第106話、麗奈と透明男

 

DNA変換装置で、透明人間となった天野孝(22歳、引き篭もりのニート)は、誰にも見咎められないまま、東京の街をさまよい続けていた。季節は夏から秋、冬へと変わったが、透明人間である孝は、服を着る事が出来ない。仕方なく、孝は、24時間、絶え間なく暖房が効いている都心の高級ホテルに住み着いていた。食事は、ホテル内のバイキングレストランで勝手に貪り食い、風呂も勝手に、最上階にあるスイートルームのバスを使用する。しかも宿泊客や、ホテルの従業員女性にイタズラのやり放題だったが、ホテル側としては、まさか透明人間がホテル内をうろついているとは夢にも思わず、ただ、薄気味悪がりながら、時折発生する原因不明のクレームに、平謝りに謝って対処するだけであった。

(ここに住むのもそろそろ飽きてきたでつね)

孝は、お気に入りのフロントの女性従業員の胸を触りながら考えた。女性従業員はひきつったポーカーフェイスを浮かべている。毎日、行われる孝のイタズラのせいでノイローゼ寸前のようだった。

(どこか、遠くへ行ってみたいでつね)

ある日、孝は思い立ったかのように、東京駅へ向かうシャトルバスに乗り込み、住み慣れた高級ホテルを後にした。特にどこへ行くという目的はなかった。やがてシャトルバスは駅に到着し、孝は駅構内へと入っていった。

(ううっ、寒いでつ・・・)

孝は、震えながらプラットホームを駆け抜け、適当な電車に乗り込んだ。電車は動き出し、孝は各車両を回って、女性客を物色し、痴漢を働いていく。殆どの女性は、痴漢をしている相手が判らないため、抵抗したり騒ぎたてたりしない。

(痴漢も、さすがに半年もやっていると、飽きてきたでつよ。このまま、ずっと透明で、オイラこの先、どうやって生きていけば、いいのでつか・・・寂しいでつ、誰か、話し相手が欲しいでつ)

孝の気分は、この所、なぜか落ち込む一方だった。最初の頃、透明人間になって、好き勝手を始めた時のような興奮は感じなくなっていた。

(テラ寂しいでつよ)

誰にも見えない孝が、肩を落としてトボトボと車内をうろついていると、車両の片隅で、奇妙な女性の乗客を発見した。ボックス座席に一人で腰掛けているその女は、若く、非常な美人で、全身をエルメスのブランド品で身を固めている。しかし、奇妙なのは、その女性が絶え間なく、屁をこき続けている事だった。ブヒッ、ブヒッと大きな音を出し、彼女の周りには、腐った卵のようなオナラの異臭が漂って、周りの乗客はあきらかに距離を保っていた。当の本人は、お高く留まった顔で、無理矢理、周囲の迷惑に気付かないフリをしているようだった。

(何を考えているのでつかね、この女。お腹の調子が悪いのでしょうか?それにしても高そうな服でつ・・・)

孝が、興味津々で見守っていると、異臭にたまりかねた、酔っ払いの中年サラリーマンが、屁をこき続ける女に、絡んでいった。

「おめえ、臭せえんだよ。周りの乗客の迷惑も考えろよっ!」

その女・・・二階堂麗奈(21歳、女子大生)は酔っ払いのサラリーマンを睨み返した。そして何も言わず、無視したようにフンとそっぽを向く。

「おい、聞いてんのか!臭えから、屁をこくのを止めるか、出来ねえんなら、電車から降りろって、言ってんだよ!」

尚も絡もうとするサラリーマンに、麗奈は、何を思ったのか、突然自分の両手で両乳房を鷲掴みにし、揉みしだき始めた。

「あたしは、行く所があるから、この電車に乗っているのよ。あなたに指図される筋合いはないわ!」

「なんだと・・・お前、頭おかしいのか?なんで自分のオッパイ、揉んでるだよ。舐めてんのか、この変態女!」

酒の力も手伝って、サラリーマンの激高はエスカレートしていった。周囲の乗客で止めに入ろうとする勇気のあるものは誰もおらず、明らかに関わり合いになりたくない、という態度が見え見えだった。麗奈は再び、ブヒッとオナラをした。

「降りろ!今すぐ降りろ!ああ?」

サラリーマンが怒鳴り散らし、さすがの麗奈も泣き出しそうになった。

(何もこんな、呼吸のたびに屁をこき続けるような、おぞましい身体に改造されたのは、あたしのせいじゃないわ・・・)

シクシクと泣き出した麗奈の様子を見かねて、孝は、突然サラリーマンの背中に蹴りを入れた。なぜか体が勝手に動いたのだ。酔っ払って足元がフラついていたサラリーマンは電車の通路にドサッと倒れこむ。まさか、背中を誰かに蹴られたとは自分でも気付いていない。

「いててて・・・」

サラリーマンが立ち上がろうとした時、電車が駅に止まって扉が開いた。孝はサラリーマンの手からブリーフケースをひったくると駅のプラットホームに放り投げた。

「ああっ、俺のカバンが!」

サラリーマンがカバンを拾うためにプラットホームに下りた途端に電車の扉が閉まった。麗奈と周囲の乗客はひとまず騒ぎが収まってホッと安堵の息をついた。電車は再び動き始めたが、麗奈は相変わらずブヒッ、ブヒッと、屁をこき続けている。

(なんなのでつかね、この女。どうせオイラ、退屈でつから、この女をストーカーするでつ)

孝は、そう決めると、自分の体が見えない事をいいことに、麗奈の隣の座席に座り込み、馴れ馴れしくブランド品に包まれた体を触り始めた。それが、孝と麗奈の運命の出会いだった。

 

 孝は、麗奈に抱きつき、Fカップの乳房を服の上から触りながら、ほっぺにチューをした。麗奈は人の気配を感じ、ぎょっとしたが、周りに誰もいないのでキョロキョロするだけだった。ただでさえ、屁をこき続けて、乗客の注目を浴びているのに、これ以上騒ぎを大きくする気にはなれずに、麗奈は押し黙った。孝は調子に乗って麗奈のスカートの下に手を入れ、割れ目に指を入れた。

(おや、この女、ノーパンでつ)

麗奈は、肛門で呼吸をしなくてはならないので、普段パンティを履く事ができないのだ。ズボンも着用出来ないため、服装は常にミニスカである。麗奈はクリトリスを指で突かれて、顔をしかめたが声は出さなかった。肺が咽喉に繋がっておらず、発声するためには、空気袋の入っているオッパイを、自分の手で揉まなくてはならない。気味が悪くなった麗奈は、さりげなく立ち上がると車両の移動を始め、やがて電車が次の駅に止まるとホームに降り立った。孝も追いかけて電車から降りたが、全裸だったので冬の寒さに凍え死にしそうになった。

(ガクガクブルブル・・・)

それでも孝は、麗奈の追跡をやめなかった。なぜか、この屁こき女をストーカーせずにはいられなかったのだ。麗奈は高級デパートやファッションストアを一人で歩き回り、次々と海外ブランドの、高価なアクセサリーや服を購入していった。

(オイラ、こんなところに来るのは、生まれてはじめてでつ。うっ、このスカーフ、20万円もするでつよ。えっ、この女、見るだけじゃなくて、これを買うのでつか・・・)

孝にとって麗奈の行動は、驚きの連続だった。麗奈は屁をこきながらも、あくまで店員に対して、高飛車な態度で次々と試着を要求している。店員も不信に思いながらも、愛想笑いを浮かべて応対している。

「エルメスの新作はどれ?」

「こちらでございます」

「じゃあ、これとこれ、頂戴」

「ありがとうございます」

麗奈はショッピングを終えると、今度はタクシーを使って自宅のマンションへと向かった。孝も隣の席に乗り込み、付いて行く。あまりの寒さに孝はストーカーしながら何度も、オシッコを垂れ流していた。孝はそのまま麗奈を尾行し、マンションの部屋へと上がり込んだ。

(なんでつか、これ。この部屋には、高そうなブランド品がイパーイあるでつ。お店でも開くのでつかね。それにしても、よっぽど金持ちなんでつね、この変態女)

その日から、天野孝と二階堂麗奈の不思議な同棲生活が始まった。といっても、麗奈は孝の存在を知らず、孝も麗奈の体に時折、イタズラはしても、直接、話しかける勇気はない。

(オイラ、ここ何年間も、人とまともに会話した事ないでつ。ましてや女の人に話しかけるなんて、到底、出来ないでつ・・・)

「もしもし、村上君。明日の授業は2時間目からだから、朝9時に迎えに来てね。わかった?」

麗奈には何人もの男友達がいるらしく、四六時中電話で、胸を揉みながら、長々とおしゃべりをしている。アッシーやメッシー、オサイフ君などが、履いて捨てるほどいるようだった。そして、時にはマンションにボーイフレンドの一人を連れ込み、セックスすることもあった。その光景を、孝は傍らで指を咥えて眺めているしかなかった。

(何で、こんなに腹立たしいのでつか。こんな変態女が誰とセクースしてもオイラには何の関係もないでつよ)

孝はいたたまれなくなり、奥の部屋へ入って、タンスから麗奈の下着を取り出すと、匂いを嗅ぎ始めた。自分の透明のチンポを握りしめてオナニーを始める。

(ううっ、寂しいでつ。オイラもあの変態女と、いつか、普通におしゃべりしてみたいでつ・・・)

