第84話、高原沙貴の日常生活

 

 高原沙貴(19歳、女子大生)の生活は多忙を極めていた。昼間は私立大学の文学部英文科に通い、夜は、高原家の家計を助けるためにファッションヘルスでアルバイトをしている。自宅にいる間はネオガイア星人の居候、テミストクレスの陵辱を受け、大学では、弱みを握られた、同級生である浅倉忠文(20歳)への、セックスフレンドとしての務めを果たさなければならない。忠文の下宿しているワンルームマンションは大学の正門から数分の場所にあり、沙貴は授業の合間に携帯電話で呼び出されては、セックスの相手をさせられていた。

「高原さん、本当に淫乱なんだね」

忠文は沙貴の弾力のある乳房を揉みしだきながら言った。沙貴の体にはファッションヘルスの客につけられたキスマークの跡や、自宅でテミストクレスに付けられた鞭跡などが無数にある。忠文は沙貴のオマンコとアナルに一度づつ射精をすると、スッキリした表情でタバコに火をつけた。

「昨日、デジカメを買ったんだ。君の恥ずかしい姿を撮ってあげようと思ってね」

「いや、恥ずかしい・・・」

「風俗でアルバイトをしているくせに、恥ずかしいも何もないだろう?さあ、大股を開いて、オマンコがよく見えるようにポーズをとってくれ」

沙貴は忠文の命令に逆らうことは出来なかった。風俗でアルバイトをしていることを大学でバラされたくないのだ。言われるがまま、沙貴は激しいセックスが終わったばかりで、まだピンク色に上気している裸身を、忠文が構えたデジカメのレンズの方に向けた。

「いいよ、いいよ。次は四つん這いになって、お尻を高く上げてくれ。もちろん顔もバッチリ写るようにこっちを向けろよ・・・」

沙貴は様々な恥ずかしいポーズを取らされ、十数枚の写真を撮られた。

「クッ、クッ、クッ・・・この写真をインターネットの掲示板で世界中にバラ巻いてあげるよ」

沙貴の顔が青ざめた。しかし、忠文はお構いなしにデジカメをパソコンに接続すると撮影したばかりの写真をダウンロードし、ネット上のありとあらゆる掲示板に貼り付け始めた。

「えーと、画像だけじゃ面白くないから、君の実名と自宅の住所、携帯電話の番号なんかも一緒に書き込んであげるよ。自己紹介は『私は風俗でアルバイトをしている淫乱マゾの女子大生です。街で見かけたら気軽に声を掛けて、あたしの体をお触りしてね』と・・・あ、そうだ、一週間の通学時間帯や経路も書いておけば、痴漢やストーカーがわんさと集まって来て面白いかもな」

忠文が笑いながらキーボードを叩いている。さすがの沙貴も抗議した。

「そんな・・・お願い、やめて、浅倉君。それだけは許して」

ネオガイア星人の居候が家に来てからというもの、ただでさえ悩み事が多いのだ。そんなことをされたら、常に変質者に狙われ、沙貴の生活は気の休まる時間がなくなってしまう。

「うるさいっ、どうせ君は淫乱な女なんだ。一瞬でも男なしではいられない体なんだろう。だから風俗でバイトしてるんじゃないのか!」

「違うわ、風俗で働いているのは、家の家計が苦しいからよ」

忠文は必死で抗議する沙貴の言葉を、聞く耳を持たずで聞き流し、さっさと画像と紹介文をアップロードしてしまった。

「さあ、これでもう取り返しがつかないよ。君の恥ずかしい画像は、世界中のインターネットユーザーがコピーにコピーを繰り返し、未来永劫回収することは出来なくなったんだ」

沙貴はしくしくと泣き出した。

「君の携帯電話の番号も書き込んだから、いろんな人が電話を掛けて来ると思うけど、ちゃんと相手の話をよく聞いて、丁寧に応対するんだぞ。間違っても着信拒否にしたり、携帯番号を変えたりしたら許さないからな!」

十数分後、早速、沙貴の携帯電話が鳴り始めた。

 

 「おい、電話が鳴ってるぞ」

沙貴が携帯電話に出るのをためらっていると、忠文が注意した。沙貴は恐々と携帯電話の通話ボタンを押すと、耳に当てた。

「はい、高原です・・・」

「沙貴ちゃん?あ・・・ネットの掲示板、見たんだけど、あれって、書いてること本当?」

見知らぬ男のこもった声だった。沙貴は返答に困り、忠文の方をチラッと見ると、ちゃんと答えろよ、と言わんばかりに睨んでいる。

「え、ええ、本当のことです・・・」

「じゃあ、あれは、イタズラじゃなかったんだ。へーえ、君、本当に淫乱なの?お金に困って風俗でアルバイトしてるんだって?」

「はい・・・」

「ふーん、今、どんな格好しているの?」

「ベージュのワンピースを着ています。」

「下着は?どんなパンティ履いてるの?」

「パンティは履いていません。普段はノーパン、ノーブラで生活してます」

下着を着けずになるべく露出度の高い服装をする、というのはテミストクレスに強要されてのことだった。今、沙貴が身に着けている衣服はベージュ系の、ミニでノースリーブスのワンピースだけだった。

「君って、変態なんだね。じゃあさ、いつもセックスをどんな風にするのか教えてよ」

見知らぬ男の卑猥な質問は延々と続いた。それに対して、沙貴は親切丁寧な口調で事細かに答えなければならない。

「今日は沙貴ちゃんと楽しい会話が出来てうれしいよ・・・また、気が向いたら電話するからさ」

「はい、いつでも電話してください。お待ちしています」

30分ほど会話を続け、やっと電話が切れた。沙貴は全身汗ビッショリになり、疲れ果てて携帯電話を耳から離した。間髪を入れず、再び呼び出し音が鳴り始めた。次の電話がかかってきたのだ。

「また、鳴ってるぞ、早く出ろよ」

忠文に即されて、沙貴は泣きそうになりながら、携帯電話を耳に当てた。

「はい、高原です」

「もしもし・・・ネットの掲示板を見たんだけど・・・」

先程とは違う、別の男の声だった。

 

 沙貴の携帯電話はその日から、鳴りっぱなしになった。一日中電話に出続けることは不可能だったが、時間の許す限りなるべく出なくてはいけない。一日中見知らぬ、電話の向こうの男達と卑猥な言葉を交わし続け、沙貴は頭がおかしくなりそうだった。さらに忠文が画像とともに沙貴の住所と一日の行動パターンもネットの掲示板に掲載したため、複数のストーカーに狙われるハメにもなった。

「行ってきまーす!」

沙貴が大学に行くために家を出ると、見知らぬ車が高原家の玄関から少し離れたところに止まっていることに気付いた。運転席には男が乗っており、何気ない素振りをしているが、横目でジッと家の玄関を出る沙貴の姿を追い求めている。沙貴は背筋に悪寒が走ったが気にせず、歩き始めると、今度は、別の中年男が沙貴のすぐ後を、徒歩でつけてきていることに気がついた。その男も何気ない素振りで、沙貴の10メートルほど後を、つかず離れずに歩いているが、その視線は、蛇のように鋭く、沙貴の体を嘗め回すように見つめている。平静を装い、歩き続ける沙貴のポケットではマナーモードになった携帯電話が昨日からひっきりなしに振動していた。沙貴は朝っぱらから生きた心地もせず、数人のストーカーに狙われながらようやく最寄の駅にたどりついた。そして沙貴は学割で買った定期券で改札口を通ると、大学へと向かういつもの電車に乗り込んだ。実は、沙貴が毎回、乗り込む車両と、どの扉から乗り込むかという事まで忠文は曜日別に掲示板に書き込んでおり、沙貴は勝手に車両を変えることを禁止されているのだ。車内は朝の通勤ラッシュで乗客が多く、沙貴が乗り込むと、たちまち年代も様々な、スーツ姿のサラリーマン達にもみくちゃにされた。そして電車が駅を出てしばらくすると、沙貴のくびれたヒップに手が伸びてきた。

