第111話、帰ってきた拷問者

 

宇宙人の租借地であるさざなみ市の植民地総督府ビルの執務室では、総督代理であるペルセウス長官が、本国との超空間通信の回線を開いていた。

「ようやく、新しい総督を、地球に派遣することになったよ」

通信相手は、ネオガイア星の最高権力者であるゼウス大執政官だった。

「そうですか。これで、私も肩の荷が下ります。一介の軍人である私には、地球を預かるというのは、少々荷が重過ぎます。」

ペルセウスはホッと胸を撫で下ろした。正式な総督の派遣を、本当に心から歓迎したい気持ちである。

「いや、それが、そうとも言えんかもな。今回の総督には民間人を任命する事にした。君も知っての通り、このところゴルァ星人が不穏な動きを見せている。ネオガイア星の宇宙艦隊は辺境星域に展開し、最高度の警戒態勢をとっていて動かすわけにはいかんのだ。今は、1隻でも宇宙艦が惜しい。」

「民間人?誰ですか、それは」

ペルセウスの顔が少し曇った。

「君も良く知っている人物だよ。・・・この人物だ」

モニターに写し出された、新任総督の顔写真を見て、ペルセウスは驚いた。

「まさか、この人が・・・」

「3日後に到着の定期輸送船で、着任する予定だ。民間人だが、非常に有能で優秀な人物だ。個性的でもある。歓迎してくれたまえ」

「はあ、わかりました。仕方ありません」

そして3日後、さざなみ宇宙港に着陸した輸送船のタラップを、悠々と降りて、その人物が現れた。

「ギャハハハ、久しぶりだな、地球の空気を吸うのは!」

「お久しぶりです。1年ぶりでしょうか、ピタゴラス博士・・・いや、総督閣下」

出迎えたペルセウスは懐かしい人物と、再会の握手をした。彼は、残虐非道の拷問実験を行う、究極のサディストとして知られる悪名高い人物だったが、なぜか憎めない男だった。ペルセウスもこの人物は、嫌いではなく、どちらかと言えば、ウマが合うほうだった。

「博士で、かまわんよ・・・わしも、最初、執政官から総督就任の依頼があった時、正直、とまどったんだがね。これで、また地球で、思う存分、地球人を材料にした、楽しい拷問や改造実験が出来ると思って、快く引き受けたんじゃよ。どうやら、地球情勢に詳しい民間人という事で、わしに白羽の矢が立ったらしい。」

初老の男は上機嫌に語った。

「地球情勢は、今のところ落ち着いており大した変化はありません。我々に服属した日本政府は協力的です」

ペルセウスは説明した。

「一応、ここへ来る宇宙船の中で、地球情勢については予習してきたよ。ここで、ゼウス執政官から、地球人を使った生体兵器の開発を推進するように言われている。現在、宇宙情勢は緊迫しており、我々、ネオガイア星人に敵対する星間種族を、軍事技術の進歩で、牽制しなくてはならん。ゴルァ星人、タイタンの巨人達、百足星人・・・非友好的な種族はいくらでもいる。それに、グレイや銀河警察に対しても我々の発言力を強化せねばならん。実は、わしが、総督として地球に赴任したのには、その他にもいくつかの目的があってな。ここでは、ちょっと話にくいのだが・・・」

ペルセウスはピタゴラス総督を、総督府ビルの執務室へ案内し、人払いをして盗聴防止装置を作動させた。

「何ですか、その目的とは」

ペルセウスとピタゴラスは小さなテーブルを挟んで向かい合って椅子に座った。

「ここから先は、オフレコで頼む。実は、グレイ発祥の秘密が、この地球に隠されているらしい。わしは、ゼウス執政官から、内密にそれを調査するように言われている」

「は?・・・グレイ発祥の秘密・・・何ですかそれは、初耳です」

ペルセウスには、初めて聞く内容だった。

「グレイは、はるか太古の昔より、地球を監視していた。我々ネオガイア星人の先祖が地球から誘拐されるよりも、もっと以前からだ」

ネオガイア星人の先祖である古代ギリシャ人が、家畜として繁殖させられるために、地球から連れ去られたのは、わずか2000年前の話だ。遺伝子操作で、数千年の寿命を持つに至ったグレイからすれば、世代交代すらしていない一昔前の出来事に過ぎない。

「いつ頃からか、と言うのはハッキリしない。少なくとも、数万年、数十万年前からだと言うのは確実だ。これは、わしの推論だが、おそらく地球人自体が、数十万年前に地球で行われた、グレイの遺伝子実験の産物ではないかと考えている・・・」

「我々が・・・ですか?」

途方も無い話に、ペルセウスは頭がクラクラとした。

「地球の伝説にアダムとイブという、最初の人間の話がある。おそらく、その男女二人が、グレイの遺伝子操作によって作られた、我々の先祖だ」

「???。しかし、何のためにグレイはそんな事を・・・」

「決まっているだろう、今も昔も目的は同じだ。食用の家畜として繁殖させるためさ。爬虫類型生物であるグレイは、なぜか、哺乳類型生物である我々を好んで捕食する。エデンの園というのは、最初の人間牧場だったのかも知れん」

「そんな・・・それでは、我々はこの世に現れた、最初の時点から家畜だったと・・・そ、それでは、あまりにも救いがありません」

「それが、真実なら受け入れる他、仕方があるまい。いじめられて喜ぶマゾヒストというのは、家畜として扱いやすく、品種改良された人間の特性なのかもしれん。考えてみれば、おかしいだろう。他人に傷つけられたり、落としめられたりする事に、最高の喜びを感じるなんて・・・本来の生存本能に逆行している。生物としては、異常だ。」

「では、あなたのようなサディストというのは?」

「これも、私の推論だが、おそらく、マゾヒストである大多数の人間達を管理するために牧童犬のような役目を負わされた、少数の人間の末裔なのかもしれん」

「現在の、我々ネオガイア星人の性向は、サディストが9割以上を占めています」

「サディストは攻撃的で、マゾヒストは自虐的だ。どっちが生き残って子孫を増やすかは、明白だろう。だから、全人口でマゾヒストの少ないわしらは、欲望の捌け口として、全地球人をマゾ奴隷化し、虐待して苛め抜く必要があるのだ」

「そうかもしれませんね」

ペルセウスが納得した。

「話が反れたが、グレイが人類発祥以前から、地球生物の進化に関わってきたというのも間違いない。その理由と実態を調査し、銀河系の最高機密とされているグレイ発祥の秘密にも迫るのだ。・・・これは、絶対に口外してはならんことだが、ゼウス執政官は、グレイの銀河系支配を覆すことを胸中に秘めておられる。我々が捕食されるだけの家畜ではないと言う事を、全宇宙に知らしめることを悲願とされているのだ!」

ペルセウスの顔が青くなった。グレイへの反抗・・・それは口にする事さえタブーとされる言葉だった。太古より3000万年にも及ぶ、グレイの銀河系支配の歴史で、かつてグレイへの反抗を企てた星間航行種族は、無数にいた。しかし、彼らは、例外なく、圧倒的な科学力と軍事力で完膚無きまでに叩きのめされ、生き残ったものも、文明を奪われて未開人のレベルにまで落とされるのだ。最近では、約300年前の宇宙戦争で敗れ、現在では母星だった海洋惑星の海底都市に籠もって細々と暮らしている、甲殻生物のパゴス星人の反乱が記憶に新しい。

「そんな事が・・・出来るのですか・・・」

「絶対に口外しないでくれ。この事が漏れれば、我々、全ネオガイア星人の存亡に関わる」

「それは、もちろん・・・」

「今日は、長旅で疲れたから、少し休むよ。明日から早速、地球視察といこう。日本の総理大臣にも挨拶せんといかんしなあ」

こうして、3代目植民地総督であるピタゴラス博士の地球統治が始まった。

 

 着任数日後、ピタゴラス総督は、さざなみ市内の軍事施設の一画にある、メビウス博士のロボット研究所を訪れた。1年前の事件では、この研究所から、宇宙海賊への反撃を開始したのだ。

「メビウス博士、どうだね。その後、研究は進んでいるかね?」

「ああ、君か。もうすぐ、新しい巨大ロボット『キュクロプス2号機』が完成するところだよ」

「ほう、見せてもらえるかな」

「いいとも」

メビウス博士は、ピタゴラス総督を、ロボット工房へと案内した。そこは、天井が吹き抜けになっており、巨大な人型ロボットを収容できる高さと広さがある。

「これは・・・」

製造中の巨大ロボットを見て、想像していたものとは違う姿に、さすがのピタゴラス総督も、息を呑んだ。そこにいるのは、冷たい金属で出来たロボットなどではなく、全長20メートルはありそうな、全裸の巨人女だった。

「これは、ロボットじゃないだろう!」

思わずピタゴラス総督が突っ込んだ。メビウス博士はニヤリとした。

「厳密に言うとロボットじゃないな。サイボーグだよ。瀕死の重傷を負って死にかけていた、巨人族の女の肉体に、機械部品を埋め込み、サイボーグとして、蘇生させたんだ。」

巨人女は、タイタンの巨人族に属する、女戦士レア(24歳)の成れの果てだった。脳には、外部から遠隔操作が可能なコンピューターチップを埋め込まれ、戦闘で潰された右目の代わりには、サーチライト付きのモノアイが嵌め込まれている。

「これは、どうやって動くんだね。自分の意思で動くのかね」

ピタゴラス総督が質問をした。

「もちろん、完全に死んでいるわけではないから自分自身の意思で動くことも可能なんだが、どうも彼女は、我々に対して反抗的でね。遠隔操作を解除すると、すぐに暴走してしまうんだ。やはり、パイロットを乗せて、操縦させるしかないと思うんだがなあ。前回と同じく、また、操縦系統の開発で行き詰ってしまってね。何かいい知恵はないか?」

メビウス博士は、いつも同じ箇所で、行き詰るようだった。ピタゴラス博士は考え込んだ。

「うーん、そうじゃな・・・急に言われてもなあ。あ、そうだ、いいアイデアが浮かんだぞ。プラグ状のコクピットを作り、それにパイロットを乗せて、外部から挿入出来るようにすればいいんじゃ。挿入する箇所は、オマンコがいいじゃろう」

「そうか、その手があったか」

メビウス博士は、ピタゴラス総督の助言に、目から鱗が落ちたようだった。

 

 アルテミス(30歳、肉体年齢29歳)は、再び、さざなみ刑務所に収容され、シンディ・スコットランド刑務官(23歳)による、拷問を受ける日々を送っていた。以前と違うのは、不死身の再生人間となったアルテミスに対する拷問が、より過激になったことだった。

「今日は、お前の体を真っ二つに引き裂いてやるわ」

シンディが全裸で土下座をしているアルテミスに言った。アルテミスの顔には決して外される事のない、鉄仮面が被せられている。

「本日も、厳しい拷問を、よろしくお願いします。」

アルテミスの精神状態は、もはや、まともではい。日々肉体をバラバラにされ、内蔵を抉り出される苦痛に、いくら重症マゾとはいえ、正気のまま適応することが出来なかったのだ。鉄仮面の隙間から覗く、青い瞳は虚ろで、口の端からはヨダレをたらし、オマンコからは、愛液をとめどもなく分泌させている。

「良い心がけね。重症マゾのお前のために、こんなにたくさんの拷問器具を揃えてあげたのよ」

特別拷問室には、世界中から取り寄せた古今東西の地球製の拷問器具や、ネオガイア星の宇宙拷問協会から寄付された拷問マシーンの試作品などが、所狭しと並べられていた。普通の囚人なら、一回の拷問で再起不能の肉体的損傷を受けたり、即死してしまうような器具ばかりだ。アルテミスはシンディに指示されるままに、自動股裂き機の台の上に、仰向けになって横たわった。途中で暴れて、逃げ出さないように、足首、手首、首を金属ベルトで固定される。

「はじめるわよ。覚悟しなさい」

シンディがスイッチを入れた。足首を固定している金属ベルトが両側に、チェーンで引っ張られ、アルテミスの両足が極限まで割り開かれる。

「むっ、くうううう・・・」

両足が胴体に対して垂直に、T字型となり、限界まで引き伸ばされた股間の腱が、ブルブルと震える。それでも、自動股裂き機の動きは止まらない。

「キャハハハハ!」

シンディは、けたたましい笑い声を上げながら、無防備に晒されたアルテミスの股間に一本鞭を、何度も何度も叩きつけた。白い肉が裂け、血が飛び散る。突然、メキメキという股関節の外れる鈍い音がした。

「うぎゃああああああ!」

アルテミスが絶叫した。この声は拷問室の隅に取り付けられている集音マイクを通じて、刑務所内の全ての監房に聞こえるようになっている。刑務官達は、拷問されている人間の絶叫を楽しみ、囚人達は震え上がるのだ。やがて、股関節が外れて、さらに引き伸ばされたアルテミスの肉体が、とうとう、オマンコから裂け始めた。

「ぎゃああああ!このまま殺してええええ!」

「ウフフフ、いい声で、叫ぶわね。でも、残念ながら、あなたは、どうやっても死ねないのよ。分子破壊装置にでもかけない限りわね」

引き裂かれたアルテミスの股間から大量の鮮血がシャワーのように噴出し、拷問室の壁を赤く染めた。ヘソの上あたりまで引き裂けた傷口からは、内臓や骨が、はみ出している。裂傷が乳房まで達した時、シンディは自動股裂き機のスイッチをオフにした。

「これ以上やって、意識がなくなってしまうと面白くないわ。もっとも、あなた以外の普通の人間なら、とっくに死んでるけどね」

「ぎゃああああ!」

アルテミスの苦痛に対する耐久力は、これまでの拷問で超人的なまでに強くなっており、瀕死の重傷を負っても、ショックで気を失うこともなく、意識を保ったまま絶叫している。シンディは裂けたアルテミスの腹部に右手を突っ込むと、小腸の一部を鷲掴みにして引き吊り出した。そして、端を自動巻取り機に結びつけた。