孝の目から悔し涙が流れた。今までの人生を振り返り、自分から積極的に、他人に関わろうと努力した事など、一度もなかったような気がした。

 

 孝が、麗奈に話しかけることが出来ないまま、虚しく日々が過ぎていった。孝は、麗奈の所持品を隅々まで調べ、彼女のプライベートな情報の全てを暗記した。

東京都杉並区の出身、21歳、外国語大学フランス語学科の3回生、誕生日は1985年、6月20日、ふたご座。血液型はAB型のRH+。父親は製薬会社の社長で、兄と弟がいる。好きなブランドはエルメス。趣味、海外旅行、乗馬。ボーイフレンド多数・・・・)

その他、1週間の大学の授業の時間割や、乗馬クラブへ通う日、良く行く高級レストランや、ブランドショップなども全て把握した。

(オイラ、麗奈タンの事で知らない事は、何もないでつ。親兄弟や、ひょっとすると、麗奈タン自身よりも、良く知っているかも、でつ。お風呂で、シャワーを浴びながらオナニーをする癖がある事を知っているのも、オイラだけでつ。)

孝は、麗奈の数多いボーイフレンドの、誰も知らないような細かい事まで、全て知っている自分に、たまらない優越感を感じた。しかし、結局、勇気がなく話しかけることは出来なかった。

(麗奈タン、ハァハァ・・・)

孝は夜中に、ベッドで眠っている麗奈の唇に、自分の唇を重ね合わせて興奮した。髪の毛のシャンプーの匂いを嗅ぎながらオナニーをする。麗奈のオマンコにチンポをぶち込んで、レイプすることも出来たのだが、そこまでやると、麗奈が目を覚ましそうな気がして、怖くて出来なかった。孝は、麗奈がなぜ、屁をこき続けなければならない肉体に改造されてしまったのかも知った。

(オイラと同じように、宇宙人に捕まって改造されたのでつね。オイラみたいな、どうしようもないニートの引き篭もりは、透明人間になれて、かえって良かったでつけど、麗奈タンはかわいそうでつ。なんとかしてあげたいでつ・・・)

孝は、悩んだ挙句、さざなみ市へ行く決心をした。宇宙人の巣窟であるその町へ行けば、何かの解決方法が見つかるかも知れないと考えたのだ。孝は1ヶ月間、麗奈と共に暮らしたマンションを後にすると、さざなみ市へ向かって出発した。

(麗奈タンと過ごした、この1ヶ月間はオイラが、生まれてから今までで、一番、楽しい時間だったでつ。必ず戻ってくるでつから、待ってるでつよ)

孝が、気付かれないように、そっとドアを開けてマンションを出る時、麗奈は、いつもと同じように、胸を揉みながら、ボーイフレンドに長電話をしていた。麗奈は、1ヶ月間、誰かが一緒に住んでいたことに気付いておらず、天野孝という名の人間の存在すら知らなかった。

 

第107話、破廉恥コマーシャル

 

 タレントの赤木智香子(25歳)は、憂鬱な日々を送っていた。レギュラー番組だった朝のニュース番組を降ろされ、最近テレビの仕事がめっきり減っていたのだ。

(何が、『智香ちゃん卒業』よ。レギュラーを若い新人の子に入れ替えただけじゃない!)

思い出すと、怒りがフツフツと込み上げてくる。傘はどっちか、と言っていればよかった時代が懐かしい。しかし、周囲には内面の感情を悟られることなく、笑顔を振りまかなくてはならなかった。

「ねえ、何か仕事ないの」

智香子はマネージャーに噛み付いた。マネージャーは困った顔をしながら答えた。

「CMの仕事ならあるんだけど・・・」

「CM?やるわ。CMなら一回収録すれば、後は何度も何度も放送されて、仕事をしなくても勝手に、あたしの知名度があがるから」

「それが・・・」

マネージャーが紹介したのは、新発売のイチジク浣腸のCMだった。ネオガイア星人に協力している下請けの製薬会社が作った新製品で、治外法権条約で、何の放送規制もない、CM制作会社が手掛けるらしい。

「イ、イチジク浣腸?・・・や、やるわ。あたし、このまま負け犬になりたくないもの。テレビに出れるなら、どんな恥ずかしい事でもするわ」

赤木智香子は、その製薬会社とCM契約を結んだ。撮影当日、智香子は体調が思わしくなかった。以前テレビ番組の拷問ショーで体内に入れた電気ウナギが取り出せなくなり、それ以来、智香子の体内で共生をしているのだ。手術でも取り出せないそのウナギは、時々放電し、智香子を苦しめている。その日は特にウナギの機嫌が悪く、体内で活発に暴れていた。

「赤木さん。事前に頼んだように、1週間ウンチはしていないでしょうね」

撮影現場で監督からチェックが入った。

「はい、大丈夫です。御蔭でお腹がパンパンに張って、気分が悪いんですけど」

便秘の影響で、智香子の顔に、ポツポツと吹き出物も出てきている。

「いいよ、いいよ、いい感じだ。この吹き出物も、撮影に使おう。なるべく、カチカチになったウンチをひり出してくれ。その方が、リアリティがあるから」

「はい、頑張ります」

智香子は持ち前の快活さで、ハキハキと答え、早速、撮影衣装に着替えた。酷い便秘に悩む出勤前のOLという設定である。撮影のセットは、どこにでもあるような、少しお洒落なリビングルームを再現したものだった。

「はい、スタート!」

カメラが回り始めた。智香子は台本通り、パンパンに張ったお腹を押さえて憂鬱そうな顔をする。

「もう1週間も、ウンチが出ないの・・・苦しいわ、今日も出ないのかしら」

と一人ごとを言う。その時、クローゼットの中から、突然、セールスマン風の男が片手にイチジク浣腸を持って飛び出してくる。

「便秘でお困りですか?そんな時はこの、丸亀製薬のエネマノールAをお試し下さい!」

「エネマノールA?それって、そんなによく効くの?」

智香子が驚いた顔で、なおかつ、興味津々に尋ねる。

「はい、これ一個でどんな便秘もたちどころに解決!このパンパンに張ったお腹も、この顔の吹き出物も、エネマノールAで、スッキリ爽快です。早速試してみましょう」

シナリオ通り、智香子はスカートをめくり上げて、男の方にお尻を突き出した。男は、智香子の純白のレース状のパンティをずらして、アップにされた智香子のピンク色のアヌスに、イチジク浣腸の嘴管を差込んだ。冷たいグリセリン溶液が、体内に流れ込んでくる。新製品だけあって強烈な効き目だった。

「お嬢さん。我慢出来るものならやってみて下さい」

智香子は精神力を振り絞って、かけくだる便意と戦った。その苦悶に歪む表情がバッチリカメラに収められる。長くなった部分は、時間の関係上、後で、編集がかけられる。

「ウーン、ウーン!」

智香子の額に脂汗が流れた。そして、1分を待たずに智香子は肛門から、1週間の便秘で黒く固まったウンチをコロコロとひりだした。

「こんなに出ましたよ」

リビングのカーペットの上に撒き散らされた固形物のようなウンチがアップで撮影された。

「エネマノールAで、スッキリ爽快!」

智香子は、ウンチのついた尻をむき出しにしたまま、カメラの方を振り返りXサインをした。

「カーット!」

監督の合図が出た。この後、最後のシーンとして、便秘の悩みが解消し、気分爽快で、智香子が会社に出勤していくシーンが挿入される予定である。

「智香ちゃん、とっても良かったよ。ちょっとだけ撮り直しすればOKだよ」

監督は上機嫌だった。撮影後、そのCMは日本全国の全てのチャンネルで放送されることになった。ネオガイア星人傘下のCM制作会社が作った、このCMは、日本の放送規定には引っ掛からない。モザイクなしで、排便する智香子のアヌスとオマンコが、毎日毎日、朝から晩まで、ひっきりなしにテレビでお茶の間に流され、赤木智香子はCM女王の座を一気に高らしめた。

 

 イチジク浣腸のCMが大ブレイクした赤木智香子の元に、ひっきりなしにCMの出演依頼が来るようになった。

「智香ちゃん、今度はラブホテルのチェーン店からCM依頼が来たよ」

マネージャーは大喜びだった。売れないタレントのマネージャーを担当させられて、今まで落ち込んでいたのだ。

「ラブホテル?」

「『おのろけコアラの行進曲』っていう全国展開の大手ラブホテルチェーンだよ」

「やるわ。何でもいいから、どんどん仕事を入れて頂戴。あたしを馬鹿にした、中島亜矢を見返してやるわ」

中島亜矢とは、以前、共にレギュラーとして、朝のニュース番組で共演していた、人気絶頂の女子アナである。落ちぶれていく智香子とは対照的に、トップアナウンサーとしての階段を登り詰めている。数日後、赤木智香子はCMの撮影現場にいた。

「よろしく赤木さん」

CMで共演するイケメンタレントの三条拓也(22歳)が、智香子にさわやかな笑顔を向けて、挨拶をした。拓也は、年齢の割りには大人の雰囲気をたたえた、ホストのような容貌の美男子である。智香子は、仕事も忘れてうっとりとした。

