第100話、潜入調査官

 

白木雪絵は、外国語短期大学のドイツ語学科に在学中に、就職活動の一環として受験した国家公務員試験2種に合格した。そして国家公務員の採用を予定している官公庁の中から、公安調査庁を選び出した。理由はスパイ活動みたいで、なんとなく面白そうだったからである。面接を受けるとあっさりと合格し、卒業と同時に新卒採用されることになった。そして、1年間の訓練期間を経て、配属されたのは本庁調査第7部の調査1課だった。

「今日から、君は正式な調査官だ。わが公安調査庁の職員は、表向きは武器の所持はせず、強制調査の権限はないこととされている。だが、それは建前にすぎん。我が第7部では、日本の治安を乱す恐れのある、最も危険な団体を担当する。そのためにはアメリカのCIAやイギリスのMI6などの外国情報機関並みの装備を支給されることもある。もっとも調査官の武器携行が公になると、とてつもないスキャンダルとはなるがね」

課長の長谷川武宏(44歳)が、着任の挨拶に来た雪絵に語った。そして、一人の女性調査官を紹介した。

「君の指導は、先輩の城山君に任せることにした。城山君、彼女は学校を卒業したばかりの新人だ。ビシビシと鍛えてやってくれ」

「城山です。よろしく」

城山朋子(24歳)は軽く会釈をした。調査官には似つかわしくない愛くるしい瞳と、リラックスした雰囲気を持った女性だった。

「本日より配属になりました白木です。よろしくお願いします」

「彼女はドイツ語が得意らしい。例の潜入捜査に使えるかもしれん」

長谷川課長が提案した。

「例のというと?・・・そんな、いきなり新人に潜入捜査だなんて無理です!」

城山朋子が反対した。

「今、他にドイツ語が話せる部員が空いておらんのだ。ネオナチスの幹部が来日し、真藤組に接触をしようとしている。このチャンスを逃すわけにはいかん。それにほんの数日間だけだ。バレなければ危険はない。」

「バレなければね!」

朋子はあくまで反対のようだった。

「それとも城山君。君にドイツ語が話せるかね?」

「・・・・」

二人の会話のやりとりを聞いていた雪絵は、意を決して発言した。

「あたし、その仕事やります!大丈夫です。1年間、訓練はちゃんと受けてきました」

「そうかね。では、決まりだ。城山君、きっちりと彼女をバックアップしてやってくれ」

「課長!」

普段温厚な朋子にしては、珍しく目くじらをたてた。こうして雪絵は着任早々、初仕事としてもっとも危険とされる、対象団体への潜入捜査に携わることになった。

 

 雪絵は朋子に指導されて、潜入捜査のための準備を始めた。まず偽の身分証明書を造り、プロフィールを暗記する。

「短大を卒業後、通訳を目指して勉強中。派遣会社に登録して、ドイツ語を生かした仕事を探している21歳の女性。本籍地と現住所は変えておくわね。あなた、まだ配属されたばかりだから、名前は本名でいいわね。慣れていない人間が偽名を使うと、呼ばれても気付かずに不審がられる場合があるのよ」

「へえ、そうなんですか」

雪絵は、初めての潜入捜査に、不安よりも、ワクワクとしたスリルを感じ、軽い興奮を覚えていた。朋子はそんな雪絵の心情を読み取り、心配になった。

「これは、非常に危険な任務なのよ。浮かれていると、とんでもない事になるわ。・・・まあ、臆病風に吹かれるよりはマシだけど」

二人が準備をしていると、傍を別の女性調査官が通りかかった。

「その娘、新人?」

「ええ、今度、うちの課に配属された白木調査官です。今、彼女の、初仕事の準備をしているところです。・・・白木さん、こちらは調査2課の久石調査官よ」

雪絵が紹介されたその女性は、かなりの美人だったが、顔つきは険しく、鋭い目つきが、女性としての印象を損ねていた。優しさのカケラもない、氷のような冷たい雰囲気を全身に漂わせており、見るからに冷酷そうな女だった。

「白木雪絵です。よろしくお願いします」

「よろしく、白木さん。」

そっけなく、それだけ言うと、久石千鶴(25歳)は、もう雪絵には興味を失ったかのように、その場を足早に立ち去っていった。千鶴の後姿を見送りながら、朋子は雪絵にささやいた。

「あたし、あの人苦手なのよ。すごく優秀な人なんだけど、評判があまりよくないの。この前も、情報をもらっていた協力者が、自分の組織の情報を漏らしていた事がバレて、追い詰められた時、あっさりと、見殺しにしたらしいわ」

「見殺し・・・ですか」

雪絵は、自分の携わろうとしている仕事が、普通のOLとは全く違う危険な仕事であると改めて自覚した。しかし、この時、雪絵はまだまだ甘く考えていたのだった。

 

 真藤組事務所での、ネオナチスと真藤組の会見が終わった。ハインリッヒ・リヒターと、真藤登は固い握手を交わし、協力して犯罪ネットワークを日本に広げる事を誓った。

「ヘア・シンドウ。わが総統も喜ばれる事と思います」

「総統は今どこにおられるのですか?」

真藤登は軽い気持ちで尋ねた。協力を約束したものの、相手は世界中に手を広げている犯罪シンジケートで、その全貌は謎に包まれている。

「総統は、わが組織の本部におられる。だが、その場所は言えない。モサドやCIAをはじめ、世界中の諜報機関が、総統を抹殺しようと血眼になって狙っているからだ」

「それは、大変ですな。私などを狙ってくるのはせいぜい警察の丸暴ぐらいなもんで・・・では、差し支えなければ、総統のお名前だけでもお伺い出来ませんか?」

「ふむ、よかろう。協力を約束してくれた我友シンドウの、たっての願いだ・・・総統の名はルドルフ・ヒトラー。通称、ヒトラー3世と呼ばれておられる。かの第3帝国総統、アドルフ・ヒトラー閣下の孫にあらせられる」

「なんと!ヒトラー3世!ヒトラー閣下に子孫がおられたのですか?」

真藤登は驚愕した。その場に居合わせた黒川や、通訳をしている白木雪絵も驚愕した。

「これ以上の事は、言えない。ヒトラー3世閣下の存在自体も本当は外部に漏らしてはいけない極秘事項なのだ。」

「わかりました。この事は内密にします。では、リヒター閣下、お元気で」

ネオナチスの一行は帰っていった。白木雪絵がこの会談で掴んだ情報を、公安庁に持ち帰るために、組事務所から退出しようとするのを黒川が呼び止めた。

「おめえ、話を全部聞いていただろう。このまま無事に帰れると思っていやがるのか」

雪絵の両脇を組員が掴み、その場にねじ伏せた。

「いやっ、離して!」

「こいつを地下室に監禁しろ。シャブ漬けにしてヒーヒー言わせてやる」

雪絵は暴れた。公安調査官だという事がバレたのだろうか?まだ新人の雪絵には状況判断が全く出来ず、どうしていいか判らなかった。ただ、最悪の事態に陥ったことだけは確かだった。

 

 雪絵は地下室に連れて行かれた。そこには三角木馬や磔台、滑車、鉄檻など思う存分SMプレイを行うための設備が整っていた。雪絵は部屋の隅に、昨日の晩、宴会で酷い責めを受けていた久美子という人妻が、全裸で手足を鎖で繋がれ、死んだように横たわっているのに気付いた。久美子は眠っているようだったが、その体は電流責めの後遺症で、時々、無意識にブルッ、ブルッと震え、久美子の口からは、悪夢にうなされているのか、時々苦しそうな、うなり声がもれている。

「こんなことして、ただで済むと思ってるの。今に警察が踏み込んでくるわ!」

雪絵が気丈にも叫んだ。しかし、黒川、鬼頭をはじめ、組員達はせせら笑っている。

「もし警察が踏み込んできたら、証拠隠滅のために、お前らには、死んでもらう事になる。逆に、そんな事にならないように祈るんだな」

「・・・・」

まだ、雪絵が公安庁の人間であることはバレていないようだった。もし、バレたら、その場で消されるに違いない。雪絵は、恐怖に負けないように唇を噛み締めた。

「鬼頭、このお嬢さんにはシャブ浣腸をしてやってくれ」

黒川が命じた。鬼頭は、洗面器にグリセリン溶液をなみなみと注ぎ込み、それにビニール袋から取り出した白い粉をパラパラと振りかけた。

「お嬢さん。この粉は1グラム数万円で取引されている高純度の極上品だ。こんな高価な浣腸を施してもらえるんだから、有難く思いな」

鬼頭は極太の浣腸器に、特製の浣腸液を吸い上げた。

「スカートを捲り上げて、パンツを脱がせろ」

雪絵を押さえつけている組員達が、スカートの下に手を伸ばし、ストッキングを破り、力任せに雪絵のパンティを引き千切った。

「やめなさいよ、あんた達っ!」

「暴れるんじゃねえよ、このアマ!」

黒川が、必死に身をくねらせて抵抗しようとする雪絵の頬に痛烈なビンタを見舞った。

「いやああああっ!」

数人の男に押さえつけられ身動きの取れなくなった雪絵のアナルに浣腸器の先端が差込まれる。冷たいグリセリン溶液が体内に注入されてきた。

「すぐに気持ちがよくなる。お嬢さんが、我慢出来ずに、高価な浣腸液を漏らさないように栓をしておいてやるよ」

鬼頭は、全ての浣腸液を注入し終わると、鍵付きのアナルストッパーを雪絵の肛門に詰め込んだ。たちまち、雪絵は激しい便意に襲われ、顔面蒼白になった。

「離してやれ。どうせ、もう、逃げようとしてもシャブ浣腸無しでは生きていけない肉体になるんだからな」

黒川の指示で、押さえつけていた組員達が手を離すと、自由になった雪絵は、逃げ出そうとして、猛然と地下室の扉にダッシュした。

「無駄だっての」

黒川が雪絵に足払いをかけた。雪絵は前のめりに倒れ、壁に額をぶつけた。

「ああ、お腹が苦しい!ト、トイレにいかせて!」

雪絵の下腹部では、地獄のような便意が荒れ狂っていた。アナルストッパーをされているため、ウンチを出したくても自分の力では出す事が出来ない。コンクリートの床を必死で転げまわる雪絵を見て、組員たちは笑い転げた。

「フハハハ、もう少しの辛抱だよ、お嬢さん。もうすぐ、シャブが効いてきて天国にいるような、素晴らしい気分になれるよ」

「そんなのいやよ・・・」

「何だって?何がしたいのか大声で言ってみな」

「ウ、ウンチ・・・ウンチをさせて・・・」

「聞こえんなあ」

組員達が苦しんでいる雪絵に、思い思いに蹴りや拳を叩き込んだ。

「うぐうう・・・悔しいっ・・・」

あまりの痛みに目の前が真っ暗になった時、雪絵は、突然スーッと体が軽くなるのを感じた。あれほど荒れ狂っていた便意も麻痺したかのように引いていく。

「どうやら、クスリが効いてきたようだな」

雪絵の変化を読み取った黒川がつぶやいた。暴れまわっていた雪絵の体から力が抜け、顔の筋肉も弛緩したように締りがなくなって、幸せそうに笑い始める。目が潤み、緩んだ口の端からヨダレが垂れる。黒川はグンニャリとなった雪絵の体を抱きかかえると、一枚ずつ服を、ボタンを外して脱がせ始めた。

「まずは、俺からだ。今日は、輪姦パーティといこうか。」

待ってました、とばかりに組員達が目を輝かせた。

「全員が終わったら、排泄させてやるよ」

「うう・・くうっ・・・ああ、何だか、とってもいい気持ち・・・こんな気分、生まれて始めて・・・」

ハイテンションになった雪絵は、黒川の屹立したチンポを自ら受け入れ、腰を振りはじめた。

 

 東京、霞ヶ関の公安庁、第7部調査1課のオフィスでは、城山朋子が課長の長谷川に食ってかかっていた。

「課長!白木調査官が帰ってきません!」

「まずいな、捕まったか」

「すぐに所轄の警察に要請して救出して下さいっ!」

「まあ、待て、城山君」

長谷川課長は困った顔をした。

「君も知っての通り、我々公安庁と警察は犬猿の仲だ。警察にはなるべく借りを作りたくないのだ」

「そんな事、言ってる場合ですか!」

朋子は逆上した。今、この瞬間にも、後輩が、命の危険に晒されているかも知れないのだ。

「もう少し、様子を見よう。潜入期間が長ければ長いほど、より多くの情報を持ち帰ってくれるかもしれん。それに白木君だって、調査官になったからには、職務の遂行に危険が伴うのは承知の筈だ。」

「ですが、課長!」

「君は、いつでも動けるように、引き続き、真藤組の監視と情報収集を続けてくれたまえ。」

朋子は、課長のデスクを力任せに殴りつけると、何も言わずにオフィスを出て行った。

 

「どうや、裏ビデオの撮影は進んどるか」

真藤登は久々に地下室に降りてきた。地下室の調教室では、調教師の鬼頭がビデオカメラを回し、久美子と雪絵のレズプレイを撮影している。雪絵が監禁されてから早くも1週間が過ぎていた。

「あっ、ああっ、もっと、もっと奥まで舐めて・・・」

久美子が台本通りの決められたセリフを口にした。雪絵と久美子の肉体がシックスナインの体勢で絡まり、久美子の股間に顔をうずめた雪絵の舌が、久美子のオマンコの奥に伸ばされる。

「ああ、いいっ!」

「麻薬浣腸、欲しい・・・」

雪絵がつぶやいた。この1週間ですっかり雪絵は麻薬中毒患者となり、SMプレイやセックス奉仕の御褒美として11回、投与される麻薬浣腸の虜となっていた。もはや、それ無しでは禁断症状が襲ってくるため、脱走しようという意思は完全に消えてしまっている。一方人妻の片桐久美子の方は、娘の綾香を人質に取られ、なんでも言う事を聞く以外に生きる術がなくなっていた。