「お前の内臓を全部引き吊り出してやるわ」

シンディの声は、錯乱状態で、絶叫するアルテミスには聞こえていないようだった。シンディが巻き取り機のスイッチを入れると、腸を巻きつけた軸が回転し、ゆっくりとピンク色の腸が、アルテミスの腹部から引き吊り出され始めた。

「人間の小腸の長さは、約6メートルあると言われているのよ。ネオガイア星人は地球人に比べて消化器官が退化しているって言うから、あなたの小腸はもっと短いかもね」

シンディは、アルテミスの返り血を浴びながら幸福感に浸っていた。彼女は、若いにもかかわらず、あきらかな真性サディストの異常者で、常軌を逸している。

「うぎゃあああ、やめてええええ・・・・いえ、やめないでえええ!快感よおおおお!」

アルテミスも常軌を逸している。腸を徐々に引き出される恐怖と苦痛に、アルテミスの脳内では快楽物質のエンドルフィンが、かつて無いほど、多量に分泌され、意識を桃源郷へと導いていた。アルテミスの腸が巻き取られ、胃袋が引き吊り出されて来た時、拷問室の内線電話が鳴り、シンディは受話器を取った。

「はい、特別拷問室のスコットランドです」

『軍から、囚人999号に、特別任務の要請が来ました』

「特別任務?・・・わかったわ。でも、今すぐは無理よ。この状態だと、再生するまで1時間はかかるわ」

『軍の方には、少し遅れると伝えておきます。では、準備が出来次第、999号を転送室へお願いします』

「了解よ」

シンディは、受話器を置き、肉と血の塊となって、とうとう気絶した、アルテミスの肉体を見下ろした。

 

 ロボット研究所では、ピタゴラス博士とメビウス博士が、アルテミスの到着を待ちわびていた。転送機を使って、アンドロイド兵に連行されてやって来たアルテミスは、すっかり、元の肉体に再生していた。

「遅かったじゃないか」

「申し訳ございません。拷問を受けている最中で、再生するのに、かなり時間がかかってしまいました」

アルテミスは大量の血を失ったために貧血気味で、肉体の再生にカロリーを消費したために、ひどい空腹感も感じていた。

「新しいロボット兵器が完成した。君を呼んだのは、また、パイロットを勤めて欲しいからだ」

ピタゴラス博士が言った。アルテミスが、呼び出しを受けた時から予想していた申し出だった。

「あたしで、お役に立てる事でしたら、なんでも協力いたしますわ」

「ロボット兵器の操縦は、思いの他、難しい。並の人間では勤まらんのだよ。まずは、君の乗るロボットを見てくれたまえ」

メビウス博士とピタゴラス博士は、ロボット工房へとアルテミスを案内した。そこに、全裸で拘束されている、巨人女のサイボーグを見て、アルテミスは息を呑んだ。

「こ、これは・・・」

「これが、我々の新しいロボット兵器、『キュクロプス2号機』だ。素材になったのは、君が以前、対戦した事のある、巨人族の女戦士レアだよ」

身長18メートルのレアの右目には、モノアイが埋め込まれ、その他、身体中に武器や機械部品が埋め込まれている。動力パイプが剥き出しになっている部分もある。脳にコンピューターチップを埋め込まれたレアは、意識はあっても、身動き一つすることが出来ず、その左目は、自分を捕虜にして改造した、ネオガイア星人に対する憎悪の光がたぎっていた。

「これに、乗るのですか?」

アルテミスは少し戸惑ったようだった。

「そうだ、これがコクピットプラグだ」

メビウス博士は工房の片隅にある、長さ3メートル、直径1.5メートルほどのシリンダー状の物体を指差した。ピタゴラス博士の考案で開発された操縦ユニットである。

「このプラグの中に君が入り、レアのオマンコに挿入される。操縦系統はレアの神経と直結され、巨人女の体を、君の思うままに動かす事が出来るのだ。おそらく1号機の時よりも繊細な動きが出来るはずだ。なにせ、生きた巨人女を素材に使っておるからな」

メビウス博士の説明を聞き、アルテミスは、かつて敵として戦った巨人女の体内に入ることに奇妙な感慨を覚えた。

「早速、起動テストじゃ。アルテミス君、この中に入りたまえ」

アルテミスは言われるがままに、コクピットプラグの開口部から中にもぐりこんだ。ハッチが閉まり、暗闇に閉ざされる。コントロールパネルのスイッチを入れると照明が付いた。

『最初は、挿入実験からじゃ。レアの拘束具を外すから、遠隔操作でプラグをオマンコに挿入させるように、レアの体を動かしてくれ。やり方はパネルのヘルプ画面を見ればいい』

スピーカーからメビウス博士の指示が流れた。アルテミスは、マゾではあるが、比類なき白兵戦の天才でもある。一通り画面のマニュアルに目を通すと、大体の操作方法は把握した。

「では、始めます」

拘束具を外されたレアの肉体を、パネルを操作して動かし始めた。レアは右手でアルテミスの乗ったコクピットプラグを持ち上げ、しゃがんだ姿勢でM字開脚のポーズをとって、オマンコに挿入しようとする。しかし、長さ3メートル、直径1.5メートルのシリンダーは、ちょうど人間の10倍サイズのレアにもかなりキツく、簡単に挿入することは出来ない。無理に入れようとして、レアの顔が苦痛に歪んだ。

『なかなか入らんな。少しプラグのサイズが大き過ぎたかなあ。仕方ない、滑りを良くする為にレアにオナニーさせるのだ』

「了解です」

アルテミスは、レアにオナニーをするように指示を送った。レアは開いた左手で、クリトリスをいじり始める。

「あっ、あああ・・・」

レアの口から雷鳴のような喘ぎ声が漏れた。しばらくすると、じっとりと愛液が溢れ出す。

(そろそろいいかしら)

アルテミスは再びコクピットプラグを挿入するように指示を送った。レアが右手で自分のオマンコにプラグをねじ込む。愛液が潤滑油となり、今度はすんなりと奥まで入った。

「あううう、気持ちいい!」

レアがよがり声を上げる。挿入されたプラグの外側から、接続針がオマンコの内側の粘膜に打ち込まれ、神経と連結される。

「痛いっ!」

今度は激痛がレアの体を走る。同時にコクピットプラグがブルブルと震え出し、さらにレアの快楽を高め、愛液の分泌を促進させた。そして、さらに溢れ出した愛液を、コクピットの外側の吸引装置が内部に取り込み、コクピット内に流れ込ませてきた。

「メ、メビウス博士、これは???」

アルテミスは、むせるような匂いを放ちながら、足元を浸してくる愛液に驚いた。

『それは、君の意思を、レアにより伝え易くするための媒体だよ。レアの愛液に、プラグ内部で特殊な薬品が混入されるようになっている。それを満たすことによって、君の精神とレアの精神が感応することも出来るかもしれない。』

やがて、あふれ出したレアの愛液は、操縦席のアルテミスの胸元を超え、鼻腔にまで達した。

「こ、これでは、息が出来ません」

『大丈夫だ。その液を思い切って肺に吸い込んでみたまえ。呼吸が出来るはずだ』

アルテミスは意を決し、指示通りにした。

「げほっ、げほっ!」

同性の愛液を飲み込むのに、恐ろしい抵抗を感じ、目から涙が流れた。酸味がかった味が、口いっぱいに広がる。

『なあに、すぐに慣れるさ』

ピタゴラス博士の軽薄な声がスピーカーから聞こえた。

 

 愛液を肺に吸い込み呼吸する嫌悪感と、嘔吐感を必死にこらえながら、アルテミスは操縦桿を握った。コクピットを満たした媒体を通じてレアの感情が伝わってくる。それは、ネオガイア星人に対する、恐ろしい憎悪だった。

『操縦のやり方には、マニュアルとオート(精神感応)の二通りがある。マニュアルというのは普通通り、コントロールパネルのレバーやボタンを操作するやり方だ。あまり微妙な動きや、素早い動きは出来ん。オート(精神感応)というのは、君は一切何もせず、ただ、こういう風な動きをさせたいと言う思念を凝らすだけで、イメージ通りの動きをレアにさせる、という今までに無かった画期的な操縦のやり方だ。このシステムはまだ実験段階で、不安定なので、うまく作動するかどうかもわからんし、パイロットの精神にどういう影響が出るか、全く未知数でもある。鉄仮面、まず、最初は、マニュアル操縦法から試してみてくれたまえ』

スピーカー越しにメビウス博士が説明した。アルテミスは操縦桿を握り起動スイッチを入れる。レアの巨体がビクンと痙攣し、機械のようなぎこちない動きで立ち上がった。自分の肉体を内側から操作される屈辱にレアの怒りが頂点に達した。

「てめえら、全員ぶっ殺してやる!」

脳内コンピューターの制御を破り、レアが叫んだ。

『いかん、鉄仮面!レアを押さえろ。暴走させてはいかん!』

「はいっ!」

アルテミスは必死に、操縦桿を停止位置に戻し、制御パルス信号のダイヤルを最強にまで回した。それでも、レアの動きは止まらず、恐ろしい執念と精神力で、制御コンピューターの呪縛を振り切って歩き出そうとする。

『右端にある緊急停止ボタンを押せ!』

ピタゴラス博士の叫び声で、アルテミスは、コントロールパネルにさっと視線を走らせ、ボタンを見つける。そしてボタンを押し込んだ次の瞬間、レアの巨体に高圧電流が流された。

「あぎゃあああああっ!」

レアが絶叫し、あまりの大声に建物自体が震えた。

『耳の鼓膜が破れるわい。何とかならんのか、この大声』

ピタゴラス博士がぼやいた。

『声が出ないように、レアの声帯を潰しますか』

メビウス博士と相談する声がスピーカー越しに聞こえてくる。レアは気絶し、崩れ落ちるように、その場に倒れこんだ。

「停止しました」

『ふう・・・まだまだ、改良を続けねばならんな。この巨人女の自我が強すぎるのじゃ。これでは精神感応による操縦など、夢のまた夢じゃ!』

いまいましげに、メビウス博士もぼやいた。

 

 それから数週間、アルテミスと、巨大ロボット、『キュクロプス2号機』こと巨人女レアの訓練は続いた。マニュアルによる操縦法は、完全にマスターしたものの、精神感応による操縦は、全くその糸口さえつかめなかった。レアのネオガイア星人への凄まじい憎悪が、かたくなに、パイロットであるアルテミスとの精神の同調を拒否しているのだ。

「どうしたものかな」

メビウス博士は途方にくれてしまっていた。

「心の問題までは、どうしようもない。解決策が見つかるまで、マニュアル操縦でやるしかあるまいな。マニュアル操縦では、能力を最大値まで引き出す事は出来んがな・・・」

さしものピタゴラス博士も、お手上げ状態だった。

「ところで、クロノス博士は、まだ行方不明なのかね?」

ピタゴラス博士が、ふと、かねてより気になっていた疑問を口にした。

「ああ、あいつか。あいつは、2年前に自分が発明した時間航行機で過去に向かったまま、戻ってこないな・・・時間旅行については、わしも少しは研究したことがあるのだが、過去の時代で遭難したのか、多元宇宙の迷子になってしまって、戻って来れないのか、全く判らん。なにせ我々には、時間航行機が、彼の作った一台以外、他には無いのだから、彼らを探しに行く事も出来んよ」

メビウス博士が答えた。

「彼の研究は、その後どうなったのだ?」

「クロノス博士の娘であり、助手でもあったデメテール女史が引き継いでいるよ。じゃが、2台目のタイムマシンを完成させるまでには、至っていない。彼の4次元理論は他の人間には、理解が難しいんじゃ」

「それを思えば、クロノス博士は天才だな。惜しい人物を無くしたものだ。しかし、時間航行機は本当に、クロノス博士が、全てゼロから発明したものなのだろうか?」

「彼は、そう言ってたがなあ。じゃが、わしが思うに、おそらく、ネオガイア星に遺跡として残っていた、グレイの古代コンピューターのデータバンクから見つけ出した、4次元理論を元に、あの時間航行機を作ったんじゃろう。彼は、発表した時、全て自分の手柄のように話していたがね」

「グレイか・・・やつらが、時間航行機を使用しているという話は聞かないな。我々が知らないだけかもしれんが・・・」

「しかし、いずれにしろ4次元理論は難解だ。彼以外に理解出来なかったのも事実だ」

二人の博士が、話し込んでいると、突然、通信回線のブザーが鳴った。

『大変です。博士!