「よろしく・・・」

売れれば、こんな美男子とも共演できるのだ。智香子は自分も、芸能人としてのステイタスが着実に上がっている事を実感した。挨拶を交わすと、智香子と拓也は撮影衣装に着替えた。どこにでもいる若いカップルという設定である。今回の撮影はスタジオ内のセットではなく、実際のラブホテル『おのろけコアラの行進曲』の代表店で、ロケが行われる。

「スタート!」

監督の合図で最初のシーンの撮影が始まった。まずは、智香子が拓也におねだりするシーンからである。

「ねえ、拓也。ラブホテルに行こうよお・・・エッチがしたいよお」

と、智香子が拓也に体をすりよせる。

「もう、しょうがねえなあ」

二人は腕を組みながら、『おのろけコアラの行進曲』というネオンの文字の電飾されたアーチの下をくぐってホテル内に入っていく。

「へえ、すごーい!バイブがレンタル無料だって。あたし、これとこれ、使うぅ」

「ええっ、こんな太いの使って、大丈夫かよ?」

「大丈夫、大丈夫」

次のシーンでは、お洒落なラブホテルのスイートルームの、ダブルベッドの上で、全裸になった智香子が、レンタルされた極太バイブを、オマンコに根元まで咥え込んで、悶えている。全面ガラス張りで、ベッド自体も回転するという仕掛けも紹介される。

「カラオケ、DVDも無料で、見放題なんだ」

「お風呂も凄いわよ」

次は、大理石仕様の広いバスルームに二人が全裸で入浴し、泡まみれになってお互いの体を洗いっこするシーンである。ソープランドの潜望鏡プレイのスタイルで、智香子が卓也のチンポをフェラチオするシーンも収められた。最後はダブルベッドの上で二人が実際に本番セックスを行うシーンだった。このシーンに限っては、監督のOKがなかなか出ず、二人は様々な体位で絡み合い、汗だくになりながら、何度も何度も、長時間に渡ってセックスをした。CMでは編集され、体位ごとに短く場面がカットされる予定だ。そして最後に顔射された智香子が、顔面に精液を垂らしながら、満足気にニッコリと微笑んでコメントをする。

「とっても気持ち良かった。また来ようね、拓也」

「ああ・・・」

何度もイカされてげっそりした拓也が、力なく頷いて撮影終了である。

「カーット!」

最後のシーンが終り、智香子と拓也はホッと胸を撫で下ろした。このCMも治外法権条約に基づき、モザイク無しでお茶の間に放映されるのだ。子供の教育に悪いから、とPTAや、野党が騒ぎ立てても、ネオガイア星人の後ろ盾がある以上、放送を禁止する事は出来ない。このCMも大ヒットし、ラブホテルチェーン『おのろけコアラの行進曲』の売り上げは倍増した。

 

第108話、レディースAV

 

 さざなみ市のネオガイア星企業の地球支社では、新規事業立ち上げのための会議が行われていた。出席者は、ソロン財閥のクセノフォン支社長と、さざなみテレビのイソップ局長、そして地球人のビデオ制作会社の女社長、東条志津子(37歳)だった。

「あたしは、女性による女性のためのアダルトビデオを作りたいのです」

東条志津子が雄弁に語った。志津子自身が、自分の事業を進めるためにネオガイア星人にアポイントを求めたのだ。彼らの後ろ盾があれば、日本の法律や慣習を無視し、モザイク無しでアダルトビデオを販売したり、レンタルしたり出来る。東条志津子社長のプレゼンテーションは続いた。

「今まで、日本のアダルトビデオ市場は、男性をターゲットにしたものばかりでした。爆発的な発展を遂げたこの業界では、黎明期に比べると年々女優のレベルは飛躍的にアップし、内容も過激になっていますが、今だ本格的に、女性をターゲットにしたものは製作されておりません。今まで女性は、仕方なく男性向けに製作されたビデオを見て、性的好奇心を満足するしかなかったのです。当然、それらに登場する男優のレベルは低く、全く容姿に重きをおいていません。以前、女性はオナニーしないとか、視覚では興奮しないとか、間違った常識が堂々とまかり通っていた時期もあります。」

ネオガイア星人であるクセノフォンとイソップは退屈そうに志津子の話を聴いている。

「つまり、我々と提携する事で、治外法権条約の適用を受けたいのだろう」

とクセノフォンが言った。

「そうです。モザイク無しで女性が、気軽にアダルトビデオを楽しめる世の中を作るのが、あたしの学生時代からの夢なのです。そのためにあたしは、大手テレビ局を退社し、自分でビデオ製作会社を立ち上げました」

「わかった、わかった。君の会社と提携しよう。こちらの方から、治外法権条項の適用を日本政府に申請しておくから、君の好きにやりたまえ。それに資金が欲しければいくらでも言うがいい。地球の紙幣なら、印刷すればいくらでも手に入るから」

クセノフォンが面倒くさそうに答えた。志津子は思わぬ、大盤振る舞いの申し出に驚いた。

「ありがとうございます!」

「なんなら出演者も斡旋してやろうか?モデルでも俳優でも瞬間物質転送機で誘拐して、奴隷用の首輪をはめれば、どんな破廉恥な内容でも、言う事を聞くよ」

イソップ局長も気前よく申し出た。最近、自分の周辺で、何も事件が起こらないので少し退屈していたのだ。志津子は顔を輝かせた。二人のネオガイア星人に用意してきた製作予定のビデオの企画書の一部を見せる。それらは、タイトルだけでも内容が判りそうだった。

『イケメン、街角露出』『パイロット肉欲飛行』『輪姦!消防士』『男子高校生、制服オナニー』『エリート商社マン、徹底調教!』『男性教師、浣腸授業』

などである。

「これ、全部、撮影するの?」

「ええ、そのつもりです」

ネオガイア星人たちは、東条志津子の意気込みに少し気おされたようだった。

 

 いよいよ、東条志津子プロデュースによる女性向けアダルトビデオの撮影がクランクインした。志津子の経営するビデオ制作会社は、従業員数11人の小さなベンチャー企業である。起業してから2年間は、細々と企画ものの男性向けインディーズビデオを製作し、地道な営業努力で力を蓄えてきたのだ。今回はじめて、志津子の念願であった、女性向けAVの新たな市場開拓という冒険にチャレンジする事が出来る。ネオガイア星人の協力を得たことで資金は潤沢だった。

「記念すべき一作目は、絶対に外せないわ。練りに練った企画書の中でも、一番インパクトのありそうなタイトルを選ぶのよ」

志津子は、大手テレビ局から引き抜いたカメラマンに言った。

「これなんか、どうです。『プロ野球選手、恥辱調教』」

「いいわね。若くてルックスのいい一軍選手を出演させれば、ヒットは間違いないわ」

志津子は、イソップ局長に紹介してもらったネオガイア星人のエージェントを通じて、ターゲットを伝え、瞬間物質転送機による誘拐の依頼をかけた。そして、その日の午後には、練習中のキャンプから誘拐されてきたプロ野球選手が、ネオガイア星の軍用車でスタジオに護送されてきた。

「すげえ、本物の本宮選手だぜ!」

カメラマンは興奮して叫んだ。本宮弘樹選手(24歳)は、大学野球からプロにスカウトされ、ドラフト指名上位で、セ・リーグの有力チームに入団した、誰もが知っている4番バッターである。スポーツマンでありながら、知性的で、整った顔立ちをしているため女性ファンも多かった。

「いいのかよ。本宮選手にこんなことして」

「いいのよ。あたし達には、宇宙人の後ろ盾があるんだから。法律に違反しても日本の警察は、黙認するしかないのよ」

志津子はあくまで強気だった。翌日、セットが組まれ、本宮弘樹選手とからむ他の出演者も集められ、撮影が始まった。

「まずは、バッティング練習からよ。みんな、本宮選手を押さえつけて下半身を裸にして!」

監督である志津子の指示で、主演者のオバサン達がユニフォーム姿の本宮選手に群がり、体を撫で回しながら、ズボンとパンツをずり下げた。お世辞にも美人とは言えないオバサン達は、元風俗嬢や、公募で集められた素人たちだった。

「こんなに、硬くなっちゃって、さすがにプロ野球選手は、逞しいわね」

「この体だったら何回でも、イケそうね。オバサンのオマンコに後で入れてあげるから楽しみにしてらっしゃい」

オバサン達は、決められたセリフを言いながら、本宮選手のズボンとパンツを剥ぎ取り、下半身露出のまま、セットのバッターボックスに立たせた。本宮選手の首にはネオガイア製の奴隷管理用の首輪がはめられ、撮影スタッフの言う事を聞かないと高圧電流が流される仕組みになっている。昨日の晩、散々反抗した本宮選手も、今日は大人しく、女達のされるがままになっていた。

「お前自身のバットでボールを打つのよ」

「そんな・・・無理だよ・・・」

本宮選手は涙目でつぶやいた。手が使えないように、両腕を頭の後ろで組まされ、手錠を掛けられる。そして、はち切れんばかりに、屹立したチンポをストライクゾーンに突き出した。

「つべこべ言わずに、やるのよ。三振だったらお仕置だからね!」

オバサンの一人がピッチャーになり、もう一人がキャッチャーになった。志津子の合図で、ピッチャーが振りかぶり、バッターボックスめがけて硬式のボールを投げた。本宮選手は、腰を振ってスイングしたが、空振りだった。