「また、おねだりか。撮影が終わったら、浣腸をしてやるよ。・・・全く、いったい麻薬浣腸1本、いくらかかると思っていやがるんだ。この裏ビデオで組の資金の他に、お前の浣腸代も稼がなければならんのだからな。しっかり気合入れて絡めよ!」

「はい・・がんばります・・・」

雪絵は任務も忘れて、快楽に身をゆだねた

 

第101話、雌伏

 

2005年12月、東京霞ヶ関の公安庁、第7部調査1課のオフィスでは、長谷川武宏課長(49歳)が、深刻な顔つきで、部下の城山朋子(29歳)を呼び出していた。

「ネオガイア星人の植民地総督府から、君の手配書が回ってきたよ」

「とうとう、来ましたか」

朋子は冷静だった。予想されていたことだ。現在の朋子の姿は化け物のようである。まず、両手両足が、入れ替えられ、頭部はミニスカートの下から逆さまに覗いている。本来、首のある場所には尻とオマンコがあり、その尻の割れ目には、白い歯を覗かせた唇がある。長谷川は、本能的な嫌悪感から思わず目をそむけたくなった。生体実験によって改造された朋子の姿は、何度見ても慣れる事が出来ない。

「罪状は、さざなみ市でのネオガイア星人の施設に対する破壊活動だ」

「で?あたしを逮捕して宇宙人に突き出すのですか?」

朋子は嫌みったらしく問いかけた。1年間に及ぶレジスタンス活動の後、職場復帰した朋子は、あまりに変わり果てた不気味な姿のため、人前に出ることが出来ず、調査活動にも支障をきたすため、ずっと内勤に回されている。

「仕方あるまい。日本政府は、事実上宇宙人に無条件降伏をしたのだ。」

「しかし、あたしがレジスタンス活動を行っていたのは、日本政府との間に条約が締結される以前の話です」

朋子は、無駄だとわかっていたが、反論してみた。

「圧倒的な勝者に対して、そんな理屈が通ると思うかね。勝てば官軍なのだ。第二次世界大戦後の東京裁判やニュルンベルク軍事法廷の判決を知らんわけではあるまい!」

「ニュルンベルクね・・・」

昔、そんな名前の国際犯罪組織があったな、と朋子はふと懐かしく思い出した。あの頃の仲間はほとんど全員が、ここ数年の宇宙人との戦いで、殉職、もしくは行方不明になっている。木之本恵美、白木雪絵、古賀美奈子、そして久石千鶴。

「あたしが、嫌だといったら?」

「日本の警察、公安、自衛隊の全てを敵に回す事になる・・・」

「わかったわ。それじゃあ課長、身辺整理をしてきますので少し時間を下さい。立つ鳥後を濁さず、ってね」

「ああ、聞き分けてくれて助かるよ。君の親族には極力、危害が及ばないよう、俺の方からも働きかけはするから」

「それは、どうもご親切に!」

朋子はガニマタでオフィスを出るなり、近くに人がいない事を確認の上、ポケットから携帯電話を取り出し、電話をかけた。

「ハロー、リチャード。あたしよ、すぐに会いたいわ。そう、大至急よ。緊急事態なの。すぐにアクセスポイントをセッティングして頂戴!」

『オーケイ、朋子。どこがいいかな。君の姿は、恐ろしく目立つからなあ』

CIAのリチャード・ファーマーは、ある場所を指定すると、逆探知を恐れて、手短に電話を切った。

 

城山朋子は、霞ヶ関の交差点でリチャード・ファーマーの愛車である黒塗りのベンツに乗り込むと、そのまま在日米軍基地のある厚木飛行場へと向かった。日本降伏以後も、国内の米軍基地は維持されており、ネオガイア星人も、とりたたて、そのような些事には関心がないようだった。圧倒的な軍事力と科学力を持つ宇宙人は、完全に地球人をなめきっている。

「もう日本にはいられない。アメリカに亡命するわ。力になってくれるでしょう、リチャード?」

朋子とリチャードは、以前に、公安がCIAと連携して仕事をしていた頃からの知り合いである。

「もちろん歓迎するよ。宇宙人相手に長期間レジスタンス活動を行っていた君の経験と実績は、我々にとって貴重な戦力になる」

朋子とリチャードは、厚木基地で米軍の輸送機に乗り換え、グアム、ハワイを経由してアメリカ本土のグランドキャニオンの地下にある秘密研究施設に降り立った。

「ここは、以前破壊されたネバダ砂漠の基地、エリア51の代わりに設営された施設だ。この前の戦いの時、さざなみ市で拾得した宇宙人の兵器や装置を分析し、その科学技術の解明が行われている」

「アメリカは、また宇宙人と戦うつもりなの?」

朋子が尋ねると、リチャードは誇らしげに答えた。

「当たり前だ。我々は、腰抜けの日本人とは違う。世界の秩序を脅かすものは、テロリストだろうが宇宙人だろうが、力づくで排除する。アメリカ合衆国は決して膝を屈したりはしない。ここはでは、現在、その切り札となる計画が進められているんだ」

朋子は、自分の首の位置にある陰毛を、さながら髪の毛のように撫でながら考えた。地球人が果たして、最終的に勝利を得る事が出来るのか?

「君に合わせたい人間が、何人かいる」

朋子はリチャードに案内されて、飛行場のある地上からエレベーターで地下深くへと降りていった。そして厳重なセキュリティを通過し、施設内の一室で、まず、一人の女性に引き合わされた。朋子はその姿を見て、思わず息を呑んだ。

「サ、サイボーグ?」

その女性の下半身と両腕は機械に置き換えられており、生身の部分である顔にも醜い傷跡がいくつも走っている。衣類と言えば上半身にナイロン製のベストのようなものを着ているだけだった。

「工藤明日香さんだ」

明日香はうつろな瞳を朋子に向けた。明日香の方でも朋子の異形の肉体に少し驚いたようだった。

「よろしく・・・」

朋子は明日香の肉体を観察した。明日香の右腕には折れたマジックハンドの代わりに、アメリカのロボット工学者によって機関銃が埋め込まれている。元からあったネオガイア製の左腕のマジックハンドと、右足の義足は今まで通り動いていたが、破壊されて使い物にならなくなった左足の義足は取り除かれ、代わりに地球製の簡単な義足がはめ込まれていた。しかし、地球製の義足では、ネオガイア星のロボット工学で作られた以前の足のようには自分の意志で俊敏に動かす事は出来ないため、明日香は左腕のマジックハンドで杖をついて歩かなくてはならなかった。

「この杖には日本刀が仕込まれているのよ」

明日香は自慢気に語った。お粗末とはいえ、再び自分の体に武器が埋め込まれたことに喜びを感じているらしい。

「この杖と、右腕の機関銃があれば、また戦う事が出来るわ」

この女性は、こんな体になってまで何と戦うのだろう、と朋子は考えた。明日香にとって、敵は何でも良かった。何も考えずにただ命令された相手と戦う事によってかろうじて、自分の存在意義を見つけ、生きる目的を失って壊れかけた精神の安定が、維持出来るのだ。朋子は、苦い思いを味わいながら、明日香と別れると、次に、基地の居住区画にある、別の一室に案内された。

「そして、こちらがパッカード夫妻」

「始めまして、城山です。ご無事だったのですね。お元気そうでなによりですわ」

朋子はその夫妻のことは良く知っていた。宇宙人占領下のさざなみ市のボロアパートでつつましく生活する夫妻を、部下のレジスタンスメンバーに、密かにずっと監視させていたのだった。さざなみ市陥落の際、CIAの要請で、彼らを保護するために、居場所を教えたのも朋子だった。互いの首から下を入れ替えられた、黒人のマイケル・パッカード博士(37歳)と日本人の菜摘・パッカード(23歳、旧姓有川)は、生後1年になる男の赤ちゃん、ロバートと3人暮らしだった。

「???、どこかでお会いしたことがありましたでしょうか?」

長身で、首から下が筋肉隆々の菜摘が怪訝な顔をした。菜摘の口の周りには無精ヒゲが生えている。朋子は事情を説明した。

「そうでしたか、それでは、あたし達が今、宇宙人の手から無事に逃れて、ここで親子3人、水入らずで暮らせるのも、あなたの御蔭なのですね」

菜摘は、感謝しているようだった。しかし、マイケルの表情は暗かった。

「オーノー、こんな体じゃ、生きていてもしょうがないさ!」

「なんてこと言うの、あなた。そんな事、例え思っていても、人前で口に出す事じゃないわ!」

菜摘がマイケルを叱りつける。マイケルはシクシクと泣き出し、突然気分が悪くなったのか、口元を押さえて洗面台の方に駆けていった。

「お、おえっ、く、苦しい、またつわりだ・・・」

「主人は二人目を身ごもったのですよ。今度は、出来れば女の子を授かりたいですわ」

菜摘は幸せそうな笑みを浮かべると、朋子に打ち明けた。

「お、おええっ、な、菜摘・・・簡単に言うんじゃねえよ。子供を一人生むのがどんなに大変なことか、知らねえ癖にによう!まったく、女の体ってのは、どうしてこう、生理痛だの妊娠だのって、苦しいことばっかりなんだ!」

マイケルは胃の中のものを吐き戻しながら悪態をついていた。

「主人は、どうも、女の肉体が合わないらしくって、生理通やつわりが、普通の女性よりもキツイみたいなんです」

「そりゃあまあ、そうでしょうけど・・・」

朋子は、思わず吹き出しそうになるのをこらえた。マイケルは、この基地では、地球外生命体を専門に扱う、数少ない生物学のエキスパートで、生け捕りにされた百足星人やネオガイア星人の死体を研究しているのだった。最近、ネオガイア星人が地球外から持ち込んだペットや植物の分析も手がけている。朋子は、ほのぼのとしたパッカード一家に別れを告げるとリチャードと共に、別の区画へと向かった。

「今度は何なの?」

「次にお見せするのが、宇宙人迎撃プラン、ミッション4。宇宙人に対抗するための我々の切り札だよ」

得意気に語るリチャードの言葉に、朋子は期待を胸に膨らませた。

 

案内されたその区画は、割と広めのスペースを持つ研究施設のようだった。

「ここが、わが国が誇る、ESP研究所だよ。」

「ESP???」

「エスパー、超能力者のことだ。ここには、アメリカ中から集められた最高レベルの超能力者が集められている」

「まさか・・・そんなのものが実用化されているなんて・・・」

「以前は、この分野で、わが国は、先行するソ連や中国に、非常に遅れを取っていた。しかし冷戦が終結し、ソビエト連邦が崩壊した現在、ESPの研究では、我々が、中国をも追い抜き、世界でトップレベルの水準を誇っている。朋子、君にわが国、最高の超能力者たちを紹介しよう」

研究室内では、数人の若い男女が、研究員達を相手にさまざまな実験や、検証を行っていた。彼らは、朋子の異様な姿を見ると、顔を引きつらせた。

「彼が、ジョーイ・ファレル。君もテレビで見たことがあるだろう。通称『スプーン曲げのジョーイ』と呼ばれている」

「どうも」

へらへらとした愛想笑いを浮かべるその男は、まだ若い白人でかなりのイケメンだった。

「ジョーイ、君の特技を朋子に見せてやってくれ」

「いいとも」

リチャードに即されて、ジョーイはポケットから一本のスプーンを取り出した。いつでもパフォーマンスが出来るように、常に持ち歩いているらしい。ジョーイ(22歳)はスプーンの柄を、右手の人差し指と親指で挟むと、真剣な表情で擦り始めた。しかし、しばらく何も起こらなかった。

「ムムム・・・きたきたきたきた!」

ジョーイが、顔を真っ赤にしながら擦り続け、15分ほど経った時、突然スプーンの柄が、飴のようにグニャリと曲がった。ジョーイはホッとしたようだった。

「おおっ、何度見ても素晴らしい!奇跡だ!ワンダフル!」

リチャードが興奮して奇声を上げ、パチパチと拍手をした。朋子は顔を曇らせた。

「確かに、普通の人には出来ない、すごい事だと思うけど・・・」

スプーン曲げを成功させたジョーイは興奮していた。

「神に誓って、今のは、指の力で曲げたんじゃないよ。ここの研究員も、僕の超能力だと認めてくれている。実際、テレビ番組の収録の時は、緊張しすぎて出来ないこともあるんだ。今日は成功して良かったよ。・・・どうだい、トモコ、俺に惚れたかい?宇宙人なんて、俺のハンドパワーでイチコロだぜ!」

「そうね・・・」

朋子は、かなり期待していただけに、調子に乗ってはしゃいでいる、リチャードとジョーイの様子を見て、暗澹たる気持ちになった。

 

「そして、彼女がバーバラ・サンダース。彼女の特技は『カード当て』だ。彼女は裏向きにした、カードに書かれた文字や記号を透視することが出来る」

次に紹介されたのは、ブロンドにローズピンクの肌、青い瞳を持つ、ハリウッド女優ばりの美女だった。

「ハウ・ドゥ・ユー・ドゥ、ミス・シロヤマ。あなた、凄い格好ね」

バーバラ(23歳)は、化け物のような朋子の肉体に、同情するような眼差しを向けた。その態度の中には明らかに自分の美貌に対する自信と、他人への優越感が感じられた。

「彼女は、以前、ロサンゼルスでモデルや女優の仕事をしていた事もある。我々CIAが目をつけ、ESP研究所にスカウトしたんだ」

「そう。で、彼女の能力も、見せて頂けるのかしら?」

朋子は、期待が裏切られ、なし崩しに、気力と全身の体の力が抜けて行くような気がした。

「もちろんだとも、さあ、こっちのテーブルの方へ来てくれ。」

リチャードと朋子、バーバラは一つのテーブルを取り囲んだ。バーバラはポケットからトランプの束を取り出し、そのうちの5枚を裏向きにテーブルに並べて、シャッフルするように朋子に言った。