ロボット工房の整備士の悲痛な声がした。

「どうした?」

『キュクロプス2号機が、勝手に動き出しました!』

「何っ、暴走したのか?」

『そ、それが、レアの意思による暴走ではなく、コクピットに誰かが乗っているようなのです。我々、整備班がコクピットプラグの点検をしていますと、突然、コクピットのハッチが閉まり、レアが、プラグをオマンコに挿入を始めました。誰かが、プラグ内部から遠隔操作をしているとしか思えません!』

「コクピット内部の映像をモニターに映し出せ。誰が乗っているか判るだろう」

ピタゴラス博士が指示をし、モニターが切り替わった。しかし、映し出されたコクピットには誰も映っていなかった。

「誰も乗ってないぞ。・・・あっ!」

信じられないものを目にしてピタゴラス博士は絶句した。コクピットは無人だったのだが、操縦桿やレバーが勝手に動いているのだ。

「どういうことだ?」

メビウス博士も、硬直して何と答えていいのか判らないようだった。

『コクピット内部には、生体反応があります、誰かがいることは間違いありません!』

コクピットにいるのは、透明人間の天野孝(22歳、ニート)だった。孝は、二階堂麗奈の肉体を元に戻す方法を探すために、さざなみ市にやってきたのだ。そしてネオガイア星人の軍事施設内部を徘徊していて、偶然、メビウス博士のロボット工房を見つけたのだ。透明人間としての生活になれた孝は、感覚が麻痺してしまい、どこへ入り込むにも恐怖感を感じなくなっている。

(テラマズイでつ。ここから、出られなくなったでつ・・・)

好奇心にかまけて、ハッチの開いていた整備中のコクピットプラグの中に、軽い気持ちで入り込み、コントロールパネルのボタンを押してしまったのだ。自動でハッチが閉じ、開けようとして滅茶苦茶にパネルを操作すると、レアへの遠隔操作の信号が送られてしまったのだ。

(ぬるぼ・・・)

レアのオマンコに挿入されたプラグが振動し、滲み出してきた愛液が、コクピット内部に流れ込んできた。ムッとする女の愛液の匂いが鼻をつき、孝は咳き込んで、気を失いそうになる。

(がっ!早く、逃げる出つよー)

孝は、なんとか出口はないかと、コクピット内部を這い回った。しかし、出口はなく、次第に水位の上がってくる、愛液から逃れるためにコントロールパネルの上によじ登る。しかし、とうとうレアのドロリとした愛液は、天井まで達し、孝は空気を吸う事が出来なくなった。

(く、苦しい・・・もう、駄目でつ・・あぼーん・・・)

孝は、酸欠で意識が遠のいていくのを感じた。

 

第112話、元禄放浪記

 

江戸時代中期、久石千鶴は、武蔵の国のある村で、地主の家に女中として仕えていた。千鶴の仕事は、この家に飼われている柴犬のシロに奉仕する事である。

「お上から、生類憐みの令が発布されてのう。うちのシロにも女中の一人でもつけておかんと、ないがしろにしていると思われて、お咎めが来たら大変じゃ」

庄屋の吾郎左衛門が、そういって女中の中から千鶴を任命したのだ。

「ちゃんと、しもの世話までするんじゃぞ」

「かしこまりました」

千鶴は、馬鹿馬鹿しい、と思いながらも、シロ専属女中の役を引き受けた。生類憐みの令のことは子供の頃の歴史の教科書で学んでいる。シロは人間のように着物を着せられ、お座敷に祭られていた。

「シロ様、お食事でございまする」

千鶴は膳に、生きのいい生魚を乗せて差し出した。小作人たちが、滅多に口に出来ないような代物である。それに、お犬様には敬語を使わなければならない。

「ウー、ワンワン!」

シロは、血の滴る生魚に喰らい付き、うなり声を上げながら、噛み千切った。

「シロ様、お食事が済みましたら、千鶴と一緒にお風呂に入りましょう」

千鶴は、シロを庄屋の家の風呂へと連れて行った。人間が入るのと同じ風呂釜である。千鶴は着物を脱いで全裸になると、丁寧にシロの胴巻きも脱がせ、一緒に湯船に入った。風呂焚き係の下男がうらやましそうに、眺めている。

「畜生、このご時勢、俺も犬に生まれりゃぁ、良かったぜ」

とぶつぶつ、つぶやいている。

「畜生、とは何事です!呼び捨てにしてはいけませんよ!」

千鶴が湯船の中からたしなめた。下男は、はっと口を押さえる。千鶴は、シロの体を隅から隅まで丁寧にあらい、蚤一匹残さないように毛並みを揃えた。

「シロ様、お風呂から上がったら、夜の秘め事をいたしましょう」

千鶴は、わざと下男に聞こえるように大きめの声で言った。下男が歯ぎしりして悔しがる様を楽しんでいるのだ。風呂からあがると、千鶴はシロをともなってお座敷へと戻った。布団を敷き、寝巻きの帯を解く。

「シロ様、今夜も寝かせませんわよ」

「クーン、クーン」

シロは、甘えるような仕草を見せ、千鶴の太腿に鼻を摺り寄せた。1700年もの間、世界中で娼婦を営んできた千鶴にとって、犬とセックスする事など、何のためらいも無く、気晴らしの一つでさえある。千鶴が小指の欠けた左手でシロのペニスを、優しくさすると、たちまち勃起した。

「今日も、お元気だこと・・・」

千鶴は、布団の上に四つん這いになり、バックスタイルでシロの細長いペニスを、クリトリスの無い股間に導いた。

「さあ、激しく突いてくださいませ、シロ様!」

毎晩の事なので、シロも習慣づけされており、ペニスを千鶴のオマンコに挿入すると激しく腰を降り始めた。前足の爪が、千鶴の背中の皮膚に食い込み、血が流れる。

「ああ!いいわ!シロ様」

千鶴は屋敷中に聞こえるような高い声で、一晩中、よがり声を上げ続けた。このことが村中に知れ渡れば、庄屋の吾郎左衛門が、いかにお上に忠実であるかが、評判となるに違いない。もはや戦も無く、停滞した封建社会を生き抜くには、人々にそれ以外の術はないのだった。

 

「お千、村に犬小屋を建てることになった。」

吾郎左衛門が、シロの世話をしている千鶴に言った。今日はシロの誕生日なのでシロは、全長50センチもある巨大な伊勢海老にかじりついている。この伊勢海老を、飛脚を使って伊勢の国から取り寄せるために、小作人の一人が娘を身売りして資金を捻出している。

「犬小屋・・・ですか?」

「そうじゃ、付近の野良犬を集めて、村で世話をすることになった。5代将軍、綱吉様が戌(いぬ)年生まれであらせられるため、生き物の中でも特に犬を大事にせよ、との仰せじゃ」

「はあ、そうでございますか」

「それで、お前に集めた野良犬の下の世話もしてもらいたい。お千、お前は、わしに奉公する前は、もともと娼婦だったじゃろう。野良犬が発情して暴れ出さんように、性交してやってくれ」

千鶴はうなづいた。1700年にも渡る人生で、犬、豚、馬、猿、リャマなど、さまざまな動物とセックスをした経験がある。不死者である千鶴に、特に獣姦に対する抵抗はなかった。

「引き受けまする」

千鶴は、数十匹の野良犬相手にセックスに明け暮れることになった。庄屋の屋敷の近くに、檜作りの立派な犬小屋が数棟、大工によって作られ、小作人たちが交代で野良犬の当番をすることになる。犬小屋の建設費用捻出のため、田畑から収穫される農作物の、小作人の取り分が大幅に削減された。

「これでは、おら達、生活できねえだ」

「んだ、んだ。お犬様と、おら達人間と、どっちが大事だか?」

小作人たちがブツブツと文句を言った。

「やかましい!お犬様に決まっとるだろうが!お上に逆らえば死罪だぞ。生活出来なければ、お前らの娘か嫁を身売りしろ!」

吾郎左衛門が一喝した。小作人達はしぶしぶ引き下がる。千鶴は、一匹づつ野良犬とセックスをしたが、興奮した犬に噛まれたり、爪でひっかかれたりして、たちまち傷だらけになった。そんなある日、村に見慣れない旅の一行が、やってきた。

「この村に泊まるところは無いかのう?」

リーダーであるらしい老人が、畑で農作業をしている小作人に尋ねた。

「この村には、旅籠はねえだ。泊まるなら庄屋様のところがええ。他は小作人の、みすぼらしい小屋しかねえだよ」

旅の老人とお供の3人の男は、武士ではないようだが、小奇麗な身なりをしており、金回りは良さそうだった。旅の一行は庄屋の屋敷の門を叩いた。

「わしは、越後の縮緬問屋の隠居の光衛門と申すものでございます。旅の途中で、一晩泊めてもらえませぬか」

老人が主人の吾郎左衛門にかけあった。吾郎左衛門は嫌な顔をした。

「うちは、旅籠ではありません。どうしてもと言うならしょうがありませんが・・・」

お供の一人の、目つきの鋭い男が、きっと睨んだ。

「お主、ただの庄屋であろう。我らには、親切にした方が良いぞ。邪険にすると後で泣きを見る事になるやもしれん!」

異様な迫力に押されて、吾郎左衛門は承諾した。その夜、一行はドンチャン騒ぎを行い、女を世話するように要求してきた。

「しょうがない、お千を差し出すか・・・」

吾郎左衛門は、とんだ疫病神が舞い込んできた、と忌々しく思った。しかし、明日には出て行くだろう。千鶴は、一行の宿泊している部屋に行き、接待を行った。

「アーレー」

助さんと呼ばれているお供の男が、千鶴の着ている着物の帯の端を掴んで、乱暴に引っ張った。千鶴の体はクルクルと回転し、帯が解かれて着物がはだけた。

「まずは、おいらが・・・」

鉢兵衛と呼ばれている男がのしかかってきた。この四人の旅人の中で、この男が一番、立場が弱いようである。

「おい、鉢!うっかり、入れる穴を間違えるんじゃねえぞ!」

角さんと呼ばれている男がはやし立てた。鉢兵衛が、でへへと、スケベ顔で照れ笑いをする。千鶴は、アナルに痛みを感じた。

「あっ、痛っ!」

「しまった、やっぱり間違えちまった・・・」

「だから、おめえは『うっかり鉢兵衛』って言われるんだよ!」

角さんが怒鳴った。その晩、千鶴は朝まで、夜通し4人の旅人に責め立てられた。

 

 

 次の日の朝、出立する際に4人の旅人は、庄屋の吾郎左衛門に、千鶴を連れて行くと言い出した。

「この女、なかなか気に入ったぞ。体は傷だらけじゃが、命じればどんな破廉恥な事も顔色一つ変えずにやりおる。旅の慰みに貰っていくぞよ」

光衛門という老人が言った。さすがに吾郎左衛門は抗議した。

「そ、そんな御無体な・・・お千は、うちの奉公人でございまする・・・」

「なにぃ?俺達に逆らうってのか、これが目に入らぬか!」

角さんが懐から何かを取り出し、吾郎左衛門の目の前にちらつかせた。他の屋敷の使用人達には、死角になって、それが何だか判別出来なかったが、それを見た瞬間、吾郎左衛門の顔が、さっと青ざめるのは判った。

「こ、これは・・・」

吾郎左衛門は、信じられないものを見たかのように、一瞬体を硬直させたが、次の瞬間、電撃に打たれたかのように、飛び退り、畳の上に額を擦り付けて、土下座した。

「ははあああーっ!滅相もございません。どうか、お千はお連れ下さいませ。なにとぞ、今後とも、この吾郎左衛門をよしなに・・・」

「カー、カッ、カッ、カ!」

老人の満足気な高笑いが、屋敷中に響き渡った。こうして千鶴は、水戸黄門一行と共に、全国を漫遊することになった。

 

 水戸黄門一行のやることは無茶苦茶だった。いきなりその土地の代官所に乗り込み、難癖をつける。

「代官、赤石主水之介。その方の悪事、明白であるぞ!」

「は?何のことでござるか?あなた方はいったい・・・」

「ええい、しらばっくれるでない!その方、備前屋から賄賂を受け取ったであろう!」

主水之介には寝耳に水だった。確かに受け取ってはいるが、この時代、権力者である役人への賄賂は当たり前の事だった。

「それが、どうしたというのだ。貴様ら、どこの馬の骨ともしれん旅人風情に、それが、何の関係がある?」

「ええい、問答無用。助さん、角さん、やっておしまいなさい!」

光衛門が命じると、腕っ節の強い、助さんと角さんが前に出た。素手で、刀を持ったサムライ数十人に立ち向かおうというのである。鉢兵衛は千鶴の傍らで震えていた。

「あなたは戦わないの?」

千鶴は、鉢兵衛に尋ねた。鉢兵衛は当たり前だ、と言いたげな表情で首を縦に振る。

(この男、何でここにいるのかしら)

千鶴はふと疑問に思った。代官所のサムライたちが刀を振りかぶって襲い掛かってきた時、突然、角さんが懐から、先日、吾郎左衛門にも見せた、例のものを取り出した。それは、徳川家の紋章である葵の紋が入った印籠だった。

「ひかえおろう!この紋所が目に入らぬか!」

角さんが怒鳴り声を張り上げた。サムライたちの動きが一瞬止まった。

「ここにおわす、お方をどなたと心得る!このお方は、天下の副将軍、水戸光圀公におわせられるぞ!」

代官をはじめ、サムライ達の目が、驚きで一杯に見開かれる。日本の絶対権力者である一族の家紋を目にして、代官所の役人達は、一気に戦意をなくした。

「ふはははは!」

無抵抗になった役人達の体に、助さんと角さんは、笑いながら、蹴りやパンチを入れていった。一方的な暴行だった。

(何なのこの人たち・・・)

千鶴は、あまりにアンフェアなやり方に、彼女には、珍しく憤りを感じていた。光衛門こと光圀は、土下座した主水之介の頭を、土足でグリグリと踏みにじっている。

「カー、カッカッカッカ!」

高笑いをする光圀は、サディスティックな喜びと、おのれの権力に酔いしれていた。

 

 その晩、水戸黄門一行は、代官、赤石主水之介の屋敷で、恒例のドンチャン騒ぎを行った。主水之介に、妻や娘を接待のために差し出せ、と命じる。

「御老公様、拙者も武士の端くれでござります。女がご入用であれば、遊女を手配いたしますゆえ、そればかりは、なにとぞ御容赦を・・・」

「ならぬ!わしは、天下の副将軍であるそ。木っ端役人の分際で、わしの命が聞けぬとあらば、そちは、切腹の上、お家断絶、赤石家のものは末代まで浪人暮らしをすることになるぞよ!」

