第93話、預言者

 

紀元1532年、インカ帝国皇帝アタワルパの処刑を目撃し、インカ帝国の滅亡を目の当たりにした久石千鶴は、その後、数年間、南米各地を転々と放浪した後、新大陸から搾取した黄金を、本国へと運ぶスペイン人の船に、売春婦として乗り込み、再びヨーロッパへと舞い戻った。500年後に来襲する宇宙人を迎え撃つための準備の一環として、ある事を思いついたのだった。千鶴は16世紀半ばのフランス南部からイタリアにかけての地域を、歴史上名高い、ある人物を探し求めて数年間さまよい続けた。その人物に会えば宇宙人に関するなんらかの手がかりが得られるかもしれない。そして、フランス南部のペストの流行するある町で、とうとう、その人物の噂を耳にした。

「ノストラダムス先生は、偉大なお方じゃ、あの方のおかげで、猛威をふるっていたペストがようやく治まってきただ」

「その人は、今どこに?」

「町の診療所に寝泊りしておるよ」

千鶴は道順を聞き、診療所を尋ねた。21世紀でも、その名を知らない者はいない偉大な預言者ミッシェル・ド・ノストラダムスは50歳前後の初老の男だった。

「誰だね?」

「私は、遥か東の国ジパングからやって参りました。名前は千鶴と申します。先生の御高名を噂に聞き、ある事について御教示頂きたく、はるばる訪ねて参りました」

千鶴は鋭い視線でノストラダムスを観察した。確かにどこか、普通の人間ではないようなオーラを漂わせている。ノストラダムスの方も全てを超越したような瞳の奥で、千鶴を観察しているようだった。

「ほう、ジパングかね?遠い所から来たもんだね。あの国は遠い未来には、世界中で最も豊かな国になるよ」

ノストラダムスはジパングと聞いても驚かないようだった。大航海時代が始まったばかりのこの時代では、日本のことを具体的に知っているものなど、ヨーロッパには少ない筈だった。千鶴は疑わしげに、さらに食い入るようにノストラダムスを観察した。

「なぜ、そんな遠い未来の事がわかるのですか?」

「それは、私が預言者だからだよ。ところで、わしに聞きたいこととは何だね?」

「実は・・・」

千鶴は、自分が遠い未来で生まれた事、宇宙人に誘拐されて、生体実験で不老不死の肉体にされた事。時間航行機で過去に置き去りにされ、長い間、世界中を放浪している事。21世紀まで生き延び、宇宙人に対して復讐をしたい事などを打ち明けた。16世紀の人間であるはずのノストラダムスは、千鶴の言葉を聞いても、さほど驚かないようだった。

「このような話を聞いても、驚かないのですか?」

「わしは、預言者だからな。お前が今日、来る事も、遠い未来に起こる事も、全てわしには予めわかっているのだよ」

ノストラダムスは千鶴の期待通りの、神秘的な人物だった。

「それでは、先生。私はこれから、一体どうすればよいのでしょうか?500年後にやってくる宇宙人からこの世界を守るためには、どのような方策を立てれば、もっとも効果的なのでしょうか?」

千鶴は、ノストラダムスに対して胡散臭さを捨て切れなかったが、藁にもすがる想いで尋ねた。しかし、ノストラダムスは冷ややかだった。

「方策?そんなものはないよ。戦うことなど不可能じゃ。預言者としてのわしの名誉にかけて宣言する。この世界は500年後に遠い星々から来た、オリンポスの民の子孫によって蹂躙され、人間は全て奴隷となるのだ。それが、あらかじめ定められた歴史じゃ。いかなることがあっても、曲げる事は出来ん」

「そんな!それでは、あまりも・・・」

千鶴は、到底ノストラダムスの言葉を、素直に受け入れることは出来なかった。過去に飛ばされる前に宇宙人から受けた、数々の屈辱や、1500年に渡る苦難の旅を、満身創痍になりながらも耐え忍んできたことは、全て無駄だったと言うのか。

「わしの予言は絶対に外れん。歴史は、寸分違わずにわしの予言した通りに動くのじゃ、なぜなら・・・」

ノストラダムスの言葉は最後まで聞き取れなかった。ノストラダムス自身が、お前になど話してもしょうがない、とでも言いたげに、口籠ってしまったのだ。それでも千鶴は、反論せずにいられなかった。

「あなたの予言で、実現しなかった例もあります。たとえば『1999年、7の月に、恐怖の大王が空より来る』、という予言です。世界は紀元1999年には滅亡せず、少なくとも2003年に、私が過去に飛ばされる直前までは存続していました!」

ノストラダムスは哀れむような目つきで千鶴を見た。

「おろかな。・・・それは、ただ単に、解釈の仕方が違うのだよ。わしは一言も1999年に世界が滅ぶ、とは言っておらん。それにしても、おぬし、わしがこれから執筆しようとしている預言書の内容を良く知っておるな。さすがに未来から来たと、能書きを垂れるだけの事はある。どうだね、おぬしもわしの下で、予言者としての修行を積んでみるかね?」

千鶴は、思わぬ申し出に戸惑ったが、なんらかの手がかりを得るためにも、この人物を、もう少し探ってみようと決意し、ノストラダムスの申し出を受ける事にした。

 

ノストラダムスの弟子となった千鶴は、身の周りの世話から、性欲処理までをすることになった。ノストラダムスは千鶴をバックスタイルで犯す事が好きだった。

「おぬし、相当長い間、世界中を放浪しておったようじゃな。体中に刻まれておる古傷の数は半端ではないぞ」

ノストラダムスは千鶴の尻をピシャリ、ピシャリと平手で叩きながら上機嫌で、腰を揺すっていた。

「ふむ、この焼印は、中国の漢字だな。この様式からすると紀元3世紀のものか」

ノストラダムスは千鶴の尻に押されている『親魏倭王』という焼印を、指でなぞりながら、考古学者のように興味深く観察していた。それは、千鶴が3世紀の日本で、邪馬台国の女王卑弥呼に奴隷として仕えていた時に、無理矢理押された焼印である。

「こっちは、古代ローマのものだな。おや、梵字の焼印もあるぞ。」

「あうっ!あうっ!ノストラダムス様。もっと激しく突いて下さいませ」

千鶴は快楽に身を委ねて喘いだ。長年、売春稼業をしているうちに、千鶴の性欲は底なしのように深まっている。1500年生きた今も、肉体は永遠に二十歳であるため、ホルモンの分泌も激しく、煩悩は収まるどころか、セックス依存症とも言うべき状態で、コントロールすることすら難しくなっていた。

「淫乱な女だ。どうも、お前のオマンコは、使い過ぎで締まりが悪いようだから、ケツの穴を使うことにしよう」

ノストラダムスは愛液でヌルヌルになった、硬直したチンポを引き抜くと、千鶴の肛門にズッポリと突き立てた。

「はうっ!」

千鶴は肛門に無理矢理押し入ってきて、腸を突き上げるノストラダムスのチンポに、呻き声を上げながらも、冷静な覚めた意識の一部分では、おかしな事に気付いていた。

(どうも、おかしい。この男、見た目は、50歳ぐらいで、初老のようだけど、このチンポの硬さや、肌の張り具合は、まるで20代の青年ようだわ。・・・まさか、この男も不死者???)