(あっ・・・)

今までも何度か電車内で痴漢にあったことはあるが、これほどいきなり、遠慮なく触ってこられたのは始めてだった。背後に立つサラリーマン風の男の手は沙貴のスカートの裾をめくり、ストッキングを履いていない太ももの直肌をまさぐってくる。沙貴はいつものようにノーパンノーブラだったため、スカートの下をガードするものは何もない。背中合わせのため顔の見えない男は太ももの手触りを充分堪能すると、次は股間の割れ目に指を伸ばし、ジットリとオマンコ汁で濡れ始めた柔らかい秘肉を摘み上げた。

(ううう・・)

沙貴は、思わず声を上げそうになるのを必死にこらえ、痴漢の男が触りやすいように少し脚を広げた。もし電車内で痴漢にあった場合、決して邪魔をせず、触りやすいような姿勢を自ら進んで取るようにと、忠文に厳命されているのだ。一人目の男に体をゆだねていると、やがて、別の男の手が沙貴の胸に伸びてきた。

(ああ、あたし、もう訳がわからないわ・・・)

数人の男に体を触られながらも、決して抵抗せず、沙貴はこれから毎日通学しなくてはならないのだ。あきらかに男たちは、沙貴の画像をアップした掲示板を見て、わざわざ時間と車両を合わせて待ち構えていた痴漢常習犯達だと思われる。特にグループという訳ではなく、たまたまネットを見て集まって来てこの場に居合わせただけなのだろう。沙貴は恐怖と快楽に混乱した頭で大学にたどり着くと、一時間目の授業で顔を合わせた浅倉忠文に、泣いて訴えた。

「浅倉君、あたし、こんなのがこれから毎日の生活だなんて、とても耐えられないわ。お願いもう許して」

沙貴は顔を真っ赤にし、半ベソ状態だったが、忠文は冷笑した。

「俺が許すも何も、一旦ネットに出回った情報はもう消す事はできないよ。今、俺に頼まれたって実際どうしようもない。いいかい、これがインターネットの怖さなんだ。わかる?高原さん」

どう考えればいいのか困り果てている、沙貴のポケットでは今も携帯電話が振動を続けていた。

「電話が鳴りっぱなしだよ、高原さん。さあ、早く電話にも出なくちゃ。」

「この電話、昨日から、ずっと鳴りっぱなしなのよ!」

「じゃあ、鳴りっぱなしだと早くバッテリーを消耗するから、常に充電器を持ち歩かないとね。・・・あ、そうだ。どうせマナーモードにしているんだったら、ビニール袋に入れて、オマンコに入れて持ち運べばいいじゃん。バイブレーターの代わりになって一石二鳥だよ」

「そんな・・・」

沙貴は自分の身に次々と振りかかる恥辱に精神の糸が切れそうだった。それでも沙貴は言われるがままに実行するしかない。教室のゴミ箱に捨ててあったビニール袋を拾うとトイレに駆け込み、変質者からの電話に、振動し続ける自分の携帯電話をオマンコに挿入した。

「あうううう・・・・」

刺激でオマンコから愛液が流れ出し、たちまち沙貴の股間はヌルヌルになった。快楽に耐えながら教室にもどると、忠文が言った。

「携帯電話を出し入れするのに、いちいちトイレに行くというのも不便だな。いい事を思いついた。お前の服のポケットの裏地に穴を開けて、そこから手を入れて取り出せるようにしよう」

「うう、はい・・浅倉君の言う通りにします」

歯を食い縛って携帯電話の振動による刺激に耐える沙貴は、自分がもうすぐ気が狂ってしまうのではないかと感じていた。

 

 高原家は、急に家族が増えて賑やかになっていた。生後数ヶ月の高原アキレスと高原豚子は、健康状態に何の問題もなく、すくすくと育っている。アキレスの母親である玲華はまだ14歳の中学3年生で、学校に通わなくてはならないため、二人の赤ちゃんの世話は主に、専業主婦である高原良枝(43歳)が行っている。

「ねえ、お母さん、あたし、また妊娠したみたい」

ある朝、学校に行く準備をしながら玲華が母親である良枝に告げた。

「えっ・・・」

良枝は言葉につまり顔面蒼白になった。アキレスを出産後もテミストクレスの命令で、日夜、近親相姦の乱交は続けられていたため、当然の結果ではある。高原家に住む男、テミストクレス(居候)、博和(実父)、篤志(実兄)のうちの誰の子供であるかは、生まれてくるまで判らない。良枝は暗澹たる気持ちになった。この異常な家庭環境はどこまでエスカレートするのか。

「そう・・・じゃあ、お腹を大事にしなきゃね。冷やしちゃ駄目よ。重い物もなるべく持たないようにしなくちゃ」

良枝は不安を抑えて、何気ない調子で言った。話題を変えることにする。

「そう言えば、沙貴は、まだ起きてこないの?」

「お姉ちゃん、今日は大学の授業が午後からみたいよ。なんか、最近お姉ちゃん、一日中、携帯電話で電話ばかりしているわ」

「そう・・・」

沙貴が高原家の家計を支えるために風俗でアルバイトをしている事は、家族全員が承知している。異常な環境でストレスが極限まで溜まっているのかもしれない。そっとしておこう、と良枝は思った。

「それにしても、お姉ちゃんはなぜ妊娠しないのかしら?」

「さあ、もともと不妊体質なのかもしれないわね」

母と娘が会話をしていると、一家の支配者であるネオガイア星人の脱走兵、テミストクレス(48歳)が起きてきた。

「おはようございます。テミストクレス様」

良枝と玲華は土下座をしてテミストクレスに挨拶をした。玲華はセーラー服姿、良枝は全裸にエプロンの姿である。テミストクレスは鷹揚にキッチンの椅子に腰掛けると、二人の母娘に命令をした。

「良枝、朝食を用意してくれ。その間に玲華は朝のフェラチオだ」

「はい、テミストクレス様」

二人は従順に返事をした。玲華はテミストクレスの足元に跪いて、パジャマのズボンをずらし、朝立ちで勃起したテミストクレスのナマコのようなチンポを口に含む。良枝はコップを取り出すと、自分の乳房をきつく揉み上げ、母乳を搾り出した。このところ、毎朝、テミストクレスは良枝と玲華の母乳を原料に使ったドリンクや、ホットケーキ、プリンなどを朝食にしている。そのため、一日中二人は母乳を搾り出して冷蔵庫に保存しなければならず、本当の赤ちゃんのアキレスと豚子は市販の粉ミルクしか飲ませてもらっていなかった。

