

 

 由梨香は、集落の中でも一回り大きい小屋へと連れていかれた。酋長には5人の同族の妻がおり、由梨香は彼女たちに飼われる事になった。人種の違う由梨香は、同じ人間とはみなされず、家畜並みの扱いだった。由梨香は、棒で殴られたり罵られたりしながら、酋長の妻達にこき使われ、言葉も教え込まれた。少し会話が出来るようになると、彼女達の部族はケチャ族と呼ばれ、酋長の名前はウンボバだと言う事が判った。有史以来、文明世界とのつながりは無く、島に点在する他の部族の村と、常に争いが絶えないらしい。由梨香が最初に期待した通り、彼らは人食い人種で、村のゴミ捨て場には、食後の人骨が大量に転がっていた。

(あたしは、見知らぬ島で、人食い人種に食べられて一生を終えるのだわ。)

重症マゾの由梨香は、毎日、意地の悪い黒人女たちに虐められながら、至高の幸福感を味わっていた。由梨香は、毎晩、酋長の小屋の前で、縄に首をつながれて夜を過ごす。南国なので寒くは無いが、時折降るスコールに体を濡らされ、虫が寄ってくるので、翌朝はいつも、全身虫に刺された跡だらけだった。やがて、そんな生活が2ヶ月続き、由梨香は臨月を迎えた。

「あっ、ああっ!生まれる!」

小屋の前に繋がれた由梨香は、夜中に産気づいたが、誰も出産を手伝ってくれるものはいなかった。ケチャ族は、飼っている動物が、子供を産もうとしている、ぐらいにしか考えていないらしい。由梨香は、一晩中苦しみぬいた挙句に、明け方近く、自力で男の子を出産した。

「オギャアッ!オギャアッ!」

元気よく泣く赤ん坊の声に、酋長の妻の一人が眠い目をこすりながら起き出してきた。大声で酋長を呼ぶ。

「ユリカ、子供、産んだ」

この頃には、片言なら、ケチャ族の言葉は理解出来るようになっていた。酋長と他の妻達も起き出して来て珍しいそうに、由梨香の生んだ赤ん坊を眺めた。由梨香は出産の疲労とショックで、さすがにグッタリとしている。酋長は、生まれたての赤ん坊を見て舌なめずりをした。

「うまそう。これ、朝飯」

酋長が、妻達に合図をした。妻の一人が泣き叫ぶ赤ん坊を抱き上げる。由梨香は弱々しく手を伸ばし、赤ん坊を取り返そうとしたが、その手をパチンと別の妻に叩かれた。

「酋長、朝飯、手を出すな」

「アウッ、それだけは、やめて・・・・由梨香の赤ちゃんを返して・・・」

ジタバタと暴れようとする由梨香を、妻達が寄ってたかって足蹴にした。出産で体力と気力を使い果たした由梨香は、どうする事も出来ず、ただ叩きのめされるしかなかった。

(ああ、神様・・・これも、あたしがマゾだから仕方がないの?)

やがて小屋の奥から、肉の焼ける香ばしい匂いが漂ってきた。由梨香の心の中では、マゾの快楽と、母性本能が責めぎ合い、狂気の快楽の海に溺れてしまいそうだった。やがて、妻の一人が木の器に入った人骨を持って小屋から出てきた。

「ユリカ、子供、とてもうまかった。これ、捨ててこい」

由梨香は、先程生まれて数時間でこの世を去った、自分の赤ん坊の骨を受け取ると、泣きじゃくった。

「また、子供産め、と酋長言っている」

「うっ、うう・・・はい、判りました・・・由梨香は重症マゾです。おっしゃる通りに致します・・・だから、もっと虐めてください・・・」

由梨香は、産後の体を引き摺って、よろよろとゴミ捨て場へ向かって歩き始めた。

 

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