「何やってんだよ、てめえっ!わざと外してるんじゃないでしょうね?」

外野からオバサンの罵声が飛び、本宮選手は、恥辱と恐怖に涙を流した。本当に、硬式のボールをチンポで打ち返したら、とてつもなく痛いに違いない。

「すいません・・・」

「お前、それでも4番バッターかよ!」

「ドンマイドンマイ、気楽にいこー」

2球目が投げられた。本宮選手は、恐怖に耐えるために、歯を食い縛り、ストライクゾーンに来たボールを、めいっぱい、腰を前に突き出して、勃起したチンポをスイングした。

「あおおおおお!」

ピシャッという鈍い音がした。チンポは見事にボールに当たって、コロコロと地面に転がった。本宮選手は恐ろしい激痛に絶叫する。

「ファール!」

審判役のオバサンが叫び、出演者とスタッフ一同が大笑いした。

「なんだ、ファールかよ。4番バッターが聞いて呆れるわ」

「うっ・・うっ・・・」

股間の激痛にしゃがみこんでしまった本宮選手は、悔しさのあまり嗚咽した。なぜ、年俸1億円の自分が、こんなやつらに、屈辱を受けなければならないのかが判らない。

「早く立ちなさい!もう一回投げるわよ!」

ピッチャーのオバサンが、続けて3球目と4球目を投げたが、いずれも、掠っただけの空振りだった。一度激痛を味わってしまうと、怖さのあまり、腰が引けて打てないのだ。

「ストライク、バッターアウツッ!」

「なにやってんだよ。当たんなくちゃ、絵にならねえだろうが!真剣にやれよ、本宮!」

5球目を空振りした本宮選手に、口々に罵声が飛んだ。怒ったピッチャーやギャラリーが本宮選手の股間めがけて一斉にボールを投げつける。

「あおおっ、や、やめて下さい」

へっぴり腰で股間をかばう本宮選手に無数のボールがぶつけられ、たちまち、剥き出しの下半身は、青痣だらけになった。

「カーット!もういいわ、次のシーンいくわよ」

志津子が指示をした。次のシーンは三振をした本宮選手に対するお仕置きシーンである。再びユニフォームを着せられた本宮選手が、服の上から後手に、亀甲縛りで縛り上げられ、天井から吊るされる。口にはボールギャグが咬まされた。

「オーオーオー・・・」

情けないうめき声を上げる、本宮選手の口から、だらしなくヨダレが、ダラダラと流れ出た。

「とても、いい格好よ」

レザーのボンテージファッションに身を包んだ、太ったオバサンが、本宮選手の尻や股間を掌で、いやらしく撫で回す。

「さすが、プロ野球選手ね。いい体してるわ」

「オーオーオー・・・」

オバサンは布切りバサミを取り出すと、おもむろに本宮選手のユニーフォームを切り裂き始めた。胸板と乳首、腹筋が見えるように、胸元から下をザクザクと切り取られ、日焼けした逞しい肌が、露出される。ズボンの股間とお尻の部分も丸く切り抜かれ、先ほど、ボールが当たって腫上がったチンポが、再び丸見えになった。

「淫乱な男だね。こんな恥ずかしい格好にされても、勃起してるじゃない。変態よねー」

オバサンは本宮選手の顔を、両手で挟み込んで、首が動かないようにして、自分の舌でペロペロと、本宮選手の日焼けした顔面を舐め回し始めた。

「お前の顔をヨダレまみれにしてあげるわ」

「オーオーオー・・・」

本宮選手はぎゅっと目をつぶって、顔の上を這い回る舌の感触に耐えた。

「そうそう、お前のバットに、さっき三振した、お仕置きをしなきゃね」

舐め終えた、ボンテージ姿のオバサンは、今度は、ライターで赤いローソクに火をつけ、勃起している本宮選手の亀頭に、ポタリポタリと垂らし始めた。

「アオオオオオッ!」

最も敏感な部分に熱蝋を垂らされて、本宮選手は、ボールギャグの内側から、あらん限りの声で絶叫した。

「ほーらほら、熱いわよー」

オバサンも乗ってきたようだった。顔に、嗜虐心剥き出しの、熱の入ったサディスティックな表情が浮かんでいる。やがて本宮選手のチンポが、赤い蝋で固められて、張り方のようになると、今度は、腹や胸、御尻、顔などに熱蝋をふりまき始めた。

「フフフ、もっといい声で鳴いてみな。このマゾ男」

「ウーウーウー・・・」

「浣腸をしてやるよ」

オバサンは、ローソクが短くなると火を消し、代わりに極太の浣腸器を取り上げた。そして洗面器からグリセリン溶液をたっぷりと吸い上げ、本宮選手の肛門に突き立てる。

「アウッアウッ」

「我慢するんだよ。あたしが、いいって言うまで出しちゃ駄目よ」

注入が終わると、オバサンは、バラ鞭で、本宮選手の裸身を思い切り打ち始めた。切り刻まれたユニフォームが、残骸のように、ぶら下がっている。

「アーアーアー・・・」

本宮選手は、荒れ狂う便意と戦いながら、全身を間断なく襲う鞭の痛みに錯乱状態に陥った。

(苦しい、助けてくれ。なんで俺がこんな目に合ってるんだ。俺はAV男優じゃねえぞ。お前ら、カメラで撮ってんじゃねえよ。俺は、プロ野球の本宮弘樹だぞ・・・あ、出る・・・)

耐え切れなくなってとうとう、勢い良く、黄金色のドロドロした物体を床にぶちまけた。

「きったねー」

「くさーい」

「恥ずかしくないの。こんな所でウンチもらしちゃって」

本宮選手の口かボールギャグが外された。

「ビデオを見ている皆さんに謝んなさい。ウンチを漏らしちゃって御免なさいって。汚い物をお見せして申し訳ありませんって、ちゃんと言うのよ」

「うっ、うっ・・・漏らしちゃって、御免なさい・・・汚い物をお見せして・・・」

「何?聞こえないわよ!もっと大きな声出しなさい!馬鹿じゃないの!」

「ウンチを漏らして御免なさい!汚い物を見せて御免なさい!」

言い終わるなり、本宮選手は号泣した。男泣きだった。

 

 最後のシーンは、中年女4人と本宮弘樹選手の5Pだった。

「ほら、あたし達に土下座するんだよ。僕のチンポをオマンコに入れさせて下さいってお願いするのよ」

本宮選手は全裸になり、仁王立ちになっているオバサン4人の足元に、土下座をした。

「ぼ、僕の汚いチンポを、オ、オマンコに入れさせて下さい・・・」

額を床に擦り付ける。

「よーし、入れさせてやるよ。でも、その代わり、あたし達4人、全員を満足させるまで許さないからね!」

「はい、頑張ります・・・」

4人のオバサンに、本宮選手は、押し倒され、騎乗位で跨ってきた一人に、オマンコをはめ込まれた。

「腰降りな」

本宮選手は、下から突き上げるように腰を振る。プロ野球選手ならではの、腰のバネを使った動きだった。

「あたしのオマンコをしゃぶりな」

別のオバサンが、顔面に騎乗してくる。顔の押し付けられたオマンコから、ムッとする匂いが鼻を付き、本宮選手はムセこんだ。

「ムセてんじゃねえよ、マゾ男のくせにさ」

顔騎したオバサンは、太腿で思い切り、本宮選手の顔面を締め上げた。

(く、苦しい・・・息が、出来ない・・・)

本宮選手は、なんとか舌を伸ばし、押し付けられるオマンコの奥を、クチュクチュと舐め始めた。残りの二人のオバサンが、本宮選手の左右の手を、自分の乳房や股間に押し当てて弄んでいる。まさに地獄の快楽だった。

「うっ!」

本宮選手が果てた。

「てめえ、イクならイクって言えよ。中に出ちゃったじゃないの!妊娠したら責任とって結婚してもらうからね!」

「あ、それいいかも。年俸1億円の、こんな若い男と結婚出来たらラッキーじゃん」

「でも、こいつマゾ男だよ」

「いいの、いいの、次、あたしよ。中に出していいからね。その代わり子供が出来たら結婚よ!」

(くそ、冗談じゃねえ!)