千鶴の胸をとてつもない疑念が掠めた。ノストラダムスの顔には苦難の人生を送って来た人間に特有の深い皺が刻まれ、雰囲気、態度、物腰全てが、かなりの人生経験を積んできたかのような深みを持っている。さらに、カモフラージュのためか、顔中に長い髭を蓄えており、そのため、初老の男だとすっかり思い込んでいたのだった。

「やはりケツの穴はたまらん。カトリックの戒律が厳しいこの時代のフランスでは、なかなか、ケツの穴に入れるというのは、最低の娼婦でも嫌がるでな。・・・そろそろ、イクぞ。うっ・・・」

ノストラダムスは千鶴の肛門の内部に精液をぶちまけ、汗を拭いながら満足気に深呼吸をした。

(ノストラダムスが、アナルセックス好きだった、とは知らなかったわ。この男、やはり、この時代で生まれた人間ではない・・・)

千鶴は自分の推論に確信を抱いた。

 

それからの数ヶ月というもの、千鶴の預言者としての特訓は、過酷を極めた。毎回、食事の際には見えないように布で覆いを被せられた膳を二つ用意させられ、どちらに本物の食物が入っているのかを、当てなければならないのだ。

「こっちですわ」

散々迷った挙句に千鶴が指差した膳は、布の覆いを取って見ると、犬の糞が盛られていた。

「残念だったな。それがお前の今日の朝飯だ。残さず食べるんだぞ。ハッハッハッ!」

腹を抱えて笑っているノストラダムスを横目で睨みながら、千鶴は吐き気をこらえて犬の糞を頬張った。1500年間にわたる人生の中では、奴隷生活をしたことも一度や二度ではなく、このくらいのことは何でもなかったが、どうも、千鶴はノストラダムスが本気で自分を預言者として訓練しているのではなく、ただ、からかっているのではないか、と言う気がしてならなかった。またある日、千鶴は後手に縛り付けられ、身動きが取れない状態で、ノストラダムスに何度も顔面を平手でぶたれた。

「右手が飛んでくるか、左手が飛んでくるかを予知して、うまくかわすのだ」

千鶴は、首を少しだが動かす事ができ、左右どちらかには避ける事ができる。しかし、千鶴が飛んでくる方の手を予測して、うまくかわせる確率は2回に1回だった。

「お前は、全く、進歩がないのう」

ノストラダムスは呆れ果てたようにため息をついた。千鶴は、何十回も平手打ちをうけ、顔面が真っ赤に腫上がっている。

「預言者には、向いとらんのじゃないか?」

「私も最近、そう思います。毎日こんなことをしていても、何にもならないのじゃないかと・・・」

切れた唇から血を流しながら千鶴が訴えた。

「それに、気がかりなこともあります。実は、かなり以前から私を抹殺しようと狙っている者達がいるのです。私と一緒にいることで先生に御迷惑をかけることにならないかと」

千鶴が心配しているのは、時間管理局の事だった。幸い、ノストラダムスと接触してからは、まだ一度も襲ってくる気配はなかった。

「ああ、やつらのことか。やつらの事なら心配ない。わしと一緒にいる限り、あいつらは手を出してはこんよ」

「???・・・先生は彼らの正体を御存知なのですか?」

千鶴は驚愕した。

「ああ、まあな。なにせ、やつらは・・・」

ノストラダムスの言葉はまた、語尾がモゴモゴと歯切れが悪く、口の中に消え、最後まで聞き取れなかった。千鶴は再度、問うてみようとしたが、急にノストラダムスは話題を変えた。

「なあ、おぬし。これ以上、わしと一緒に修行をしても時間の無駄じゃろう」

「え、ええ、そんな気がします。でも、これからどうすれば、いいのか、全く判らないのです」

「ふむ・・・」

ノストラダムスは、千鶴の顔をじっと見詰め、しばらく考え込んでいたようだったが、長い沈黙の後、ようやく口を開いた。

「前にも言ったが、歴史は変える事が出来ん。しかし、おぬしの気持ちとしては、それでは納得できんのじゃろう?ならば気が済むまで、思う存分、あがいてみるしかあるまい。・・・そうじゃな、おぬし、生まれは、数百年先のジパングだと言っておったな。と言う事はそこには、おぬしの先祖が今も生きており、やがて時が下れば、おぬし自身もその地に生まれてくると言う事じゃ・・・。わかったかな?それがヒントじゃ。だがくれぐれも言っておく。歴史は変える事は出来ん。人間は全て、次の千年紀の初めには、星々の彼方より来た者どもの奴隷となるか、もしくは馬や牛、豚と等しい家畜のような存在でしか生きれない運命なのじゃ。」

ノストラダムスの考えは、相変わらずシビアだった。

「私は、歴史が変えられないものだとは思いません。どんな手段を使ってでも宇宙人に復讐し、この世界を守って見せます!」

千鶴はノストラダムスと決別する時が来たのだと思った。今まで多くの歴史上の人物と出会って、別れてきたように。とりあえず、ノストラダムスのアドバイスに従って日本へ戻ろう、と千鶴は考えた。

「どうも、お世話になりました先生。またどこかで会う機会があったら、昔の縁と言う事で、無料で御尻の穴をお貸しいたしますわ」

「そうじゃな。わしのチンポは大き過ぎて、なかなか、しっくりと合うケツの穴を持った女がおらぬでな」

ノストラダムスは、いざ別れるとなると千鶴のアナルに名残惜しそうだった。翌日、千鶴は荷物をまとめて旅支度を整えると、遠く離れた日本に向けて旅立っていった。

 

第94話、お嬢様は実験材料

 

二階堂麗奈(21歳)は、お嬢様学校で知られる有名女子大学の語学部、フランス語学科に通学する、大学3回生である。父親は製薬会社を経営する資産家で、都内に広大な敷地を持つ邸宅を構えていたが、麗奈は大学進学時に、一人暮らしをしてみたい、とわがままを言って、実家から十数分の場所に高級マンションを借りてもらっていた。もちろん月、20数万円の家賃は父親に出してもらっている。家賃の他に毎月、30万円ほどの仕送りを貰っている麗奈は、他の学生達のようにアルバイトに励む必要もなく、いつも衝動買いで買いあさったブランド品で身を包み、高級レストランやリゾート施設を遊び歩いていた。3LDKのマンションの一室は、一度身に付けただけで飽きてしまったバッグやアクセサリー、衣装で埋め尽くされている。

「あ、もしもし、吉川君?ごめんね。今日は、乗馬クラブの日なの。また今度ね」

麗奈は携帯電話にかかってきたラブコールをあっさりと切った。相手は父親の会社のレセプションで知り合った、取引先の若手営業マンだった。ちょっとハンサムだと思ったので携帯電話の番号を教えたのだったが、他にもボーイフレンドはたくさんいるので、やはり、わざわざ合う、というのは面倒だった。

(今日は、エルメスで決めてみようかな)

麗奈は山のようなブランド品コレクションの中から、エルメスのブラウス、スカート、カーディガン、バッグ、腕時計、ベルト、ブーツなどを選び出すと身につけ、玄関にある、特注品の全身が映る鏡で、うっとりと自分の姿を眺めた。そして、気が済むと、乗馬クラブへ向かうためにエレベーターでマンションの地下駐車場へと降りていった。麗奈は地下駐車場に止めてある真っ赤なフェラーリに乗り込むと、エンジンをかけ、スロープを上がって公道へと走り出した。

(来週は、小林君と沖縄にいこうかしら)

軽快に運転をしながら麗奈は考えた。彼女は、趣味として乗馬の他に、スキューバダイビングも好きで、時々、ボーイフレンドと沖縄に出かけたりしている。沖縄には父親の別荘があり、自由に使う事が出来るのだ。麗奈が大通りに出て、加速しようとアクセルを踏み込んだ時、フェラーリ全体が白い光輝に包まれた。

「なに?なんなの、この光・・・・」

麗奈は、思わぬ異変にあわてたが、次の瞬間にはフェラーリごと麗奈の姿は消え失せてしまっていた。

 

 さざなみ総合病院の地下転送室で、財銭吾郎教授(41歳)はあわてた。

「しまった、車ごと転送してしまった!」

財銭教授が、瞬間物質転送機を操作するのは初めての経験である。転送室に実体化した真紅のフェラーリは転送台を飛び出し、急ブレーキをかける鋭い摩擦音を響かせながら壁に激突した。

「実験体は無事か?」

財銭教授が駆け寄った時、二階堂麗奈は気を失っていたが、どこにも怪我はしていないようだった。財銭教授はアンドロイドに手伝ってもらって麗奈の体を運び出すと、自分の診察室に運びこんだ。

「おい、起きろ、実験体」

手術台に仰向けに固定された麗奈の頬を、財銭教授が荒々しく引っ叩いた。

「う、うーん・・・ここはどこ、あたし、どうなっちゃったの?」

「久しぶりだな、二階堂麗奈君」

財銭教授は満面の笑みを浮かべながら、目を覚ました麗奈に話しかけた。財銭教授は過去に、麗奈の父親の製薬会社との取引で多額の賄賂を受け取ったことがあり、麗奈とも何度か面識がある。今回、ネオガイア星人の医療技術を学び、初の生体実験を行うにあたり、以前から陵辱してみたいと思っていた麗奈を実験台に選んだのだった。