「そ、そんな・・・」

仕方なく、主水之介は、涙を飲んで、妻と娘を黄門様一行の夜の慰みに差し出した。主だった代官所の家臣の娘たちも、接待のために招集された。

「全員、着物をまくりあげ、四つん這いになって肛門を見せい!」

光圀が酒を飲みながら、命令した。この老人は肛門に対して、異常な執着心を持っており、美しい女を一列に並べて、肛門観賞をすることに深い喜びを感じるのだ。貞節を信条とする武家の娘たちは、恥ずかしさのあまり涙を流しながら、指で肛門を広げ、男達にピンク色の内壁を晒した。

「おお、絶景じゃ、絶景じゃ!カーカッカッカッカ!」

「うまい、うまい。もっとうまい物、持ってきてくれよう!」

鉢兵衛が、口一杯に饅頭を頬張りながら、叫んでいる。

「鉢!食ってばかりいるんじゃねえ!せっかく美しい娘さん達が、肛門を開いていらっしゃるのだ。ぶち込んでやらないと、失礼だろうが!」

角さんが、けしかけた。

「おっと、こりゃ、うっかりだ」

鉢兵衛は、着物を脱ぎ捨てると、赤褌一枚の姿になり、饅頭を頬張ったまま、主水之介の長女を犯し始めた。

「くう!」

主水之介の長女、お信乃(17歳)は痛みに顔を歪めた。処女だったのだ。貞潔さを美徳とする武家の娘が、未婚のまま処女を捨てるなどは、ありえない時代である。お信乃は、どこの誰とも知らない男に処女を破られ、犯されながら自殺を決意した。

「お千!わしの肛門を舐めるのじゃ」

興奮した光圀は、立ち上がって、着物を捲り上げた。女の肛門を眺めるのも好きだが、自分の肛門を舐めさせるのも大好きなのだ。

「はい、御老公様。」

千鶴は、嫌悪感を表に出さないようにして、光圀の肛門に顔を近づけた。さすがの千鶴も、長旅で汚れた、不潔な老人の肛門を舐める事には、吐き気を覚える。

「奥の奥まで、綺麗にしゃぶるのだぞ。お前達も、よーく見ておくのじゃ。お千が終わったら、お前達にも順番に、わしの肛門を舐めさせてやる。カーカッカッカッ!」

周囲の者にとっては、耳に障る、高笑いだった。

 宴が、たけなわになった頃、千鶴は、こっそりと宴会場を後にした。泥酔した鉢兵衛が、角さんにはやし立てられ、娘たちと一緒に裸踊りを踊っている。助さんは、3人目の娘の処女を破り、血まみれの肉棒をそそり立たせている。肛門遊びに飽きた光圀は、酔っ払って、娘達相手に、現在、自分が編纂中の『大日本史』について長々と能書きを垂れたり、将軍綱吉や、江戸幕府に対して、とりとめのない愚痴をこぼしたりしていた。

「ヒック・・・何が、5代将軍じゃ、あの若造めが!生類哀れみの令などと、わけのわからん法度を定めおって・・・ヒック・・・今に見ておれ、わしは天下の副将軍だぞ!カーカッカッカ!」

千鶴は疲れたので、お風呂に入ることにした。黄門様一行と共に旅をする女は、必ず機会があれば、入浴しなくてはいけないと、助さんから耳打ちされたのだ。着物を脱いで全裸になり、ヒノキ作りの豪華な風呂に入る。湯気に包まれた千鶴は、体の隅々まで洗い流しながら、長年の放浪で、傷だらけになった自分の肉体を眺めた。古傷の一つ一つを指でなぞり、ナルシストな気分に浸る。

(・・・これは、200年前にフランスの魔女裁判で拷問された時に付けられた傷・・・これは、古代ローマで最初に奴隷になった時に押された焼印の跡・・・これは、南米で梅毒にかかった時の腫瘍の跡・・・)

ふと千鶴は左手の小指を見た。第二関節から先が欠けている。

(・・・これは、まだ不老不死の体になって、過去に飛ばされる前、現代の日本で、真藤組に詰めさせられた指・・・)

千鶴の心の奥底から、フツフツと怒りがこみ上がってきた。

(あたしの体も、心もすっかり汚れてしまった・・・今まで、何人の人間を殺し、何人の男や女、獣とセックスし、何人の子供を産み落として来たのだろう・・・)

あと300年余りで千鶴は元の時代に到達する。その時、何が起こるのか?そこには、何も知らない、無垢な、もう一人の自分がいるはずだ。

(もう一人のあたしと接触出来れば・・・協力して宇宙人を撃退し、歴史を変える事が出来るかもしれない・・・)

そこで、千鶴は、あることに思い至って愕然となった。宇宙人に匹敵する超科学を持ち、歴史を管理する事を至上目的にしている正体不明の連中の存在が、脳裏をよぎったのだ。

(歴史を変える?・・・となると、間違いなく、やつらが妨害してくるわ・・・あたしが、宇宙人と戦うためには、当然やつらとも戦わなければならないはめになる・・・)

千鶴はおのれの敵にしているものの強大さに、途方にくれた。

(あたし、一人の力では無理だ。組織を作らなくては!全人類の尊厳を守り、未来を切り開いていくための組織を!)

それには、人類を思想的に導く宗教団体がいいかもしれない、と千鶴は考えた。

 

第113話、女犬

 

2003年9月に、中学の音楽教師であった森宮千夏(当時26歳)は、宇宙人によって誘拐された。目的は、犬好きの大金持ちのペットとして飼われる、人間犬に改造するためだった。肉体改造を受けた千夏は、全身の体毛を永久脱毛され、鼻の頭を犬らしく黒く刺青された。両手は前足として使用するために、指を全部切断され、両足は、前足と長さを揃えるために関節を外されて、短く整形された。そして、切断された指を生体融合させて御尻に尻尾まで生やす事になったのだ。3年間、ネオガイア星の首都メガポリスで犬としての生活を送った千夏は、やがて飼い主に飽きられ、29歳の時、飼い主の部下であるクセノフォンという男にプレゼントされた。クセノフォンはソロン財閥の地球支社長という地位にあったため、冷凍保存された千夏は、3年ぶりに地球に送り返される事になった。

「俺は、犬なんか買う趣味はないんだがね」

新しい主人に気に入られようと、尻尾を振っている千夏に、クセノフォン支社長は冷たく言った。

「ウー、ワンワン!」

千夏は人間の言葉を喋る事を、禁止されている。

「でもまあ、総帥からの贈り物だ。捨てるわけにもいかんしなあ。子供のオモチャにでもするか」

クセノフォンはその晩、さざなみ市のネオガイア星人特別居住区にある家に、千夏を連れて帰宅すると、9歳になる息子のクリトンに人間犬を押し付けた。

「この犬をお前にやろう。ちゃんと世話をするのだぞ。毎日エサをやったり、散歩に連れて行ったり、生き物を飼うというのは結構大変だ。お前もいい勉強になるだろう」

「わーい!」

やんちゃなクリトンは無邪気に喜んだ。首輪から伸びた鎖の端を、父親の手から受け取る。

「こいつ、名前はなんて言うの?」

「さあな、そう言えば名前は聞いてなかったな。勝手につければいいんじゃないか」

「そうだなあ・・・うーん、なかなか、いい名前が思いつかないなあ。ねえ、君、もともとの名前はなんて言うの?」

クリトンが無邪気に千夏に話しかけた。飼い主に発言を求められた時だけは、人間の言葉で話しても良い事になっている。

「千夏でございます。森宮千夏と申します」

「うわっ、喋ったよ、こいつ!すげえ、人間の言葉が喋れる犬だ」

クリトンが目を丸くして驚いていた。

(あたしは、人間の言葉が喋れる犬じゃなくて、犬に改造された人間なのよ!)

千夏は叫びそうになったが、ぐっとこらえた。飼い主の許可無く、人間の言葉で喋ってはならない。

「まあ、犬といっても、地球人の女を改造した人間犬だからな。知能は、結構高いのかもしれん」

クセノフォンが説明した。その日から、千夏は、クセノフォンの邸宅の庭にある犬小屋で暮らすことになった。

 

 屋外の犬小屋は寒かったが、3年間、犬として全裸で生活を続けてきた千夏にとっては、慣れっこだった。

「ワンワン、おはよう。ほれ、エサだよ」

クリトンが皿に、ドロドロになった液体状の食物を入れて持ってきた。昨夜の夕食の食べ残しを、母親のダフネがミキサーでかき混ぜて作った犬用のエサだった。千夏は、与えられた餌に、頭を突っ込んで、口だけで貪り食べる。残飯なので美味しいとはいえなかったが、犬の生活習慣が染み付いた千夏には、ごく当たり前の朝食だった。

「学校から帰ってきたら、散歩に連れて行ってあげるからね。それまで大人しく待ってなよ」

新しいペットに夢中のクリトンは、ネオガイア星人の居留民の子供達だけが通う、小学校へと出かけていった。犬小屋に鎖で繋がれた千夏には、特にやることがない。手の指が無いため、オナニーをするにも、何かの角にオマンコを押し付けてやらねばならない。ボーッと日向ぼっこをして、昔、ネオガイア星の合成生物の品評会で、入賞した事などを思い出しながら時間を潰していると、昼過ぎにクリトンが、学校から帰ってきた。

「友達に、学校で、お前の事を話したら、ぜひ見せてくれだってさ。もうすぐ、遊びに来るから、一緒に散歩に連れていくって約束したんだ。いいだろう、ワンワン?」

「ウー、ワンワン!」

恥ずかしいから嫌だ、とは、千夏には言えなかった。人間犬として、飼い主には絶対服従なのだ。1時間ぐらいすると、クリトンの同じクラスの男の子が3人、遊びに来た。全員がネオガイア星人の子供である。

「へえ、本当だ。でっかい犬だ」

「触ってもいいかい、クリトン?」

「いいよ、大人しいから、噛み付いたりしないよ」

子供たちは、千夏の裸の体を撫で回した。

「いいなあ、俺も、父ちゃんに人間犬が欲しいって、頼もうかな・・・」

友達にペットを自慢出来て、クリトンは有頂天だった。クリトンは、千夏を繋いでいる鎖を外すと、鎖の端を握り締め、散歩に出かけることにした。千夏には、3年ぶりに目にする地球の町並みだった。

(地球に帰れたのね。でも、こんな体じゃ、もうまともに、人間として生活することは出来ないわ)

千夏の目から、嬉しさと悔しさの半分ずつ入り混じった涙がこぼれ落ちた。ネオガイア星人の居住区を抜け、子供達に引かれて、さざなみ市の市街地へと練り歩いていく。そこには、昔通りの、見慣れた地球人たちが、普通の生活を営んでいた。

(恥ずかしい!)

千夏の胸に、今までネオガイア人の間で飼われていた時には、全く感じられなかった羞恥心が湧き上がってきた。

「ワンワン、どうしたの?早く歩きなよ!」

道端にしゃがんで、恥ずかしげに身をよじっている千夏を歩かせようと、クリトンが、鎖を荒々しく引っ張った。通行人の地球人たちは、人間犬を見てギョッとしていたが、子供とはいえネオガイア星人のやる事に口を挟むと、明日は我身かもしれず、見て見ぬフリをして、足早に歩き去っていく。

「オシッコがしたいんじゃないの?だってモジモジしてるじゃん」

友達の一人が言った。クリトンは、そうか、と納得し、電信柱の方に千夏を引っ張っていった。

「オシッコしな。・・・したいんだろう、ワンワン?」

千夏は、電信柱に御尻を向けて、片足を上げた。そんなに尿意があったわけではないが、わざわざ飼い主が気を使ってくれているのだ。シャーッと黄色いオシッコが電信柱に引っ掛けられた。

「ひええっ!きったねえ!」

「犬はこうやって、オシッコで、目印をつけて自分の縄張りを作るんだよ」

「へえ」

クリトンは、お母さんに教えられた知識を得意気に、友達に語った。

 

 4人のネオガイア星人の子供と、人間犬の千夏は、人通りの多い商店街を練り歩いて行った。全裸で、鎖に繋がれ、四つん這いで歩く若い女の、無残に改造された姿を見て、道を行く人々は眼を背ける。千夏は、羞恥心と惨めさに、顔を真っ赤に火照らせていた。

「咽喉が渇いた。ジュースを飲もう」

子供たちは、公園に付くと、自動販売機にコインを入れて、それぞれジュースを買った。

「地球製のジュースもなかなか美味いよな」

「おれ、レモンティーが好き」

クリトンは、缶ジュースを飲み干すと、思い切り、遠くへ放り投げた。

「取って来い、ワンワン!」

「ワオーン!」

千夏は、いきなり飼い主に命令され、弾かれたように四足で走り出す。全力疾走で缶が落ちた場所まで行くと、残ったジュースが、まだ、こぼれて出している空き缶を口に咥え、クリトンの元へと駈け戻った。

「こいつ、よく訓練されてるよな」

千夏の口から、空き缶を受け取ったクリトンが感心した。千夏は、口から舌を出し、ハアハアと本物の犬のように荒い呼吸をしている。全力疾走したために、、全身に汗もかいていた。

「お前、昔は人間だったんだろう?」

「はい、中学校で音楽の先生をしていました」

「へえ、学校の先生だったの?じゃあ、今度、ママに頼んで、お前が働いていた中学校に連れて行ってあげるよ」

「!!!」

千夏は、パニックに襲われた。飼い主の好意を、無碍に断るわけにはいかない。しかし、変わり果てた、この姿を、知人に見られるのは耐え難い事だった。

「どうしたの、ワンワン?うれしくないの?」

「いえ・・・そんなことは」

「じゃあ、決まりだね」

次の日の午後、クリトンと母親のダフネは、千夏と護衛のアンドロイド兵士2体を連れて、反重力エアカーで、千葉県にある中学校を訪れた。3年前、千夏は、ここの音楽室で授業中に、転送ビームで拉致されたのだった。久しぶりに訪れた中学校は、以前と全く変わっておらず、校庭では、体操服姿の生徒が体育の授業をしていた。彼らは、ネオガイア製のエアカーと、人間犬の姿を見ると、驚いてざわめき立ち、一行が、職員室に土足で入っていくと、デスクワークをしていた教師達が一斉に振り向いた。