「ミス・シロヤマ、どれでも、好きなカードを指差してちょうだい。あたしの透視能力で当てて見せるわ」

朋子は、一番右端のカードを指差した。バーバラは精神を集中し、穴の開くほどカードの裏面をジッと見詰める。

「ウーン、ウーン、ウーン・・・・これは、ハートの5よ」

バーバラは、そう言うなりカードをひっくり返した。カードの裏面はスペードの9だった。

「あれっ、おかしいわね。ちょ、ちょっと待って、もう一度やらせて。今日は調子が悪いのよ!いつもはこんな事ないのに・・・」

必死に取り繕い、あせっているバーバラを見て、朋子は、だんだんと、どうでも良くなってきた。

「ダイヤの2。あれっ、また間違えた。・・・スペードの12。あっ、ほら見て、当たったわ!」

バーバラは得意気に、当たったカードを朋子の鼻先に突きつけた。

「凄いわね・・・」

朋子は、そう言うしかなかった。

「朋子、次はリーディングが出来る超能力者を紹介しよう」

さらに案内しようとするリチャードを、朋子がさえぎった。

「ごめん、リチャード。あたし、長旅の緊張で疲れたの。少し休みたいわ、いいかしら」

「あ、ああ、いいとも、用意している君の部屋に案内しよう。じゃあ、続きは明日ということで」

「そうね、悪いけど・・・」

朋子はこれからどうしたものかと考えた。こんな調子では、アメリカもあてになりそうにない。宇宙人には未来永劫、勝てないような気がしてきた。

 

第102話、人間灰皿女

 

「ねえ、先生。今までどおり、ウチの医薬品、使ってくださいよ!」

医薬品卸売商社の営業マン、田中泰生(32歳)は執拗に食い下がった。相手はさざなみ市立大学病院で、飛ぶ鳥を落とす勢いで、権力を握りつつある財銭教授である。

「いらんと言ったら、いらんと言ってるだろう。私は、もう地球製の医薬品など使わんのだ!」

「そんなこと言わずに、お願いしますよ。せめて、消毒液とか、だけでもいいんです・・・」

「だから、そんなものはいらないって。この病院では進歩したネオガイア星の医薬品がいくらでも使えるんだ!あまり、しつこいと、お前を生体実験の実験材料にするぞ!」

「そ、そんな・・・」

泰生は引き下がるしかなかった。大口の取引先を失い、また社長にドヤされるに違いない。

(くそっ、なんだってんだ!宇宙人の医薬品がそんなに優れてるって言うのかい!)

泰生の勤めている会社は、それほど大きな会社ではない。さざなみ総合病院との取引がなくなれば、大きな痛手を受けてしまう。泰生は3年前に結婚し、賃貸マンションに住む、幼い子供と妻を養っていかなくてはならなかった。がっくりと肩を落として会社に帰りついた泰生に、事務員の笠木由美子(26歳)が声を掛けた。

「田中君、この領収書落ちないわよ。収入印紙が貼ってないでしょ」

「えっ?」

ポカンとして泰生は手渡された領収書を見詰めた。数日前、大学病院の医者達を料亭で接待した時に使った、36200円の領収書だった。

「あ、本当だ。これ、酔ってて、手渡された時に気付かなかったんだ。笠木さん、今回だけ、何とか頼むよ」

「ダメダメ。落ちないものは落ちないのよ。これは、田中君の自腹ね。どうしても落として欲しかったら、もう一度、このお店に行って、収入印紙を貼ってもらってきて!」

「・・・」

泰生は無言でコブシを握り締めた。

(この女、いつか殴ってやる)

泰生は、ムシャクシャしながら自分のデスクに座ると、タバコに火をつけた。

「田中君、禁煙よ、禁煙!もう、何度言ったらわかるの。張り紙が貼ってあるでしょう!頭悪いんじゃない?そんな事だからいつも社長に怒られるのよ!」

泰生は、仏頂面で、怒りにブルブルと震える手で、火をつけたばかりのタバコを揉み消した。

(何だってんだ、この女!俺が会社の業績を伸ばそうと毎日、必死で、取引先に頭下げて回ってるって言うのに!オメエはいつも、涼しい事務所で、伝票のアラを探してるだけじゃねえか!毎日、残業もせずに定時で帰りやがって!たまには、サービス残業や休日出勤でもしてみろってんだ!大体、俺の方が先輩なのに、なんで、いつも君付けなんだ?おかしいじゃないか!)

泰生は、はらわたが煮えくり返る思いがした。そして、その日の帰りの電車の中である事を思いついた。

 

「また君かね。何度言ったら判るのかね。君の所の医薬品は使わん、と言ってるだろう」

「いえいえ、教授。実は今日は別の用件がございまして・・・」

田中泰生の言葉に、財銭教授が興味を示した。この教授がリベートや接待に、敏感な事は、前々から判っている。

「なにかね?」

「実は、うちの会社に、小生意気な女性社員が一人おりまして、ぜひ教授のお力をお借りして懲らしめて頂きたいかと・・・」

泰生はカメラ付の携帯電話で隠し撮りをしてきた、仕事中の笠木由美子の写真を、携帯電話の液晶画面に表示させて、財銭教授に見せた。

「ふむふむ、なかなかの美人じゃないか」

泰生は、由美子にこれまで受けてきた仕打ちを、オーバーに誇張して財銭教授に語った。

「つまり、この女性社員を私の研究の実験材料に使ってくれ、というのだな。ふむ、よかろう。では、この前、君が言っておった消毒液の件は、私から病院の総務課の方に話しておこう。地球人の一般患者用には、高価なネオガイア星のものよりも、地球の医薬品の方が、安上がりでいいんじゃないか、ってな感じでな」

「ありがとうございます、教授。これでウチの会社も助かります!」

「なあに、礼には及ばんよ。困った時はお互い様だから」

数日後、笠木由美子の姿が、会社で仕事中に、いきなり白い光輝に包まれ、忽然と消え失せた。泰生は、さざなみ総合病院との取引継続を、社長に褒められ、ついでに、うるさい事務員もいなくなって、一石二鳥で、密かに、ほくそ笑んだ。

 

気がつくと笠木由美子(26歳)は、さざなみ病院の地下転送室にいた。

「ここはどこ?」

「ようこそ、由美子さん。ここは、ある病院の中だよ」

財銭教授は、彼の助手を務める地球人のインターン達に、由美子を手術室に運ぶように指示した。

「ちょっと、離しなさいよ!何の権利があってこんな事するの?」

「この誘拐は、今年の3月にネオガイア星人と日本政府との間に、正式に結ばれた条約に基づいている。ネオガイア星植民地総督府に属する機関は、日本国内のあらゆる人間を自由に、生体実験の材料として徴発することが出来るのだよ」

「そんな!だからって何であたしが・・・」

「君を、私の実験に、ぜひ、使ってくれと、ある人物から推薦があったのだ」

「推薦?誰が、そんなことを・・・」

由美子は暴れたが、インターン数人に力づくで押さえつけられ、有無を言わさず、手術室に運ばれた。

「由美子君、君はタバコを吸うかね?」

「吸わないわ。だって体に悪いもの」

「そうかね。それは残念だ。これから君を人間灰皿に改造してあげようと思っているんだがね」

「人間灰皿???」

由美子は、この医者が言っている意味が判らなかった。しかし、すぐにインターン達の手によって衣服を全て剥ぎ取られ、全裸で手術台の上に固定された。

「まず、体を折り曲げて、両足を頭の後ろに回して、首元で組ませるんだ」

「はい、教授」

二人のインターンが両側から、由美子の足を一本づつ持ち上げ、力づくで折り曲げて、頭の後ろに持っていこうとした。

「うぐぐぐ・・・痛い・・背骨が折れるうう」

由美子はミシミシと背骨がきしむ音が、聞こえたような気がした。

「教授、この女、体が硬いようです」

「デスクワークが仕事の事務職らしいからな。体は当然硬いだろうなあ。かまわん、痛がっても、遠慮せずにやりなさい」

「うぐううう」

インターン達は、どうにか、由美子の両足を頭の後ろで組ませる事に成功した。蟹を思わせる、ヨガのようなポーズである。オマンコとアナルも剥き出しだ。

「この両足を、このまま有機接着剤と金属ベルトで、一生外れないように固定しよう」

由美子は、財銭教授の恐ろしい言葉に、顔を引きつらせたが、オマンコ丸出しの恥ずかしい、このポーズのままでは抵抗することすら出来なかった。

「お願い、助けて・・・」

「駄目だ、駄目だ。お前、いつも、会社でそう言ってたんだろう?」

「うう・・・」

由美子は、シクシクと泣き始めた。両足の接着が終わると、財銭教授は、次の部位の手術に取り掛かった。

「シンプルな手術で、あまり改造する部位はないんだがね。後は、勝手に逃げ出したり、人間灰皿の利用者に危害を加えたりするといかんから、両手の指と、歯を全部、除去させてもらうよ」

「ひいいいい、イヤ!やめてええ。何でもするからああ!」

由美子は狂ったように哀願した。しかし、願いは聞き入れられず、由美子の両手の指と、口の中の歯は、インターン達の手によって麻酔なしで、一本づつ引き抜かれていった。

「ぎゃあああああ!」

由美子は、大量に出血し、激痛に耐えかねて、何度も気を失った。やがて手術が終り、細胞回復促進剤で傷口が塞がると、人間灰皿女が完成した。

 

「病院の喫煙室にでも置いとくか。おっ、そうだ。この人間灰皿を作ったのが私だという事が、みんなに判るように私のサインを刺青しておこう」

財銭教授は、自動刺青ペンで、由美子の額に『2005年、12月19日。財銭吾郎作』

と署名をした。

「これで、判るだろう。私の人体改造技術のレベルが向上していることを、さりげなく、ネオガイア星のお偉方にもアピール出来る」

財銭教授は上機嫌で、インターン達と共に、ほとんど動けない由美子の体を喫煙室に運び込んだ。

「試しに私が使ってみよう」

財銭教授は、タバコを取り出し、火をつけてくゆらせた。そして、火の粉の混じったまだ熱い灰を、パックリと開いた由美子のオマンコにポンポンと人差し指でタバコを叩いて落とした。

「熱っ!」

由美子が悲鳴をあげた。膣の粘膜に鋭い痛みが走ったのだ。

「これは、面白い。ではこれではどうかね。」

今度は、灰をアナルに落としてみる。収縮してぴったりと閉じた括約筋のつぼみが、熱さでヒクヒクと動いた。やがて財銭教授は、タバコが短くなって吸えなくなると、火のついた先を由美子の太腿に押し付けた。

「ぎゃあああ!」

由美子が絶叫した。

「口を開けろ。吸殻を食べるんだ」

タバコの吸殻など食べられるわけがない。由美子は必死に口を閉じて拒もうしたが、歯を食い縛ろうにも、肝心の歯が全て抜歯されていた。

「抵抗しても無駄だって。素直にした方が、君も楽だよ」

財銭教授は、楽々と唇をこじ開け、歯茎の間からタバコの吸殻をねじ込んだ。恐ろしく苦い味が、由美子の口中に広がった。

「吐き出すなよ。そのまま飲み込め」

由美子は、涙を流しながら、言われるがままに、吸殻をゴクリと飲み下した。とてつもなく不味く、嘔吐感がした。

「わっはっはっはっ。君は一生、人間灰皿女として生きるのだ。他の事は何も考えなくていい。ある意味、素晴らしい人生だと思わんかね」

「オエッ、オエッ、お、思わないわ・・・苦しい、いっその事死んだ方がマシよ・・・」

「そうかね。それは残念だ。だが、歯を全部抜いておいたから、舌を噛み切る事は出来んし、君が自分の意思で自殺する方法はないよ」

「鬼いっ!」

その日から、由美子の人間灰皿としての生活が始まった。食事は、タバコの吸殻と、時々清掃員が、喫煙室の掃除のついでに持って来る、ドロドロした液状の栄養剤だけである。オシッコとウンチは清掃員が回ってきた時に、彼らが持ってくる決められた容器に排泄しなくてはならない。それ以外の時に勝手に排泄し、喫煙室の床を汚すと、食事抜きや、電気ショックなどの厳しい罰を受けるのだ。由美子は泣き続けたが、誰も助けてくれる者はおらず、由美子のオマンコやアナル、お尻、太腿、下腹部、乳房などは、喫煙者によって押し付けられたタバコの火で、日に日に火傷が増えていった。そして1週間が過ぎた頃、由美子は、ふと懐かしい声を耳にした。

「笠木さん、久しぶりだね」

一週間前まで働いていた会社の営業マン、田中泰生の声だった。

「田中君?田中君なの・・・お願い、助けて・・・」

息も絶え絶えに由美子が哀願した。

「相変わらずだね、笠木さん。先輩の僕に向かって、君付けかい?」

泰生の口調は冷たかった。

「いい格好だよ、笠木さん。君にはお似合いだ。会社で事務処理をやっている姿よりも、よっぽど似合っているよ。あ、そうだ、君の後任に、女子社員が来てね。君より、若くて美人だし、君に突き返されたあの領収書も、事情を説明したら、『じゃあ、コンビニであたしが収入印紙を買って、処理しときます』って言ってくれたよ。君とは大違いだ」

由美子の胸をふと疑惑がよぎった。

(まさか、あたしを実験材料に推薦したある人物って、田中君?)