「これから、君の体に手術を行う。肺を直腸につなげて肛門で呼吸が出来る人間を作れるかどうか、という実験だ。」

「そ、それ、どういうこと?」

麗奈は言われていることの意味がわからず、ポカンとしていた。

「そうだな、説明するよりも、実際にやってみよう。自分の体がどんな風になるかは、完成すれば判るよ。」

財銭教授は、レーザーメスを振りかざすと麗奈の着ているエルメスの衣服を切り裂き、執刀に取り掛かった。

「いやっ、いやっ、いやああああ!やめてええええ!」

麗奈は、麻酔なしで自分の肉体が切り裂かれる恐怖と苦痛に、あらん限りの力で暴れ、絶叫した。

 

「私も、生体実験は始めてなので、少し緊張している。あまり、暴れないでくれたまえ」

財銭教授は、まず麗奈の腹部を、乳房の下からヘソの下あたりまで開腹した。麗奈は再び気を失い、財銭教授は血にまみれた手で有機素材で作られたチューブを肺から肛門へと繋げていく。肺から、食道へと繋がる気穴は有機接着剤で封鎖し、麗奈は鼻口では呼吸が出来なくなった。

「よく考えると、これでは喋れんな。人間は喋る時、少しずつ肺から空気を搾り出しているからな、ま、いいか」

財銭教授は内臓の手術が終わると、傷口を接着し、完全に癒着するのを待って、麗奈の頬を引っ叩いた。

「起きろ、実験体!」

「!!!!!」

麗奈は目を覚まし、口をパクパクさせたが喋ることが出来なかった。

(なぜ?なぜ、声がでないの?・・・・なんだか息苦しいわ)

財銭教授は、空気が流れるようにと麗奈の肛門にはめ込まれていた肛門開口器具を外した。肛門の括約筋は収縮し、麗奈は呼吸が出来なくなった。

「!!!!!!」

麗奈は顔を真っ赤にして苦しんだ。

「ハッハッハッ。手足の拘束ベルトを外してあげるから、自分の指で肛門を広げるんだな。早くしないと窒息して死んでしまうよ」

財銭教授は初めての生体実験の成功に上機嫌だった。しかも実験体は、あの御高くとまっていた、社長令嬢の二階堂麗奈なのだ。麗奈はベルトが外されると、言われたとおりに急いで、両手の人差し指を肛門に突っ込み、両側にこじ開けた。スースーと音がして肛門から肺へと新鮮な空気が流れ込んだ。麗奈は胸を大きく上下させて新鮮な空気を貪った。恥も外聞もなかった。

「注意点が一つある。直腸にウンチが溜まると呼吸が出来なくなるから、トイレにはマメに行くように。浣腸液を常に、肌身離さず持ち歩いた方がいいかもしれん。肛門につないだのは肺だけだから、食事は今までどおり口で出来るよ」

「!!!!!」

プライドの高い麗奈は、怒りに我を忘れて、肛門をこじ開けながら抗議しようとしたが声は出なかった。

(冗談じゃないわ。早く、元の体にもどしてよ!)

「2、3日様子を見て、データを取ったら家に帰してあげるよ。もっとも手術後の体は元には戻せないがね。私の最初の生体実験は成功だ。」

財銭教授は3日間、術後のデータを取る合間に散々、麗奈の体を陵辱し、弄んだあげくに、病院から解放した。

 

 帰りは、麗奈には瞬間物質転送機は使われなかった。財銭教授が、操作方法を完全にマスターしていなかったのでそのまま、病院の外に放り出したのだった。フェラーリは壁に激突した衝撃で使いものにならなかったが、誘拐された時に所持していた財布は返してもらえたので、電車で帰宅することにした。引き裂かれた衣服をつなぎ合わせて身にまとっている。ノーパン、ノーブラだったが、カーディガンは無傷だったので外見上はなんとか取り繕う事が出来た。

(御尻の力を抜かないと、肛門が閉じてしまうわ)

麗奈は必死に括約筋の力を抜こうとした。3日間、指で肛門をこじ開け続けていたので、緩くなってはいる。しかし、路上で肛門に指を突っ込むわけにはいかず、無意識に肛門を締め付けないように気を使わなくてならなかった。肛門から息を吐く時、ブヒッとオナラのような音がする。半開きの肛門から、多少のウンチも漏れてしまう。

(最悪だわ。こんな、体で、これからどうやって生きていけばいいの。恥ずかしくて人前に出れないわ。お父さんのコネでどこかの病院で手術をしてもらえば、元の体にもどるかしら・・・・)

公衆電話を見つけて、実家に電話をしようとしたが、喋れないので無理だった。仕方なく、ブヒッ、ブヒッとオナラをしながら駅の方へと歩いていく。さざなみ市がエネルギーバリアで包まれていたころは閉鎖されていた東海道線の駅も、条約締結後は復活し、普通に電車が運行している。麗奈は切符を買うと、東京行きの快速急行に乗り込んだ。

(結構、乗客が多いわね)

座席は全て埋まっており、麗奈はなるべく人の少ない、連結口近くの吊り革につかまった。相変わらず、息を吐く度にブヒッ、ブヒッとオナラの音がする。鼻孔から呼吸が出来ない麗奈には匂いを嗅ぐ事が出来なかったが、周りの乗客達は充満するオナラの匂いに顔をしかめた。麗奈は恥ずかしさのあまり、顔を真っ赤に染めたが、家に帰り着くためには何気ない様子を取り繕うしかない。ブヒッ、ブヒッというオナラの音は止まらない。

「お母さん。あの女の人、オナラばっかりしているよ」

座席に座っていた幼稚園ぐらいの子供が、無邪気な口調で母親に尋ねた。

「お姉さんは、きっと胃腸の調子が悪いのよ」

「ふーん」

乗客の中には異臭に耐えかねて、席を立ち、離れていくものもいた。しかし、多くは、かかわり合いになるのを恐れ、無言で含み笑いをしたり、顔をしかめているだけの乗客がほとんどである。東京までは3時間以上かかったが、その間、無数の乗客が乗り降りし、麗奈の周りの乗客も、うっかり近寄って来る度に、首をかしげて、オナラ女に遭遇した事に戸惑いを見せた。おそらく、彼らは電車を降りてから、この事を家族や友人に面白おかしく話すのだろう。

(なんで、あたしがこんな目に!)

麗奈の胸に、この理不尽な出来事に対する怒りがフツフツと込み上げてきた。そして思わず、肛門の括約筋をギュッと締め上げてしまった。

(苦、苦しい。息ができない・・・)

括約筋を自分の意思で操る事は難しい。必死で麗奈は肛門の力を緩めようとしたが、一旦収縮した括約筋は思い通りに開かなかった。

(ああ、助けて、苦しい・・・)

電車内にトイレはないようだった。例えあったとしてもそこへ、たどり着くまで呼吸を止めておく事などできない。麗奈はその場に中腰にしゃがむと、スカートの下に両腕を差込み、肛門に指を突っ込んで両側に押し広げた。

(・・・・間に合ったわ)

呼吸を整えて麗奈が辺りを見回すと、大勢の乗客が驚いたような目つきで麗奈の方を注目していた。

 

第95話、樋口亜希子のプロフィール

 

樋口亜希子は1983年6月18日に、埼玉県で生まれた。父親は個人病院を構える歯科医師で家は、かなり裕福である。厳格な家庭で育った亜希子は、小、中学校、と成績優秀で、高校は都内のトップクラスの私立女子高に進学し、そのままエスカレーター式に有名私立女子大学の文学部英文学科に進学した。母親の勧めで、幼い頃から、御稽古事として始めた華道を、高校、大学とクラブ活動として行い、亜希子が作った作品は、いけばなコンクールで、何度か入賞したこともある。女子高、女子大と進んだ亜希子は男性と付き合う事もなく、20歳になってもセックスどころかキスの経験も、異性の手を握ったことすらもなかった。大学では同じ学科の内田美帆、阿部理沙と仲良くなり、授業の合間に3人でお喋りしたり、遊びに出掛けたりすることが多くなった。