「な、な、何ですか、あなた達は?」

「ネオガイア星人です。息子の飼い犬が、以前、ここで働いてたって聞いたので、暇つぶしがてらに、来てみたのよ」

ダフネが、高圧的な態度で言った。校長はオロオロとしている。

「飼い犬?・・・あっ、森宮先生!」

千夏の事を知っていた校長が驚きの声を上げた。全身脱毛され、変わり果てているとはいえ、美人で評判だった音楽教師の顔は、見間違えようもなかった。

「本当だ。森宮先生だ!」

「キャーッ!何なの、この生き物!まさか、人間?」

教師達が口々に叫んだ。人間犬の千夏は、以前の自分を知る者に出会って、恥ずかしさのあまりに、後退り、ダフネとクリトンの背後に隠れようとした。

「ワンワン、何をやってるの?久しぶりに会ったんだから、みんなに挨拶しなくちゃ!」

クリトンの命令には逆らえない。千夏はおずおずと四つん這いで、教師達の前に進み出た。

「お久しぶりです。校長先生。いきなり、職場を放棄してしまって申し訳ございません。今では、この通り、優しい飼い主にも恵まれ、人間犬として幸せに暮らしております。・・・ウー、ワンワン!」

「・・・人間犬?・・・飼い主?・・・」

校長は、目を白黒させている。

「ねえ、うちのワンワンが、ここで働いていた頃のアルバムって、どこかにないの?」

ダフネが興味本位で尋ねた。

「ア、   アルバムですか・・・森宮先生が担任していたクラスの卒業アルバムなら、あるかも・・・」

「じゃあ、それを、早く、持ってくるのよ!」

アンドロイド兵士が、レーザー銃をガチャ付かせた。校長が慌てて、別の教師に、保管してあるアルバムを持って来るように指示をする。古びたアルバム数冊が千夏の目の前の床に置かれた。千夏は、指の無い前足でアルバムをめくる。そこには、修学旅行や、体育祭の時に、生徒達と一緒に撮影した記念写真が貼られていた。そこに笑顔で写っている、若い美人教師は、千夏自身だった。

「あ・・・ああ・・・」

千夏は、人間として普通に生活していた頃の幸せな自分を思い出して、嗚咽した。涙がポロポロと、アルバムの上に落ちた。

「ねえ、ママ。ワンワンが泣いているよ」

「よっぽど、嬉しかったのね」

ダフネと、クリトンは、校長に案内させて、千夏が毎日授業を行っていた音楽室へと行ってみることにした。千夏は、授業の行われていない音楽室に入ると、ピアノの椅子の上に飛び乗った。口と鼻先で、ピアノの鍵盤の蓋を押し上げる。3年ぶりに目にする、白いピアノの鍵盤だった。千夏は大学時代、何度もピアノコンクールで優勝した事がある。千夏は無意識に、目の前にある鍵盤を弾こうとして、前足である両手に、指が無い事に気が付いた。

「お・・・お・・・指が・・・ピアノが弾けない・・・」

千夏が、腹の底から搾り出したような悲痛な呻き声を漏らした。大粒の涙が瞳から零れ落ちる。千夏は逆上してヒステリーを起こし、丸くなった両手をピアノの鍵盤に叩き付け、大声で泣き喚いた。

 

第114話、動物園で飼育される女子大生(その4)

 

ネオガイア星の首都、メガポリスにある動物園で、阿部理沙(22歳)は飼われていた。女子大生であった理沙が、宇宙人によって誘拐されてから、2年が過ぎた頃、飼育係が、理沙の檻に一匹の地球人の男性を連れてきた。

「お前の番いになる、オスの地球人を連れてきてやったよ。子供が生まれたら、話題になって、動物園の入場者数が増えるかもしれないから、早く子供を作ってくれ」

飼育係は、そう言って檻の鍵を閉め、立ち去って行った。理沙は、連れて来られた男をまじまじと見た。全裸であるその男は日本人のようである。

「こ、ここはどこなんだ?俺をどうしようって言うんだ?」

男は、まだ地球から誘拐されて来たばかりらしい。冷凍睡眠状態で宇宙空間を運ばれて来たらしく、何の状況も判っていないようだった。

「ここは、動物園よ。あなたも、あたしも動物園に飼われている、ただの動物なの」

理沙が地球人と話すのは久しぶりだった。二人は全裸で向かい合っていた。2年間、衣服を着用した事のない理沙は、特に恥ずかしいと思わなかったが、男はひどく恥ずかしがり、手で股間を押さえて、前を隠そうとしていた。

「そ、そんな・・・逃げなきゃ・・・」

「無理よ。だってここ、地球から何千光年も離れた別の惑星だもの」

理沙は諭すように説明した。おろおろしている男は、佐藤正人(36歳)と言う名前だった。髪の毛は薄く後退し、小太り、近眼で、彼女いない暦36年の童貞だった。2年前、勤務していた会社をリストラされ、それ以来、自宅に引き篭もっていた所を、転送ビームで拉致されたのだ。一言で言うと、無気力な男だった。理沙は、生理的な嫌悪感を感じたが、飼育係の指示に逆らえば、動物園で生きていく事が出来ない。どんなに嫌でも、理沙は、この男を夫とし、彼との間に子供を作らなくてはならないのだ。

「ねえ、あなた、飼育係の説明を聞いたでしょ。あなたとあたしは、番いになるのよ。落ち着いたら、早速、子作りをしましょ」

積極的な理沙の申し出に、正人はたじろいだ。

「・・・子、子作り・・・」

女性と喋るのは苦手だった。顔を真っ赤にして反射的に拒絶反応を示す。しかし、内心は生まれてかつて、無かったほど、心臓がバクバクと鼓動していた。

「きゅ、急に言われたって・・・」

「まあ、いいわ。この状況に慣れるまでしばらくかかりそうね。慌てなくても、時間はたっぷりあるから。だって、あたし達、一生この動物園から出られないんですもの・・・」

理沙は、檻の正面に行き、いつものようにネオガイア星人の見物客に、楽しんでもらえるようなアクションを起こして、サービスを始めた。

 

 理沙は、懸命に見物客にアピールし、エサを投げてもらえるように頑張っていた。無気力な正人は、檻の中に造成された、小さな岩山の影に隠れている。

「正人さん。ここじゃ、エサはお客様からしか貰えないのよ。あなたも、もっとアピールしなくちゃ」

理沙が即したが、正人はモジモジしているばかりである。理沙は檻に投げ込まれた潰れたオレンジを拾って貪り食った。正人は、地球で捕獲されてから、何も食べていない。空腹に耐えかねて、物欲しそうに、理沙の食べているオレンジを横目でチラチラと見た。

「しょうがないわね。一つだけあげるわ。あなた、まだここに来たばかりだもんね。でも、いつまでも、甘えてちゃ、生きていけないわよ!」

理沙は、見物客に鉄格子越しに、オマンコにねじ込んで貰ったバナナを引き抜くと、正人に手渡した。正人は半分潰れて、理沙の愛液の滲んだバナナを見て、げんなりとし、口にする事を躊躇した。

「どうしたの?食べないの?食べないなら返してよ。本当は、あたしが貰ったエサなんだからね」

「い、いえ・・・食べます」

正人は空腹感には勝てずに、恵んで貰ったバナナの皮を剥き、口に頬張った。惨めさに涙がこぼれた。

「食べ終わったら、セックスをしましょ。見物客の前でやったら、いっぱいエサが貰えるかもよ」

理沙が提案した。生きるためなら、プライドに邪魔されることなく、何でもやる女である。バナナを食べ終わった正人は、理沙に導かれるままに、岩山の影から出て、見物客から一番良く見える、鉄格子の正面で理沙と抱き合った。

(き、気持ちいい・・・女の子の体って、こんなに暖かいものだったのか・・・)

36年間、彼女も出来ず、風俗に行く勇気も無かった正人は、夢中になって理沙の体を抱きしめた。学生時代は、ただ惰性で勉強し、3流大学を出て就職したものの、大した仕事を与えられずに、30代前半でリストラされたのだった。女は欲しかったが、アダルトビデオや、Hな本を見る程度で、自分から行動を起こそうとした事はなかった。理沙が、正人の裸の胸に乳房を押し付け、唇を重ねようと顔を近付けてくる。大勢のネオガイア星人の家族連れや、カップルが二人の様子を檻の外から眺めていたが、頭に血が上って夢中になっている正人には、全く気にならなくなっていた。

「ねえ、パパ?あの動物は何をしているの?」

「あ・・・あれか。あれはな・・・そうだな、ママに聞きなさい」

「ねえ、ママ?何してるの?」

「え・・・あ、きっと、あの2匹は、仲良しさんなのよ。さ、早く行きましょう。向こうに熊さんがいるわよ」

正人は、理沙の唇を吸い続けた。理沙が足を絡ませ、右手で優しく、正人の股間を握り締めてくる。正人のチンポは今にも爆発しそうな程に膨張し、固くそそり立って脈打っていた。

「入れて・・・」                                                                                                                 

理沙は、岩の上に仰向けに横たわり、正人の腰に手を回して引き寄せた。理沙のオマンコは、キスの間にヌルヌルになっており、簡単に正人の屹立したチンポを受け入れた。

「ど、どうすれば・・・」

「腰ふって」

正人はぎこちなく腰を降り始めた。重度の近眼で、眼鏡は捕獲された時に衣服と一緒に取り上げられていたので、間近にある理沙の顔ですら、ぼやけて見えた。

「あ、ああ!・・・エサ、エサを頂戴!」

理沙は喘ぎながら、見物客に懇願した。2,3人の見物客が、バラバラと果物を檻の中に投げ込んでくれる。生まれて初めてのセックスに夢中になっている正人とは裏腹に、理沙は、喘ぎながらも冷静に、投げ込まれて地面に転がる果物の数を、音と地面の振動を頼りに心の中でカウントしていた。

 動物園での単調な日常生活が続いていった。理沙と正人は狭い檻の中で、共に生活をし、見物客の前で毎日セックスを披露する。ここ2年間、模範的な態度を取り続けて、飼育係の評判が良くなっていた理沙は、時々、檻から出され、触れ合い広場で子供達の相手をする事もある。正人が来て3ヵ月後、理沙は妊娠し、そして、その10ヶ月後には、元気な男の子の赤ちゃんを出産した。動物園の地球人にオスの赤ちゃんが生まれたニュースは、立体テレビのニュース番組で、ネオガイア星中に報道され、このところ、減り続けていた動物園の来園客数が、一時的に増えた。

「あれが、地球人の赤ちゃんよ。可愛い!」

「あっちが、お母さんで、あれがお父さんかな」

「あっ、オッパイ吸ってる」

見物客が増え、アピールしなくても、投げ込まれるエサの量が増えた事に、理沙は大満足のようだった。正人は、塞ぎこんでいたが、地球にいたら、今も童貞で、結婚することなど一生出来なかっただろうと考えると、複雑な心境だった。

(無気力な動物園の生活が、俺には合っているのかもしれないな・・・)

と考える事もあった。

 

第115話、ロボットバトル(その2)

 

混濁した孝の頭の中に、どこからともなく響いてくる声があった。

(・・・・憎い!憎い!憎い!ネオガイア人ども、ぶっ殺してやる!)

それは、改造された巨人女、レアの思念だった。孝は、心に直接伝わってくる憎しみの感情の、あまりの波動の大きさに、目を覚ました。どれくらいの時間、意識を失っていたのかは判らない。ドロリとした酸味がかった液体が、口から気管、肺を満たしており、気持ち悪さのあまり、吐きそうになる。しかし、呼吸しているのが、空気ではなく液体だったため、噎せ込む事すら出来なかった。

(だ、誰でつか?)

(お前こそ、誰だ?ネオガイア人か?)

(ち、違うでつ。オイラ人間でつ。名前は、天野孝だぼ)

(また、あたしを、お前の思い通りに操作して、屈辱をあたえるつもりか。誇り高いこの女戦士レアを、オモチャのように扱うつもりか!)

(な、何のこと事か、判らないでつ。言いがかりはやめるぼ。そんな事より、ここから出して下さい。オナガイします)

(???、出たければ、コントロールパネルを操作してハッチを開け、勝手に出ればいいだろう。あたしに、頼む必要はない)

(やり方が判らないでつ。どうやったら出れるのでつか?)

レアは、直感的にこの男が正式なパイロットではない事を悟った。そして、脱出する、またと無いチャンスが巡ってきた事も。

(コントロールパネルの一番上の列の、右から4番目のボタンを押せ。それで、あたしはコクピットからの操縦に関係なく、あたしの意思で自由に動く事が出来るようになる)

(ぬるぼ・・・そうすれば、出してくれるのでつね)

(そうだ。いいから押せ!)

(がっ!)