「お待たせいたしました、テミストクレス様」

「うむ」

テミストクレスは食卓に用意された、母乳入りのホットケーキとミルクを満足そうに食べ始めた。

「やはり、新鮮な母乳はうまいな」

「ありがとうございます」

そのままでは酸っぱいため、母乳には砂糖が加えられ、甘く味付けされている。

「しかし、絞りたての母乳は生ぬるいのが難点だ。これからは、もっと朝早く起きて、絞った母乳を、俺様が起きてくるまで、冷蔵庫で冷やしておけ」

「はい、申し訳ございません。明日からはそのようにいたします」

「うっ、ううう・・・」

テミストクレスは朝食を取りながら絶頂に達し、玲華の口の中に射精した。

「本日もテミストクレス様のおいしいミルクを頂き、ありがとうございます。では、玲華は学校へ行ってまいります」

玲華はゴクリと精液を飲み干すと、口元を拭って、学生鞄を持ち家を出た。平和な高原家の日常生活の一コマだった。

 

第85話、阿部理沙の日常生活

 

 ソクラテス船長の指揮する宇宙調査船は、地球での役目を終え、惑星ネオガイアへと帰還した。百足星人の襲撃で傷つき、戦闘が終結するまで月の裏側に隠れていたのだが、救援艦隊の到着で事態が収容すると本国への帰還命令を受けたのだ。調査船はネオガイア星の宇宙港に着陸すると、早速オーバーホールのためにドック入りし、長旅から戻った乗組員たちには長期休暇が出された。

「お前もどこか、好きなところへ行け」

調査船に拉致されていた作者も、ソクラテス船長に言われ、追い出されるように宇宙船を出た。作者のスタイルは全裸で、肛門に電撃棒を突っ込まれ、股間にはチンポを銜え込んだ内田美帆(21歳)の生首をぶら下げている。額には地球人だと一目でわかるように、所有者である宇宙科学技術省のロゴマークと、地球人奴隷の証であるマークが刺青されていた。

「好きなところ、と言ってもなあ。ねえ、美帆ちゃん、どこか行きたいところある?」

作者は股間の美帆に尋ねた。

「おまへは、もっろ、自分の想像したころを、反省しろ。ひろい目に合わせた、登場人物たちに、死んれお詫びするのよ」

美帆は作者のチンポを銜え込んだまま、もごもごと喋った。

「まだ、怒ってるの?美帆ちゃん。そうだな、せっかくネオガイア星に来たんだ。この星にいる登場人物たちの様子でも見に行くか・・・」

「いつか、おまへのクサレチンポを噛み切っれやる・・・・」

作者はフラフラとネオガイア星の首都、メガポリスの街へと、がに股で歩き出した。

 

 作者が最初に訪れたのは、メガポリスの国立動物園だった。ここに阿部理沙(22歳)が約2年前から珍しい動物として飼育されているはずだ。

「入場料、300タラントです」

動物園の入り口で作者は係員に支払いを求められた。たいした額ではないが、奴隷の身分である作者は全くお金を持っていない。仕方なく嘘をつくことにした。

「私は奴隷です。お金なんて持っていません。ご主人様が、私をほったらかしにして先に園内に入ってしまわれたのです。どうか、ここを通して下さい」

「なんだって?馬鹿な奴隷だな。地球人か・・・しょうがない、通れ」

「申し訳ございません」

作者はまんまと、動物園内に入り込んだ。今でこそ、地球人奴隷やクローンは町に溢れているが、2年前の地球再発見のニュースが流れた当初は、地球人は珍しい存在で、阿部理沙もその時、他の惑星で捕まえた珍しい動物の一匹として、この動物園に収監されたのだ。今、理沙はふれあい広場に全裸でつながれ、日夜、来園する子供たちの慰み者となっている。

「やあ、君が理沙ちゃんかい?」

作者が気軽に声を掛けた。四つん這いで鎖につながれ、子供たちに蹴られたり、乳房を揉まれたりしてからかわれていた理沙は、キョトンとして作者の方を見た。

「あなた誰?地球人?」

「僕はこの物語の作者だよ」

「作者?なにそれ・・・あ、美帆、美帆じゃないの?」

理沙は作者の股間にぶら下がっている美帆の生首に気付いて叫んだ。二人は大学の同級生で2年前の花火大会の夜、連れ立って出かけたところを、一緒に宇宙人に拉致されたのだ。その後、別々の実験材料にされ、生き別れになっていた。

「そのほえ(声)は、理沙・・・」

美帆も気がついた。美帆は、作者の股間に後ろ向きにぶら下げられているため、理沙の姿をよく確認することが出来ない。

「亜希子も一緒なの?」

理沙が尋ねた。

「はきこ(亜希子)がどうなっらかは、知らないわ・・・」

同時に誘拐された、もう一人の女子大生、樋口亜希子は生体ダッチワイフに改造され、その後は行方知れずだ。

「全部、こいつが、悪ひのよ」

美帆が作者を睨み上げた。しかし、理沙は今の境遇にそれほど不満を持っていないようだった。

「あたし、死にたくないの。だから、どんな恥ずかしい事をされても、自分から進んで協力するわ。だって、それしかこの星で生きていく方法がないもの・・・ねえ、そこの売店でバナナを買って来てくれない?今日は来園者が少なくって、朝から何も餌をもらってないのよ」

理沙が作者にせがんだ。

「残念だが、僕はお金を持ってないんだ」

理沙は、この役立たず、とでも言いたいそうな顔でプイと横を向いた。

 

「ねえねえ、お母さん、あの地球人に餌をあげようよ。お腹が減ってそうだよ。」

「そうね、じゃあ、あげてみる?一つだけよ」

理沙たちの会話を聞いていたネオガイア星人の母子が売店にバナナを買いに行った。その様子を横目で見ていた理沙が期待に胸を膨らませ、さりげなく、ふれあい広場を四つん這いで歩きながら、親子の後姿に神経を集中させる。5歳ぐらいのネオガイア星人の男の子が、一本のバナナを売店の販売アンドロイドから受け取ると、恐る恐る理沙の方へ近寄ってきた。

「大丈夫よ。地球人は噛み付いたりしないから」

お母さんが笑いながら、遠くから男の子を励ましている。

「お食べ」

男の子は逃げ腰になりながら、腕をいっぱいに伸ばし、理沙の口元にバナナを突きつけた。それが5歳の男の子の精一杯の勇気の限界だった。理沙がバナナの端を口に咥えた途端、男の子はキャッと悲鳴を上げて、母親の元へ全速力で駆け戻って行った。

「まあ、怖かったのね。でも偉いわ」

母親は笑いながら、男の子をギュッと抱きしめ、男の子は安心したあまり泣き出した。バナナをゲットした理沙はそんな事はどうでもよく、久しぶりにありついた餌にヨダレを垂らしながら、皮を剥き、口に押し込もうとした。

「そのバナナみたいな果物、半分くれないかなあ。」

その時、作者が不意に声をかけ、理沙の持っているバナナを横取りしようとした。作者も宇宙船を出て以来何も食べておらず、お金を全く持っていないため、何も食べ物を買うことが出来ないのだ。

「駄目よ。これはあたしが貰った餌なんだから」

理沙はキッパリと断り、バナナを持ったまま必死に作者から逃げようとした。しかし、鎖で繋がれているため、ふれあい広場の外まで逃げる事は出来ない。

「なんだとう!作者の言うことが聞けないっていうのか?作者に逆らったら、これから物語の中で自分が運命がどうなってしまうか、責任持てんぞ!」

「なにが作者よ!あんただって、ただの宇宙人の奴隷じゃない!登場人物から、餌を横取りする作者なんて聞いた事ないわ!」

作者と理沙は一本のバナナをめぐって取っ組み合いになった。騒ぎを聞きつけ、動物園の飼育係が飛んでくる。

「まずい、揉め事はごめんだ。ひとまず、退散しよう」

作者は渾身の力で理沙から、掴み合いで潰れてしまったバナナを奪い取ると、口に押し込んで貪り食いながら、がに股で逃げ出した。

「バカヤローッ!あんたなんか作者じゃないわっ!」

バナナを奪い取られた理沙は、口惜しさのあまり、泣き叫びながら地面の砂を掴むと、逃げていく作者の後姿に投げつけた。

 