「亜希子、アルバイトしないの?」

授業の合間の休み時間に理沙が尋ねた。

「うん、お父さんがアルバイトしちゃ駄目だって言うの。お小遣いならあげるからって」

「うらやましい。あたしなんか、お父さんの会社が残業カットで家計が苦しいから、仕送りも減らすって言われているのに・・・」

親元を離れて下宿生活をしている理沙は本当にうらやましそうだった。

「でも、大学に通っているだけじゃ、出会いがなくって・・・」

「あれ?亜希子、彼氏欲しいんだ?」

「うん・・・」

「そう言えば、美帆がこの前、バイト先で彼氏見つけたって言ってなかった?」

「えっ?まあ・・」

いきなり、話を振られて美帆がとまどった。動揺した亜希子が、美帆の顔を見つめる。この話が本当なら、3人の中で彼氏がいないのは亜希子だけになる。美帆に裏切られた気分だった。

「じゃあ、今度、花火大会があるからそこで亜希子のために彼氏、探してあげようか?」

友達思いの美帆が、提案した。

「・・・う、うん・・・」

「浴衣着て行こうよ」

「でも、理沙、夏休みは実家に帰るんじゃないの?」

亜希子は、実際に男を探すという行為に、恐さが先に立ち、反射的に断る口実を探そうとした。

「うーん、帰らないわよ。バイトがあるからね。あたしの家は、すっごい田舎だから近所にバイト先とか全然ないのよ。夏休みに稼いでおかないと、稼げる時ないし」

「じゃあ、決まりね。忘れるといけないから、前の日ぐらいにまた、電話するわ」

美帆の提案で3人は2003年の夏休みに、揃って花火大会に出掛けることになった。

 

 樋口亜希子は2003年8月11日夜、女3人連れ立って花火大会に出掛け、たまたまその日、地球を発見したネオガイア星人の宇宙調査船の転送ビームによって拉致された。実験材料として内田美帆は解体され、阿部理沙は珍しい動物として宇宙の彼方へと連れ去られた。そして亜希子を待っていたのはセックスの快楽のみに奉仕する生体ダッチワイフとしての運命だった。脳にコンピューターチップを埋め込まれた亜希子は、ありとあらゆる性技をインプットされ、清楚な処女のまま、どんな熟練の娼婦にも負けないセックスマシーンと化した。亜希子は、生体ダッチワイフに改造されたその日に、処女とアナルを犯され、その後眠っている時間以外は、宇宙船の娯楽室に配置され、セックスとオナニーに明け暮れる日々を送った。亜希子は調査船の娯楽室から宇宙母艦オリンポスの娯楽室へと移され、2年間、そこを訪れる客達を相手にしていたが、やがて宇宙海賊との戦闘でオリンポスが破壊されると、亜希子は、中古品の生体ダッチワイフとして競売にかけられることになった。この頃には、多くの地球人の美女が世界中から、かき集められ、生体ダッチワイフ市場が飽和状態に達していたことから、プロトタイプである亜希子は、何の魅力も、希少価値もなくなっていたのだ。さらにネオガイア星本国では安価なクローン美女のレンタルショップの展開が、さらに市場価値の下落に拍車をかけている。銀河ネットのオークションで落札された亜希子は冷凍保存され、宇宙宅配便で、銀河中枢部にある、地球から2万光年離れた歓楽惑星ゲヴァルへと送られた。

「あっ、ああ、おチンポ、欲しい・・・」

目的地で解凍され、目を覚ました亜希子はすぐに、大股を広げてオナニーを始めた。脳内のコンピューターチップは地球を離れる時にスイッチがオフにされていたが、すでに亜希子は色情狂と化し、濁った意識の中でセックス以外のことは考えられなくなっていたのだ。

「ヒューマノイド型生物か。こんなもの抱きたがる奴がこの宇宙にいるのかね?」

亜希子を買い取ったのはクラゲに似た生物だった。彼は、この歓楽惑星ゲヴァルで、様々な生命体を相手に、獣姦専門の風俗店を経営している。普通、生物は同じ種族にしか性的欲望を感じないのだが、地球の人間に、犬や豚とセックスすることに喜びを感じる者がいるように、宇宙人にも、別の生命体とセックスをしてみたい、という願望を持つものが稀にいるのだ。クラゲ型生物の風俗店経営者はそういった変態趣味の宇宙人相手に商売をしている。

「客がつくかどうかわからんが、取り合えず、店に出してみるか」

こうして亜希子は遠く離れた惑星で、様々な生命体を相手に、本人の望み通りセックスに励むことになった。

 

 亜希子は歓楽街の裏路地にあるさびれた風俗店へと連れて行かれた。そしてすぐに店頭に出されたが、客の指名はなかなか来なかった。

「ほう、今度入った新人はヒューマノイド型生物かね」

常連客のナメクジ型生物が2本の触覚で値踏みするように亜希子の体をまさぐりながら、経営者のクラゲ型生物に尋ねた。

「ええ、旦那。なんでもネオガイア星人の亜種って事でさあ。どうです?一発」

クラゲ型生物はなんとか亜希子に客を付かせようと、執拗に勧めた。

「いや、やめとくよ。ヒューマノイド型生物の体は華奢だから、犯し甲斐がなくってね」

ナメクジ型生物はあっさりと断った。

(ちっ、安かったから買ってみたんだが、これじゃ全く話にならん。まあ、取り扱い生物のカテゴリーの幅を増やすと言う意味で、アルバムの端にでも載せておくか)

仕方なくクラゲ型生物は、自分で亜希子の体を味見してみることにした。水槽のあるプレイルームへと連れて行き、水中に引きずり込むと、ヌルヌルとした数十本の触手で亜希子の体をまさぐり始める。

「あっ、あああん・・・」

亜希子が悩ましげなヨガリ声を上げる。クラゲの触手がオマンコ、アナル、口などの亜希子の体中の穴という穴から体内に侵入してきた。

「おげえええ!」

口から食道を通して胃の中をまさぐられ、さすがに淫乱な亜希子も激しい吐き気を催した。

「我慢するんだ。こんなのはまだ序の口だぞ。大宇宙にはもっと異常な形態の生物がわんさといる。お前にはこれから毎日、それらの生物全ての相手をしてもらわねばならん。・・・もっとも客が付けばの話だがな」

クラゲの触手はさらに亜希子の体内奥深くに侵入し、小腸から大腸へと貫通して、アナルから侵入してきた触手と、体内で握手した。亜希子はあまりの気持ち悪さに全身から脂汗を流して苦しんでいる。その感覚は、亜希子の求め続けている普通の人間とのセックスの快楽とは程遠かった。

「おっ、なんとかイキそうだぞ」

クラゲ型生物は触手を亜希子の内臓の内壁にこすり付けて、その摩擦を楽しんでいるようだった。

「うぅ、いくぅ・・・」

クラゲ型生物の触手がブルブルと痙攣したように震え、溜まっていた電気を亜希子の体内に放電した。

「ぎゃああああ!」

体内から感電し、亜希子が絶叫した。クラゲ型生物は電気クラゲだったのだ。電気と共に大量の分泌液も亜希子の腸、胃の中にあふれ出した。

「おえええっ!」

生殖行為を終えたクラゲ型生物が、満足気に触手を引き抜くと、亜希子の口、肛門から分泌液があふれ出した。

「げほっ、げほっ!」

水槽の中で膝まで水に浸かった亜希子が、嘔吐しながら、胸を抑えて咳き込んでいる。

「マネージャー、新人のヒューマノイドに指名が入りました」

従業員の半魚人が告げに来た。

「そうか、ちょうど、今、新人研修が終わったところだ。おい、こらっ、いつまで遊んでいるつもりだ。さっさと体を洗浄してお客様のご案内をしろ!」

「は、はい・・・」

亜希子は、なおも咽込みながらヨロヨロと立ち上がって水槽を出ると、洗浄器のカプセルに入っていった。

 

 体中にまとわり付くクラゲの粘液を洗い落とした亜希子が洗浄器から出ると、半魚人がイライラしながら待っていた。

「早くしろ、新人。お客様がお待ちかねだ」

追い立てられるように亜希子が待合室に顔を出すと、そこには巨大なゴキブリのような昆虫型生物がいた。

「お客様は、産卵の時期だそうだ。ぜひ一度、ヒューマノイド生物の体内に卵を産み付けてみたい、と言っておられる」

半魚人の説明に、亜希子は、それはセックスとは違うのではないか、と濁った頭でボンヤリと考えた。しかし、生体ダッチワイフとして、買い取りをされた亜希子に、客の要望を拒否する権利はない。亜希子はゴキブリ型生物を案内して、プレイルームに入った。今度のプレイルームはガランとしていて室内には何もない。ゴキブリ型生物は8本の足で亜希子の体に掴みかかって冷たい床に組み敷くと、産卵管を伸ばした。