本宮選手は、オバサン達に散々弄ばれながら、心の中で毒づいた。やがて、4人の女全員との本番のセックスを終え、無事撮影は終了した。精液を吸い取られてボロ雑巾のようになった本宮選手は、来た時と同じようにネオガイア星人の手で練習キャンプへと送り返された。そうして一ヶ月後、発売された『プロ野球選手、恥辱調教』のビデオ・DVDは記録的な大ヒットとなった。

「凄い、売り上げだわ。大成功よ」

志津子は興奮した。テレビのスポーツニュースで時折流される、プロ野球の練習風景では、何事もなかったかのように本宮弘樹選手が、トレーニングに励んでいる。今回のアダルトビデオ発売の件に関して、彼は、一切のマスコミの取材を拒否していると言う。

「さあ、早く次のタイトルの製作に、かからなくっちゃ。他社が真似をしてくる前に、稼がなきゃいけないわ」

東条志津子は、スタッフと次回作『男子高校生、制服オナニー』の企画内容を検討するため、スタッフにミーティングの召集をかけた。

 

第109話、天下布武

 

紀元1575年、織田信長の本拠地である岐阜城の地下牢では、明智光秀(47歳)が女忍者の山川桃江(19歳)を天井から吊り下げ、厳しい拷問を加えていた。

「桃江、よくも上杉謙信の暗殺に失敗したな。御蔭で俺は、信長様から、重臣達の居並ぶ前で、足蹴にされたのだぞ!」

光秀は、激怒していた。

「申し訳ございません。上杉謙信は、女に興味がないらしく、あたしの色仕掛けが通用しませんでした・・・」

全裸で縛り上げられたまま、桃江が必死に許しを乞うた。伊賀忍者であった桃江は、光秀に毒を飲まされ、半年に一度、光秀の小便を解毒剤として飲まなければ、死んでしまうと、教え込まれているのだ。それが、光秀の只のハッタリだとは気付いていない。

「ええい、言い訳など聞きとうない!罰を与えてやる!」

光秀は、真っ赤に焼けた焼き鏝を用意した。焼き鏝の先には『恥』と言う文字が彫られている。

「お、お許しを・・・光秀様・・・」

桃江の顔が恐怖に引きつった。桃江の体には、これまで失敗の度に、光秀によってつけられた、お仕置の跡が無残に刻み込まれている。光秀は容赦なく焼き鏝を桃江の左の太腿に押し付けた。

「うぎゃああああ!」

肉の焦げる匂いと共に、桃江が絶叫した。彼女の太腿には、また一つ『恥』と言う文字が刻み込まれた。

「上杉謙信が、男色家だという噂は、本当だったのか。ならば、お前の兄の桃之助を刺客として差し向け、色仕掛けでたぶらかせれば、あるいは暗殺に成功するやもしれんな・・・」

織田家の情報機関を束ねる光秀は、ブツブツとつぶやき、思案をめぐらせた。

 

 その頃、甲斐の国、武田領内にある金山を、武田家の当主、勝頼(29歳)が視察に訪れていた。巫女姿の望月千代女(39歳)が影のように付き従っている。この金山では、武田家に歯向かって滅ぼされた信濃の武将や、その家臣達が、奴隷として暗い坑道の中で使役されている。また彼らの妻や娘たちも遊女となり、不特定多数の鉱山労働者を相手に春をひさいでいた。誇り高い武家の出身である彼らの中には、最初の頃こそ、慣れない肉体労働で病死したり、生き恥をしのんで自殺したりする者も後を絶たなかったが、生き残ったもの達は、全てを諦めきったかのように自我を殺し、ひたすら武田家の資金源である金の採掘に励んでいた。

「父、信玄が死んでから、3年が経つ」

勝頼が、千代女に語った。

「いよいよ、織田信長に攻勢をかける時が来た。父、信玄が遂げられなかった悲願を、この勝頼が成し遂げるずら」

千代女は、陰りを帯びた眼差しで勝頼を見た。血気盛んなこの若者の面差しは、父信玄とそっくりだったが、その器には天と地ほどの差があるように思えたのだ。

「信長は、この3年間で、対抗勢力を次々と滅ぼし、兵力を格段に増強してございまする」

千代女は言った。織田家は、信玄が死んだ後、浅井朝倉を滅ぼし、本願寺門徒衆を虐殺し、足利幕府最後の将軍義昭を追放して、250年間続いた室町時代を終焉させた。それに引き換え、武田家は、信玄の死後3年間、遺言に従って、目立った軍事行動はとっておらず、領土も殆ど増えていない。時代の流れは加速しており、織田に真っ向から戦いを挑むのは危険に思えた。

「ふん。いくら数が増えようとも、所詮、織田の兵隊など寄せ集めの烏合の衆ずら。我が武田騎馬軍団は、日本最強の精鋭ずら!」

勝頼は、武田全軍に出陣命令を出した。

 

 岐阜城天守閣では、織田信長が、景色を眺めながら酒を飲んでいた。手に持っているのは、宿敵、浅井長政の頭蓋骨で作られた、髑髏杯である。明智光秀、羽柴秀吉をはじめとする重臣達が厳粛な面持ちで、主君、信長のご機嫌を伺っている。この気難しい主君の機嫌を損ねれば、重臣と言えども、明日の命の保証はない。

「信長様。余興に、この猿めが、猿踊りを御覧にいれるがや」

秀吉が率先して申し出た。この男は百姓の出身であるため、プライドはなく、出世のためにはなんでもやる。信長が少し笑った。信長の機嫌が悪くない事が判り、秀吉はホッとした。

「猿の踊りは、もう飽きた。ハゲ、たまにはお前が、ハゲ踊りをせい」

酔った信長が光秀に命じた。光秀の体が怒りでプルプルと震える。秀吉と違い光秀は、列記とした武士の出身で、名門源氏の末裔でもあるのだ。

「恐れながら、信長様。光秀は武人でござりまする。皆の前で、踊りなど、出来ませぬ」

光秀は決死の覚悟で断った。次の瞬間、信長が怒髪天を付いた。

「なんだと、ハゲッ!ハゲの分際で、俺の命令に逆らうのか!付け上がりおって・・・碌な仕事も出来ん癖に、踊りも踊れぬと申すのかっ!」

信長が脇差に手をかけ、血の雨が降りそうだったその時、一人の家臣が慌ただしく駆け込んで来た。

「御報告いたします。武田勝頼が軍を動かし、大部隊で甲府を進発した、という早馬が徳川殿より届きましてござります!」

信長は、家臣の手から書状をひったくると目を通し、せせら笑った。

「ふん、勝頼め。飛んで火にいる夏の虫、とはこの事じゃ。今の織田家は、3年前の我らとは違う。武田潰しの秘策も用意しておる」

「秘策とは、いかなもので?」

秀吉が尋ねた。

「3000丁、の鉄砲隊を用意した。一斉射撃で、武田の騎馬軍団をこの世から消滅させる」

「3000丁、でございますか?」

秀吉は大げさに驚いて見せた。信長が、ここ数年、鉄砲の製造工場をあちこちに作り、大量生産を続けていた事は、周知の事実であり、秀吉も知っていたが、信長を喜ばせるためには、ほんの僅かなチャンスも逃さない。秀吉は、信長の籠愛を受ける事では、光秀にかなり差を付けていると思っている。

「そうだ、猿。これからは鉄砲隊が戦の主力となる。わしは、この他にも、鉄で出来た軍船に、大砲を備え付けることも考えておる。これらの武器を使って、日本を征服した後は、朝鮮に攻め込み、明、天竺も攻め落とすつもりじゃ。世界はわしのものぞ」

秀吉は、信長の発想のスケールの大きさに感服し、はるか未来、朝鮮半島に攻め込む軍団の指揮を取る自分の姿を想像して、うっとりとした。

 

 織田、徳川連合軍、3万8千人は、長篠城の西方にある盆地に布陣した。秀吉の草履取りである久石千鶴も同行しており、歴史に名高い、長篠の戦いを目撃することになった。

(この戦いは、織田信長の勝利に終わり、武田の騎馬軍団は壊滅することになる・・・)

千鶴は、子供の頃、学校で習った日本の歴史を思い出した。

(もし、ここで織田信長が敗れればどうなるのだろう?歴史は変わり、2003年の宇宙人襲来も無いのだろうか?)

千鶴は考えたが、答えは出なかった。地球上で起こる微細な出来事と、宇宙規模で起こる出来事とは、相関関係がないように思われる。どちらにしろ、今の千鶴には歴史を変える力はなく、たとえ変えようとしても、例の時間警察が現れ、力尽くで、歴史の変革を阻止するに違いない。

(歴史を変えるとするなら、もっと現代に接近してからだ。なるべく2003年の直前がいい。でなければ、あたしが戻る未来は、元居た未来とは、似ても似つかぬ世界になってしまう・・・)

もともと、千鶴の知能指数は、平均よりもかなり高かった。公安庁でのテストの時、IQ140は軽く超えていたはずだ。それでも千鶴は物理学者でも科学者でもなかったため、この問題を考えるのは難しすぎた。

(あと400年生き、戻った未来は、果たして同じ未来なのだろうか・・・例え表面上は似ていても、それは別の世界なのでは・・・そんなものを救ったとして何になる。そして、仮に全てが成功したとしても、その後もあたしは永遠に生き続けなければならない・・・)

考えれば考えるほど千鶴の不安は増大し、気が狂いそうだった。

(桃江と桃之助は、今どうしているのかしら)

ふと、千鶴は山川兄妹の事を思い出した。自分の子孫である彼らとは、3年前に別れたきり、会っていない。同じ織田の家中で働いていると言う事だけは、秀吉から噂に聞いている。そして、いよいよ戦の当日、完璧な布陣を敷いた織田軍の前面に、武田騎馬軍団1万5千が出現し、武田勝頼の号令一下、恐るべき勢いで突撃してきた。

「撃てーっ!」

織田信長の号令で、3列に並んだ鉄砲隊の最前列の1000丁が火を噴いた。銃弾を浴びた武田の騎馬武者がバタバタと倒れる。一方的な虐殺だった。続いて、2列目の1000丁が前に出て、生き残った武田の騎馬武者に再び一斉射撃を行う。そして、さらに3列目の斉射が終わると、弾込めを終えた1列目が再び射撃を行うという繰り返しだった。これでは、いかに武田の騎馬軍団が日本最強といえども、織田の兵士と刀を交えることすら出来なかった。