 動物園から逃げ出した作者が、次に向かった場所は国立博物館だった。そこには時間航行機で誘拐されてきた、地球の歴史上の美女達が多数展示されているはずだった。作者はお金を持っておらず、交通機関を利用出来ないため、目的の場所まで徒歩で行くしかなかった。道順は街の各所に配置されている道案内アンドロイドが教えてくれる。数時間かけて汗だくになりながら作者は、やっと目的の博物館にたどりついた。

「全く、股に変なものがぶら下がっているから、歩きにくくてしょうがないなあ」

「わらひだって好きで、あなたのチンポをくわへているんじゃないわ」

作者と生首美帆は決して仲良くはなれないようだった。

「入場料は1000タラントです」

作者は入り口で入場料を請求された。

「私は奴隷です。お金なんて持っていません。ご主人様が先に博物館の中に入ってしまわれて・・・」

作者は動物園に入った時と同じ手で、まんまと博物館の入り口を通過した。そして入館するとすぐに最初の陳列物に出会った。

「いらっしゃいませ。博物館へようこそ。どうぞごゆっくりと御覧下さいませ」

深々と頭を下げたのは16世紀のスコットランド女王、メアリー・スチュワート(23歳)だった。頭に王冠をかぶり、上半身には王族にふさわしいドレスを着ているが、下半身は裸で、剥き出しのクリトリスには鈴付きの直径10センチぐらいのリングがピアッシングされている。彼女は、誘拐されて来てから約1年半の間、博物館を訪れる客全てに、一日中、立ちっぱなしでお辞儀をしているのだ。よろけたり、一人でも来館客に挨拶が抜けると監視役のアンドロイドから電気鞭を浴びせられる。そのため、メアリーの裸の下半身は鞭で打たれた傷跡だらけだった。かつては傲慢な美しさを讃えていたメアリーだったが、今では、その顔はやせこけ、放心状態で目がうつろになっている。博物館の営業時間は一日15時間と長いのだが、その間メアリーは休む事が出来ない。途中、食事休憩はなく、常に空腹に耐えている。やむを得ずオシッコをする場合は監視役のアンドロイドが持っている容器に放尿しなければならない。排便の方は職務中禁止である。作者はメアリーの横を通り過ぎる際に、クリトリスにぶら下がっているリングを指ではじくと、チンチロリーンと鈴の音が鳴った。メアリー女王はクリトリスを引っ張られた痛みに顔を歪める。作者は博物館内の順路にそってブースを回っていった。楊貴妃、ジャンヌ・ダルク、クレオパトラ、マリー・アントワネット、小野小町などが展示されていた。彼女達はそれぞれの展示台で、いつ果てる事もなく拷問に合わされている。ケーキを無理矢理食べさせられ続けているマリー・アントワネット(24歳)は一年半の間に100キログラムを超える体重に肥満化し、歯は虫歯でボロボロになっていた。火責めにあっているジャンヌ・ダルク(20歳)は髪の毛が焼け焦げ、全身の3分の1ほどの皮膚が火傷によってケロイド状になっている。楊貴妃(28歳)のオマンコとアナルは拡張されてガバガバになり、括約筋も弛緩しきって元に戻らなくなっている。来館客に犯され続けたクレオパトラ(24歳)は色情狂となり、潤んだ瞳で口からだらしなくヨダレを垂らしていた。水責めにあっていた小野小町は衰弱死し、現在は3代目のクローンが身代わりを務めている。

「これは、地球の歴史に対する冒涜だ・・・歴史上の美女も、これじゃあ形無しだな」

作者がつぶやいた。

「ほれも、あんたが考へたのれしょう?」

「まあな。彼女達が誘拐されたおかげで、多分その世界の歴史は無茶苦茶だな」

「・・・そのうち、天罰がくらるわ」

「かもな」

作者と生首美帆は博物館を出た。

「次はどこへ行こうか?」

 

次に作者と生首美帆が向かった先は、最近観客を集めて人気スポットになっているという闘技場だった。そこでは、地球から誘拐されてきた男女のスポーツ選手やその他の地球人達が、命をかけて娯楽のために決闘させられている。

「入場料は、200タラントです」

「ご主人とはぐれてしまって・・・」

作者は再三、同じ手段を使って闘技場の観客席に入り込んだ。観客席はギャンブル好きのネオガイア星人の一般市民で満席の状態である。地球人奴隷が命をかけて戦う様は、ネオガイア星人の居住する全惑星にテレビ中継され、番組開始以来ゴールデンタイムの高視聴率番組のトップを飾っている。もちろん、決闘の勝敗はギャンブルの対象となり、毎回巨額の金が動く。出場する地球人たちは、時には素手で、時には武器を持ってどちらか一方が死ぬまで戦わされる。時には戦う相手がネオガイア星の猛獣であったり、戦闘用アンドロイドであったりする場合もある。出場者は多くの場合、地球の元スポーツ選手である場合が多いが、普通の女子大生や女子高生、OLなどが勝ち目のない戦いに狩り出されることもあり、その場合は出場者が何分何十秒生き残っていられるかが、ギャンブルの対象となるのだ。

「そう言えば、あいつはどうなったのだろう?」

作者は古い記憶をたどった。

「あいつって、られ(誰)?」

「大河原真希子って言う女子高生だ。聖愛女学院の柔道部キャプテンで2年前にはじめて殺人決闘ショーに出場した女の子だ。彼女の存在をすっかり忘れていたよ」

「それも、あんらがひどい目にあわへた、登場人物の一人なの?」

「そうだよ、確か、決闘で右目を潰されて、左腕と右のオッパイを猛獣に食い千切られたはずだ。彼女はその後、どうなったのだろう?」

「死んらんじゃないの。今も生ひているとは思へないわ」

「それは、判らんぞ」

ちょうどその時、その日の決闘に出場する地球人がゲートから闘技場のグラウンドへと出場してきた。右目に眼帯を巻いた若い女だった。残った左目が恐ろしく鋭い眼光を放っている。まさに今、噂をしていた大河原真希子だった。

「ほら、生きていた」

「あんら、作者だからって、物語の展開が都合良すぎるんじゃない!」

「俺は作者なんだ。文句あるか」

大河原真希子は食い千切られた右の乳房に黒光りする保護板を装着していた。保護板と眼帯の他は全裸で、左手の肘から先がなく、さらに2年間の闘技場生活で左足の膝から下も失っている。体中に猛獣の爪で引き裂かれた醜い傷跡が走っており、両耳と右手の指も何本か失っている。しかし、大柄な真希子の全身からは強い闘争心のオーラが発散されており、残った肉体は極限まで鍛え上げられて筋肉が隆々と盛り上がっていた。真希子は、欠損した体の部分に義手義足などは装着しておらず、片足でバランスをとり、身軽に跳ねながら闘技場の中央へと進んでいった。今日の対戦相手は戦闘用アンドロイドであった。アンドロイドはレーザーサーベルを持っていたが真希子は素手だった。