「いやっ、やめて、怖い!」

亜希子の濁った意識を、激しい恐怖が貫いた。ゴキブリ型生物の甲殻質の足についている滑り止めの突起物が、柔らかい亜希子の肌に無数の引っかき傷を作って、大量の血が流れ出す。さらに、鋭い管のような産卵管が亜希子の下腹部に突き刺さった。

「うぐっ!」

亜希子の顔が苦痛に歪んだ。ゴキブリ型生物は興奮して産卵管のついた尾部を激しく振り出した。

「なあに、心配ない。お前の体に産み付けるのは、受精していない非受精卵ばかりだ。ヒューマノイド種族のメスに生理があるのと同じように、無性生物の我々にも、定期的に排卵をしたいという欲望が湧いてくるのだよ。もっとも、人間の体に卵を産み付けたいと思うような変態は、私だけだろうがね」

ゴキブリ型生物は自嘲気味に説明すると、一旦、産卵管を引き抜き、亜希子の体の違う場所に、次々と管を刺し込んでは、卵を産み付けていった。そしてプレイが終わる頃には亜希子の肉体は、穴だらけになっていた。

「ううう、痛い、痛いよう、お母さん、助けて・・・」

セックスの快楽とは程遠い痛みに、亜希子は涙を流して泣きじゃくった。

「ほう、視覚器官からも分泌液が出るのか」

ゴキブリ型生物は、興味深そうに、尖った口を亜希子の顔に近づけると、繊毛で嘗め回し、涙を味見した。

「カリウム系の分泌液だな。せっかくだから、よく味わっておくか」

全身に開けられた傷穴から出血した亜希子は、全身血だるまになってのたうちまわった。

 

 その次に亜希子を指名したのは、岩石型生物だった。一見、直径1メートルほどのただの岩石のように見える。

「どうすれば、いいのでしょう?」

プレイルームに運び込まれた岩の塊を前にして亜希子は途方にくれた。前回のプレイで付けられた傷穴からの出血は、応急処置で止まっていたが、休息時間は与えられず、全身の痛みに耐えながら、次の客とプレイをしなくてはならない。

「どうすれば、お客様に御満足いただけるかは、お前自身が、お伺いするのだぞ」

半魚人の従業員はそう言い残して、さっさと立ち去っていった。岩石型生物は無口な性質らしく、亜希子が何度話しかけても何も喋らない。しょうがなく亜希子は全身にローションを塗り、岩石に抱きついて全身ローションプレイを始めた。

「うっ、うっ・・・傷が痛むよう・・」

ごつごつした表面の岩石は、傷ついた亜希子の肌をさらに痛めつけた。数十分間、亜希子は痛みをこらえて、全身で奉仕したが岩石型生物は何の反応もない。

(不感症なのかしら)

次に亜希子は、この岩石生物の触覚と思しき、僅かな出っ張りを口に含んで舐め始めた。その時、僅かだが岩石生物が震えたような気がした。しかし、反応はそれきりだった。亜希子はムキになり、2年間のダッチワイフ生活で習得した、あの手この手で懸命に岩石生物を喜ばせようと責め立てたが、結局、なんの反応も引き出せずに、プレイ時間は終了した。岩石生物は、来た時と同じように、半魚人の従業員によって無言で運び出されていった。疲れ果てた亜希子がプレイルームで呆然としていると、半魚人が喜び勇んで戻ってきた。

「おい、新人!お前なかなかやるじゃないか。今のお客様の、満足度アンケートが、満点だったぞ。帰り際にチップもはずんでくれた。いったい、どうやってお客様を喜ばせたんだ?」

「・・・・」

亜希子は、全く思い当たるフシがなかった。

(こういうのを、いいお客様って言うのかしら・・・)

快楽に濁った頭でボンヤリと亜希子は考えた。

 

第96話、ブルーと巨人女

 

 さざなみ港沖の海面を一人の女が漂っていた。長い黒髪の非常に美しい女だったが、その姿は全裸で、背中に円筒形の小型スクリューのようなものを背負っている。女はボンヤリと青空に輝く太陽を眺めていた。

(もうそろそろ夏も終わりね。なんだか最近、海水も冷たくなってきたわ)

女の名前は清水優香(24歳)、ネオガイア星人のマッドサイエンティスト、ピタゴラス博士によって改造された水中専用サイボーグだった。拉致され、改造される前はオリンピックにも出場し、シンクロナイツスイミングのメダリストとして活躍していた時代もある。戦闘用サイボーグとしての、2年間に渡る生活では、常に仲間の背後に隠れ、発射に時間のかかるオマンコ魚雷を敵に向かって撃っていただけなので、戦闘への参加回数に比べて、肉体に損傷はほとんど負っていない。仲間と共に宇宙中を転戦し、挙句の果てには宇宙海賊の手先となって地球を襲撃したのだが、戦闘の途中で逃げ出した。そして、それ以来半年間、下水道に潜んだり、さざなみ港近辺の海域で海草を食べたり、夜中に時折、街に上陸してはゴミを漁るという生活を送っていた。肺が水中でも呼吸可能な人工肺に改造されているので、海中で生活することは、さほど苦にならない。

(渚沙は、死んだのかしら。あの状況では、とても生きているとは思えないわ)

サイボーグ仲間の渚沙が、機動隊に滅多打ちにされて崩れ落ちる、最後の場面を思い出した。渚沙からは、同じサイボーグ仲間として行動を共にしている間中、ことある事に、陰湿ないじめを受け続けていたのだが、今となっては、それも懐かしい思い出である。

(そろそろ、冬ごもりする場所を見つけなくっちゃ。いくら水中で呼吸が出来るからっていっても、あたしの体の90パーセントは生身なんだから、冬の海では暮らせないわ)

全ての束縛から解放された今、優香には、家に帰るという選択肢もあったが、無残にも改造された肉体を、家族や知人の前にさらすのは耐えられなかった。もともと、2年前まで優香は、話題の美人アスリートとしてマスコミにも名前が知れ渡っていたのだ。優香は、白い裸身をくねらせて方向を定めると、背中のスクリューを起動させ、ゆっくりと、さざなみ港の沖合いにある島影に向かって泳ぎ始めた。

 

 優香は人気のない砂浜から島へと上陸した。そんなに大きな島ではないようだ。全裸の肌に秋風がしみる。

(まず、服を手に入れなくちゃ)

優香は海岸沿いの林の中を、人目を忍んで港町のある方角へと歩き始めた。やがて1キロメートルほど進むと、民家を発見した。真っ昼間だと言うのに人の気配がない。全裸で野外を歩く事に慣れた優香は、堂々と集落の間の細い道を歩いて行く。立ち並ぶ民家の中には倒壊したものもあり、まるで廃墟のようだった。

(人間は住んでいないのかしら。あたしにとっては、その方が、都合がいいけど)

優香は衣服を盗もうと、一軒の民家に無断で入っていった。しかし、無人だと思っていたその家の奥の部屋で、いきなり優香は数人の人間と鉢合わせた。

「な、なんじゃ、お前は!いきなり人の家に上がりこんで来おって!」

初老の男と小さな子供二人が雨戸を閉め切った薄暗い部屋に潜んでいたのだ。

「ひっ、無、無人じゃなかったの?」

優香は悲鳴を上げる。

「お前は、物盗りか?この家に人がおらんと思って入ってきたんじゃな!」

「・・・・」

図星だったので優香には返す言葉がなかった。

「この家で、わしらは、隠れておるだけじゃ。巨人女に見つからんようにの。若いもんは、ほとんどあいつに連れ去られてしもうた」

「巨人女?」

「お前、見かけん奴じゃが、ひょっとして島の外から来たのか?それにしてもなんで裸なんじゃ?」

老人は、1年前に突如現れ、それ以来、島を荒らしまわっている巨人女について語り始めた。事の始まりは、沖島と呼ばれるこの小島で、ネオガイア星人によって行われた巨大ロボット『キュクロプス1号機』の実戦テストが発端だった。その時、対戦相手として連れてこられた惑星タイタンの巨人女レア(現在、24歳)が、実戦テスト終了後も島にそのまま放置され、野生化したのだった。海のない惑星で育ったレアは水泳が全く出来ず、自力で島を出ることが出来ない。しかも重傷を負ったまま手当てもされなかったレアは、痛みのあまり、島中を転げ周り、森の木々や民家を押し潰した。そして昼夜を問わず呻き声を上げ島民を悩ました。そしてついには、腹を空かせたレアは、唯一の集落である港町を襲い、人々に食料を供出するように要求したのだ。