「おい、なんだよ、その目は。俺に恨みでもあるのかい?これからもたまには、会いに来てやるからよ。この病院は俺の担当なんだ」

(やはり、この男だ)

由美子は確信した。泰生はポケットからタバコを取り出すと口に咥えて火をつけた。

「うまいねえ。動けない君のオマンコを見ながら吸うタバコは、実にうまい・・・」

泰生はジロジロと火傷だらけの由美子の体を舐め回すように見て、絶望に沈んだ表情を楽しんでいるようだった。やがて、泰生はタバコを吸い終わると、短くなったタバコの火を揉み消すために、由美子のクリトリスに押し付けた。

「ぎゃあああああ!」

由美子の絶叫が、喫煙室に木霊した。

 

第103話、食肉業者

 

小林誠二は、目を覚ました。ぼんやりとした明かりがついている狭い部屋だった。うつぶせに寝ている姿勢から立ち上がろうとして、四肢が鎖で拘束されている事に気付いた。

(あれから、どれくらいの年月が経ったんだろう・・・)

意識がハッキリしてくると誠二はとりとめもなく考えた。あの事件があって以来、悪夢のような出来事が連続して起こり、今、自分の身に起こっていることが、夢なのか現実なのか区別がつかない。あれは、確か、2003年9月の秋晴れの、すがすがしい日・・・その日まで誠二は県内随一の名門進学校で、将来のために受験勉強に励む、希望にあふれた高校2年生だった。将来の夢は、大学卒業後に、公務員になる事。誠二が小学生の頃より続く、不景気な、今の世の中では、その選択が、一番安定した幸せな人生を送れるように思えた。そう考えて誠二は、小学生の頃より、ひたすら塾に通い、進学率ナンバーワンの名門私立清林館高校に進学したのだった。しかし、学校で、全体朝礼が行われたあの日、誰も予想しなかった事が起こった。突如、凶悪な宇宙人がUFOで校庭に出現し、力づくで約1000人いた生徒と教員を、一人残らず、宇宙の彼方へ連れ去ったのだ。彼らの目的は、人間を牧場でブロイラーのように飼い、食用のために繁殖させることだった。

(お腹が空いたな・・・)

全裸で鎖に繋がれた誠二は、のそのそと、前に這い進んだ。誠二の入れられている厩舎の鉄格子の前には、溝があり、そこをドロドロとした液体が流れている。栄養満点だが、味も素っ気もない、その不気味な液体が家畜となった誠二の餌だった。誠二は厩舎の他の檻からも、かつて、清林館高校で共に学んだ生徒達が、無数に首を突き出して、餌を貪っている光景を目にした。

(生き残っているのは女生徒ばかりだな。男はあらかた食われちまったか・・・)

誠二は物悲しく考えた。男子生徒は、繁殖のための種人間を残して、ほとんどが、太らされた挙句に屠殺されたようだ。女生徒は、繁殖のために子供を生まされ続けている。誠二は運よく種人間に抜擢されたため、殺されずに済んでいた。

(俺が生き残っているのは、早漏で、しかも、オナニー好きだったからだ。受験勉強をしていると、どうにもチンポがムズムズして、一日、3回ぐらいオナニーすることも、ざらだったからな。考えてみれば、種人間には、もってこいだよな)

まずい餌を腹いっぱい食べ、部屋の真ん中にある穴に排泄を終えた誠二は、牧童アンドロイドによって手足の鎖を外され、首輪をつけられて、交配相手の女生徒のいる厩舎へと連れていかれた。今日の一人目の交配相手は、かつて、同じクラスの委員長だった大沢涼香だった。美人で性格も優しかった涼香は、成績優秀で、マドンナ的な存在の美少女だった。

「大沢さん、元気かい?」

「ええ、元気よ。この前生んだ、赤ちゃん、ひょっとして小林君の子供だったかもしれないわ」

「・・・・」

誠二は答えにつまった。誠二は種付けをしただけで、涼香が妊娠していた事実も知されておらず、生まれた赤ちゃんを見たこともなかった。何しろ誠二は種人間として、500人余りの女生徒と一日、10人づつ、毎日、順番にセックスしなければならないのだ。

「あたし、ここに来てから赤ちゃんを生んだのは、これで3人目よ。時間の感覚が麻痺しちゃって、よく判らないけど、あの全体朝礼の日から、もう、2、3年は、経ったみたい」

「2、3年か・・・お父さんやお母さんや弟、それに中学生時代の友達は、今も普通に暮らしているのかな」

誠二は、今、自分がいる場所が、地球から、遠く離れた牧畜惑星である事すら判っていなかった。

「喋ッテイナイデ早ク、交配ヲシロ、家畜327号!」

牧童アンドロイドがせきたてた。誠二は、一日に最低、10人の女生徒と、種付けのためのセックスをしなくてはならないのだ。

「大沢さん。仰向けになって」

「うん」

誠二は、素直に仰向けになって足を開いた涼香に、のしかかっていった。この絶望的な状況で、牧童アンドロイドに反抗してもしょうがない。彼らは無力な、ただの家畜なのだ。誠二が指先を伸ばすと、涼香のオマンコはすでにヌルヌルだった。

「来て、小林君・・・あたし、今まで、黙ってたけど、小林君のことが、ずっと好きだったの。だから、小林君の子供かもしれない、赤ちゃんを産んだ時、とってもうれしかった・・・」

「えっ・・」

勃起したチンポを挿入した誠二は、突然の告白に戸惑った。頭に血が上って、どう答えていいか判らず、とっさに、聞こえなかったフリをして、そのまま腰を振り続けた。早漏である誠二は3分で射精した。

「終ワッタノカ、家畜327号」

「ああ・・」

「サスガハ、成績優秀ノ、種人間ダ。序々ニ、交配ニカケル時間ガ短縮シテキテイル。今日ハ体調ガ、イイヨウダカラ、20人ノ牝ト交配出来ルヨウニガンバッテクレ」

「ああ、わかったよ、やってみるよ」

誠二はぶっきらぼうに答えた。ここでは、早漏と、精液の分泌量の多さが、人間の価値を決める偏差値となるのだ。

「小林君、またきてね・・・」

3分では物足りず、名残惜しそうな涼香を残して、誠二は、その厩舎を出た。いつどの牝と交配するかに関しては、誠二にはなんの権限もない。全ての交配スケジュールは、もっとも効率良く人間を繁殖させるよう、牧場の管理コンピューターが決定するのだ。誠二は首輪に、繋がれた鎖を牧童アンドロイドに引かれて、次の交配相手のいる厩舎へと向かった。

 

「最近、調子はどうだい?ジ・モル・モン」

地球から1万光年離れた、牧畜惑星ア・ムーの牧場経営者、ジ・モル・モンの元を、かつての同業者であるセ・ラ・フィムが訪れた。二人とも銀河系の支配種族であるグレイの出身である。

「調子は良いよ。実は、最近、密かに新たな人間肉のブランドを立ち上げようと思ってね」

「ほう、新ブランドか・・・」

セ・ラ・フィムは頭部についたダークブルーの巨大な目を輝かせた。爬虫類型生物であるグレイにとって、哺乳類型生物である人間の肉は最高級のグルメ食材なのだ。

「『セイリンカン』っていうブランド名で売り出そうと思っている。捕獲された野生の地球人をベースにして、今、うちの牧場で繁殖させている。生まれた子供には、成長促進剤は一切つかわず、出荷出来るほど頭数がそろったら、自然のままの食材としてアピールするつもりだ。」

「えっ、成長促進剤は使わずに?なんだか、時間がかかりそうだな・・・」

「あわてる必要はないさ。なんたって、俺達グレイは、数千年の寿命があるんだからな。慌てると、あんたみたいな事になっても困る」

セ・ラ・フィムは、ジ・モル・モンに昔の事を掘り返されて、少しムッとしたようだった。

「ああ、あの事か。あれは、もう思い出したくもない!」

約2000年前、食肉業者だったセ・ラ・フィムは地球から、数千人の古代ギリシャ人を誘拐し、当時、彼の所有であった牧畜惑星で、爆発的に繁殖させたのだ。成長促進剤を多用したために、家畜は短期間で数十億人に繁殖し、食肉市場は供給過多で飽和状態になった。その結果、最終的に人間肉の価格は下落した。そして、とうとう500年前、彼の経営する精肉会社は、生産コストを賄いきれずに破産したのだった。しかも、忌々しい事に、その後、撤収費用も捻出出来ずに放置された牧場惑星で、家畜であった人間が自然繁殖し、グレイが残したアンドロイドや、自動催眠教育装置の助けを借りて、科学技術まで身につけてしまった。そして今から、約200年前、宇宙航行さえ行うようになった家畜人間がネオガイア星人を名乗って独立宣言を行うに至って、セ・ラ・フィムはグレイの政財界から激烈な非難を浴び、ネオガイア星人の母星となった牧畜惑星の、法律的な所有権すら失う破目になった。現在、セ・ラ・フィムは完全に食肉業からは、手を引いている。

「肉の供給管理は、慎重にやらんとな。どうだね、一つ『セイリンカン』を試食してみるかね」

「ああ、味あわせてもらおう。ジ・モル・モン、あんたのプロデュースする、未来のトップブランド肉の味をね」

ジ・モル・モンは冷凍保存されていた、清林舘高校の男子生徒の肉の一部を解凍して、食卓に運ぶように調理アンドロイドに命じた。ついでに清林舘高校の女生徒から搾り取った母乳と愛液のスープも添えさせた。

「うん、確かにうまい!これは、いけるな!」

「だろう、セ・ラ・フィム!」

ジ・モル・モンは得意気に、3本の指で、セイリンカンの肉を引き千切り、貪った。

 

 小林誠二の今日の13人目の交配相手は、元担任の国語教師、鈴木景子先生だった。景子先生の年齢は、あの全体朝礼の日の時点で、27歳だったはずである。

「小林君、お願い、あたしを妊娠させて!」

景子先生は、すがりつくような目で誠二を見た。

「あたし、ここへ来て、まだ一人も子供を生んでいないのよ。他の女生徒と比べて、歳もくっているし、このままだと近々、子供を生めない女として、食肉用に屠殺されてしまいそうな気がするの!」

誠二は疲れ切っていた。今日は朝から連続で12人の女生徒とセックスをし、もはや射精をしても、うすい透明の液体しか出なくなっていた。

「・・ああ、先生、なんとか頑張ってみるよ」

誠二は、意識が朦朧とし、フラフラとよろめくように歩み寄ると、景子先生の裸身を抱きしめた。疲労のあまり吐きそうだった。

「小林君!もっと真剣にやってよ。そんなんじゃ妊娠しないわ。ほら、先生のオマンコをもっとよく見て!」

景子先生は、必死に自分の手でオマンコを押し広げ、指で刺激して愛液を溢れさせた。

「ほら、こんなに濡れているのよ!」

誠二のチンポはグンニャリとしたままだった。景子先生は泣き出しそうになった。

「お願い、おチンチンを立たせて!」

景子先生は、自ら、誠二のチンポを口に含むと、舌で、懸命にしゃぶり始めた。なんとか妊娠しないと、明日の命の保障もないのだ。誠二はしゃぶられながら、ウトウトと眠りそうになった。

「小林君!寝ないでっ」

「あ、ああ、うーん・・・」

20分後ようやく、誠二のチンポが勃起した。景子先生は、せっかく勃起したチンポが萎える前にと、あわてて口を離し、誠二を仰向けに寝かせて、腰の上に馬乗りになった。

「入れるわよ。小林君」

景子先生は腰を沈め、激しく振り立てた。しかし、オマンコの中で再び、誠二のチンポはグンニャリと縮んでしまった。見ると、誠二はスヤスヤと眠っていた。

「もう!寝ないでって、言ってるでしょ!」

景子先生は、激怒した。両手で誠二の両肩を鷲掴みにすると10本の指で爪を立て、かきむしった。

「うっ、痛えっ!」

誠二は目を覚ました。とたんに景子先生の顔が目の前に迫り、強引に唇を重ねてきた。

「むぐっ・・・」

口に中に無理矢理舌を入れられ、完全に目を覚ます。

(く、苦しい、息が出来ない・・・)

元々、景子先生は、男子生徒の憧れの的であった、清林館高校きっての美人教師である。それが痴女のように、自ら激しく、誠二の肉体を求めているのだ。誠二はなんとか再び勃起し、長時間、悪戦苦闘したが、とうとう射精には至らなかった。

「時間切レダ」

牧童アンドロイドが告げた。

「少し休ませてくれ」

「駄目ダ。今日中ニ後7人ト交配シナクテハナラナイ」

「無理だって」

「家畜ニ拒否スル事ハ出来ナイ」

牧童アンドロイドは嫌がる誠二を無理矢理立たせ、次の厩舎へ引っ張って行こうとした。誠二は、歯を食い縛ってヨロヨロと立ち上がると、歩き出した。一方、射精させる事が出来ず、今日も精液を体内に吸収することが出来なかった景子先生はシクシクと泣いていた。

「あたし、このままじゃ、殺されちゃうわ・・・」

単なる食用の家畜に落とされ、人としてのプライドも尊厳も、一片のカケラも残さず奪われた人間達の、地獄の日々は果てしなく続く。彼らが、食肉用として屠殺される日まで・・・

 

第104話、血脈

 

 16世紀後半、伊賀の国。伊賀忍者の頭領、百地三太夫の屋敷では、忍者の頭だった者たちを集めた密議が行われていた。

「尾張の織田家が急激に勢力を拡大している。桶狭間で今川義元を破った後、美濃の斉藤家を下し、都に兵を進めおった。すでに、足利将軍家は織田信長の傀儡に成り下がっておる!」

百地三太夫は、押し殺した声で憎々しげ語った。暗い部屋で、囲炉裏を取り囲んだ、伊賀十一人衆は一様に険しい顔つきをしている。

「あの信長と言う男、只者ではない。他国を攻め落とす速度が速すぎる。他の馬鹿な大名どものように我らの意のままに操る事もかなわぬ。」

「あやつに権力を握らせては、何をしでかすか判りませぬな」

十一人衆の一人、石川五右衛門が言った。

「古来、大和の国に都があった古より、この国を影から操ってきたのは、我らが忍びの一族だ。天皇家すら我らの存在なしでは成り立たぬ。ましてや侍の頭領である源氏や足利の将軍など、全ての時代を通して、我らの暗殺の恐怖におびえ意のままに動く操り人形にすぎなかった」