「恐ろしい、戦だがや」

織田の一部隊の指揮を取る羽柴秀吉が、身震いして言った。こんな戦い方があるとすれば、今までの日本武士の伝統は何だったのか。この時代、鉄砲の量産化に成功していたのは織田家のみだった。わずか数時間の戦いで、武田の騎馬軍団は屍の山と化し、文字通り消滅した。

「うわはっはっは。愉快じゃのう。ほれ、全軍突撃じゃ。生き残った武田の残兵を、一兵残さず討ち取るのじゃ。勝頼の首を持って参れ!」

信長は上機嫌だった。長篠の戦いは史実通り、信長の大勝利に終わった。

 

 紀元1581年、伊賀の国。百地三太夫をはじめ、伊賀の上忍達は殺気立っていた。

「いよいよ信長は、我々に、矛先を向けようとしておる」

「奴は、我々、伊賀忍者を皆殺しにするつもりですぞ」

石川五右衛門が、悲痛な声を上げた。

「服部半蔵が、我らを完全に裏切り、徳川家康につきました」

猿飛佐助も、吐き捨てるように言う。

「そう言えば、以前送り込んだ山川兄妹も、織田の手先に成り下がってしもうたな」

「くそっ、古来より、日本の歴史を操ってきた我らが、あんな、うつけ一人のために根絶やしにされてなるものか!五右衛門よ。『よもがみの術』を使うぞ。吉野、紀州の山地に隠れ里を用意するのじゃ。全滅したと見せかけて、山間部へ身を隠す。我ら忍者集団は、未来永劫、この国を影から支配するのじゃ!」

「ははっ!」

忍者集団は、さらに奥深い山奥へと散っていった。裏切り者の服部半蔵を先鋒に押し立て5万を超える織田軍が伊賀へ侵入してきた時、百地三太夫は徹底抗戦を演じて見せ、全滅したと見せかけて、まんまと、その身を隠した。

 

 1582年6月、運命の日が近付いていた。織田家の領土は日本の中央部の三分の一を占め、もはや、まともに対抗出来る勢力など、日本のどこにも存在しない。北条、毛利、島津、伊達、長曽我部、などの地方大名は、未だ健在だったが、地域が離れすぎているため結束しようがなく、多方面作戦を展開し、各個撃破していけば、あと2、3年で、信長は、天下を統一出来る筈だった。

「日本が統一されれば、天皇家を廃絶し、わしが唯一無二の神となる。そして世界征服へと乗り出すのだ。」

信長は、新しく完成した安土城の天守閣で、光秀や家康などに語った。光秀は青ざめた。

(天皇家の廃絶!なんと恐ろしい事を平然と、口にする男だ)

「ハゲ、何か不満があるのか?」

「いえ、滅相もございません」

光秀の体は小刻みに震えていた。

「ハゲ、お前はこれから、お前の配下の軍団を引き連れ、毛利と対戦している、猿の救援に向かえ。現地に着いたら、猿の指揮下に入るのだぞ」

(なんと、この俺が、猿の指揮下に!)

その屈辱は、耐えれるものではなかった。しかし、眼前の信長に逆らう事は出来ない。

「かしこまってござります。では、直ちに準備にかかりまする」

明智光秀は1万3千の大軍を引きつれ、西へ向かった。しかし、進発してすぐに、一人の忍者が、光秀に接触してきた。

「お前は、何者だ?」

「それがしは、伊賀の上忍、猿飛佐助と申します。朝廷より密書をお預かりして参りました」

光秀は、差し出された密書に目を通した。

「これは・・・」

光秀は愕然とした。密書には、朝敵である逆賊、信長を撃つように。そして信長暗殺に成功した暁には、源氏の末裔である明智光秀を征夷大将軍に任命すると書いてあった。光秀の胸中を様々な思いが掠めた。

(この俺が、征夷大将軍!・・・あの信長を撃てば・・・ハゲ、ハゲと、この俺を馬鹿にしていたあの信長を)

「現在、信長は、本能寺にわずか数十人の従者を携えただけで、宿泊してござります。今、あなた様が、この大軍で、取り囲めば、いかに魔王と恐れられた信長と言えども、万が一にも撃ち漏らすことはありますまい」

猿飛佐助は口頭で、自分の収集してきた情報を光秀に提供した。脂汗を流しながら、ようやく、光秀の決意が固まった。

「敵は、本能寺にあり・・・」

光秀が、配下の者たちに号令をかけた。明智軍、1万3千が謀反を起こした瞬間だった。

 

 1582年6月2日。本能寺に宿泊中の信長は、夜中に突然目を覚ました。やけに表が騒々しい。

「何があったのだ!」

「み、光秀が謀反にござりまする」

信長のお気に入りの小姓である森蘭丸(18歳)が寝所に駆け込んで来た。

「なんだと。ハゲが謀反だと!」

光秀には1万3千の兵を与えてある。それが全て裏切ったとなると、多勢に無勢だった。

「信長様。早く、脱出を!」

「フッ、無駄だ。ハゲのやることに、ぬかりはなかろう。」

信長は、吐き捨てるようにそう言うと、弓と槍を手にし、明智軍に応戦したが、やがて、あきらめ、寺に火をかけた。

 

人間、五十年〜下天の内を比ぶれば〜

夢幻のごとくなり〜

一たび、生を得て〜滅っせぬ者のあるべきか〜

 

信長は、お気に入りの舞を舞った。数十年前の桶狭間の戦いの直前にも、この舞を舞った記憶がある。

(天下統一、いや世界支配の野望を達成することが出来ないまま、また、俺は、こんな死に方をするのか・・・また???)

切腹をしようと、着物の前をはだけ、脇差を手にした時、ふと信長は我に帰った。

(また、とはどういう事だ。俺は、今までに何度も、このように悲運の死を遂げているというのか?)

信長は、死の直前になって、浮かび上がって来た自分の記憶に、愕然となった。しかし、それについて深く考える暇もなく、乱入してきた明智軍の兵士の目の前で、腹をかき切った。

「ええい、逆賊ども!信長様の首級は、渡さぬぞ!」

応戦する森蘭丸の叫び声を聞きながら、信長の意識は急速に薄らいでいった。享年49歳。転生者である信長の魂は、この後、17年の時を経て、遠く離れたイギリスの地に、オリバー・クロムウェルとして生まれ変わる事になる。17世紀初頭にピューリタン革命を主導したクロムウェルは、平然と国王、チャールズ1世を処刑するなどして、イギリスに独裁政治を敷き、終身護国卿として、イギリスの世界支配を推進した。

 

第110話、末裔

 

2006年3月、六本木のオフィス街にIT企業ばかりがテナントとして入居している超高層ビルがある。その中のある会社で、全社員を集めての朝礼が行われていた。

「我社は、来月、4月1日より社名を変更する事になった」

社長の根津順平(37歳)が発表した。

「社名を、今までの『桜井ソフト開発』から『J・Nテクノロジー』へ変更し、新興株式市場への上場申請を行う」

社員の間にどよめきが起こった。眉をひそめるものもいる。前社長で現在は社内奴隷の身分に落とされている桜井真司(30歳)は悲しげな表情をした。真司とその妻、弥生(27歳)は、以前、宇宙人に拉致され、その時に首に巻かれた奴隷管理用の首輪が外れないために、解放された後も奴隷としての生活を余儀なくされている。この首輪をはめている限り、他人の命令には、どんな過酷な内容であっても、無条件で従わなければならず、社長の職務に復帰することが出来なかったのだ。真司と弥生は、解放される前に宇宙人より与えられた、一切の衣服を着てはいけない、という命令を永遠に守らなくてはならないため、今も全裸である。朝礼が終わると、社員達はそれぞれの仕事に戻って行った。

「おい、真司、コンビニで弁当買ってきてくれや」

いきなり真司は、営業部員の山崎聡史に、高飛車な態度で命令された。

「はい、山崎様、行って参ります」

真司はうやうやしく頭を下げる。この男は、真司が社長だった時、新卒採用した3流大学出の若者である。即戦力として鍛え上げるため、かなり厳しく指導したのだが、その時の事を逆恨みして、執拗に真司をいたぶるのだった。

「鮭弁当と、ついでにお茶も買って来い。俺は、もうすぐ取引先に出かけるから、それまでに、腹ごしらえをしておかんとな」

聡史は、財布から千円札を抜き取ると、ヒラヒラと床に落とした。

「拾え」

「はい、山崎様」

すっかり奴隷根性の染み付いた真司は、怒りを覚える事すらない。そればかりか、マゾとして開花しつつあるらしく、屈辱的な行為を受けると、異様に体が熱くなり、チンポが勃起する始末だ。真司は千円札を拾い上げると、全裸のまま、オフィスを出て、エレベーターに乗り込んだ。エレベーターは共用で、他のテナント企業の従業員も利用する。

「キャッ!」

エレベーターに乗った途端、たまたま、乗り合わせた他の階のOLが、全裸の真司の姿を見て、小さく悲鳴を上げた。真司は、何事もなかったように自然に振舞わなければならない。