「これから毎日、あたしが腹いっぱいになるだけの食料を出せ。もし出せないんなら、お前達を一人ずつ丸焼きにして食ってやるぞ!」

「ひいい、巨人様。どうか、それだけはお許しを」

レアは本土との交通がほとんど途絶え、細々と食いつないでいる島民から、なけなしの食料を略奪した。そればかりか、島の若い男女を、島の中央部の山の中にある、ねぐらへと連れ去り、自分の傷の手当のために奉仕させ始めた。

「くそっ!ネオガイア人のクソロボットにつけられた傷が、痛む、痛む、痛むううう!」

レアが雷鳴のような声で吼えると、奉仕している島民の男女がすくみ上がる。怒りにまかせて、握り潰されたり、寝返りの巻き添えを食って圧死する者も続出した。レアの傷は全身複雑骨折で、手当するものもいないまま、自然に折れた骨が癒着するのを待つしかなかった。

「ムシャクシャする!」

ある日、レアは痛みを紛らわせるために一人の若い男をつかみあげると、頭からオマンコに挿入した。身長20メートルのレアにとって、普通の人間の体は、ちょうど良いオナニー用のバイブレーターの代わりになるのだ。レアは男の両足をつかんで、男の上半身を激しくオマンコから出し入れした。

「あっ、イイ・・・」

窒息しそうになって懸命にもがく男の動きが、レアのGスポットを刺激する。オナニーをしている間は、少しだけ痛みを忘れる事が出来る。レアはもう片方の手で、別の男をつかみ上げると、巨大な自分の乳房の谷間に押し当てた。

「うう、イクううう」

レアの体がビクンと痙攣した。大地が揺れ、取り巻きの島民の男女がよろけて倒れそうになった。

「ハア、ハア、ハア・・・」

レアが気を終え、ようやくオマンコから引き抜かれた男は、呼吸困難で意識を失っていた。

 

 老人は、優香に語り続けた。

「最近では、島の食い物があらかた食い尽くされてしもうての。とうとう、あの巨人女は、人間を丸焼きにして喰らい始めたという噂じゃ。」

老人は身震いし、幼い子供達がシクシクと泣き始めた。

「うえーん、パパとママが捕まって、連れて行かれちゃったの・・・」

優香は同情を感じたが、かといって自分には関係のない話だった。どうやら、この島は冬ごもりをするには、少し危険な場所らしい。

「何か、着るものを分けて頂く訳にはいきませんか?私も宇宙人に捕まって肉体改造を受けて以来、裸で過ごす事を強制されていたのです」

「宇宙人?そうか、あんたもな。・・・くそっ、宇宙人め、厄介なものを島に持ち込みおったものじゃ・・・服なら、この子たちの母親のものが、その辺のタンスにしまってある。勝手に持っていくがよい。」

優香はタンスから女物のトレーナーと、デニム地のスカートを取り出すと身に着けた。ほぼ衣類の着用は2年ぶりである。長いこと全裸に慣れていたので、なんとなく、肌に触れる布地にごわごわとした違和感を感じた。パンティは、いざと言う時いつでもオマンコ魚雷を発射できるように、履かないことにする。背中のスクリューと全身に埋め込まれた数十本の触手が邪魔だったが我慢するしかなかった。

「ありがとうございます。では、お元気で」

優香は老人と子供に別れを告げると、唯一の集落である港町の方へと歩いて行った。

 

 島の中央部にある台地では、巨人女のレアが人間達を相手に憂さ晴らしをしていた。

「お前達、二人一組になって戦え。そして負けたもの同士、さらに戦うのだ。最下位になった者を、串焼きにして今日の昼飯にする」

「ひいいい、お助けを、巨人様・・・」

捕まっている数十人の人間達は哀願したが聞き入れられなかった。仕方なく言われたとおりに二人一組になって殴り合いを始める。男も女も関係なく、全員がボロをまとったまま命懸けで戦った。

「悪く思わないでくれ、俺だって死にたくねえんだよ!」

「いやあああ、来ないで・・」

踵の折れたハイヒールを持った女が、それを武器にして屈強な男と殴り合ったりしている。喧嘩に負ける割合はやはり、男性より体力的に劣る女性のほうが高かった。

「今日の昼飯はお前に決まりだね」

レアは最後に戦いに敗れた女を、ひょいとつまみあげた。数人の対戦相手にぶちのめされた女の顔面は既に血みどろで、鼻柱も折れている。

「無様だねえ。あたしも1年前、同じようにネオガイア人のクソロボットに散々ぶちのめされたんだよ」

「助けて下さい、巨人様。あたしには、幼い二人の子供がいるのです・・・主人は先日あなた様に食べられました。この上あたしまでいなくなったら・・・」

女は哀願した。しかし、レアが取り合うはずもなかった。

「知らないねえ、そんなこと。お前を食べなかったら、あたしの空腹はいつまで経っても治まらないじゃないか?」

レアは木の幹でつくった串を、女の肛門から口に突き抜けるようにズブリと、ひと思いに突き通した。

「うぐううう!」

女は口からゴボゴボと大量の血を吐き出して絶命した。レアは他の人間に用意させた焚き火に、女の体をかざすと、ヨダレを垂らしながら、こんがりと焼き始めた。

 

 港町にも人影はなかった。巨人女の襲来を恐れて、生き残った島民たちはどこかに隠れ潜んでしまっているらしい。この島はもともと観光地だったらしく、みやげ物店や、旅館などが数件立ち並んでいたが、店先に並んでいた食料品は島民によって漁り尽されており、優香が食べれるようなものは残っていなかった。

(これ以上、この島にいても何も収穫はなさそうだわ。食べ残しを漁れるようなゴミ箱もないし・・・)

優香があきらめかけた時、ズシーン、ズシーンと遠くから地鳴りのような音が聞こえてきた。

(まさか、巨人?)

優香が、音のする方角を振り返ると、身長20メートルはあるかと思われる巨人女が、物凄い勢いで近付いてくる所だった。右足が不自由らしく、引きずるように歩行している。1年前の戦いで骨折した骨が変な風に癒着したのだ。ガラクタのように破壊された装甲服の残骸を身につけていた。

「こんなところに、まだ一匹、生きのいい人間が残ってるじゃないか!」

雷鳴のような声だった。台地のねぐらから町の方を眺めていたレアが、うろうろと歩き回っている優香の姿を発見して襲い掛かって来たのだった。ちなみにレアの視力は20.0である。

(逃げなきゃ!)

優香は海中に逃げ込むために、波止場の方へと走り始めた。しかし、重いスクリューを背負っている優香のスピードは、地上では小学生よりも鈍い。あっという間に追い着いたレアは、優香の体をつかみ上げようと右腕を伸ばしてきた。

(駄目、追いつかれたわ)

優香は上半身のトレーナーを脱ぎ捨てると体に埋め込まれた数十本の触手を伸ばして、伸びてきたレアの右手を払いのけようとした。

「なんだ、お前、サイボーグか!」

レアは、優香の触手を逆に指に巻きつけて絡め取ると、馬鹿力で、数本まとめて思い切り引き千切った。

「あああああ!」

優香は絶叫した。宇宙海賊によって埋め込まれた触手は優香の肉体の一部となっており、神経も通っているのだ。優香はあまりの苦痛に失神しそうになった。

「フハハハハッ・・・なんと、弱っちいサイボーグだ」

レアは久しぶりに新しいオモチャを見つけた子供のように満面の笑みを浮かべた。そして優香の触手を一本づつ、嬲るように引き抜き始めた。

「どうだ?痛いか!痛いか!」

「あああああっ!」

一本引き抜かれる度に、優香が目を見開き、渾身の力で絶叫する。レアが丁寧に全部の触手を抜き終わった時、優香の全身は穴だらけで血まみれになっていた。

「お前は、ここで、生のまま食ってやるぞ」

レアは無力化した優香を軽々と摘み上げると、口に放り込むために、自分の顔の前に持ってきた。

(このままじゃ、食べられてしまう・・・ああ、渚沙、あなたならこんな時、どうやって切り抜けるの?)