百地三太夫は熱く語った。

「侍どもの戦の勝敗も、我ら忍びの者が、影より決める。歴史上に名だたる合戦は、我らが勝たせたい、と考えた側が勝って来たのだ。つまり、日本の真の支配者は我々、『忍び』に他ならぬのだ!」

一同はうなづいた。

「しかるに、あの信長と言う男。我らの術中には全くはまらぬ。我の申し出をことごとくはねつけ、潜伏させた者の報告によると、やつの野望は、日本を支配し、天皇家をも廃することであるという。しかもその後、朝鮮や明、天竺への侵攻も考えているという」

「なんと、天皇家を廃絶!・・・天竺、明への侵攻など、ただの妄想に過ぎぬのではありませぬか!」

十一人衆の一人、上月佐助こと通称、猿飛佐助が叫んだ。

「いや、やつは、本気らしい。しかも許せんのは、木下藤吉郎めだ。やつの家系はもともと我ら伊賀衆が、尾張の国に潜伏させておった草の家系だ。であるのに、やつは出世欲に取り付かれ、我らを裏切り、織田信長の家臣となっておる」

「抹殺せねばなりませんな。」

石川五右衛門が静かに言った。

「我ら伊賀衆の総力を挙げて、信長の野望を阻止するのだ!天下統一をもくろむ、信長を抹殺し、現在の群雄割拠の状態を今後も維持するのだ。戦が無限に続くその状態が、我ら忍びの者にはもっとも都合がよい。よしんばどこかの大名が天下を統一するにしても、それは、我らの意のままに動く人物でなくてはならぬ」

「すでに、織田信長と木下藤吉郎のもとへは、それがしの配下の手だれを、送りこんでおります。近日中には朗報をお届け出来るかと・・・」

石川五右衛門が請合った。伊賀十一人衆は織田信長を、歴史から抹殺できることを信じて疑わなかった。

 

 

紀元1572年、近江の国、横山城に羽柴秀吉と改名した木下藤吉郎と久石千鶴はいた。サムライに取り立てられた秀吉は、出世を重ね、現在では織田四天王の一人となって、この城を任されている。千鶴はその秀吉の草履取りだった。

「俺もとうとう、城持ち大名だぎゃあ」

秀吉(35歳)は上機嫌だった。この城は最前線にあり、いつ敵に攻められて全滅してもおかしくないのだが、出世欲にとりつかれた秀吉にはそんなことなど、どうでもいいらしい。

「千鶴、せんずりの手伝いをするだがや」

「はい、秀吉様」

千鶴は、胡坐をかいた秀吉の着物の前をはだけ、短小なチンポをさすり始めた。秀吉は若い頃からオナニーが大好きで、女と実際にセックスするよりも、オナニーのほうが好きらしい。千鶴が懸命に右手で秀吉のチンポをさすっていると、そこへ秀吉の奥方である寧々(ねね)がやって来た。

「お前さん、また、せんずりをしているのですか。いったい一日に何回やれば気が済むのです。そんなことだから、精が薄くなって、あたし達の間には、いつまで経っても子供ができないんですよ!」

寧々は、機嫌が悪かった。

「そんなことないだで。子供は天からの授かりものだで、そのうち出来るがや・・・」

秀吉は寧々に怒られて、情けない声で言った。

「お前さん、その言葉はもう聴き厭きました。一体、今年でいくつになると思っているんですか!」

「35だで・・・まだまだ若いだで・・・こうやって日に、5回はせんずりこけるだで・・・」

「もう知りませんっ!」

寧々はそう言い捨てると、奥の部屋へと去っていった。しばらくして秀吉は、千鶴の手の中に射精した。

「せんずりの何が悪いんじゃ・・・」

秀吉が、情けない声でつぶやいた時、突然、天井の板が外れて、黒装束の忍者が飛び降りてきた。

「木下藤吉郎、覚悟!」

「うわっ、な、なんだ!」

忍者が秀吉に手裏剣を投げつけた。千鶴がとっさに懐に入れていた草履でなぎ払う。

「み、皆の者!曲者じゃ、出合え!出合え!」

秀吉が叫ぶと、大勢の武士達が駆けつけてきた。忍者は、刀を構えた武士達に包囲されて後ずさる。追い詰められた時、突然、忍者は懐から煙玉を取り出し、畳に投げつけた。

「ごほっ、ごほっ、な、なんじゃこりゃ!」

もうもうと立ち込める煙で、辺りは全く何も見えなくなった。

「秀吉様、危ないっ!」

煙を隠れ蓑に、小刀を構えて突進してきた忍者の前に千鶴が立ちふさがった。1500年にも及ぶ人生で、千鶴の体術と五感は、超人的なまでに高められている。たとえ視界がさえぎられていても、わずかな気配と音で相手の動きが読めるのだ。手練の忍者であるはずのその男は、あっさりと千鶴の正拳突きと蹴りで、ノックアウトされ、その場に取り押さえられた。

「どこの大名に雇われたか、白状するがや!」

煙が晴れた部屋で、秀吉が詰め寄った。武士達の手で、黒い覆面を剥ぎ取られたその忍者は、まだ20歳にもならない少年だった。

「裏切り者の藤吉郎!俺はどこにも雇われはせぬ。伊賀の頭領、百地三太夫様が、裏切り者を抹殺せよ、との仰せじゃ!」

少年は果敢に叫んだ。

「百地・・・それは、筋違いだで。確かにわしの親父は、尾張の中村に住み着いた、忍びの草だったようだども、わしは、違うだで。どこで何をし、誰に仕えようとわしの自由だがや」

「草の子は、草じゃ!」

「子供に道理を問いても判らんだか。お前、名は何と言うんじゃ?ええ?」

秀吉は、諭すように尋ねた。少年忍者は胸を張った。

「俺の名か?俺の名を聞きたいのか?俺の名は、山川桃之助。聞いて驚け!俺のご先祖様は、あの有名な桃太郎だぞ!」

「桃太郎?あの鬼退治をしたと言う、昔話の桃太郎のことだか?」

「そうじゃ!俺は正真正銘の桃太郎の子孫だ!」

秀吉は胡散くさそうに桃之助と名乗る少年忍者を眺めた。傍らで、そのやり取りを聞いていた千鶴は、突然あることに気付いた。

(まさか!桃太郎の子孫・・・と言う事は。)

千鶴は、はるか昔の出来事を思い出した。1000年近く前の出来事だ。山賊から逃れた千鶴は半死半生で、親切なお爺さんとお婆さんに助けられ、山賊に強姦されて宿した一人の男の子を産み落とした。その子供に、確か、桃太郎と言う名前を付けた筈だった。

(この少年は、あたしの血を引いている。)

千鶴は愕然として、その少年の顔をまじまじと見詰めた。

 

 その頃、美濃の国、岐阜城では織田信長(39歳)が一人の美少女を抱いていた。少女は最近、信長が京の都で拾った愛妾の一人で、まだ16歳の初々しい娘だった。

「そちの名は、何だったかな?」

挿入して腰を振りながら信長は尋ねた。無数の愛妾を持つ信長は一人一人の名前などいちいち覚えていない。

「桃江でございます・・・山川桃江と申します」

「そうか、そうだった。桃江ちゃんだったな。その名のとおり白桃のような尻だぞ。」

「もう、お館様ったら・・・」

年の割りには、妙に艶めかしい女だ、と信長は思った。ふと、以前出会った千鶴と言う女の事を思い出す。そう言えば、どこか面差しが似ているような気がしなくともない。桃江は、戦火に焼け出された公家の娘だと言っていたような気がするが、その肉体を味わいながら、そのしなやかな筋肉の締まり具合は、到底、公家の娘だとは思えなかった。

(やけに鍛えられた体つきをしておる。こやつ、公家の娘などではないな・・・)

「あ、ああ、お館様。気持ちいい!」

喘ぎながら桃江は考えていた。

(このまま、忍法マン締めの術で、信長の逸物を食い千切ってやろうかしら)

桃江は伊賀の頭領、百地三太夫が差し向けた刺客だった。秀吉暗殺を試みた山川桃之助の実の妹である。もちろん桃江は、厳しい訓練を受けた手練のくノ一だった。桃江が、忍法マン締めの術を使おうとした瞬間、信長が射精した。

(しまった、一瞬遅かった。・・・駄目だわ。これじゃあ、マン締めの術が使えない)

信長は萎縮したチンポを桃江の幼い割れ目から引き抜いた。

「わしは、忍者が嫌いでのう」

一息つくと、唐突に信長が語り始めた。

「影に隠れて、コソコソと人を暗殺したり、おのれは表には出ず、権力者を操ろうなどとは、虫が良すぎる。そう思わんか、桃江ちゃん」

桃江はギクリとした。正体を見破られたのか。

「わしは、いずれ、忍者を一人残らず皆殺しにするつもりだ。やつらを根絶やしにせぬ限りは、わしもいつ、寝首をかかれるやも知れん。夜もオチオチ眠れず、こうやって気楽に女を抱く事も出来ぬわ!」

そう言うと、いきなり信長は、桃江の白い腹に拳を叩き込んだ。あまりの不意打ちに桃江は忍術を使う事すら出来ずに気絶した。

 

 桃江が目覚めた時、自分の体が全裸にされ、海老反りの姿勢で宙吊りにされていることに気付いた。薄暗い拷問部屋のような部屋である。

(しくじったわ。あの信長と言う男、あたしが、くの一であることを見破っていた・・・)

桃江は体を揺さぶってみた。かなり強固に荒縄で肉体を拘束されているようだった。手足の先が紫色になり、感覚が麻痺して鈍くなっている。

(こんなもの、あたしの忍法、縄抜けの術で・・・)

桃江は肩の関節を自ら外し、縄から抜け出そうとしたが、なかなか縄が外れなかった。

(くそっ、なぜだ!)

桃江が焦ってもがいていると、一人のサムライが部屋に入ってきた。

「無駄だ、無駄だ。その縄は忍び封じの特殊な結び方をしてある。もがけばもがくほど、お前の柔肌に縄が食い込んで、苦しむ事になるぞ」

「くっ、こんなもの!」

そのサムライは、異様なほど長い頭に、髪の毛が一本も生えていないスキンヘッドだった。

「俺の名は明智光秀だ。信長様のもとで情報収集の統括をやっておる。忍者ではないが、まあ、言わば、お前達の同業者というわけだな」

「ペッ!」

桃江は、明智光秀(44歳)の顔に唾を吐きかけた。べっとりと顔についた唾を手でぬぐった光秀の体は、怒りでブルブルと震え始めた。

「俺は、侮辱されるのが大嫌いでね。同じ、織田四天王の一人でも、俺は、あの百姓出の猿と違って、源氏の流れをくむ名門、明智一族の末裔なのだ。」

「ハッ、それが何だって言うの!」

「口の減らない小娘め、こってりと痛めつけてやる」

光秀は、棍棒で桃江の無防備な裸身を容赦なく殴り始めた。たちまち桃江の白い肌は青痣だらけになったが、鍛え抜かれた、くの一である桃江は、呻き声ひとつ漏らさなかった。

「しぶとい女だ。ならば、お前の女陰を、棒の先でえぐりとってやる」

光秀は棍棒の先をズブリと桃江のオマンコに突き立て、渾身の力で突き上げるように押し込んだ。

「うぐっ・・・忍法マン締めの術!」

桃江は突き上げてくる棍棒をマンコの筋肉で締め上げた。幼い頃より、厳しい訓練で鍛え抜かれた括約筋は棍棒の先を見事にへし折った。

「こ、小癪な!」

怒り狂った光秀は、折れた棒を投げ捨て、部下のサムライに水の一杯に入った樽を用意させた。

「今度は、水責めにしてやる。どれぐらい息が持つかな・・・」

桃江は海老反りの姿勢で縛られたまま、逆さ吊りにされ、頭から樽の中に沈められた。長い時間が過ぎたが、桃江は平然としている。伊賀の里では、長時間水に潜る訓練も受けているのだ。

(忍法水とんの術!)

樽の水面上に剥き出しになって出ている桃江の股間から、オシッコが勢い良く噴出し、覗き込んでいた光秀の顔面を直撃した。

「うわっ、き、汚ねえ!何をするか小娘。俺は怒った。もう許さんぞ!」

光秀は桃江が沈められている樽を蹴飛ばして横倒しにすると、真っ赤に熱した焼きごてを用意させた。

「どこに当てて欲しい?顔か、股ぐらか?それとも、この可愛らしい乳に当ててやろうか?」

桃江は毅然とした態度を崩さずに、一言も喋らず、燃えるような瞳で光秀を睨み付けた。

「まずは背中に当ててやろう」

光秀が焼きごてを桃江の背中に押し付けた。

「うぐっ・・・」

ブスブスとくすぶるような煙が上がり、肉の焼ける匂いが辺りに充満した。

「強情張れるのも今のうちだぞ。痛ければ、泣きわめいて許しを請うがいい。さあ、次はどこがいいかな」

光秀が鼻歌を歌いながら、焼きごてを桃江の尻に押し当てた時、突然、拷問部屋に信長が現れた。

「ハゲ、大変じゃ。甲斐の武田信玄が動き始めた」

「なんと、信玄が?」

それは、予測されていた事だった。急成長する織田家に危機感をつのらせた各地の有力な大名達が結束して、織田包囲網を敷こうとしているのだ。中でも武田信玄は日本最強の騎馬軍団を配下に持つ、恐るべき勢力だった。

「ハゲ、ただちに、信玄を迎え撃つ用意をせい。各地の織田軍団に檄を飛ばすのじゃ。なんとしても信玄の西上を止めねばならん!」

(ハゲって言うなよ!)