「普通なら勝ち目はないな・・・」

作者がつぶやいた。決闘開始のブザーが鳴り、アンドロイドが、機械的な正確さと速さで隻足隻腕隻眼の真希子に切りかかった。しかし真希子は全く臆する様子もなく、スッと身を沈めると、サーベルをかわし、アンドロイドの懐に飛び込んだ。そして、残った右手の指でアンドロイドの視覚センサーを突き、破壊すると、一旦しゃがみこんで、背中を軸にして右足で金属ボディのアンドロイドに足払いをかけた。普通なら、数百キロの重量のアンドロイドが人間の足払いで倒される事はありえないのだが、今までの数々の決闘でアンドロイドの歩行システムの弱点を知り尽くしている真希子にとって、これはたやすいことだった。そして、どうと倒れこんだアンドロイドの体に、レーザーサーベルを握ったアームを素早く逆手にとって押し付けると、金属の分厚い装甲があっさりと切り裂かれた。真希子はフッと不敵な笑みを浮かべると、勝利を確信して片足でピョンピョンと再起不能になった戦闘用アンドロイドから離れていった。

「大河原真希子選手の勝利です!」

司会者の声が闘技場のスピーカーから響き渡った。意外なことに真希子の勝利はほとんどのギャンブラー達が予測していたらしく、もともとオッズはそれほど高くなかった。

「やはり、予想通りでしたね。真希子選手には次回からはもっと高性能のアンドロイドと対戦してもらいましょう」

司会者のコメントと観客の拍手に見送られて、大河原真希子は退場していった。破壊されたアンドロイドはグラウンドの真ん中でショートし、ボディからは煙がくすぶっている。

「すごいなあ。ああやって、彼女は2年間生き延びてきたんだ」

作者は感心した。

「れも、いつかは、決闘に負けて死ぬれしょうね」

「そうだな。・・・それより美帆ちゃん、いつも俺のチンポを咥えているんだったら、たまには優しくしゃぶってくれないかなあ」

「られが、あんらのチンポなんか・・・代わりに噛み切っれやるわ!」

「おい、またかよ!それだけは、やめてくれ!」

作者はあわてて、美帆の顎をつかみ、口をこじ開けようとした。

 

第86話、桜井夫婦の日常生活

 

日本政府が降伏勧告に応じ、ネオガイア星人との間で不平等条約が締結されると、一旦解放されたさざなみ市は、宇宙人の租借地として正式に割譲されることになった。解放軍として市内に進駐していたアメリカ海兵隊と日本の陸上自衛隊はわずか10日間で撤収し、衛星軌道上から降下してきた大型宇宙船によって再び宇宙人の支配下に置かれる事になった。日本政府と正式な協定が結ばれているため今回は外部との交通を完全に遮断するようなエネルギーバリアは張られていない。市内各所では戦火による被害の復興が急ピッチで進められ、シェルターに隠れていたネオガイア星人の移住者も普段の生活を取り戻していた。

「おらっ、サボってんじゃねぞ!」

さざなみ市立第一中学の校庭に罵声が響き渡った。放課後も校庭では野球部が練習中で、奴隷用務員の桜井弥生(26歳)が汗だくになって玉拾いをしている。ハアハアと息を切らせて走り回る弥生の姿は全裸で、もともと雪のように白かった肌は日焼けで赤くなっていた。

「打つ玉がもうねえよ!早く拾えよ、弥生!」

「申し訳ございません」

10歳以上も年下である中学生の野球部員に罵倒されても弥生には逆らう権利はない。弥生は夫の桜井真司とともに、ネオガイア星人によって奴隷用務員の地位に落とされたのだ。逆らえば恐ろしい罰を受ける事になる。ようやく玉拾いを終えて部室に戻った弥生は、今度は野球部員たちの張り切った筋肉をマッサージしなくてはならなかった。

「いてて、もっと優しくやれよ弥生。・・・ああそういう感じだ。チンコも揉んでくれよな」

「はい、ご主人様」

弥生は野球部員の汗臭いユニフォームのズボンとパンツを脱がし、チンポを握りしめた。若い中学生のチンポは疲れを知らないようにビンビンである。弥生は根元を握り締め、ゆっくりと上下させた。

「うっ、ううう、たまんねえ・・・」

野球部員はあっという間に果てた。弥生はティッシュで精液をふき取ると、次の部員のマッサージをしなくてはならなかった。

 

 翌日は、男子剣道部の練習のお手伝いだった。弥生は全裸で竹刀を握らされ、一年生の剣道部員と向かい合って立たされた。一年生部員の打ち込み練習のための生きた練習台になるのだ。

「メーンッ!」

剣道の防具を着けた部員が勢い良く打ち込んできた。弥生に反撃は許されない。竹刀の先が弥生の脳天を直撃し、目の前に火花が散った。

「ぎゃっ!」

「続けてどんどん打ち込んでいけ!」

キャプテンの指示がかけられ、一列に並んだ一年生部員たちが次々に無防備な弥生に打ち込んできた。

「コテーッ」

「ぎゃっ!」

通り抜けざまに右腕の手首を強打され、弥生は危うく竹刀を取り落としそうになった。骨にヒビが入ったのではないかと思われるほどの激痛である。

「ドオオオッ!」

続けて3人目が打ち込んできた。胴を打ち込んでこられた時は、打ち込みやすいように竹刀を上段に振りかぶらなくてはならない事になっている。がら空きになった弥生の脇腹に竹刀が叩き込まれた。

「ぎゃおっ!」

肋骨が何本か折れたのではないかと思われた。さすがに弥生は打たれた脇腹を押さえ、その場にうずくまってしまった。

「立て、奴隷用務員!練習はまだまだこれからだぞ!」

キャプテンの容赦ない声で、弥生はヨロヨロと立ち上がり、脇腹と手首からくる痛みにガクガクと振るえながら、竹刀を構えなおした。

「よし、再開だ」

4人目の部員が摺り足で突進してきた。次はどこを打たれるのだろう、と弥生は一瞬考えた。

「ツキーッ!」

「きゃああ、やめてーっ!」

竹刀の先が弥生の咽喉を直撃した。

「ゲボッ!ゲボッ!」

さすがに弥生は昏倒し、息が出来ずにむせこみながら気を失った。

 

 桜井弥生が剣道部の練習台になっていたころ、職員室では夫の桜井真司(29歳)が教員たちの慰みものになっていた。

「おら、もっとしっかり歩け、バカ真司!」

若い女性の英語教師が、全裸で四つん這いになった真司の背中に馬乗りになっている。自分の体を乗せて、職員室にならべられたデスクの間の通路を、行ったり来たりさせているのだ。