優香は朦朧とする意識の中で、以前に死んだサイボーグ仲間の事を考えた。

「・・・う、あああ、巨人女様・・・食べる前にひとつだけ、あたしの頼みを聞いてください。」

息も絶え絶えに、優香が頼み込んだ。

「ああ?頼みだと?・・・なんだ、とりあえず言ってみろ」

「・・・死、死ぬ前にもう一度オナニーをさせて下さい・・・御主人様に、オナニー禁止令を出されて、1年以上もオナニーをしていないんです・・・」

「フハハハハッ、こりゃ傑作だ。面白い、冥土の土産だ。見ていてやるからやってみろ。どうせなら、喘ぎながら思い切り気分を出してやるのだぞ」

「あ、ありがとうございます、巨人女様・・・」

優香は全身の激痛に気絶しそうになりながら右手の指を股間に這わせてオナニーを始めた。本当に一年ぶりの快楽である。

「あ、ああ、イイ、気持ちいい・・・オナニーとっても気持ちいい・・・」

優香は激痛と快楽の入り混じった感覚の中でたちまち絶頂に達した。あまりにも長いオナ禁から解放されたのだ。優香はオルガスムスに達する瞬間、腹筋を使って腰を浮かせ、オマンコを覗き込んでいるレアの右目に、弾道を合わせた。

「いくうううう・・・オマンコ魚雷、発射っ!」

優香の股間から煙の尾を引いて小型魚雷が発射された。至近距離からレアの顔面に命中した魚雷はすさまじい威力で爆発した。

「うおおおおおお!」

意表をつかれたレアは、優香の体を空中に放り出し、のけぞるうように後方に吹き飛ばされた。落下して地面に激突した優香はしたたかに腰を打ったが、よろよろと、どうにか立ち上がると、水中に逃れるために、一番近い距離にあるテトラポッドによじ登り、乗り越えると、そのまま転げ落ちるように、ドボンと海中に姿を消した。30分後、沖島での原因不明の爆発を探知したネオガイア星人のパトロール艇が、現場に到着した時、発見したのは、血みどろの顔面を押さえたまま倒れ込んで動かない、かつて試作ロボットの実戦テストに使われた巨人女の死体だけだった。

 

第97話、『うつけ』の野望

 

紀元1534年、織田信長は、尾張の国の城主、織田信秀の長男として生まれた。幼い頃より奇行が目立ち、『うつけ』と呼ばれていた。

「おい、『うつけ』が来たぞ。逃げろ、何をするかわからんぞ」

裸馬に乗った信長が現れると、畑仕事をしていた百姓達は大慌てで逃げ出した。

「うわっはっはっ、今日もいい天気じゃのう!」

信長は、上半身が裸で、火縄銃を担いでいる。何を思ったか、突然それを構えると、逃げようとする百姓達の間に撃ち込んだ。

「ひいいっ!許してくだせえ」

信長は大笑いをしながら馬から下りると、逃げ遅れた百姓娘を捕まえ、草むらに組み敷いた。

「股を広げろ!」

娘は震えながら着物の帯をほどき、下半身を信長の前にさらした。この狂った『うつけ』の話は噂で何度も聞かされており、逆らうと命の保障はないと言う。信長は娘の口に火縄銃の銃口を突っ込んだ。

「あぐうっ、い、命ばかりはお助けを・・・」

娘は恐怖のあまり半狂乱になって哀願した。

「気持ちよくなかったら、引き金をひくぞ。・・・無理矢理、女を犯すのはたまらんのう」

根っからのサディストである信長は、犯しながら何度も何度も、娘の顔を、意味もなく平手で打ち続けた。

 

 やがて父の信秀が病死すると、しきたり通り長男である信長が、弱冠19歳で城と領地を引き継いだ。しかし、それでも奇行は収まらない。たまりかねて補佐役だった平手政秀が切腹したが、それでもますます狂気は激しくなる一方だった。

「城下から女を集めろ。飛び切りの美女どもをな。股の割れ目に筆を咥えさせて、新春書初め大会を執り行うのだ!」

家臣達は眉をひそめたが、相手は狂人である。逆らうと何をしでかすかわからない。仕方なく、手分けして城下から庶民の娘を徴収してくる。その中には売春婦なども混じっていた。連れてこられた女たちは丸裸にされ、後手に縛られた格好でオマンコに筆の柄をねじ込まれた。

「い、痛いですう」

「あたし、字を習った事がないので書けましぇん」

生娘だった女は、処女膜を破られて、恥ずかしさと痛みのあまり泣き出した。

「字が書けんのなら、猿の絵でも描いてみろ」

「はい、お殿様・・・」

信長は、女たちの中に一人だけ、他の娘達とあきらかに違う雰囲気の女がいることに気がついた。その女は若かったが、表情一つ変えずにオマンコに咥え込んだ筆で鮮やかに『賀正』と書き、その横に見事な猿の絵まで描いている。女は城下で売春をしていた売春婦のようで、体中に無残な傷跡がいくつも刻まれていた。

「ほう、なかなか上手ではないか。女、名は何と言う?」

信長に呼びかけられ、女は顔を上げた。それは、不老不死の女、久石千鶴だった。

「千鶴と申します。春をひさぐ、卑しい女でございます」

信長はその千鶴という女に不思議な感覚を覚えた。

「お主、俺と以前、どこかで会ったことがあるか?」

「いえ、信長様にお目通りいたしますのは、初めてでございます。」

そう答えながらも千鶴も、この信長という男に、どこかで以前、遥か昔に会ったような気がしてならなかった。

(この高圧的な態度、確かに記憶がある。そうだ、思い出した、20年前、南米で出会ったあの男、インカ帝国の皇帝アタワルパだ・・・)

千鶴は、激しいデジャブーに襲われ、1600年にも及ぶ遠い記憶の中に沈み込んでいった。

(いや、それだけじゃないわ。なぜ、今まで気付かなかったんだろう。この男には、もっと前にも出会った事がある・・・あれは、紀元3世紀の中国で出会った、乱世の奸雄曹操。それに、13世紀、モンゴル高原で出会ったジンギスカン、全部同じ人間だわ・・・・それ以外の時代でも出会っているかもしれない)

信長は、千鶴の顔を長いこと、必死で何かを思い出そうとするかのように険しい表情で眺めていた。そして、突然立ち上がると、何を思ったか扇を取り上げ、舞を舞い始めた。

 

人間、五十年〜下天の内を比ぶれば〜

夢幻のごとくなり〜

一たび、生を得て〜滅っせぬ者のあるべきか〜

 

信長は平家物語の中のこの一節を事のほか気に入っており、興奮すると歌い出すという奇癖がある。

「これが、どう言う意味かわかるか、千鶴?」

舞を終えた信長が、全裸で平伏する千鶴に扇を突きつけて問うた。

「私は、おろかな女ゆえ、わかりませぬ。どうか教えてくださりませ」

「これはな。一人の人間の一生など、所詮、長くとも50年あまりに過ぎぬ、という意味だ。古より続く悠久の時の中では、昼寝をして夢を見ておるのと同じ事だと言うことだな。俺も確かにその通りだと思う」

「・・・・」

(この男、不死者?・・・違うわ、アタワルパが首をはねられて死ぬ場面は、確かに目撃した。それに、人相も年齢も全く違う。では一体何なのだろう・・・この感触、間違いなく同じ人間なのに)

ひょっとして時間管理局の罠か、とも思った。しかし、それなら、いつもは、いきなり予告もなく襲ってくるはずだった。千鶴は20年前、インカ皇帝アタワルパが処刑される直前に叫んでいた言葉を思い出した。

『太陽の子である余を斬首にするなど、異人ども、決して許さんぞ!必ず生まれ変わって、復讐してやる!』

確かにそう叫んでいた。千鶴は背筋が凍るような可能性に思い当たった。

(これは転生!生まれ変わりだわ!)