孝は、強力なレアの思念の迫力に押されて、言われるがままに、ボタンを押し込んだ。途端に、コクピットの機器が活動を休止した。

「やったぞ!これであたしは自由だ。ふんっ、こんな拘束具など、あたしの力で!」

レアは渾身の力を込めて、両腕両足を固定していた拘束具を引き千切った。右目のモノアイが不気味な赤い光を放っている。

「うおおおお!ネオガイア人ども!ぶっ殺してやる!」

レアは、工房の壁に掛けられていた、ロボット用の武器や装甲服を、すばやく体に装着した。そしてレーザーライフルで、外への扉を破壊した。

(ガクガクブルブル・・・)

孝は、コクピットのモニターに映し出される破壊の様子を眺めながら、透明な体を、ただ震えさせているだけだった。

 

「レアが暴走しておる!」

ロボット研究所のモニターに工房内の様子が映し出されている。メビウス博士とピタゴラス総督は、その様子を唖然としたまま眺めていた。

「レアの脳内コンピューターから電流を流せ!遠隔操作で停止させる事は出来んのか!」

ピタゴラス総督が怒鳴った。

「駄目じゃ。コクピットに侵入した何者かが、遠隔操作の遮断スイッチを押したようだ」

メビウス博士が、情けない声で答える。

「いったい、何者だ。地球人の工作員か?それともネオガイア星人の裏切りものか?」

「あっ、やつは武器を奪っている。マズイ、あの武器は・・・」

モニターを見ていたメビウス博士が、顔色を変えた。

「レアが、装着しようとしているのは時空砲だ!」

「時空砲?」

ピタゴラス総督には、その武器の名前は、初耳だった。

「ああ、クロノス博士の4次元理論を元に、デメテール女史が開発した、まだ試験段階の武器だ。あらゆる物質を時空の彼方へ吹き飛ばす事が出来る!」

「分子破壊砲のようなものか?」

「もっと始末が悪い。標的になったものは、どこの時代のどこの場所へ飛ばされるか判らん。この事実を敵に伝えれば、恐怖を植え付ける事も出来る。もちろん破壊力は、従来の分子破壊砲よりも数段上だ」

しばし、二人は沈黙した。なす術もなく、『キュクロプス2号機』こと巨人女レアは、全身を武器で固めて、軍事基地の外へと逃走していった。

「さざなみ市に駐留する全軍に、非常事態宣言だ!」

ピタゴラス総督が、通信機で、総督府のペルセウス長官に指示をした。

「アルテミスを呼んでくれ!ロボットにはロボットだ。『キュクロプス1号機』を出撃させよう」

1年前の百足星人との戦闘で破壊されたキュクロプス1号機は回収され、復元されてロボット研究所の別の格納庫に保管されていた。ただちに、さざなみ刑務所で服役中のアルテミスに召集がかけられた。

 

 さざなみ刑務所の特別拷問室では、囚人ナンバー999番、アルテミスへの凄惨な拷問が日常的に行われていた。

「今日は、新しい拷問器具を試してみることにするわ。お前のために特別に取り寄せて、改良させたのよ」

シンディ・スコットランド刑務官は、別の男囚数名に、倉庫からその拷問器具を運ばせてきた。それは、『鉄の処女』と呼ばれる中世ヨーロッパで使われていた恐ろしい拷問器具だった。人間の形をした棺桶のようなその器具の内側には、閉じ込めた人間の体を貫通させる太い針が無数に仕込まれている。針は、急所を外すような位置に取り付けられているため、この中に入れられた人間は全身を穴だらけにされて、数時間あるいは数日間に渡って苦しみながら死んでいくのだ。

「どう?恐ろしい?それとも、重症マゾのあなたには、これぐらいじゃ物足りないかしら?」

シンディは、全裸で土下座をして、拷問の開始を待っているアルテミスに言った。アルテミスの顔の被せられた鉄仮面からでは、表情が読み取れない。

「私ごときのために、このような立派な拷問器具を用意して頂いて、ありがとうございます」

「怖くなさそうね」

「はい、怖くはありません。シンディ様に拷問して頂ける事に心から感謝しております」

アルテミスは、怖いどころか、期待感に震えているようだった。

「フンッ、お前のようなド変態は見たことがないよ。そんなに痛めつけて欲しいんなら、さっさと入りな!」

シンディは、アルテミスの鉄仮面に、ペッと唾を吐きかけた。アルテミスは立ち上がり、自ら鉄の処女の蓋を開け、その中に入った。観音開きになった、両側の蓋の内側には50センチほどの長さの針が、無数に埋め込まれている。

「相変わらず、いい度胸だね。じゃあ、扉を閉めるよ。覚悟はいいかい?」

「はい、お願いします」

シンディは、男囚二人に合図をし、扉を両側から閉めさせた。

「ぎゃああああああああ!」

無数の針が、アルテミスの裸身を貫通した。男囚二人は、鉄の処女の内部から聞こえる、恐ろしい絶叫に、ガクガクと震えだす。足元からは、アルテミスのおびただしい血が流れ出してきた。

「ぎゃあああああああああ!」

絶叫は止まらない。シンディは鉄の処女の背中についているボタンを押し込んだ。

「針から、電流も流れるように改造してあげたのよ。ゆっくり楽しみなさい」

「ぎゃあああああああああ!」

アルテミスの絶叫は、他の囚人達をおびえさせるために、監房や、労働奉仕の作業場にスピーカーを通じて流されている。即死することもなく、不死身の再生能力を持つアルテミスの絶叫はその後、何時間も続いた。

「鉄仮面に出撃命令です」

アルテミスを放置して、刑務官食堂で、昼食を取っていたシンディに、連絡があった。

「鉄仮面なら、今、特別拷問室にいるわ。発狂しているかもしれないけど」

刑務官達によって鉄の処女から解放されたアルテミスは、全身血だらけで、衰弱しきっていた。

「あ・・・ああああ・・・・」

全身がブルブルと震えが止まらず、うわ言を発している。今にも、崩れ落ちそうだった。

「このまま、転送室へ連れていきます」

「大丈夫よ。こいつ、不死身だからすぐに、立ち直るわ」

アルテミスは、転送機に放り込まれ、ロボット研究所に転送された。ロボット格納庫で実体化したアルテミスを見て、メビウス博士とピタゴラス総督は驚いた。全身穴だらけで、大量の血を流しているのだ。

「出撃してくれ、アルテミス君。しかし、大丈夫かね、その体で?」

「あ・・・はい、大丈夫です・・・このくらいの傷なら、30分ぐらいで完治します・・・」

アルテミスは、目の前にそびえ立っている『キュクロプス1号機』を見上げた。1年ぶりに見る、懐かしい姿だ。

「『2号機』が暴走した。現在、逃走中だ。なんとか、取り押さえてくれ。ただ、ヤツは時空砲を持っている。最悪の場合は、残念だが、破壊するしかないかもしれん」

「わ・・・わかりました・・・」

アルテミスは、苦痛に顔を歪めながら、『キュクロプス1号機』の股間の位置にあるコクピットに乗り込み、三角木馬型の操縦シートに身を沈めた。

「む・・・くうっ・・・」

2本の特大バイブレーター型の操縦桿が、オマンコとアナルに挿入される。全身に感覚伝達のための電極が貼り付けられた。

「アルテミス。『1号機』発進します!」

格納庫の扉が開き、一つ目の巨大ロボットがゆっくりと歩き出した。

 

 ロボット研究所を脱出したレアは、宇宙港を目指した。宇宙船を奪い、故郷の惑星タイタンへと帰るのだ。行く手を阻む、反重力戦車やアンドロイド歩兵を、レーザーライフルで撃破しながら進んでいったレアが宇宙港にたどり着いた時、すでに、全ての宇宙船は、緊急発進して、大気圏外に避難した後だった。

「くそおおおおっ!ネオガイア人どもおおおお!」

レアが吼えた。あまりの大音響に、付近のビルのガラスにヒビが入る。見晴らしのいい宇宙港の滑走路に、呆然として立ちすくむレアを、反重力戦車の部隊が包囲した。

「こんなところで死んでたまるか!」

レアは、背中に担いだ時空砲を構えた。全長10メートルのバズーカ砲のような武器である。これを使用するのは、初めてだ。引き金を引くと、虹色の光線が拡散照射され、射線上にあった部隊が消滅した。どこか、別の世界へと飛ばされたのだ。

「な、なんだ、あの武器は!」

「新型の分子破壊砲じゃないのか」

ネオガイア人兵士の間にパニックが広がった。レアは、時空砲を乱射しつつ、包囲を破って走り出す。こうなったら、さざなみ市を脱出し、山間部に身を潜めるしかない。市街地を駆け抜けるレアに、無数の一般市民が、踏み潰されたり、時空砲の照射を浴びて、別の世界へと飛ばされていった。

(大変なことになったでつ。ガクガクブルブルでつ・・・早く、ここから逃げないと、オイラもやられてしまうぼ)

コクピットの孝は、モニターに映し出される惨状を見て震えていた。呼吸しているのはレアの愛液である。最初は気持ち悪かったのだが、濃厚な女の愛液を味わっている間に、チンポが勃起し、興奮が治まらなくなってきた。

(テラオソロシス!)

孝は、震えながら、オナニーをし、何度も何度も射精した。

(レアさん。オイラをここから出して欲しいでつ)

(駄目だ。今は戦闘中だ。今立ち止まったら、やられてしまう!ところで、お前、今何をしているのだ?)

(オナニーぼ)

孝は、精神感応でレアと話しながら、数年ぶりに他人と、会話をしている自分に気が付いた。

(他の人と、それも女の人と、普通に話せるでつよ・・・)

孝は、ふと二階堂麗奈のことを思い出した。結局、麗奈には一言も話しかけることが出来なかったのだ。

(今度、会う時までに、普通に話しかけれるようになりたいぼ・・・)

孝は、オナニーをしながら、そう思った。

 

 東京都永田町にある首相官邸の執務室で、総理大臣がコーヒーをすすりながら、国会答弁の草案をまとめていた。ふと手を休め、物思いにふける。

(俺の在任期間も、かなり長いな。もっとも、この難局で、総理大臣になりたい、と考えるやつは誰もおらんようだが・・・野党ですら、最近は、本気で政権を奪おうとはしてこん。総理大臣になれば、日本政府を代表して、宇宙人との交渉に当たらねばならんからな・・・)

総理大臣の体には、宇宙人との会談の際に、虐待された傷跡が無数に刻み込まれている。

(俺も、首相になった最初の頃は、長引く不況から日本を脱却させるために、構造改革を実現しようと、必死だった。もし、宇宙人なんぞが現れなければ、俺は、歴史に残る名宰相として、後世に名を残していたかもしれない。)

総理大臣の顔は、苦悩に歪んでいる。髪の毛は真っ白だった。現在の日本は、ほぼ宇宙人に占領されたも、同然の状態にあり、国民の人権は、度々侵害されて、重大な問題になりつつある。

(俺が、就任してすぐに9.11テロがおこり、世界は戦乱への道を歩み始めた。あの頃から、すでに歴史が、おかしくなり始めていたのかもしれない・・・)

その時、デスクの上の電話機が鳴った。受話器を取ると、内閣官房長官からだった。

『総理!さざなみ市の植民地総督府から、自衛隊を出動させるように指示がありました!』

「自衛隊?どういうことだ?」

『宇宙人が開発中のロボット兵器が、暴走し、さざなみ市を脱出して、東京方面に向かっているそうです。日本政府は、ロボット兵器の捕獲に協力せよ、とのことです』

「ロ、ロボット兵器???・・・うーむ、仕方がない。よく判らんが、宇宙人の言う事には逆らえん。とにかく防衛庁に連絡しろ。それから、情報収集と確認も行うように。非常事態宣言を出して、被害が出そうな地域の住民の、避難活動もせねばらなん」

『判りました』

(一応、アメリカ大統領にも知らせておくか)

総理は、ホワイトハウスへホットラインをかける事にした。アメリカ合衆国は、宇宙人との対決姿勢を崩さず、日本は、板ばさみの状態にある。首相は、虐待で痛んだ体を擦りながら、深いため息をついた。

 

 レアは、さざなみ市を脱出し、東へと向かっていた。行く当てがあったわけではない。追撃してくるネオガイア星人の部隊から逃れるために、必死に走っているのだ。時速50キロで走り続けるレアは、富士山の裾野を横切り、小田原方面へ出ようとしていた。

「ゼエ、ゼエ、ゼエ、ゼエ・・・」

重い装備を担いで長距離を走っているため、息が上がってきている。改造されて、機械部品を埋め込まれている部分が、重く感じられ、鈍い痛みを感じる。時折、立ち止まって、上空から接近してくる、宇宙戦闘機を、レーザーライフルで撃ち落さなければならない。ネオガイア星人の地上部隊の方は、富士山麓の樹海を、移動するのに手間取っており、まだ、追いついてこない。それでも、遠くから飛んできた長距離ミサイルが、走っているレアの近くに着弾する事があったが、直撃はまぬがれ、至近距離に被弾しても装甲服が身体を保護してくれた。

(レアたん。そんなに走り続けて大丈夫でつか?少しは、休むぼ?)

(馬鹿、死にたいのか!あたしは、元傭兵の女戦士レアだ。スタミナには自信がある。心配はいらん!)

孝の目の前を、先ほど射精した精液が、白い塊となってモヤモヤと漂っている。レアの愛液を呼吸することに、それほど抵抗を感じなくなっていた。

(オイラ、少し眠るでつ)

(ああ、勝手に眠れ。あたしは、大丈夫だ。昔、砂の惑星で、1週間眠らずに、敵軍と戦い続けたこともある。)

(おやすみ・・・)

孝が眠り込んでも、レアは走り続けた。関東各地の自衛隊駐屯地から、陸上自衛隊の部隊が移動を始めた。小田原の前面に布陣し、レアの首都圏への侵入をなんとしても、食い止めようという構えである。横須賀港からは、海上自衛隊の護衛艦数隻が出港し、相模湾に展開した。

「ああ、咽喉が渇く!」

汗だくになって、走り続けていたレアは、芦ノ湖で水分を補給した。そして、水浴びをしているところへ、航空自衛隊のジェット戦闘機が対地ミサイルを撃ち込んできた。

「ええい、うるさい蚊トンボめ!」

つかの間の休息を邪魔されて、レアは怒り狂った。遠視スコープを使ったレーザーライフルの長距離狙撃で、上空を旋回中のF15戦闘機を、次々に撃ち落していく。片目になったとはいえ、傭兵時代に培ったスナイパーの腕前は、全く衰えていなかった。しばらくして、体内に埋め込まれたレーダーが、別の物体の接近をキャッチした。樹海から湖畔に現れた、その物体は、アルテミスの操る巨大ロボット、『キュクロプス1号機』だった。

「貴様!また貴様か!覚えているぞ、貴様に受けた屈辱は!」

レアが吼えた。まだ、レアが、サイボーグに改造される以前、沖島でのロボットバトルで、こいつに滅多打ちにされて、無様にノックアウトされたのだ。

(なにを怒っているのでつか、レアたん?)