「鳴いてみろ」

「ヒヒーン!ヒヒーン!」

真司は情けない声で馬の鳴き声をまねた。

「おい、こいつ、チンポが勃起しているぞ」

その様子を、お茶を飲みながら面白そうに眺めていた男性の数学教師が指摘した。

「こいつ奴隷扱いされているうちに本当のマゾになっちまったんじゃないか?」

「いいえ、もともとマゾなんじゃない。宇宙人に捕まる前は社長だったらしいけど、そういう奴に限ってマゾが多いって言うじゃない?」

英語教師が真司の背中でワザと体重をかけ、ゆさゆさと体を揺らせながら楽しそうにケラケラと笑った。

「勃起したんなら、そのチンポをしごきなさい。みんなの見ている前で射精するのよ。・・・返事は?バカ真司」

「はい、わかりました、ご主人様。ヒヒーン!」

真司は背中に英語教師を乗せたまま、右手で自分のチンポをしごき始めた。

「う、うう・・・」

「いく時はいくって言うのよ」

「は、はい・・ご主人様・・」

奴隷用務員の真司が自分のチンポをしごいていると、職員室のドアが開いて、一人の見知らぬ男が入ってきた。

「すいません、職員室はこちらでよろしいでしょうか?」

「そうですけど、あなたは、どちら様で?」

数学教師が立ち上がって、応対した。男はビジネススーツとアタッシュケースを持ったビジネスマン風だった。

「あ、はじめまして、お目にかかります。私はこういうものです」

男が差し出した名刺を、数学教師は受け取ってまじまじと見た。『桜井ソフト開発、取締役専務、根津順平』とある。

「私どもの会社では、一般には市販されていないような業務用のソフトのきめ細かなサービスを手がけておりまして、本日は大変便利な学習用ソフトのご紹介に上がらせて頂きました次第で・・・」

男は大層な肩書きを持っていたが、用は教材ソフトのセールスマンのようだった。

「うちは、間にあっていますので、必要ありませんが」

「まあ、そうおっしゃらずに、カタログだけでも御覧下さい・・・」

男が執拗なセールストークでさらに食い下がろうとした時、職員室の奥で真司がうめき声を上げた。

「ああっ!いきそうです!」

「いいわ、いきなさい。お前の精液を職員室の床にぶち撒けるのよ!」

「ああ!いくっ、いくうううっ!」

真司が精液をぶちまけた。英語教師は満足そうな笑みを浮かべてさらに屈辱的な指示を出した。

「仰向けになって足を広げなさい。お前のしぼんだチンポをヒールの底で踏みにじってやるわ」

「はい、ご主人様」

真司は従順に、言葉通り仰向けになると、まだ精液が先からしたたっているチンポを英語教師の前に差し出した。真司の下腹部には以前、刺青された『淫乱チンポ、パイプカット済み安全』『マゾです。踏みにじってください』という文字が書き込まれている。英語教師はサディスティックな笑みを浮かべると、グリグリとヒールの踵で容赦なく踏みにじった。

「ぎゃおっ!」

「どう、気持ちいい?バカ真司。」

「は、はい・・・気持ちいいです・・・」

その様子をあっけに取られてみていたセールスマンの男がいきなり、驚きの声を上げた。

「もしかして、あなたは・・・社長!社長じゃないですか!なにをやっているんですか、こんなところで!」

「えっ?」

真司はよがるのも忘れて声の主の方を見た。それは2年前、宇宙人に誘拐されるまで経営していたベンチャー企業で、彼の右腕だった男の姿だった。

 

「あ・・・根、根津?」

真司は、青年実業家だったころの記憶を思い出し、今の自分の哀れな姿と、ビジネススーツに身を固めた、昔のままの根津の姿を見比べた。

「社長!どうしたのですか、その格好は?」

根津は教材ソフトの売り込みも忘れて、全裸の真司に歩み寄って来た。

「い、いや・・これは、その・・・宇宙人に誘拐されて・・・」

「宇宙人?社長が宇宙人に誘拐されていたというのですか?2年前に結婚式の披露宴で急に社長が新婚の奥さんといっしょに消えてしまってから、会社は大変だったのですよ!」

「そ、それは、まあ、そうだろう・・・」

真司はかつての部下に痴態を見られて、動揺していた。

「でも大丈夫です社長。私がなんとか、及ばずながらも、みんなを取りまとめ、会社を存続させました。今も我社は以前と同じく業績を伸ばしております!」

「そ、そうなの?」

「今日、私は、先日、日本政府が宇宙人と条約を締結したのを受けまして、新たなビジネスチャンスがないものかと、宇宙人占領地域であるさざなみ市にやってきた次第でございます。社長!どういう事情か判りませんが、会社に戻っていただけませんか?みなも社長の帰りを首を長くして待っております!」

真司は根津の言葉に、懐かしさが込み上げて来て、ポロポロと涙がこぼれ落ちた。

「帰りたいのは、ヤマヤマなんだけど、そんな簡単には・・・ペリクレス様とパンドラ様がお許しにならないかと・・・」

「???・・・事情が良く飲み込めませんが、社長の口から言い出しにくいのであれば、私が交渉してみましょうか?」

「無駄だと思うけど」

真司と根津は校長室にいるネオガイア星人のペリクレス校長とパンドラ教頭の元へと出向いていった。そして根津が説明すると、意外にもペリクレスはあっさりとOKした。

「かまわんよ。そろそろお前達、奴隷夫婦二人にも飽きてきたところだった。今じゃ、他の地球人奴隷がいくらでも手に入るしな」

パンドラも異存はないようだった。

「あら、うれしそうね。でもお前達が奴隷だということは、どこへ行っても変わらないわ。その奴隷管理用の首輪はそのままつけていくのよ。それにいつも全裸で、行く先々では周りの人の命令には絶対服従するように、首輪の設定も、命令対象者を制限無しのフリーに変更しておくからね」

真司の顔が青ざめた。つまり真司と弥生は、この先、世の中の全ての人間の命令に無条件で従わなければならないのだ。逆らったりすれば自動センサーが働き、首輪から強烈な電撃を受ける事になる。根津は、ネオガイア星人の言っていることの意味が判らず、ただ、長い間、行方不明になっていた社長を会社に連れて帰る事が出来て有頂天になっていた。

 

 真司の会社、『桜井ソフト開発』は年商50億、従業員数100人程度のベンチャー企業だった。真司が9年前に大学在学中に立ち上げた会社で、一般には市販されていないような特殊な業務用ソフトをオーダーメイドで作成したり、中小企業のホームページの製作やプロバイダ事業も手がけている。本社は首都圏のオフィス街にテナントビルのワンフロアーを借り切って営業していた。桜井真司と桜井弥生は根津に伴われて、かつての自分の城に戻った。

「社長。服を着てくださいよ。ここは宇宙人の占領地域じゃないんですから、全裸じゃ警察に捕まりますよ」

「そういうわけには、いかんのだ」

根津は真司と弥生の不振な態度に戸惑いを隠せないようだった。社用車から降り、エレベーターで社内に入ると、全裸の二人の姿を見て、オフィスにいる全員に緊張が走った。

「おい、みんなビッグニュースだ。行方不明になっていた社長を連れて帰ったぞ」

根津が叫ぶと、社員達が仕事の手を休め、ワイワイと3人の周りに集まってきた。

「えっ、社長?」

「本当だ、社長だ。でも、なんで裸なんだ?」

「おい、あれ、いっしょにいるの、婚約者の弥生さんじゃないか?」

「あの、取引先の秘書課で、社長が見初めたっていう美人秘書か・・・そう言えば俺も結婚式で一度見かけたな」

「あたし、先月入社したばかりの新入社員だから、昔の事、全然わかんなーい」

社員達は口々にざわめき、大騒ぎになった。

「おい、こら、社長は見世物じゃないぞ!どいたどいた。今は事情があって、こういう格好をしておられる。この2年間で社長は相当な御苦労をされたようだ」

根津は二人をかばって人ごみを掻き分け、オフィスの一番奥にある社長室へと通した。

 