プライドの高い光秀は、年下の信長に、そう呼ばれる度にハラワタが煮えくり返るほどの怒りを感じる。しかし、主君の前で、それを顔に出す事は出来ない。

「はっ、準備にかかります」

かしこまって返事をした光秀は、拷問途中の桃江を、宙吊りにしたまま放り出し、あわてて拷問部屋を出て行った。

 

 1572年10月、織田信長の本拠地、岐阜城で、主だった家臣を集めて軍儀が開かれた。信長包囲網を形成する戦国大名達が、好機到来とばかりに、四方八方から織田家に対して総攻撃を仕掛けてきたのだ。

「猿の軍団は、浅井、朝倉連合軍に対する押さえとして今は動かせぬ。西上してくる武田信玄には、三河の徳川家康を盾として使うしかあるまいな」

信長は冷淡に言った。勝つためには味方を平気で捨て駒にする男だ。

「滝川一益、お前が3千の兵を率いて徳川家康の援軍に迎え」

「は・・・」

織田四天王の一人である滝川一益は、青くなった。情報によると武田信玄の軍は4万を超える大軍だという。わずか3千の兵で何が出来るというのか。

「よいか一益。徳川家康と二人で城にこもって信玄の軍をやり過ごすのだ。都への上洛を目指す信玄は、戦わずに先を急ぐに違いない。やつが、三河を通り過ぎ、尾張の国に入ったところで、織田の主力部隊と徳川の軍で信玄を挟み撃ちにする」

「はっ、承知いたしました」

滝川一益は不安を表に表す事なく答えた。部下に厳しい信長に、臆していることを悟られては、どんな目に合わされるか判らない。

「ハゲ、それとは別に、もうひとつ手を打つ。いわば保険だ」

「と、申されますと?」

居並ぶ重臣達の前で、ハゲ、と呼ばれてムッとしながらも、明智光秀は尋ねた。

「今川義元を殺った時と同じ手を、もう一度使う。本格的な、総力戦になる前に信玄を暗殺するのだ。だが、今回は、あのボンクラの義元と違って、相手は武田信玄だ。軍勢による奇襲など通用しまい。奴の陣に手練の刺客を送り、完璧に暗殺しなくてはならない。この任務、お前に任せるぞ」

「はっ、必ずや信玄の命を、この世から消し去って御覧にいれまする」

光秀は、誰を送り込もうかと、頭をひねった。信玄は出家の身でありながら、無類の女好きと聞いている。美貌のくノ一が適任だが、信長の忍者嫌いのため織田家には、忍者がいない。

(どうしたものかな・・・)

ふと光秀は、この前捕らえた桃江という少女忍者の事を思い出した。

 

 桃江が岐阜城の地下牢に捕らえられてから10日あまりが過ぎた。武田軍を迎え撃つため、出陣の準備で忙しいのか、最初の拷問の日以来、桃江は牢に全裸で放置されたままである。何度か、様々な忍法を使って脱出を試みたが、結局果たせなかった。焼きごてを当てられた、背中とお尻が、酷い水ぶくれと火傷になっており、痛くてしょうがない。

「おい、くノ一、生きているか?」

突然、牢の格子の外に明智光秀が現れた。

「お前を、懐かしい人間と合わせてやろう」

牢番の武士に引っ立てられて、連れてこられたのは、兄の山川桃之助だった。全裸でぐるぐる巻きに縛られている。

「兄ちゃん!」

「桃江!お前も捕まったのか?」

兄の他に、もう一人、別の女がいた。城奉公の女中のような格好をしているが、拘束されているわけではなさそうだった。

「こちらは、羽柴秀吉殿の草履取りをしている、久石千鶴殿だ。素性の知れぬ女だが、武術の心得もあり、並のサムライよりも腕が立つ、というもっぱらの評判だ。」

久石千鶴は、捕らえられて恥ずかしい姿を晒している、自分の子孫二人を感慨深げに眺めた。なんとかして助け出してやりたいが、今はどうする事も出来ない。

「実はな。お前達をわざわざ引き合わせたのは他でもない。千鶴殿、お前達兄妹の3人で、武田軍の陣中に忍び込み、総大将の信玄を暗殺して貰いたい」

明智光秀が言った。桃之助と桃江が反抗的な態度を見せる。

「嫌なこった!なぜ、そんなことを俺達がせねばならぬ!」

「そうよ、大人しく、はいそうですかって、従うとでも、思ってるの?」

明智光秀は肩をすくめ、部下の武士達に合図をした。

「そう言うと思ってね。こんな物を用意した。飲め、口を開けるんだ!」

壷から注いで、御椀に入れられた黄色の液体を、桃之助と桃江の口をこじ開け、無理矢理、飲み込ませた。

「げっ!おえぇぇっ!」

咽喉に流し込まれた、それは、妙に苦く、塩辛い液体だった。

「どうだ、うまいか。明智家秘伝の毒薬だ。すぐには体に影響は出ないが、放っておくと半年後には苦しみぬいて死ぬ事になる。もし、首尾よく信玄の命を奪う事に成功して戻ってくれば、解毒剤を飲ませてやる。」

「なんだと、てめえ!」

桃之助は暴れたが、どうする事もできなかった。桃江も一旦飲み込んだ液体を吐き戻そうとしたが、牢番に口を手で押さえられ、再び飲み込まされた。千鶴は、秀吉の部下と言う立場だったため、毒薬は飲まされなかったが、これはマズイ事態になったと思った。

(このまま、むざむざ、あたしの子孫を死なせる訳にはいかないわ。なんとしても、解毒剤を手に入れるために、信玄暗殺を成功させるしかない・・・あたしの血脈を現代まで繋げなくては!500年後の21世紀には、あたしの子孫が力を結集して、宇宙人に反乱を起こすのよ!)

一方、明智光秀はニヤニヤと笑っていた。

(馬鹿なやつらだ。まんまと引っかかりおった。この世に、そんな都合のいい、秘伝の毒薬などあるはずがない。お前達が飲み込んだのは、ただの俺の小便だよ。くっくっくっ・・・馬鹿共め)

こうして、明智光秀の陰謀に落とし入れられた久石千鶴と、山川桃之助、桃江の兄妹は3人連れ立って信玄暗殺の旅に出る事になった。

 

 尾張、三河の国境まで、全裸で護送された桃江と桃之助は、そこで変装用の衣装と武器を渡された。千鶴と桃江は遊女、桃之助は、薬売りの行商に変装することになる。武器は、もともと桃之助が所持していた忍者用の手裏剣やマキビシ、鎖がまなどが返却された。3人が、どうやって信玄を暗殺したものか、と考えながら東海道を東へと向かっていると、山道で一人の忍者が接触してきた。

「それがしは、徳川家に仕える、伊賀の上忍、服部半蔵と申すものでござる。」

虚無僧姿の忍者が言った。同じ伊賀忍者である山川兄妹は、服部半蔵のことはよく知っている。徳川家康は織田信長と同盟は結んでいるが、忍者嫌いではなく、伊賀十一人衆の方も、比較的、性格が温厚な家康を、信長ほどの危険人物とは見ていない。日本の秩序を破壊しようとしている信長を排除するために、後々、家康を利用しよう、とさえ考えているフシもある。

「お久ぶりです。半蔵殿」

桃之助がお辞儀をした。桃之助と桃江は、伊賀の里では一番階級の低い下忍である。

「事情は聞いている。甲斐を出発した武田軍は、信濃、駿河と自国領を進軍し、各地の武田軍を集結しつつ、徳川領との国境まで迫っておる」

服部半蔵は、部下の忍者達に調べさせた情報を3人に伝えた。

「出来れば、徳川家の本拠地、浜松城を攻撃する前に、信玄暗殺を成功させてくれ」

「うーん、そうしたいのは、ヤマヤマなんですけど。なにせ、相手は4万の大軍に、守られているのでしょう?」

桃江が困り果てたように言った。

「やっぱり、あたしと千鶴さんが遊女に化けて陣中に潜り込むしかないかな」

「そうだな」

3人と服部半蔵は、驚くべき駿足で三河の国を横断し、武田軍に接近した。忍者ではない千鶴は、フラフラになりながら、付いて行くのがやっとだった。

「では、それがしは浜松城へ戻るぞ。健闘を祈る」

服部半蔵と別れた3人は、まず、千鶴と桃江が遊女として武田軍へと潜り込む事にした。桃之助は、街道から少し離れた山林に身を潜め、武田軍に付かず離れず様子を伺がった。そうして、やがて10日が過ぎたが、桃江と千鶴からはなんの音沙汰もなかった。仕方なく桃之助は、薬売りとして自ら陣中に忍び込むことにした。

「刀傷に良く効く、薬はどうですか」

「おう、くれ、いくらだ?もっと安くならんのか」

「腹痛の薬はないか。川の水を飲んだら下痢になっちまった」

「俺は、野宿したら風邪を引いたぞ。風邪薬をくれ」

戦場で、薬屋は大繁盛だった。やがて数人の足軽と同時に、複数プレイをしている桃江と千鶴を発見した。

「何やってんだ、お前ら」

セックスが終わって、足軽達から、たっぷりと銭を受け取った桃江と千鶴を、桃之助はたしなめた。

「なにって、春をひさいでいるのよ。だってあたし達、遊女だもん」

「10日で、こんなに稼げたわ」

千鶴は懐から、銭のたっぷりと入った袋を取り出して桃之助に見せびらかせた。

「馬鹿!そんなことをしに来たんじゃないだろう!信玄はどうした?」

「・・・それが、本陣は、警戒が厳しくて、なかなか近づけないのよ。それに信玄の周りには、巫女姿のくノ一が、大勢護衛についていて、昼も夜も暗殺者に備えているわ」

女好きの武田信玄は、領内の巫女を忍者として訓練していることで有名である。

「もういい!俺が、今晩、信玄を殺る。見ていろ」

桃之助は、武田の本陣を一人で襲う決意をした。

 

「信玄様、本陣に忍びこもうとした。忍者を捕らえました」

天幕の中で、巫女姿の少女を犯している武田信玄(52歳)に、同じく巫女姿のくノ一、望月千代女(36歳)が、報告した。千代女は、くノ一で構成される武田忍者の頭目である。

「フッ、信長め。わしを暗殺しようなどと小癪な手を使うずら。捕らえたその忍者はこってりと拷問し、嬲り殺しにしてやるずら」

武田信玄は甲州訛りが激しい。

「はい、仰せの通りに。どうやら曲者は、薬売りに化けて陣中に忍び込んだ、山川桃之助という伊賀忍者のようです。」

「伊賀ものか・・・伊賀も割れておるようだの。頭目の百地三太夫は、わしに信長打倒の共同作戦を申し入れてきておると言うのにのう」

信玄は、常に自分の身の回りに、性欲処理兼、護衛係のくノ一を多数はべらせている。彼女達は全て、戦で親を失くした戦災孤児で、幼い頃より信玄に引き取られ、千代女に性技や忍術を叩き込まれ、武田家のために諜報活動を行っているのだ。千代女は捕らえた忍者を拷問するために信玄の元を下がった。

 

 1572年、12月22日、浜松城の北にある三方が原で、徳川軍8千と武田軍4万が激突した。三河へ侵攻しようとする武田軍を、徳川家康はどうしても、信長の指示通り、素通りさせる事ができなかったのだ。武田軍が三河へ侵攻すれば、家康は本国をみすみす戦わずに明け渡した事になる。しかし、勝敗は一瞬で片付いた。家康ごときが、数の上でも数倍の、日本最強の騎馬軍団に勝てるはずもなかったのだ。家康は、服部半蔵の忍者部隊に守られつつ、命からがら落ち延びた。

「どうしよう、千鶴さん」

戦勝に沸く、武田軍の陣中で、桃江は千鶴に相談を持ちかけた。売春でお金はどんどん溜まっていくが、本陣襲撃に失敗した兄、桃之助は、捕らえられ、連日、すさまじい拷問を受けているという風の噂を聞いている。しかも武田信玄の軍勢は、都を目指してどんどん先へと進撃していくのだ。

「そうよ、信玄様の前で、色仕掛けの芸を披露したい、というのよ。女好きの信玄は、絶対に乗ってくると思うわ」

千鶴が提案した。今川義元もその手に引っ掛かったのだ。

「でもそれにはまず、武田の陣中でもっと、あたし達の評判を上げなくてはいけないわ。そうすれば自然に、向こうから、お呼びがかかるかも・・・」

次の日から千鶴と桃江は売春稼業の傍ら、兵士たちの前で大道芸を始めた。

「さあ、寄ってらっしゃい。見てらっしゃい。まずは、水芸だよ」

桃江は着物の裾をたくし上げ、白桃のような下半身を剥き出しにすると、勢い良くオシッコを飛ばした。

(忍法、水遁の術!)

オシッコは放物線を描き、約5メートル離れた所に直立している千鶴の顔面を直撃した。千鶴は、それをあんぐりと開いた口でうけ、一滴もこぼさずに飲み干していく。

「すげえ!こんなすげえ芸は、おら、初めて見たずら」

「もっと、やってくりょー」

観客の手応えに、桃江はニヤリと笑った。

「お次は、竹馬だよ!」

桃江は用意していた竹の棒を地面にまっすぐに突き立てると、その上にヒョイと飛び乗った。

(忍法、マン締めの術!)