孝が、凄まじい怒りの波動を感じ取って、眠りから覚めた。

(お前には、関係ないっ!)

「うおおおお!」

レアは、キュクロプス1号機にレーザーライフルを乱射した。アルテミスの操る1号機は、驚くべき敏捷さで、光線をかわし、突進してくる。レアは、時空砲を構えようとしたが、間に合わず、互いに抜いた、レーザーサーベルで切り結んだ。サーベルの接触部分で、レーザーがスパークし、レアの肌を焦がす。アルテミスは、レアを生きたまま捕獲するように命令されているため、思い切った攻撃が出来ず、手加減せざるを得ない。

「お前らに改造されたあたしは、もう、以前のあたしじゃないのよっ!」

レアの脳に埋め込まれたコンピューターの戦闘プログラムが動き始めた。敵の動きを一瞬に予測して計算し、正確な早さで、レアの体を反応させる。レアのレーザーサーベルが一閃し、キュクロプス1号機の右腕を肩の付け根から切り落とした。

「ひぎゃああああああ!」

1号機のコクピット内部で、アルテミスが絶叫した。ロボットが被る損傷は、神経回路を通じて、操縦者も同じ痛みを感じる事になるのだ。

「止めだ、死ねえ!」

レアが、レーザーライフルで1号機の股間を撃ち抜き、パイロットを殺害しようとした時、上空から、F15の第二波が襲ってきた。F15の放った対地ミサイルが装甲服の背中に直撃し、レアは前のめりに倒れこんだ。

「何だってんだよ、お前らあ!よってたかって、あたしを攻撃しやがって!」

レアの生身の左目から悔し涙が流れた。1号機は、その隙に、転がるように湖の中に姿を消し、レアも対地ミサイルの猛攻撃を連続的に受けて、再び樹海を逃走し始めた。

 

 時空の彼方にある、時間管理局の本部では、時空連続体に異常が確認され、大騒ぎになっていた。

「大変ダ、時空ガ乱レテイル」

「原因ハ何ダ」

「21世紀初頭デ、立テ続ケニ起コッテイル、時空震動ガ原因ダ」

「21世紀?歴史改変ガ行ワレタ可能性ガアルト言ウ、アノ時代カ?」

「ソウダ。現在、時間管理局ノ修正班ガ修正中ダッタ・・・。ソノ時代カラ多クノ、人間ヤ物体ガ、様々ナ時代ヘト、ランダムニ飛バサレテイル」

「スグニ、パトロール艇ヲ、急行サセロ。原因ヲ見ツケ出シ、速ヤカニ排除スルノダ」

「了解」

非常警報が出され、本部に待機していた数十機のタイムマシンが21世紀へ向けて飛び立っていった。

 

 レアは、小田原市の西で、陸上自衛隊の陣地に突入した。ロケット砲や、戦車の集中砲火をものともせずに、時空砲を照射しながら、血路を開いていく。自衛隊が部隊ごと、次々に時空の彼方へと消え失せていった。

(あの人達、どうなるのでつか?)

孝が、思念でレアに尋ねた。

(知らん。死んだわけではないから、どこか別の世界で生きていくんだろう。ただ、絶対にここに、戻って来れない事は確かだ)

(ガクガクブルブル・・・テラカワイソス)

(それにしても、腹が減ったな。飯でも食うか)

小田原市内に突入したレアは、逃げ惑う市民を捕まえると、次々に口に放り込んだ。

「キャーッ、助けてええ、食べられるうう!」

「おいっ、離せ!離せ!」

バリバリと骨ごと噛み砕き、血と肉を飲み込むと、口に残った衣類と骨をペッと吐き出した。

(あわわわわ、レアたん。人間を食べちゃ駄目でつよ・・・)

(別に、牛や豚を食べてもいいんだが、この辺には、いないだろう?人間ならいくらでもいるぞ)

(そ、そういう問題では・・・)

レアは、陸上自衛隊と戦いながら、多くの建物や人間、自動車を時空の彼方へと、飛ばしていった。時空砲のエネルギーは無限ではない。いつか、使えなくなるかもしれないが、今はそんな事を気にしている余裕はなかった。

(このままでは、いつかやられてしまう。いったいどこへ逃げればいいんだ?)

レアは、蓄積されてくる疲労と戦いながら、次第にあせりを感じていた。

(海に逃げるか)

レアの背中には、反重力装置が取り付けられているため、水中を移動する事も出来るし、短時間なら空を飛ぶ事も出来る。小田原市内を突っ切り、海岸へ出たレアは、絶望の叫びを上げた。そこには、沖合いで、数隻の護衛艦が、哨戒ヘリから送られてくる情報を元に、対艦ミサイルの照準を合わせ、レアが現れるのを待ち構えていたのだ。たちまち、ミサイルが雨あられと降ってきた。

「くそおおおおお!」

レアは爆煙に包まれながら、海に向けて時空砲を照射した。護衛艦の一隻が消滅する。その時、上空に無数の光の玉が現れた。

(UFOでつよ、レアたん!)

(この忙しい時に!)

光の玉は、時間管理局のタイムマシンの編隊だった。

「アレガ、時空震動ノ元凶ダ。抹殺シロ」

時間警察の司令官が命令を下した。無数のタイムマシンから発射された光線砲の十字砲火が、レアを襲う。

「あいつらも攻撃してきやがった。なんで、あたしばっかり、攻撃されるのよおおおお!」

レアは時空砲をタイムマシンへと向けた。しかし、時空砲の照射を受けても、タイムマシンは、一旦は消え去るのだが、次の瞬間には、再び何事もなかったかのように出現する。いくらタイムマシンを別の時代へ飛ばしても、すぐに自力で戻ってこれるのだ。

「時、時空砲が効かないっ!」

レアは、踵を返し、再び、今来た市街地の方へ逃げ戻ろうとした。しかし、そこには、片腕を失った、キュクロプス1号機が立ち塞がっていた。

「ピタゴラス総督から、破壊命令が出たわ。残念だけど、あなたを、生きたまま捕獲する事は無理だと、判断が下されました。」

アルテミスが、拡声器を使って呼びかけてきた。1号機は、残った左腕にレーザーライフルを構えている。

(もう駄目だ、逃げ切れない!孝、ここまでよ。あなただけでも逃げなさい!コクピットプラグを抜き出してあげるわ)

レアが、ビルの陰に転がり込み、オマンコに挿入されたバイブ型のコクピットプラグを、左手で、引き抜こうとした。

(レアたん、あきらめたら駄目ぼ。一つだけ逃げる方法があるでつ)

絶体絶命の状況で孝は、ある事を思いついた。

(なんだ。早く言え!)

(その時空砲で、自分を撃つでつよ・・・)

(???・・・自分を撃つ・・・そうか!)

なぜ、その事に、早く気が付かなかったのだろう。別の時代に逃げ込んでしまえば、そう簡単に追ってくる事は出来まい。どこの世界に飛ばされるか判らないが、ここで死ぬよりは遥かにマシだ。レアは、即座に決断を下すと、時空砲を自分に向け、照射スイッチを押し込んだ。

 

第116話、ラ・コスト城の虜

 

紀元1772年、フランス革命前夜のフランス南部に、特異な趣味に生きる一人の貴族がいた。男の名は、通称マルキ・ド・サド侯爵(32歳)、プロヴァンス地方にそびえ立つ古城、ラ・コスト城の城主である。サド侯爵は、その名の示すがごとく、サディズムの語源となった男である。サド侯爵は、領地から最も近い大都市であるマルセイユから、若い娘を金で騙して、城に連れ込んでは、残虐非道な趣味の生贄としていた。

「お前の体を、鞭で真っ赤に染め上げてあげるよ」

サド侯爵は、下男のラトゥールに手伝わせて、新たに連れてきた娘を、裸でベッドに縛り付けた。

「侯爵様、どうかお許し下さいませ。私はこんな事をするために、お城にご奉公に上がったのではございません!」

娘は、シモーヌという花屋の娘だった。17歳で、みずみずしい肌を持つ、金髪の娘である。

「そんなに、嫌がるんじゃないよ、これから、とっても、楽しい遊びをするんだ。お前もそのうち、病み付きになって、毎日の生活が楽しくてたまらなくなるさ。」

サド侯爵には、自分のやっている事に対する罪の意識は全くないらしい。さわやかに笑いながら、手に持った乗馬鞭で、ピシリとシモーヌの裸の背中を打った。

「ううっ!」

シモーヌのシミ1つなかった背中に、赤い筋が刻みこまれた。

「たまらんねえ、女の肌を鞭打つ感触は!天にも昇る快楽だよ」

サド侯爵は、続けて何度も何度もシモーヌの背中を鞭打った。処女だったシモーヌは、男二人の前で、裸にされた恥ずかしさと、背中に走る鞭の痛みとで、シクシクと泣き出した。

「ラトゥール、娘の御尻の穴を犯しなさい」

「はい、侯爵様」

忠実な下男であるラトゥールは、ズボンを脱ぎ、下半身を丸出しにすると、いきり立ったチンポをシモーヌのキュッとすぼんだ肛門に押し当てた。

「最初は、入れにくいかもしれんが、気にせずに押し込むのだ。苦痛に歪む、女の顔を見るのもまた一興だ」

ラトゥールは、侯爵の言いつけ通り、無理矢理、巨根を力任せにシモーヌの肛門に押し込んだ。

「きゃあああっ!」

肛門を引き裂かれる痛みにシモーヌが絶叫する。血が流れたが、ラトゥールはお構いなしに、深々と根元まで押し込んだ。処女であるシモーヌは、肛門を先に犯されたのだ。

「ラトゥール、その締め付け具合がたまらんだろう?なぜ、カトリック教会が、肛門性交を禁止しているのか、私には、皆目わからん。人生の楽しみの一つを、謂れのない迷信で、ムザムザ放棄せねばならんとはな!」

サド侯爵は、泣き叫ぶシモーヌの鼻を摘み上げ、指先でねじり上げた。女に苦痛を与えることに、最高の性的快楽を感じるのだ。

「悪徳は、永遠に栄えるのだ!この世の美徳は、不幸なのだよ。」

サド侯爵は、いつの日か、世の中の人間に、この素晴らしい快楽を紹介するために本を書こうと思いたった。

 

 紀元1274年、博多湾上空で、突如、時間管理局の攻撃を受けた、クロノス博士と、その一行の乗るタイムマシンは、とっさに時空連続帯の中へ逃げ込んだ。そして別の時代に実体化した時、追ってくるものは、もはやいなかった。

「クロノス博士。どうやら、やつらを撒いたようです」

ネオガイア星人の隊長であるオデュッセウスがホッと胸を撫で下ろして言った。

「ふむ、そのようだな。ところで、ここは一体いつなのかね?」

「ちょっと待って下さい。えーと、今は地球人紀元の1772年、ユーラシア大陸西部のヨーロッパ上空です・・・ただし、我々の元いた未来に通じる世界かどうかは判りませんがね」

皮肉っぽくオデュッセウスが言った。すでに彼らが、多元宇宙の迷子になって以来、時間航行機の船内時間で3年が経過しているのだ。乗員達はくたびれ果てている。

「わしの時空ナビゲーションシステムを信用しとらんのかね?今度こそ大丈夫だ。・・・とは言え、一度、どこかへ着陸して、船の点検をしなくてはならん。さっきの戦闘で、随分、損傷を受けたからな。それにしても、やつら一体何者なのだ!わしの作ったもの以外にも、タイムマシンが存在するとは!」

クロノス博士は憤りを抑えきれないようだった。

「時間管理局だとか言っていましたが・・・」

「ふん、時間管理局だと!笑わせるじゃないか。時間航行機は、わしが発明したのだ。どんな使い方をしようが、わしの勝手じゃ。歴史上の人物を誘拐して何が悪い!」

「歴史が混乱するのではないのですか?」

「そんなことは、ありえんと言っているだろう。歴史とは無限の可能性のうちの1つに過ぎん。どんな未来を作るかは、その世界に生きている人間の意志によって決めるのだ。例え神様でも、あらかじめ、歴史を決める事など出来んのだよ」

「ですが、やつらが、時間管理局と名乗るからには、未来で結成された、あらかじめ決められた歴史を守るための、警察のような組織なのではないのでしょうか?」

「うるさい!そんなもの、タイムマシンの発明者である、わしが認めんぞ!宇宙は無限の多元宇宙で成り立っておるのだ!それがわしの四次元理論の大原則だ!」

オデュッセウスは、あくまでも持論を曲げないクロノス博士を不信の目で眺めた。そこへ、地球人オブザーバーとして、タイムマシンに乗り込んでいる岩波遼太郎教授が、割って入った。

「とにかく、着陸する場所を探しましょう。ここが、1772年のヨーロッパだとすると、しばらく身を隠すのに、うってつけの場所があります。」

歴史学者である岩波教授は、この時間旅行で、地球の歴史に疎いネオガイア星人たちの道案内役を務めている。岩波教授が、提案した場所は、悪名高いサド侯爵の居城、ラ・コスト城だった。そこでなら、食料や奴隷の労働力も充分に入手出来るだろうし、多少の怪異が近隣の住民に漏れても、サド侯爵の悪行の一環としてカムフラージュ出来るだろう。船内には、各時代から、誘拐してきた美女達、卑弥呼、ホエルン、常盤御前、静御前や、彼女らが生んだ幼いテムジン、牛若丸が監禁されており、たまには外の空気を吸わせなければならない。痛手を負ったネオガイア製の時間航行機は、フランス南部のラ・コスト城へと降下して行った。