 社長室のドアを閉めた根津は、まず真司と弥生に服を着てもらおうとした。

「社長、お願いですから服を着て下さい」

「パンドラ様に服を着てはいかん、と命令されている。こればかりは、どうすることも出来ない」

「そんな・・・ここは、あなたの会社です。もう、そんな命令を聞かなくていいじゃないですか」

「この首輪をはめられている限り、俺と弥生は奴隷なのだ。逆らえば電撃を受ける事になる。そればかりか、君達全員の命令も謹んで、受けなくてはならない」

「それじゃあ、社長の仕事なんて出来ませんよ!」

根津はどうにかして真司を社長の座に戻そうとしたが、真司は頑として、首を縦に振らなかった。そればかりか、

「ご主人様、どうか、このバカ真司にご命令を」

と土下座をして言い出す始末だった。根津は頭を抱えて困り果てた。

「ご主人様、どうか、このバカ真司にご命令を」

再度、真司に即されて、とうとう根津は頭にきた。

「わかりましたよ!そんなんじゃ、到底あなたに社長なんて務まりっこない。いっそのこと会社の権利を、全部私に譲渡して下さい。これからは、名実ともに私がこの会社を経営していきます!」

「・・・ご主人様のご命令通りにいたします」

根津は事務員に書類を用意させ、真司にサインと捺印をさせた。真司は根津の足元に這いつくばって、書類にサインをしながら、自分が血の滲むような思いで立ち上げ、大きくしてきた会社を、こんな形で他人に譲渡することに涙を流した。

「さあこれで、今からあなたは、望み通り全社員の奴隷です。会社の経営は私が責任を持って引き継ぎますから、掃除でもお茶酌みでも好きな事をやってください」

「根津様、ありがたき幸せにございます」

真司と弥生は土下座をして根津の計らいに感謝した。

 

その日から、真司と弥生の社内奴隷としての新たな生活が始まった。専務だった根津順平の社長就任が発表されると同時に、真司と弥生の境遇も説明され、全社員に遠慮なく桜井夫婦を奴隷として扱うように通達が出された。最初の頃こそ、ほとんどの社員が元社長を奴隷扱いすることにためらいを見せていたが、中にはワンマン社長だった頃の真司に恨みを持つ者もおり、時間が経つにつれ遠慮がなくなってきた。

「おいっ、バカ真司!お茶はまだか。おせえんだよ」

「はい、申し訳ございません」

「お仕置きだ。歯を食いしばれ」

かつて、顎でこき使っていた若い営業部員に真司は何発もビンタを受けた。あまりの屈辱感に真司は顔を真っ赤にして、泣き出しそうになった。またある時は、別の女性プログラマーに呼びつけられた。26歳の山川桃子という、その女性は、かつて真司が弥生との婚約を発表するまで恋人関係にあった女性だった。

「いいザマね。宇宙人に誘拐されてたんですって?あなたと結婚しなくてよかったわ。もし結婚していたら弥生さんの代わりにあたしが、こんな悲惨な目に合っていたかもね」

「君の事は、本当に好きだったんだ」

真司が言い訳をすると、ピシャリと桃子のビンタが飛んだ。

「奴隷のくせに、口答えしないでよ!あなたと結婚しなくってよかった、と言っているのよ!どうせ、弥生さんと結婚したのは取引先とのパイプが欲しかったからでしょう。あなたらしいわ」

「それは、違うよ。弥生はただ・・・」

「口答えしないでって言ってるでしょ!」

再び、桃子のビンタが飛んだ。真司は黙るしかなかった。

「こうなったのは、神様のお恵みよ。これからあなたを、毎日みっちりと虐めてあげるわ。覚悟しなさい」

「よろしくお願いします、桃子様」

真司は、傲慢に組まれた桃子の足元で、床に額をこすりつけて挨拶をした。

「フンッ」

桃子のヒールの踵が真司の後頭部に乗せられグリグリと押し付けられた。その頃、社長室では、弥生が根津順平に犯されていた。

「弥生さん。私は密かにあなたに憧れていたのです」

社長室の絨毯の上に四つん這いになった弥生を、ズボンを擦り下げた根津が、バックスタイルで犯していた。

「光栄でございますわ。根津様」

「いつも、社長と一緒にあなたの会社を訪れた時、応対してくれる、エレガントという言葉そのもののような、あなたの姿を見て、いつかこういう風に犯してやりたいと思っていたんだ」

「これからは、いつでも、根津様の好きな時に、好きなスタイルで犯して下さいませ」

「ああ、そうさせてもらうよ。これも何かの、神の計らいかもしれんからな」

根津は弥生の白桃のような尻をピシャリと叩き、夢中になって腰を振り続けた。

 

第87話、久石千鶴の日常生活

 

時間管理局にある捜査本部では『ネオガイア星人への地球人の反抗事件』に関する調査が行われていた。

「直接ノ原因ハ判ッタノカ?」

「マダ判ラナイ。時間犯罪者ノ関与ノ可能性ガ最モ高イ」

「確証ハナイノカ?」

「ナイ。他ノ要因モ考エラレル。時間犯罪者ヤ、我々時間管理局以外ニモ、歴史ノ因果律ヲ変更スル事ノ出来ル存在ガ、イルノカモシレナイ」

「ソレハ何者ダ?」

「ハッキリトハ判ラナイ。アルイハ神カモ・・・」

「神?・・・例エ神デモ、歴史ノ変更ハ許サレナイ。ソンナ者ガ存在スルノナラ時間管理局ノ総力ヲ上ゲテ抹殺シナクテハナラナイ。」

「・・・」

「トリアエズ、全テノ時代デ、時間犯罪者ノ取リ締マリヲ強化セヨ。我々ノ許可ナク時間旅行ヲスル者ヲ全テ抹殺スルノダ」

「了解シマシタ」

 

 16世紀初頭の中南米。久石千鶴は梅毒に犯された体でジャングルをさまよい続けていた。スペイン人の船団に放り出されてからどの位の年月が経ったのかは判らない。明らかに梅毒に犯された体で人里に出て売春婦を続けるわけにもいかず、ひたすらジャングルで小動物を捕まえたり、木の実を食べたりして飢えをしのいでいた。

(体が、思うように動かない・・・)

千鶴は一日の内のほとんどを、寝ぐらに定めた洞穴に横たわって過ごしていた。衣服はボロボロで残骸のように巻きついているだけである。発熱と関節炎が次第にひどくなってきており、激しい運動をすることが出来ない。千鶴は、半ば放心状態で朦朧とする意識の中で、1500年にも渡る長い人生の記憶を思い出していた。

(いったい、あたし、今までに何人ぐらいの男と寝て、何人ぐらいの子供を生んだのかしら・・・)

少なくとも20人以上は生んでいる。その中には、歴史上有名な人物の血を引く子もいれば、成長後、歴史に深くかかわっていった子もいる。そして彼らの子孫は、今も世界中に無数に存在するはずだった。

(宇宙人に復讐する方法をひとつ思いついたわ。今のあたしに出来る事は子供を生み続けること。そうすれば、現代にたどりつた時にあたしの子孫の力を結集して、宇宙人に対抗する方策がなにか見つかるかもしれない。)

千鶴の、とりとめのない漠然とした考えだった。しかし、それには現在患っている梅毒をなんとかして治さなくてはならない。歴史上では、梅毒の治療薬が発見されるのは20世紀に入ってからのはずだった。

(この時代で何とか治療法を見つけなくては・・・)

千鶴は重い体を引き摺るようにヨロヨロと立ち上がった。

 