竹の先をオマンコに挿入し、締め上げる。そして空中で足を開き、オマンコの力だけで全体重を支え、一本足の竹馬のように反動をつけて、ピョンピョンと飛び跳ねた。

「すげえ!なんてマンコだ。俺も入れてえ!」

「お前のチンポなんか、簡単に食い千切られるんじゃないか」

千鶴も負けじと、肛門に日傘を突き立て、得意の、肛門コマ回しを披露した。その他、女乳相撲、股縄綱渡り、などを次々と披露する。女乳相撲とは、両手を後ろに縛って使えないようにし、女二人が、胸の乳を押しつけ合って相撲を取るのだ。股縄綱渡りというのは、空中高く張られた綱の上を、千鶴が、股間の割れ目に食い込む縄を擦らせながら、手を使わずに身を捩じらせて、苦悶の表情で渡っていくという芸である。何日か興行を重ねているとついに、信玄から、陣中で評判の芸を一度見てみたい、というお呼びがかかった。その夜は、徳川方の支城である三河の野田城を落とした、祝いの宴でもあった。

「いよいよ、信長の主力部隊との決戦の時も近い。この戦に勝てば、わしも天下人ずら!」

信玄が居並ぶ配下の武将達に、祝杯を上げさせた。桃江と千鶴が宴の席に呼ばれ、卑猥な芸を披露する。

「なかなか、面白いずら。そなた、今晩わしの夜伽をせい」

酔った信玄が上機嫌で、芸を終えた桃江を誘った。護衛役の女忍者、千代女が目くじらを立てて諫める。

「殿、なりませぬ、あのような素性の知れぬ女を抱くなどと!万が一、妙な病気などうつされたらいかがなされます?夜伽なら、我、くノ一部隊の誰かにお申し付け下されませ!」

「なあに、病気なんか大丈夫ずら。それに、お前達を抱くのも、最近、少々飽きてきたでのう」

一度、言い出したら聞かない信玄だった。桃江はその晩、信玄と寝所を共にし、暗殺の好機を得た。

(忍法、マン締めの術!)

桃江は、股間に銜え込んだ信玄の巨根を、力の限り締め上げた。

「うおおおお、たまらんずら。この閉め具合い!うっ、ちょっと待て、さすがにきつ過ぎる。おい、やめろ。やめろと言ってるだろ・・・うぎゃああ!」

信玄のチンポが、桃江のマンコに食い千切られた。信玄の股間から、おびただしい血が噴出し、布団を真っ赤に染め上げる。悲鳴を聞いて、寝ずの番をしていた千代女をはじめとする、くノ一部隊が寝所に飛び込んできた。

「何と言うことを!やはり、貴様、刺客か!」

(信玄にトドメを!)

桃江は、のた打ち回る信玄に、素手で掴みかかろうとしたが、巫女姿のくノ一達に阻まれた。そこへ、忍者刀を振り回した、素っ裸の桃之助が、飛び込んできた。

「桃江!早く逃げるんだ!」

桃之助は、千鶴に助け出されたのだが、全身、拷問によってつけられた傷で、見るも無残な状態である。

「忍法、雲隠れの術!」

桃之助は、自分の口に手を突っ込んで、胃の中に隠していた、煙球を取り出すと床に投げつけた。ボンと玉がはぜ、もうもうと煙が立ち込める。

「くそっ、逃がすんじゃないよ!」

千代女は叫んだが、ようやく煙が薄れた時、3人の姿は、既にその場から消えていた。

 

 その日を境に、武田軍はピタリと作戦行動を停止した。総大将である信玄がチンポを食い千切られ、出血多量のため重体に陥ったのだ。輸血などの医療技術もない時代である。破竹の勢いで進撃していた武田軍は、織田領を目前にして、ゆっくりと後退を始めた。しかし武田信玄は、甲斐の国に戻るまで命を全うする事ができなかった。

「よいか、わしの死を三年間ふせるのじゃ」

危篤状態に陥った信玄は、病床から、家臣たちに遺言を残した。

「それから、後世に伝える、わしの死因は、肺の病とするように。間違っても遊女にチンポを食い千切られて死んだなどと、伝えてはならんぞ!それでは、武田家末代までの恥じゃ!」

「ははっ、重々かしこまってござる」

信玄はしばし、沈黙した。そして静かに目を閉じ、最後につぶやいた。

「明日は、瀬田(都の入口)に武田の旗を立てるずら・・・」

それが、猛将、武田信玄のこの世で最後の言葉だった。

 

第105話、パーフェクトソルジャー

 

2006年1月、さざなみ市にあるネオガイア星人の軍事施設の一画にウラノス博士の研究室がある。ウラノス博士の専門は人間を対象とする遺伝子工学で、生きた人間を、豊富な実験材料として、いくらでも入手できる地球は、まさに研究に最適な環境と言えた。

「ふう、やっと出来上がった。理論的には、これで完成のはずだ。後は生体実験を行うのみだな。」

新しい研究の理論を完成させたウラノス博士は満面の笑みを浮かべた。人付き合いが苦手で、アンドロイドの他には助手のいないウラノス博士は、一人で実験体を探すために、研究室のコンピューター端末を開き、捕虜収容所や、地球人のデータファイルを検索した。そして、軍の医療施設のカルテの中から、ひとつのファイルを見つけ出した。

「なんだこれは!治療中の軍人・・・にしては、なぜ名前の記載がないのだ。もしや、これは・・・」

ウラノス博士は、ある事に思い至り、さざなみ市の治安責任者であるペルセウス長官に、通信端末を使って連絡をとった。

「どうされたのですか?ウラノス博士」

「実は、今度の、わしの研究の生体実験に使いたい人間がいるのじゃが・・・」

ウラノス博士は、今からやろうとしている実験の内容を説明し、見つけ出したカルテのファイルを、ペルセウス長官の今使っている端末へと転送した。それを見たペルセウス長官は眉をしかめた。

「これは・・・」

「駄目かね?」

「そういうわけでは、ないのですが。もし、この実験体を使うのであれば、私もその実験には立ち合わせて頂かねばなりません」

「それは、構わんよ。」

その日の午後、ウラノス博士とペルセウス長官は、軍の医療施設の地下にある特別病棟へと向かった。そこには、人口冬眠で冷凍保存された人間の入ったカプセルがいくつも並んでいる。二人はそのうちの一つを覗き込んだ。

「これは、反逆罪に問われた元白兵戦コマンドの女性士官、アルテミス隊長の成れの果て、だろう?」

ウラノス博士が尋ねるとペルセウスはうなずいた。

「そうです。元、私の部下です。さざなみ市のエネルギーバリアが破られた際、地球人の暴徒に襲われ、瀕死の重傷を負っているところを、回収されました。しかし、死んではいなかったものの、彼女の肉体は、暴徒による凄惨なリンチを受けたものと思われ、ネオガイア星の技術でも回復不可能なほど損傷を受けておりました。反逆者とはいえ、ネオガイア星人であるため、見殺しにするわけにもいかず、彼女は、虫の息のまま、治療に当たった軍医の判断で、冷凍カプセルに保存されました。解凍すれば、数時間をまたずに、彼女は本当に死亡するでしょう」

透明のカプセルの中で眠っているアルテミスは、全裸だったが、鉄仮面はつけたまま冷凍保存されている。厳重にロックがかかっており、外すことが出来なかったのだろう。体中にひどい裂傷や打撲傷の跡があり、全身複雑骨折、および内臓器官のほとんどが破裂した状態であるという。

「脳は生きておりますので、全身をサイボーグ化すれば復活させることは出来ますが、彼女は、一度、反逆罪に問われ、存在を抹消された人間です。それに、地球人ならともかく、ネオガイア星人である彼女をサイボーグ化すると、道義的にも、軍が世論の非難を浴びる恐れがあり、このまま放置されています」

「サイボーグ化よりも、もっといい状態で復活出来るよ。わしの実験が成功すればな」

ウラノス博士はアンドロイドに命令し、カプセルに入れたまま、アルテミスを自分の実験室へと運ばせた。

 

 ウラノス博士は、自分の研究室でアルテミスの肉体を解凍させた。意識が戻ると、アルテミスは全身の傷から感じる恐ろしい激痛に、悲鳴を上げた。

「ぎゃおおおっ!・・・た、助けて、痛い、痛い・・・ああ、でもこの感覚たまらないわ・・・」

アルテミスは全身の筋肉を痙攣させ、のたうちまわった。解凍された傷口からは再び出血が始まる。

「すぐに、楽にさせてやるさ。実験が成功すればな。」

ウラノス博士は、アンドロイドにアルテミスの体を押さえつけ、DNA変換装置のカプセルへと放り込ませた。そのDNA変換装置は、かつて久石千鶴や天野孝が使ったものと同じ装置である。

「この装置は、便利なものでな。書き換えるDNAの数式さえ入力すれば、自動的に作用してくれる。ただ、欠点は、変換の内容によっては、被験者に恐ろしい苦痛をもたらすため、よほど強靭な精神力を持った人間にしか、使うことが出来ないのじゃ」

ウラノス博士は、自分の発明した装置を、ペルセウスに自慢気に語った。

「アルテミスなら、どんな苦痛にも耐えられるでしょう。白兵戦コマンド時代、私の部下の中でも、最も優秀な兵士でした。それに、マゾですし・・・」

ペルセウスは、最後の方は、つぶやくように語尾を濁した。ウラノス博士が、装置のスイッチを入れると、手足を拘束されて、身をよじりながら痙攣しているアルテミスの肉体を紫色の磁場が包みこんだ。

「ぎゃおおおおっ!」

さらに倍加された全身の激痛にアルテミスは、獣のような悲鳴をほとばしらせた。

「今度の実験では、実験体は不死身の肉体を手に入れることが出来る。不死身といっても以前やった不老不死と言う意味ではないぞ。つまり、人間の肉体の再生能力を高める、ということじゃ。つまり、この女はどんな重症を負っても、自力で、ものの数分もすれば元通り回復するようになる。」

ウラノス博士は説明した。

「そんな人間が出来れば、兵士としては、最強ですな」

「じゃが、問題は、一人の人間をDNA変換するのに1週間かかると言う事じゃ。それに、変換時の苦痛に耐えうる人間は、ほとんどいまい。大体、いくら強力とは言っても、まさか、ネオガイア星人の兵士を実験材料に使うわけにもいかんしな」

「それは、そうですな。・・・では、1週間後にまた来ます。変換作業が終わったら連絡を下さい。」

ペルセウスは帰っていった。治安長官の職務は多忙なのだ。そして1週間後、再びペルセウスはウラノス博士の研究室にやって来た。

「成功だよ。」

ペルセウスはDNA変換装置から出され、ベットの上に横たわって眠り込んでいるアルテミスの裸身を見下ろした。傷一つなく完治したアルテミスの裸身は、限りなく美しく、古代ギリシャの女神のようである。

「美しいな。彼女は30歳だったか?」

「ええ、しかし、1年間冷凍保存されておりましたので、肉体年齢は29歳かと・・・」

「ふむ、精神と肉体のバランスが調和し、女性としては、一番美しい時期じゃな。どれ、起こしてみよう」

ウラノス博士は、アルテミスの肉体に軽い電気ショックを与え、アルテミスは目覚めた。正常な精神状態で覚醒するのは、約1年ぶりである。アルテミスは上半身を起こすと、鉄仮面の隙間から、傷一つない自分の肉体を見下ろし、驚いているようだった。

「あたし、生きているの・・・ここは、もしかして天国?」

「残念だが、違うよ。ここは現実世界だ」

ペルセウスとウラノス博士は、アルテミスに、この一年間におこったことや、今、行われている実験の内容を語った。

「君の罪は許されたわけではない。依然として君の存在は抹消されたことになっている」

「それは、そうですわ。あたしとしても、罪を許して頂けるとは思っていません。一生をかけて、自分の犯した過ちを償っていくつもりです」

アルテミスは殊勝に宣言した。ウラノス博士はほくそえんだ。

「それならば、君の肉体は、まさに、償いのためにはピッタリというわけだ。君のせいで死んだ兵士の遺族達に、思い切り怨みを晴らさせてあげるといい。どんなに傷つけても君の肉体は、たちどころに元通り復活してしまうのだから」

「ありがとうございます、ウラノス博士・・・」

アルテミスはこれから、自分に加えられるであろう、遺族達の罵倒や暴力を想像してうっとりとし、オマンコから愛液を滲ませた。アルテミスは、ネオガイア星人には、かなり珍しい、生まれついての重症マゾなのだ。

「だが、遺族を訪問する前に、いろいろと君の肉体を検証させてもらうよ。わしも研究成果を発表せねばならんのでね」

ウラノス博士は、兵士の訓練施設の一部を借り切る手配をし、そこへアルテミスを連れて行くことにした。

 

 アルテミスは全裸で射撃場の標的の前に立たされた。ペルセウス自らが片手に地球製のオートマチック拳銃を構え、アルテミスの腹部に狙いをつける。

「ネオガイア製のレーザー銃では、破壊力が大きすぎて実験体の体を焼き尽くしてしまう恐れがあるんでな」

ウラノス博士が言った。アルテミスは元白兵戦コマンドの指揮官だけあって、怯えた様子をおくびにも出さずに、大きく大の字に両手両足を広げて、ペルセウスが狙い易いような姿勢をとっている。ペルセウスは無表情で引き金を引いた。銃声が鳴り響き、銃弾はアルテミスの右の乳房を貫通した。

「あうっ!」

アルテミスは、よろけ、倒れそうになるのを、なんとか足を踏ん張って持ちこたえる。貫通して背中に抜けた銃創からは、ドクドクとおびただしい血が流れ出し、アルテミスは両手で右胸を押さえた。