「すいません。1階のボタンを押してもらえませんか」

エレベーターは込み合っていて、ボタンに手が届かなかったため、真司が頼んだ。

「お前、奴隷の真司だろう?奴隷の癖に、俺達に命令するのか!」

真司の事を知っている他社のサラリーマンが、目くじらを立てた。

「そんな、滅相もございません・・・」

「大体、お前が裸でエレベーターに乗ってきたら、お嬢さん方がビックリするだろうが。奴隷なら奴隷らしく階段を使え!」

「はい、申し訳ございません・・・」

真司は次に止まった階で、エレベーターから降ろされた。例え、たまたまバッタリ出会っただけの、見ず知らずの人間であっても、奴隷管理用の首輪をつけている限り、命令には逆らえないのだ。真司は右手に千円札を握り締め、地上23階から、とぼとぼと人気のない非常階段を降りて行った。ビルの入口で、警備員が険しい顔つきで睨んできたが、無視をする。そして200メートル程離れた、一番近いコンビニまで歩き、店内に入ると、レジにいた女性店員が、さっと目を背けた。真司はしょっちゅう、このコンビニに全裸でパシらされているので、今更、咎めようとする者はいない。言い付けられた通りの弁当とお茶を買って、レジで代金を支払おうとした時、アルバイトらしい20歳ぐらいの女性店員は、真司の下腹部に刺青された。『淫乱チンポ、パイプカット済み安全』『マゾです。踏みにじってください』と言う文字と、屹立したチンポを、引きつった表情で、食い入るように見ていた。

(だんだん、見られるのが快感に変わってきたな。あの若い娘の驚く表情がたまらない)

真司は、ささやかな喜びに浸りながら、お釣りを握りしめ、ビニール袋に入れてもらった弁当とお茶を持ってコンビニを出た。全裸なのでポケットがなく、釣銭は握り締めるしかないのだ。再び、階段を上がって、ゼイゼイ喘ぎながらオフィスに戻った時、山崎聡史は激怒していた。

「遅いじゃねえか、この馬鹿、真司!いつまで待たせるんだよ!取引先に遅刻するじゃねえか!」

「も、申し訳ございません・・・」

「時間には、厳しくしろって言ってんだろ!取引先に何かあったら、奴隷のお前に責任が取れるのか?ええ?」

「いえ、取れません・・・」

それは、以前、社長だった頃の真司が、聡史に度々、説教してきたセリフの、そのままの裏返しだった。

「おい、それにこれ、商品が違うぞ。俺が食べたかったのは、鮭弁当スペシャルだ!」

「も、申し訳ございません。鮭弁当とお伺いしていたもので・・・」

「奴隷のくせに口答えするのか!お茶も違う。俺がいつも飲んでいるのは後藤園の緑茶350ミリリットルのボトルタイプだ!すぐ買いなおして来い!5分以内だ!」

「はい!」

真司は、お釣りとビニール袋とレシートを握りしめ、再びオフィスを飛び出して行った。

 

 ソフト開発課のプログラマー、山川桃子(27歳)はデスクトップパソコンに向かって、新作ソフトのプログラミング作業を行っていた。朝からぶっ続けで作業を行っているため、恐ろしく肩の筋肉が硬直している。コンタクトレンズをしている目が痛み、首筋の感覚が鈍くなっている。

「弥生、肩を揉んで」

桃子が、画面を見たまま、冷たく言うと、全裸で、床掃除をしていた桜井弥生がすっ飛んで来た。

「はい、桃子様」

元、社長秘書の弥生が桃子の背後に立ち、肩から首を、念入りに両手で揉み始める。ほぼ毎日、社員達のマッサージをやらされているので、握力が鍛えられ、揉み方も堂に入っていた。

「気持ちを込めて揉むのよ。気に入らなかったら正座させて、ビンタだからね!」

桃子は、プログラミング作業の手を休め、弥生のマッサージに身をゆだねながら憎々しげに言った。桃子は数年前、社長だった真司と恋人関係にあった時期もあり、最終的に真司と結婚式を挙げることになた弥生を、いたぶることに、歪んだ喜びを覚えているのだ。

「弥生、あなた、真司と結婚出来て、幸せ?」

桃子は意地悪気に尋ねた。弥生がうつむいて、無言で唇を噛み締める。

「ねえ、どうなの?正直に、答えなさいよ!」

「今のあたし達は、奴隷ですわ。夫婦と言っても皆様方の慰み物に過ぎません」

「ホホホ、そうね。よく判ってるじゃない。まさか結婚式の日に、あんな事が起こるなんて、誰も予測していなかったわ。きっとあなた達二人があまりにも幸せそうだったので、神様が罰を与えたのよ」

実際、真司と弥生の結婚式があまりにも豪華盛大だったため、大気圏外から獲物を探していた宇宙人のターゲットにされた事は事実だった。

「真司と結婚式を挙げたのが、あたしじゃなくあなたで、本当によかったわ。もし逆だったら、今ここで奴隷になっているのは、あたしだったかもね」

桃子の言葉に、弥生は悲しげな目を潤ませるだけだった。

「あたしのヒールを舐めなさい」

桃子が弥生に命じた。弥生は、素直に桃子の足元に跪くと、ピンク色のハイヒールを履いた足を、一本づつ捧げ持ち、丁寧に舐め始めた。嫌がる素振りをほんの僅かでも見せれば、ビンタが飛ぶのだ。

「ほらもっと、舌を伸ばして。ヒールを咽喉の奥まで飲み込んでしゃぶるのよ。ダメダメそんなんじゃ。あなたの、奉仕しているって、気持ちが全然伝わって来ないわ」

「も、もうひわけ、ごらいません・・・」

弥生は、尖ったヒールの踵を出来る限り咽喉の奥まで押し込み、むせそうになるのを必死に涙目でこらえながら、舌の表面を、大きく使ってしゃぶり続けた。色白、正統派美人である弥生の、苦悶の表情がなんともいえない。

「ホホホ、いいわね。たまらないわ。あなたを苛めていると、胸がスーッとするの」

「ありらとう、ごらいます・・・もっろ、いじめてくらさい・・・」

弥生も長期間の奴隷生活で、苛められる事にマゾの喜びを感じるようになっていた。現に今も、弥生の乳首はツンと固くなり、オマンコもヌルヌルになっている。それは、自分の意思では、どうすることも出来ない残酷な環境に適応するための、無意識の自己防衛なのかもしれなかった。

「あなたと真司は、夫婦なのよね。じゃあ、今すぐここで、セックスしなさい。あたしの見ている前で犬のようにセックスするのよ」

桃子に言われて、弥生はハイヒールから口を離した。

「はい、では、主人を呼んで参ります」

弥生は、トイレ掃除をしていた真司を連れてくると、オフィスの床に四つん這いになり、バックスタイルで後ろから真司に、挿入させた。仕事中の社員たちが、覚めた目で眺めている。桃子の桜井夫婦に対する執拗なイジメは、このところ日常茶飯事なので、今更、口を挟むものはいない。仕事の合間のちょっとした余興だった。

「アウッ、アウッ!」

真司が腰を振ってオマンコを突き上げ、弥生がよがり声を上げた。

「ホホホ、人前で平然とセックスするなんて、まるで獣ね。もっと、激しくやりなさい。弥生、いつもの恥ずかしい言葉を叫ぶのよ」

「アウウウウッ、あ、あたしのオマンコ、グチョグチョですう。あなた、もっと激しく突いて。淫乱なメス豚奴隷の弥生を、妊娠させて!」

そのセリフを聞いて、真司は悲しげな表情になった。宇宙人に捕まっていた時、強制的にパイプカット手術を受け、種無しの体になってしまっているのだ。

「いい気味だわ。なんて楽しんでしょう!」

山川桃子には、もともと真性サディストの素質があったのかもしれなかった。

 

 いつものように桃子が、桜井夫婦をいたぶり、満足して再びプログラミング作業に向かっていると、ピーッピーッと、デスクの隅の電話機が鳴った。

『山川さんに、お電話が入ってます』

電話取次ぎの女性事務員が告げた。

「誰から?」

『外国人の方で、ジャーナリストだと言っています』

「・・・」

桃子が不審に思いながら、外線につなぐボタンを押すと、流暢な日本語を話す若い女性の声がした。

『山川さんですか?私、フランスのジャーナリストのカトリーヌ・レクレールと申します』

「はあ・・・」

『実は、私、宇宙人について取材をしておりまして、出来ましたら一度、お会いしてお話を聞かせて頂けませんか?』

「はあ、宇宙人ですか?」

『ええ、あなたの会社に、宇宙人に誘拐されて、戻ってきた夫婦が働いていると、伺がっております。もちろん謝礼は、させて頂きますわ』

謝礼、と言う言葉に桃子は敏感に反応した。雇われプログラマーの給料は安く、桃子の欲望の赴くまま、思う存分、ファッションや旅行に使うには少なすぎるのだ。桃子は、カトリーヌという女性と、昼休みに会社の近くの喫茶店で落ち合う約束をした。やがて、時間になると、全裸の桜井弥生を連れて、さりげなくオフィスを出て行った。