 

 中世から脱却し、ブルボン王朝への中央集権化が進んだこの時代において、地方貴族の権力は、形骸化し、独自の兵力を持つことは無くなっていた。サド侯爵のラ・コスト城も例外ではなく、城に居住するのは、サド侯爵一家と、執事やメイドたち、下男などの使用人が数十人のみだった。領地からの収入は、国の徴税機関を通じて分配されている。ネオガイア星人の時間航行機が城の中庭に着陸し、スペーススーツを着た十数人の兵士とアンドロイドを吐き出した時、サド侯爵に抵抗する術は、全くなかった。

「何だね、君達は?」

シモーヌに首輪をつけて、四つん這いで中庭を散歩させていたサド侯爵は、見たことも無い服装の一団に取り押さえられて、困惑した。

「この城は、我々が占拠した。時間航行機の修理が終わるまで、ここにしばらく滞在させて頂く」

隊長であるオデュッセウスが、自動翻訳機を通して言った。

「時間航行機?何のことだ?」

サド侯爵は、その言葉の意味すら判らなかった。世界最初のSF作家であるジュール・ヴェルヌや、H・G・ウェルズが登場するのは、数十年後の事である。

「理解出来んのなら、何でも構わん。お前たちは、俺達がここに滞在する間、奉仕すればよいのだ。長い時間の旅に疲れた我々には、休息も必要なのでな」

サド侯爵とネオガイア星人の共同生活が始まった。狭い、船室の生活に飽き飽きしていたネオガイア星人たちは、ここぞとばかりに羽を伸ばした。

「もっと、うまい食事を持ってこい!」

ネオガイア人の下級兵士が、城の大広間の豪華な食卓に座り込んで怒鳴った。可愛らしいメイド達が慌てふためいて料理を運んでくる。城のワイン倉から、秘蔵のワインが開封され惜しみなくネオガイア人達に振舞われた。

「御主人様、お味は、いかがでしょうか?」

「ああ、うまい、うまいぞ。肩がこった、揉んでくれないかな」

「はい、御主人様」

よく訓練された本物のメイド達は、愚痴もこぼさず、甲斐甲斐しく真心をこめて新しい御主人様たちに奉仕している。ワインを飲みながら、メイドの小さな手でマッサージをされて天にも昇る心地になったネオガイア人兵士は、メイドの御尻に手を伸ばし、撫で回し始めた。

「あっ、いやっ、御主人様。いけませんわ・・・」

「嫌がるんじゃねえよ。触って減るもんじゃないだろう。気持ちよくしてやろうってんだ」

兵士は、顔を赤らめているメイドの胸や御尻をメイド服の上から撫で回し、顔を押し付けて匂いを嗅ぎまくった挙句、興奮して食卓から立ち上がると、豪勢な絨毯の上に押し倒した。

「ああっ、御主人様、お許しくださいませ!」

「うるさいっ!」

元来サディストであるネオガイア人は、その本性に立ち返り、抵抗するメイド娘に平手打ちを食らわせた。そして、荒々しく、メイド服を引き千切ると股間を押し広げ、チンポを突き立てて、むしゃぶりついていった。

「御主人様・・・・」

まだ二十歳にもならないメイドは、暴力で犯され、痛みとショックで号泣した。

 

 静御前(25歳)、常盤御前(23歳)は、首輪をつけられ、クロノス博士に引かれて、ラ・コスト城の中庭を散歩していた。二人とも全裸で四つん這いである。常盤御前は、静御前の姑にあたるのだが、誘拐されてきた年代が、異なるため、静御前の方が2歳年上という、ややこしい事になっている。静と常盤は、戯れにレズショーを命じられることも有り、すっかり仲良くなっていた。

(妾より年下の、この娘が、義経様の母上とは、信じ難い・・・もしその話が本当なら、あの牛若丸という子供が成長すれば義経様に・・・しかし、その時、わらわは、いったい何歳なのであろう?)

静御前は、密かに苦悩していた。義経が衣川で討ち死にし、その後、産み落とした義経の遺児もあっさり頼朝に殺されてしまった。一旦は絶望の淵に沈み、自刀する事さえ考えたのだが、ネオガイア人に誘拐された御蔭で、再び子供の頃の義経と巡り合う事が出来たのだ。源平時代の女である静に、事の成り行きが理解出来る筈もなかったが、3歳の義経の存在が、今の静の生きる心の支えだった。静と常盤は、ネオガイア人に加えられるどんな屈辱にも耐え、生きる決意を固めていた。

「東洋人の女犬ですか?」

サド侯爵が興味津々で、クロノス博士に話しかけてきた。変態貴族であるこの男は、むしろこの異常な状況を楽しんでいるようだった。

「ああ、我々ネオガイア人は、人種的には、地球の白人に近いのだがな。黄色人種というのは地球に来て初めて見たよ」

地球人であるサド侯爵に話しかけられ、クロノス博士はうっとおしく感じながら答えた。しかし、サド侯爵はお構いなしだった。

「その一匹を、私の飼っているシモーヌと交換して頂けませんか?」

「交換?駄目だ駄目だ。この東洋人の女たちは、歴史上有名な人物らしい。現代に連れ帰って博物館に展示せねばならん」

「???」

サド侯爵は、わけが判らなかったが、東洋女を諦めきれないようだった。未練がましく渋々引き下がると、下男のラトゥールと、花屋の娘シモーヌを三角木馬に乗せて鞭打つ事で鬱憤をはらそうとした。

 

オデュッセウスは、モンゴル族の女ホエルン(21歳)を犯していた。小柄で年増の卑弥呼(41歳)は、誰にも相手にされずに暇を持て余している。唯一卑弥呼に関心を持っている歴史学者の岩波教授は、ラ・コスト城とサド侯爵の実物を観察することに夢中になっている。

「つまらぬぞえ」

サディストである女王卑弥呼は、ラ・コスト城のメイドの一人を捕まえ、拷問室の1つに連れ込み、密かに拷問した。

「唐辛子があれば、お前のほと(オマンコ)と口に捻じ込んでやるのだけどねえ」

卑弥呼は、以前10年間に渡って苛め抜いた、千鶴という、魏の国から送られてきた生口の事を思い出した。彼女は、倭の国の人間だと言い張っていたが、それにしては大柄で、言葉の発音の仕方も違っており、到底、本当の事を言っているとは思えなかった。

(あの女の尻に、邪馬台国の金印を焼印してやった時は、快感だったぞえ。生きていればまた、苛め抜いてやるぞよ)

卑弥呼は、肌の色も髪の毛の色も違う、18世紀のフランス人のメイドを鞭打ちながら、思い出に浸っていた。

 

 3歳のテムジンと牛若丸は、ネオガイア人に占拠されたラ・コスト城の中を、二人で縦横無人に遊びまわっていた。恐ろしくやんちゃなこの二人の子供は、とてもよく気が合うようだった。

「お城を探検ちまちょう」

テムジンが、生まれてからの3年間で覚えたネオガイア星人の言葉で言った。もともとモンゴル人と日本人なのだが、生まれた時から時間航行機の中で育ったので、二人ともネオガイア星語しか喋れない。

「このお城には、天狗みたいな人間がいっぱいでちゅ」

牛若丸が、言っているのはフランス人のことだ。鼻の高い天狗の話を母親の常盤から聞かされていたのだ。

「天狗のお城だ。みんな退治しちゃえ!」

テムジンも棒切れを振り回しながらフランス人の使用人に、殴りかかっていき手を焼かせた。本来の歴史の流れの中で、この子供は、やがてジンギス・カンとなり世界征服を行うのだが、ネオガイア人に誘拐されたため、時間流からドロップアウトしてしまっている。この子供に宿っている魂は、アタワルパや織田信長、クロムウェルに繋がる、世にも稀な、転生者の魂であるのだが、クロノス博士の行動による時空の混乱は留まる所を知らない。

 

 ラ・コスト城が占拠されてから2週間後、サド侯爵の使用人たちの多くは、医療用アンドロイドによって生まれも付かない姿に改造されていた。

「うひゃあ、人間ランプだ。人間ランプだ!」

一番大喜びしていたのは、被害者であるはずの城の主、サド侯爵だった。メイドの何人かが、尻穴に油壺を埋め込まれ、そこから膣の内側に芯を通され、オマンコに火が灯るように手術されたのだ。手足を拘束されたメイドは動く事も出来ず、クリトリスを焦がすランプの灯の熱さに絶叫する。

「熱いーっ、侯爵様、お助けを!」

「ハハハハ。面白い、面白いぞ!」

サド侯爵は、メイドの苦しむ姿に喜ぶばかりだった。花屋の娘シモーヌは、花瓶に改造されていた。全裸で四肢を切断されたシモーヌは、口、鼻、耳、オマンコ、アナルなど、体中のありとあらゆる穴にバラの花を植え込まれている。ネオガイア製の活性剤で生命力を強化されたバラは人間の皮膚を破って体内に根を張り、血液を栄養分として成長するのだ。シモーヌは全身を植物に侵食される苦痛と恐怖に気が狂ってしまっている。

「あごおおおおお・・・あごおおお・・・」

バラの根を植え込まれた口から、言葉にならない呻き声を漏らし続けていた。

「トレビアーン!」

サド侯爵は、改造人間達の出来栄えを絶賛した。真性サディストのサド侯爵にとってネオガイア星人と過ごした日々は、長い人生の中で最高の、めくるめくような思い出になった。そして1ヶ月後、時間航行機の修理を終えたネオガイア星人たちは来た時と同じく、全員忽然と姿を消した。残されたのは、サド侯爵と生まれも付かない姿に改造された使用人達だけだった。人間ランプに改造されたメイドや、花瓶に改造されたシモーヌは、その後数年間は生きていたが、やがて衰弱して死んでしまった。その存在が歴史に記録される事もなかった。この体験がサド侯爵の、病的なまでの嗜好に拍車をかけたことは言うまでもない。

 

 ラ・コスト城の狂宴から数十年後、晩年のサド侯爵は、1789年に勃発したフランス革命によって城も領地も失い、悲運の日々を送っていた。彼の書いた背徳的な小説は、たびたび警察の捜査対象となり、サド侯爵は、その晩年のほとんどを獄中で過ごす事となる。ナポレオン時代、精神病院に収監されていたサド侯爵の元を一人の貴族が面会に訪れた。

「久しぶりですな、サド侯爵」

半ば、耄碌したサド侯爵には、その人物が誰であるか、すぐに思い出す事ができなかった。

「はて、どちら様でしたかな?」

「私は、この時代ではサン・ジェルマン伯爵と呼ばれています。あなたが20代の青年貴族だった頃、パリのベルサイユ宮殿で、一度お会いした事があります。」

サド侯爵は、必死に記憶の糸をたどった。そう言えば、昔、会ったことがあるような気がする。しかし、不可解な事に、数十年前のその時も、この男は今と同じく、40代くらいの姿だったような気がした。

「私に何か御用で?」

「あなたに、御自分の運命を教えてあげようと思いましてね。あなたは、1814年の12月2日に、精神病院に収監されたまま、74歳で死ぬ事になる。不遇の生涯を送る事になったあなただが、その名は未来永劫、変態性欲者の代名詞として、人々の記憶から消える事はない」

サン・ジェルマン伯爵と名乗る、謎めいた人物は、夢も希望も無い未来を、得意気に語った。サド侯爵は徐序に思い出してきた。この人物は、ルイ15世治下のフランス社交界で不老不死と噂された謎の錬金術師だ。

「なぜ、そんな事が判るのです?未来の事など誰にも判らない筈では」

「普通はね。だが、私にだけは判るのですよ。私は以前、預言者ミッシェル・ド・ノストラダムスと名乗っていた事もありましてね。その前は、レオナルド・ダ・ヴィンチと名乗っていました。なぜか、私には未来が予言出来るのです。あらかじめ決められた未来は、変える事は出来ない」

「ノストラダムス?レオナルド・ダ・ヴィンチ?何百年も前の人物じゃないですか?あなたが、彼らと同一人物だとでも?それでは、一体あなたは何歳なのです」

サド侯爵は、夢の中で会話をしているような気分に捕らわれた。サン・ジェルマン伯爵は笑っている。

「少なくとも1万年は生きているね。私は、年を取らないから、これから先も永遠に生き続けるよ。私の予言通りに未来の歴史が動いていくのを、この目で見届けないといけないからね」

サン・ジェルマン伯爵は、得意気にそう言い残すと、面会室から去っていった。サド侯爵は、この出来事を、執筆中の自伝に書き残そうか、どうかと迷い、辞めた。

(そうか、俺は、このまま精神病院で死ぬのか。それがあらかじめ定められた運命だと言うのなら受け入れるしかあるまい・・・いや、待てよ、違うぞ。昔、誰かが、この歴史は無限の可能性のうちの1つに過ぎず、歴史は、人間の意思で自由に変革して構わないと言っていたような気がするぞ。)

サド侯爵は、若かりし頃、自分の人生の絶頂期に、ラ・コスト城に突如出現した異人達の事を思い出した。そのうちの一人の男が、そういう風に言っていた気がする。

(クロノス博士・・・とか呼ばれていたな。ま、どっちでもいいか。今の俺には関係ないことだ。俺は人生を、己の欲望の赴くままに、やりたい事だけやって生きた。このまま死んでも悔いはない・・・)

サド侯爵は、精神病院の個人病棟に戻り、再び、静かに追憶の中に浸り込んだ。

 

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