「大丈夫だ。もっと撃ってくれたまえ」

ウラノス博士が、ペルセウスを即した。ペルセウスは一瞬、顔をこわばらせたが、再び冷静沈着な態度に戻ると、アルテミスの肉体めがけて、何度も何度も引き金を引いた。

「あおおおおお!」

全身に数十発の弾丸を浴びたアルテミスは、銃弾を受ける度に、はじかれたように肉体を痙攣させ、最後にもんどりうって冷たいコンクリートの上に倒れ込んだ。

「普通なら、死ぬ筈ですが」

「いや、彼女は死なんよ。見ていたまえ」

ウラノス博士とペルセウスは、倒れているアルテミスに近寄っていき、間近で傷口を覗き込み、観察を始めた。数分間、倒れたままのアルテミスは痙攣し、恐ろしいうめき声を上げていたが、その傷は見る見るうちに塞がっていった。やがて完治したアルテミスは、あまりの苦痛に放心状態になりながら、よろよろと立ち上がった。

「は、博士、痛みが、き、消えません・・・・」

アルテミスが、苦痛にもだえながら訴えた。

「ふむ、おそらく、貫通せずに体内に残った弾丸が、痛みの原因なのじゃろう。あとで、摘出手術をしてやる。じゃが、その前にもう少し実験を続けなければならん。長官、次は彼女の手足を切断してみてくれたまえ。」

ウラノス博士にうながされ、ペルセウスは、用意させた日本刀を上段に構えた。再びアルテミスは、まだ消えない、銃撃の痛みに耐えながら体を大の字に広げる。

「いくぞ、アルテミス。覚悟はいいか?」

「は、はい・・・どうぞ、お好きなように切り刻んでください・・・」

「でやああああっ!」

ペルセウスは掛け声と共に、刀を一閃させ、アルテミスの右腕を肩の付け根からスッパリと切り落とした。

「ぎゃおおおっ!」

切断面から滝のように血が噴出した。

「長官。彼女の両手両足を全て切断するんだ!」

「はいっ!アルテミス、狙いにくいから、そのまま動くなよ!」

ペルセウスは、右腕を切断されながらも、必死に足を踏ん張って仁王立ちしているアルテミスの左腕をバッサリと切り落とした。

「ひぎゃああああっ!」

アルテミスが絶叫する。次にペルセウスは、横合いから薙ぐように刀を閃かせ、アルテミスの右足も太腿の付け根から切断した。片足になったアルテミスは、立ち続ける事が出来ずに転倒し、大量の血を噴出させながら、コンクリートの床に転がった。ペルセウスは、のたうち回るアルテミスの、最後に残った左足も切断した。

「首は再生するかどうか自信がないから、切らないでくれたまえ」

ウラノスは冷ややかに言った。この男もネオガイア人の例にもれず、多かれ少なかれサディストである。二人は、しばらく、苦しんでいるアルテミスの様子を観察していたが、そのうち、床に転がっている右腕を拾い上げると、アルテミスの肩の傷口に押し当てた。

「おおっ!凄い、見る見るうちに癒着していくぞ」

まさに奇跡だった。あっという間にアルテミスの右腕は元通りに胴体とつながった。

「あとの手足は、自分でくっつけたまえ」

ウラノス博士は、転がっているアルテミスの残りの手足を拾い上げて、無造作に、芋虫のようにもがいているアルテミスの方へ放り投げた。

「・・・あ、あたしの手足・・・」

アルテミスは、半狂乱になって、激痛にこらえながら、右手で次々に自分の手足を、もとあった位置に押し付けていった。やがて数分後には、アルテミスの肉体は元通りに復活し、どうにか、立ち上がって歩き始めた。

「やったぞ、実験は成功だ!」

ウラノス博士が歓声を上げた。しかしペルセウスは口を挟まずにはいられなかった。

「しかし、博士。肉体は元通りに戻っても、あまりの苦痛で、精神に支障をきたす場合もあるのではありませんか?」

「それは仕方がない。いかにわしが、優れたDNA変換技術を開発しようと、人の心の問題まではどうしようもない」

さすがの重症マゾのアルテミスも、四肢切断の激痛に、ショック状態に陥り、放心したように白目を剥いて、うわ言をもらしていた。

 

 最初の実験の後、アルテミスは医療室で、X線写真を見ながら自分の肉体にメスを入れていた。体内に残る弾丸を自分で摘出するように、ウラノス博士に言われたのだ。もちろん、麻酔は無しのため、メスを入れる度に相当の覚悟で、恐怖と痛みに耐えなければならない。いくら不死身の再生能力を持っているとはいえ、重症マゾのアルテミスでなければ、とても正気を保っている事は出来なかったであろう。しかも、大量の出血のため、ひどい貧血を感じ、目眩がして、視界が赤くなったり黒くなったりしていた。

「久しぶりね。鉄仮面」

突然、医務室に黒髪の白人女性が入ってきた。それは、かつて収容所でアルテミスを執拗に苛め抜いていた女看守のシンディ・スコットランド(23歳)だった。シンディは血まみれになって自分の肉体を切り刻んでいるアルテミスを眺めて、麻薬中毒患者のような瞳を輝かせた。

「あんた相変わらず、マゾなんだね。この一年間、どこで何をしていたのか知らないけど、また、今日から、あたしがあんたを徹底的に苛め抜いてあげるからね。ネオガイア星のお偉いさんから、あんたの肉体の回復力を試したいから、手加減しなくていいって言われているのよ」

シンディは口元に残忍な笑みを浮かべた。この2年間で元アメリカ人の少女は、囚人達からもっとも恐れられる、真性サディストの鬼看守に成長していた。

「足を開きな」

さざなみ刑務所の看守の制服を着たシンディは、そう言うと、ベットに腰掛けている全裸のアルテミスに近寄り、彼女の股間に手を伸ばした。そして人差し指と親指でアルテミスのクリトリスを摘み上げると、いきなり渾身の力を込めてひねり潰した。

「きゃあああっ!」

アルテミスは悲鳴を上げた。

「フフフ・・・こうやって、あたしに大事なクリトリスをひねり潰された女囚が何人もいるのよ。拷問中にあたしの御機嫌を損ねたばっかりにね」

クリトリスをひねり潰されたアルテミスは、うっとりと、血の混じった愛液をオマンコから溢れさせていた。

「お前の乳首もひねり潰してやるよ」

「あおおお・・・お、お願いします・・・シンディ様・・・」

アルテミスは瞳をうるませて哀願した。奈落の底に落ちるような強烈な快感が、彼女の全身を駆け巡っていたのだ。真性マゾのアルテミスが自ら差し出した両乳首を、シンディは、眉ひとつ動かさずに、一つずつひねり潰した。

「ああああ、気持ちいいい!」

アルテミスは絶叫した。ふとシンディは、先ほどひねり潰したクリトリスを見て驚いた。すでに元の形に再生しているのだ。

「!!!」

そして、もう一度視線をアルテミスの胸元に戻すと、今さっきひねり潰した筈の両乳首も再生していた。

「これはどういう事?・・・生意気だわ。奴隷のくせにあたしに挑戦しているつもりなの!」

シンディは激怒した。そして、もう一度、アルテミスのクリトリスをひねり潰した。

「あおおおおお!」

「何度でも、潰してやる!」

シンディは、ムキになってアルテミスの、瞬く間に再生してしまうクリトリスと両乳首を、その日何十回となく、繰り返し、潰し続けた。

 

 アルテミスは、1週間にわたるウラノス博士の検証実験の後、さざなみ刑務所に引き取られることになった。1年ぶりに戻ってきたアルテミスは、以前の通り囚人ナンバー999号の番号を割り振られ、シンディ・スコットランド刑務官の監督下におかれる事になった。

「死ぬほど、痛めつけてやるわ。でも、あなた何をされても死なない肉体なのよね・・・」

シンディは、早速、アルテミスを拷問部屋に連れ込み、M字開脚で逆さ吊りにされたアルテミスのオマンコに焼きごてをねじ込んだ。

「ひぎゃあああああ!」

秘肉が焼き焦げ、アルテミスが失禁する。普通の人間なら一生、オマンコが使いものにならなくなるのだが、アルテミスの場合、数分後には、元通りに復活してしまう。

「面白い。こんなに苛め甲斐のある囚人は初めてだわ」

シンディはアルテミスの肉体を切り刻むことに夢中になった。一日のうち何度もアルテミスは手足をバラバラにされ、目を潰され、乳房をえぐられた。腹部を切開され内蔵を引き擦り出されることもある。それでも、どんなに酷い損傷をうけても、数時間で元の肉体に再生してしまうのだ。アルテミスは、日々、絶え間なく加えられる想像を絶する苦痛に、ますます重症マゾの傾向が強くなり、精神錯乱の寸前でなんとか正気を保っていた。

「今日はあなたに面会人よ」

ある朝、目覚めると、シンディが告げた。面会に来たのは、中年の見知らぬネオガイア人の夫婦だった。

「ネレウスとドリス夫妻よ。」

シンディが紹介した。夫妻は、憎しみのこもった目で、目の前に連れてこられたアルテミスを睨みつけている。何か、ただならぬ様子だった。

「お二人は、わざわざ、あなたに会うために、ネオガイア星からいらっしゃったのよ。夫妻の息子さんは、以前、ネオガイア星宇宙軍に勤務していてね。裏切り者のあなたが、レジスタンスの手先になって破壊活動を行った際に戦死したらしいわ」

「お前か!息子を殺したのは!」

ネレウスは、アルテミスに掴みかかった。アルテミスは抵抗せず、なすがままになっていたが、やがて、事情を飲み込むと床に土下座をし、涙ながらに謝罪した。

「そうです。あたしのせいで、たくさんの犠牲者を出してしまいました。その罪から逃れようとは思っておりません。どうか、この身を、気の済むまで切り刻んで下さいませ。」

「ああ、そうしてやるとも!」

シンディは、遺族の夫妻を伴って、アルテミス専用にあつらえた拷問部屋へと案内した。そこには、普通の囚人に使用すれば、即死してしまうような様々な拷問器具がそろえられている。そこでシンディはアルテミスに事の次第を説明した。

「実は、あなたのせいで、戦死したネオガイア軍兵士の遺族全員に案内状を送ったの。あなたが、不死身になった自分の肉体で、侘びを入れたいと言っているから、いつでも、ここを訪問して下さいってね。それが、あなたの望みだったんでしょう」

「・・・え、ええ。シンディ様、気を使って頂きまして有難うございます。あたしの肉体で、償いが出来るのなら、これからの人生を、遺族の方々の怒りや悲しみを癒すために使って生きたいと思います。」

アルテミスは、決心し、遺族夫妻の前に、自ら自分の肉体を投げ出した。

「いい覚悟だ!思う存分、無念の死をとげた息子の恨みを晴らさせてもらうよ!まず、お前の手足の指を一本ずつ引き抜き、歯を全部叩き折ってやる!それから・・・それから・・・かあさん、手を貸してくれ。息子がどんな、苦しい思いをして死んでいったか、この女に思い知らせてやる!」

ネレウスとドリス夫妻は、激しい怒りに我を忘れて、アルテミスの肉体を解体し始めた。

 

 さざなみ市、治安責任者のペルセウス長官は、ポセイドン提督の旗艦『ミケーネ』に呼び出しを受けていた。ポセイドン提督は本来、ネオガイア星宇宙艦隊の総司令官で、1年前に、救援艦隊を率いて地球に来襲して以来、地球植民地総督の役割も兼務していた。

「ペルセウス君。突然だが、私は地球を離れなければならなくなった。」

「それは、また急ですね」

「うむ、実はな。宇宙情勢に微妙な変化が出てきたのだ。今まで、平和的だったある種族が、なぜか、突如として、わがネオガイアに敵対的な行動を取り始めたらしい」

ポセイドン提督が打ち明けた。その情報は、ペルセウスには初耳だった。

「ある種族とは、どこですか?まさか、タイタンの巨人達ですか?それとも百足星人ですか?」

「違う、平和的な種族だと言っただろう。相手は、惑星ゴルァの岩石生物だ」

その名を聞いて、ペルセウスは驚愕した。ゴルァの岩石生物と言えば、銀河系で最も無害な宇宙生物と言われている。それぞれの固体は、ほとんど動く事さえせず、無機物であるため、支配種族である宇宙人グレイの、食欲の対象にもならず、他の星間航行種族からは、無視されている。全く何を考えているのか判らず、銀河政治の表舞台で相手にされることもない。

「岩石生物?・・・なぜです、彼らがなぜ、我々に敵対行動を?理解出来ません」

ポセイドン提督が、俺も同感だ、という表情をした。

「現在、ネオガイア星宇宙情報局が、全力で敵対行動の理由を調査している。しかし、我々の問いかけに、彼らは全く応答せず、交渉にも応じない」

「わけがわかりませんな・・・」

「唯一つ、入手した情報では、彼らは最近、宇宙の奴隷商人を通じて、宇宙海賊に誘拐されたネオガイア星人や、地球人の女奴隷を大量に買い漁っていたらしい」

「岩石生物が、我々ヒューマノイドを・・・つまり、奴らは我々を奴隷化したい、という事ですか?」

「かもしれん。とにかく私は、宇宙艦隊を率いて、警戒に当たらねばならん。なので、これ以上、地球に留まるわけには行かなくなった。私の配下の宇宙艦20隻も、連れて行く」

ペルセウスは少し青ざめた。1年前の宇宙海賊襲撃と、地球人反乱の時の悪夢が脳裏をよぎった。

「代わりの植民地総督は、来られるのですか?」

「ネオガイア星本国に、要請はしておいた。だが、赴任して来るまで、しばらく時間がかかるだろう。それまでの間、君が地球での最高責任者だ。軍事力は、地上基地の戦力だけで充分だろう。必要ならば、日本の自衛隊を、玉除けに使えばいい」

ペルセウスは心細かったが、承諾するしかなかった。日本はこの1年間、ネオガイア人の属国になっているが、地球の国際社会との関係はそのままで、いつ植民地総督府を、裏切るか判らない。漠然とした不安に悩まされつつ、翌日、ペルセウス長官は、大気圏外に舞い上がっていく、ポセイドン提督の宇宙艦隊を見送った。

 

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