「全裸のあなたがいると、目立つから、少し離れて歩きなさい。こっちも変態だと思われるわ!」

桃子が弥生にそう言うと、弥生は悲しげに頷いた。オフィスを出る時はいつも首から『私は、宇宙人によって奴隷に落とされた淫乱な女です。自由に嬲って下さい』というプラカードを下げさせられている。このプラカードをつけていれば、全裸で街を歩いても、治外法権が適用され、警察に咎められることはない。それでも、ジロジロと男たちの無遠慮な視線と、女達の軽蔑の眼差しを受ける事は、弥生にとって、例えようも無く恥ずかしい事だった。弥生は、乗り込んだエレベーターで一階に下りるまで、たまたま背後に立った男に、オマンコに指を入れられ、いじられたが、拒否する事はおろか、足を閉じることすら許されない。さすがに、裸足で道路を歩く事は、危険なので、外出時はパンプスを履くことだけは、許されている。距離を保った桃子と弥生が、待ち合わせの喫茶店に入っていくと、一番奥の席にフランス人ジャーナリストのカトリーヌ・レクレール(31歳)がいた。

「ボンジュール、マドモワゼル、ヤマカワ、そちらは?」

カトリーヌは、栗色のロングヘアとグレーの瞳を持つ、エネルギッシュな印象の美女だった。

「はじめまして、これが、例の宇宙人に誘拐されていた夫婦の片割れよ。弥生、挨拶しなさい」

「はじめまして、淫乱メス豚奴隷の弥生です。奴隷式の御挨拶をさせて頂きます」

そういうと、弥生は、いきなり喫茶店の床に土下座をし、カトリーヌのハイヒールに口漬けをした。

「ほら、お前のオマンコをお見せしなさい」

「はい・・・」

弥生はボックス席に座るとM字開脚のポーズで、オマンコの両側を自分の指で押し広げて、秘所をさらけ出した。

「こんな風にこの女、なんでも言う事を聞くのよ。もし逆らったら、宇宙人に嵌められた首輪から、強烈な電流が流れるんですって!」

山川桃子は、自分のオモチャを自慢するように得意気に語った。カトリーヌは引きつった笑いを浮かる。ここ数年間、宇宙人に関するニュースは海外でも最も関心が高く、取材した記事や情報は、高値で売る事が出来る。カトリーヌはフランス、アメリカの新聞社や、テレビ局数社と契約していたが、時には貴重な情報を、CIAなどの情報機関に流す事もあった。カトリーヌは、宇宙人によって改造された、数々の犠牲者を取材し、生活の糧にしていたのだ。

(麻衣ちゃん、まだ元気に、ケーブル人間のお友だちと、靴磨きの仕事をやってるのかしら・・・)

カトリーヌは、目の前の弥生と、ふと思い出した、記憶の中にある矢萩麻衣という浮浪者の少女を比較した。

「まず、どう言う経緯で宇宙人に誘拐されて、どんな目に合ってきたのかを、話してくれない?」

「ええ、いいわ。弥生、この方に出来るだけ詳しく説明するのよ。謝礼を頂くんだからね。何か、言いたくない事を隠したり、手を抜いたりしたら承知しないわよ」

「はい、桃子様。恥ずかしい事も、包み隠さず、全部お話しいたします」

弥生は、誘拐された結婚式当日の出来事から、長々と話し始めた。最初は、夫の真司と共に、反抗したが、結局、奴隷管理用の首輪を嵌められ、家内奴隷として、宇宙人の夫婦にお仕えしたこと。その後、芸を仕込まれ、ショーパブに出演したこと。曲芸で怪我をし、さざなみ市の中学校で奴隷用務員をしたこと。その間、何度も妊娠し、その度に中絶手術を受けたことなどを、事細かに語った。カトリーヌは、その弥生の身の上話を全て、ボイスレコーダーに録音した。

「ありがとう、いいお話が聞けたわ。きっと、面白い記事になるわ」

そう言ってカトリーヌは、ルイヴィトンのハンドバッグから封筒を出し、桃子に手渡した。

「これ、少ないけど約束の謝礼よ」

桃子が覗きこむと、1万円札が5枚入っていた。桃子の口元が緩んだ。

「どういたしまして。また、いつでも協力いたしますわ。どう?試しに、あなたもこの奴隷を、いじめてみません?」

桃子は上機嫌だった。

「そうね、少しやってみようかしら」

カトリーヌは、弥生にテーブルの上に乗るように命じた。

「テーブルの上に座って、股を開きなさい。あたしにクリトリスを見せるのよ」

「はい、カトリーヌ様」

弥生は、羞恥のあまり目をつぶって、言われたとおり、股を開いてクリトリスを指で剥き出しにした。カトリーヌは右足をテーブルの上に持ち上げ、ハイヒールの踵を弥生のクリトリスにグリグリと押し当てる。

「あおっ!」

弥生の表情が苦悶に歪んだ。

「あたしの、ハイヒールでオナニーしなさい」

「は、はい・・・」

弥生はハイヒールに手を添えて、尖った踵の部分をオマンコの奥に押し込んだ。腰を前後に振り、ストロークさせる。喫茶店の店員や他の客たちは、さりげなく、興味津々でその痴態を眺めていた。

「あっ、あっ、いくううう!」

弥生の愛液で、ハイヒールはヌルヌルになった。弥生は、もう、どうにでもなって、と言う自暴自得な気持ちで、快楽に身をゆだねる。踵がオマンコの奥を刺激し、つま先の部分がクリトリスを気持ちよく刺激していた。ハイヒールの裏側は溢れ出る愛液でベットリと汚れた。

「いくううう!」

弥生の体がビクンと痙攣し、絶頂に達した。

「イッたみたいね。あなたは気持ち良かったかもしれないけど、あたしのハイヒールが、お前のイヤラシイ液体で、ベトベトよ。これを、どうしてくれるの?」

「も、申しわけございません。綺麗にいたします」

弥生はテーブルから降りると、ハイヒールを濡らしている自分の愛液を、舌を伸ばして舐め始めた。

「馬鹿!そんなことしたら、今度はお前のヨダレでベトベトになるじゃないの!」

カトリーヌは激怒し、弥生の頬に思いっきりビンタを食らわせた。パシーンパシーンと乾いた音が喫茶店の中に響き渡った。

 

 カトリーヌは、会社に戻っていく山川桃子、桜井弥生と別れると、しばらく六本木のオフィス街を歩き、しばらく離れた場所にある別の喫茶店に入った。そこには中年のアメリカ人の男が待っていた。

「ハロー、どうだった?ミス、レクレール」

「マドモワゼルって言って頂戴」

待っていたのは、CIA工作員のリチャード・ファーマーだった。喫茶店のテーブルでカトリーヌはボイスレコーダーを、リチャードのノートパソコンに接続すると、先ほどの会話の内容をコピーした。

「報酬は、パリのあたしの口座に振り込んでおいてね」

「オーケー、マドモワゼル」

リチャードは、ヘッドホンを耳にあて、記録された会話の内容を聞き始めた。

「この、山川桃子という女、例の組織と関わっている可能性がある」

リチャードが小声で言った。

「例の組織って、まさかネオナチ?」

「いや、違う。千羽鶴教団という宗教組織だ」

「千羽鶴教団?あの教祖が、宇宙人の襲来を予言していたっていうあの教団の事?」

「そうだ。その教団が、山川桃子に過去に何度も接触を図ろうとしていた形跡がある」

「どういうこと?話のつながりがよく判らないわ」

カトリーヌは、長年に渡るジャーナリストの勘で、何か言い知れぬ、不気味なものを感じた。リチャードは肩をすくめた。

「なにぶん、この頃じゃ、日本の公安も我々に非協力的でね。そればかりか、我々の行動を妨害しようとさえする。思うように情報収集が出来なくて困っているんだ」

「で、代わりにあたしに、やらせてるわけでしょ?」

「ま、そういう事だ。山川桃子と、千羽鶴教団について何か掴んだら教えてくれ。千羽鶴教団は宇宙人への徹底抗戦を呼びかけて、最近、急激に信者を集めている。それだけに公安の監視も厳しい。民間人の君の方が動きやすいだろう」

「わかったわ。その代わり高くつくわよ」

「オーケー、それから、ついでに、もう一つ調べて欲しい事がある」

リチャードは一枚の顔写真を撮り出した。ヨーロッパ系らしい一人の男が映っている。ヒゲを生やしているため、年齢の判らない風貌だ。

「この男についても調べて欲しい。君と同じフランス人で、正体不明の男だ。本名、年齢全て判らない。我々の間では、コードネーム『ミッシェル』と呼ばれている」

「ミッシェル・・・そんな、何も判らない男をどうやって調べろって言うの?」

「彼は、フランス経済界の黒幕とも言われている・・・千羽鶴教団の教祖とも、つながりがあるらしい。教団を探っているうちに、何か掴むかもしれん」

「・・・」

カトリーヌは、話を聞いているうちに、ドス黒いものを感じ、思わず鳥肌が立って、身震いをした。

「期待しているよ。ミス・・・おっと失礼、マドモワゼル、レクレール。君は、我々、工作員の間でも、伝説のジャーナリストとして有名なんだ。1年前、たった一人で宇宙人占領下の町に潜入し、多国籍軍総攻撃のきっかけになる情報をリークした女としてね。君なら出来るよ」

軽く笑いながら、いとも簡単に言ってのけるリチャードを、カトリーヌは、ひきつった表情で、睨み付けた。

 

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