アタワルパが処刑されたのが1532年、織田信長が誕生したのが1534年。年代もピタリと一致する。これは、時間管理局の陰謀などではなく、『生まれ変わり』という自然現象なのだ。しかし、これが全ての人間に対して適用されるのか、それとも選ばれた魂だけなのか・・・。不老不死の肉体を持ち、1600年を生きてきた千鶴も、眼前の織田信長を前にして、恐怖のあまり体の震えが止まらなかった。

 

 (もしも、この男が永遠に転生を続けるのなら、現代世界にもこの男の生まれ変わった人間が存在するのかもしれない)

千鶴は、この信長という男を、もっとよく観察してみたくなった。

「信長様。どうか、私を、卑女としてお傍にて、お使いくださいませ」

千鶴は平伏して頼みこんだ。しかし、信長は明らかに嫌そうな顔をした。

「何、お前をか。どこの誰とも知れぬ淫売女を、俺の近くになど置けん!」

「そこをなんとかお願いいたしまする」

「ええい、しつこい!ならば、お前に似合いの主人を紹介してやろう。猿!猿!」

信長が、パンパンと手を鳴らすと、庭に控えていたみすぼらしい格好をした男が座敷に上がりこんできた。

「こいつは、最近、俺の草履取りとして雇った、猿だ。お前の主人にはぴったりだろう」

「木下藤吉郎でございます」

うやうやしくお辞儀をして、名前を名乗ったその男は、明らかに猿そっくりだった。

「お前に名前などいらん。猿で充分だ。お前にこの女をやろう。好きに使うがよい。」

「有難き、幸せにございます。信長様」

猿と呼ばれても、その男は一向に怒る気配もなかった。男はまだ若いようで信長とほぼ同年代のようだった。

(もしや、この男が豊臣秀吉?)

こうして千鶴は、若き日の秀吉に仕えることになった。千鶴を手に入れた藤吉郎は、舌なめずりをした。

「俺の仕事は、信長様の草履を懐に入れて暖めることだで。お前は、その俺の草履を懐に入れて暖めるがや」

藤吉郎は、百姓の出身らしく訛が激しい。さらにこの男には、所構わず猿のようにオナニーをするという癖があった。

「俺は、一日10回はこうやってチンポをさすらんと、気持ちが落ち着かんだで。これからは、お前もオマンコを暇があればさするとええがや」

千鶴は、藤吉郎に一日10回以上のオナニーを強制されることになった。城庭の片隅で茂みに隠れて、主人のいいつけ通りオナニーをしながら、千鶴は考えた。

(そう言えば、昔・・・いや昔じゃなくて未来だわ。こんな風に一日中オナニーに明け暮れている女を見たことがある。あの女は結局、死んだんだっけ)

宇宙人によって、オナニーをやめると爆発するという、恐ろしい首輪をはめられたその女は、千鶴が無理にオナニーをやめさせ、死に追いやったのだ。

(違うわ、あの女はまだ、生まれてさえいない)

遠い未来まで千鶴が生き抜けば、死ぬ前の、その女に再び会う事があるかもしれない。

(もし、会えたら、見殺しにしたことを、謝ろうかしら・・・)

千鶴が物思いにふけっていると、藤吉郎の罵声が飛んだ。

「俺の草履は暖まっただか?次はこれを暖めるだがや!」

藤吉郎は、千鶴の着物の胸元から荒々しく草履をひったくると、今度は尻をからげて赤い褌を外し、千鶴に手渡した。千鶴は眉をひそめながらも、異臭のする藤吉郎の褌をきちんとたたんで懐に入れた。こうして体温で暖めるのだ。

「さすがに一日中、チンポをさすってると手が疲れたでや。代わりに、お前の手でさすってくれんかの」

「はい、御主人様」

千鶴は、小指の欠けた左手でそっと藤吉郎のチンポを握り締めると、ゆっくり上下に動かし始めた。

 

 織田信長が27歳になった時、隣国の今川義元が、突如として2万5千人の大軍を率い、京の都を目指して進軍を開始した。今川軍の進路上には、信長の居城があり、真っ先に攻撃を受けることになる。

「我らの兵は、最大でどれぐらい集められるか?」

信長は、家臣に尋ねた。

「急な事ゆえ、2千が限度かと・・・」

「2千対2万5千か。うつけの俺でなくとも、戦にならぬな。わーはっはっはっ!」

何がおかしいのか、信長は笑い転げた。家臣たちは信長の奇行には慣れており、全員暗い面持ちで口をつぐんでいる。

「猿!猿はおらぬか!」

突然、信長が叫ぶと、草履取りの男が、座敷に上がりこんできた。

「戦の勝ち負けは、兵の数で決まるわけではない。こういう場合は奇襲をかければ良いと昔から相場が決まっておる。よいか、桶狭間付近で義元を急襲し暗殺する。猿、義元の本陣に潜入し、俺が攻撃をかけたら、義元の居場所を正確に合図しろ。成功したらサムライに取り立ててやるぞ。」

「有難き、幸せだがや」

木下籐吉郎は、それがどんなに危険な任務かも考えずに狂喜した。出世欲だけは人一倍強いらしい。こうして草履取りの藤吉郎は、千鶴を連れて桶狭間へと出発した。

 

 織田軍の丸根と鷲津の砦が今川軍の猛攻を受けていた。兵力に差があり過ぎ、長くは持たないだろう。一方で、織田に属する、桶狭間の地理に詳しい梁田正綱という土豪が、今川軍の動きを正確に把握し信長に報告を入れている。旅芸人に変装した藤吉郎と千鶴は、その情報を元に、今川義元の本陣の近くをウロチョロし、偶然を装って捕まった。

「義元様。旅芸人を捕まえました。いかがいたしましょう?」

「ふむ、織田との戦は、ほぼ我らの勝ちじゃ。もとより、うつけの信長など我らの敵ではないわ。ここらで、茶の湯でも楽しみながら、芸でも見物しようかの」

公家かぶれの今川義元は、お歯黒をし、顔に白粉を塗りたくっている。急遽、全軍に休息のふれが出され、沿道で茶会が始まった。藤吉郎と千鶴も余興を添える事になる。

「お前達、どんな芸が出来るのじゃ?」

「猿のモノマネができるだで」

藤吉郎は、自分の外見を利用して猿のモノマネを始めた。しかし、全然面白くなかった。

「つまらんのう。もう一人の女芸人はどんな芸を見せてくれるのじゃ?もし、次も外したら、二人とも、首をはねるでおじゃる」

千鶴は真っ青になった。外すわけにはいかない。千鶴は着物を脱いで全裸になると逆立ちをした。そして両脚を左右に大きく開く。

「藤吉郎様。はやく」

「お、おお」

藤吉郎は打ち合わせ通り、長さ50センチほどの、細長い棒を取り出すと千鶴の肛門にズブリと突き立てた。そしてその上に直径30センチほどの巨大なコマを置いて、勢いをつけて回す。千鶴は開いた両足で体のバランスを取り、腰を前後左右に動かして、コマが落ちないように回転させ続けた。

「人間コマ回しでござーい」

旅芸人に変装する事が決まってから、ここまで来る道中、必死で練習してきたのだ。見事だったが、公家趣味の義元には不興だったようだ。

「たいした芸だとは思うが、下品すぎる!残念だが、首をはねるでおじゃる」

「そ、そんな、待ってくれだで!俺は死にたくないがや!」

藤吉郎はわめき出した。義元の命令で武士たちが刀を抜いたとき、いきなり激しい雨が降り始めた。

「もう、せっかく、まろが茶会を楽しんでおると言うのに、無粋な雨でおじゃるなあ。」

義元がため息をついた。千鶴はなおも逆立ちの姿勢でコマを回し続けながら、雨音に混じって、かすかにときの声を聞いたような気がした。信長の奇襲だ。

「藤吉郎様。合図をしてください!」

「えっ、ああ。そうだで、殿が攻撃をかけてきたがや。おーい!おーい!義元はこっちだがや!」

こうして、藤吉郎と千鶴の活躍で今川義元の本隊は総崩れになり、義元も首を打たれて死亡した。織田信長はこの戦で一挙にその名を天下に知らしめ、戦国大名としての道を歩み始めるのである。

 

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