千鶴は治療薬を求めて、何年もの間、ユカタン半島のマヤ文明の都市や、当時メキシコ高原を支配していたインディオの国、アステカ王国をさまよった。しかし、いくら探しても、この時代で治療薬は見つからなかった。幸い梅毒は潜伏期間が長く、症状の発症と沈静化が繰り返され、まだ死には至っていない。20世紀後半に生まれた千鶴にはこの時代のヨーロッパ人よりも多少は免疫があるようだった。ボロをまとい、王国の首都である湖上都市テノチティトランで物乞いをする千鶴は絶望感に苛まれていたが、ある日、妙な噂を耳にした。

「海岸地方に蛇神ケツァルコアトルが現れたそうだ」

「そんな馬鹿な」

「いや、伝説は本当だったんだ。この世の終わりだ」

千鶴は記憶をたどった。蛇神ケツァルコアトルというのは確か、スペイン人達のことをインディオが勘違いした、というのがオチだった筈だ。史実通りに事が進めば、もうすぐ黄金に目の眩んだスペイン人の征服者達が、このアステカ王国の首都に殺到して来る筈だった。千鶴はある事を思いついた。

(かなり、危険でうまく行く可能性は低いけど、この時代で梅毒を治すにはこの方法しかないわ)

千鶴は思いつめた面持ちで決意を固めると、もう一度スペイン人たちに会うために海岸地方へと旅立った。

 

 紀元1520年3月、スペイン人貴族、フェルナンド・コルテスが600人の兵士を率いてメキシコの海岸に上陸した。銃火器や大砲、馬で武装したスペイン人たちは瞬く間に付近のインディオの町を襲撃し、金銀や若い女を略奪した。そしてその略奪された女達の中に、インディオに変装した久石千鶴が混じっていた。同じ黄色人種なのでそれほど違和感はない。ここしばらく梅毒の症状は沈静化しており、皮膚に出ていた湿疹も目立たなくなっている。千鶴はマリンチェと名乗っていた。

(マリンチェというのは歴史上に実在した人物だわ。この名前を名乗れば自動的にコルテスの愛人になれるはず)

本物のマリンチェがどうなったかは知らない。千鶴が先に名乗りを上げたために、スペイン人の略奪を免れたのかもしれない。そもそも実在しなかった、という考え方もある。とにかく、マリンチェを名乗った千鶴はコルテスの目に留まり、愛人となってセックスの相手をすることになった。

「汚い体だなあ。お前、売春婦だろう?まさか、梅毒にかかってないだろうなあ。何で俺は、他にもっと綺麗ないい女がいっぱいいるのに、よりによってお前を選んだんだろう・・・」

千鶴を犯しながらコルテスはブツブツと文句を言っていた。自分でも自分のとった行動に納得がいかないらしい。なぜか、マリンチェという名前を聞いた瞬間、この女を自分の愛人にすることが自分の使命のように感じられたのだ。千鶴とコルテスは何度もセックスを重ね、確実に梅毒はコルテスに感染した。

(ここでコルテスが梅毒にかかって死んでしまえば、アステカ王国の滅亡という歴史的事実が無くなってしまうわ。それを防ぐために必ず奴らが治療薬を持って現れるはずよ)

千鶴は何年かに一度、前触れもなく突然に襲ってくるアンドロイド女の目的が、千鶴のような歴史に入り込んだ異物を除去することである、ということを薄々勘づいていた。

 

 「時間犯罪者11532号ガ、A級歴史上人物ト接触シマシタ」

タイムマシンで千鶴の行方を探し回っていた時間管理局員の、かつてイエスイと呼ばれた女性型アンドロイドは、16世紀アステカ王国の駐在員から通報を受けた。

「時間犯罪者11532号ハ接触シタA級歴史上人物フェルナンド・コルテスニ、梅毒ヲ故意ニ感染サセタ模様デス」

「馬鹿ナ。何ト言ウ事ヲシテクレルノダ。ソレデハ歴史ガ大幅ニ狂ッテシマウ。本部ニ歴史修正班ノ応援ヲ要請シ、私モ直ニソチラヘ向カウ。」

「了解ダ」

 

コルテスとスペイン人の一行はアステカ王国の首都テノチティトランへと進撃を開始した。全員が黄金郷の夢に取り付かれ、常軌を逸している。毎晩、野営地では略奪したインディオ女の輪姦パーティが催され、スペイン人たちは有頂天になっていた。その野営地上空に突然、3機のタイムマシンが実体化し、人間型アンドロイドの時間管理局員たちが多数降下してきた。

(来たわ。予想通りね)

千鶴は暗闇に身を隠した。事態が事態だけに時間管理局員達も、人目をはばかる事なく強行手段に打って出たのだ。

「な、なんだ、お前ら!悪魔か!」

「新大陸には黄金を持った原住民しかいないって聞いてたのに・・・」

酔ったスペイン人達は大騒ぎになったが、時間管理局員達は彼らを次々に麻酔銃で眠らせていった。どうせ明日、目を覚ませば夢だとしか考えないだろう。

「フェルナンド・コルテスハ、ドコダ?」

管理局員の一人が右手に梅毒ワクチンの入った無針注射器のカプセルを持ってコルテスの姿を捜し求めた。

「逃げも隠れもしないぞ。この俺がコルテスだ。貴様のような得体の知れない奴らに、やられはせんぞ!」

コルテスは果敢にも腰から剣を抜き、時間管理局員に切りつけた。剣は皮膚を切り裂いたがその下にある超合金の金属ボディにぶつかって、あっさりと折れ飛んだ。

「抵抗ヲスルナ。オ前ノ病気ヲ、治療シテヤロウト言ウノダ」

別の二人の管理局員が後ろからコルテスを押さえつけ、もう一人が注射をしようとした瞬間、暗闇から千鶴が飛び出した。用意していたハンマーで注射器を持ったアンドロイドの手首を殴りつけ、よろめいたところを、目的のカプセルを奪い取る。

(これさえ、頂ければ、もうこんな所に用はないわ)

千鶴はいつものように、姿を眩まそうと駆け出した。

「待テ、時間犯罪者。今日トイウ今日ハ逃ガサナイ」

千鶴の前にイエスイが立ちはだかる。その時、コルテスの部下の一人が大砲をぶっ放した。

「悪魔め!退散しろ!」

砲弾は野営地の隅に外れたが、煙がもうもうと立ち込めた。次の瞬間、千鶴の姿はもう消えていた。イエスイはまたも千鶴を逃がしたのだ。

「オノレ時間犯罪者11532号、私ノ全テヲカケテ、時間ノ果テマデモ追イ詰メ、必ズ逮捕シテヤル」

千鶴を逮捕するまでイエスイに管理局本部から次の仕事は回されないのだ。この事件の後、千鶴は十数年患った梅毒を完治することが出来た。コルテスも無事、別の注射器で治療され、再びアステカ王国の征服事業を続ける事ができた。失踪したマリンチェの代わりには時間管理局によって、千鶴に容貌が全くそっくりなアンドロイドの代役が立てられ、歴史上の役割を完遂した。時間管理局の理想通り、歴史は守られたのだ。

 

第88話、生きている惑星

 

ネオガイア星でのオーバーホールと休暇を終えた宇宙調査船は、科学技術省からの新たな命令をうけ、再び大宇宙へと旅立つことになった。今回の目的地は惑星キマイラと呼ばれる星である。宇宙船の乗組員はおなじみの、ソクラテス船長、パイロットのプラトン、オペレーターのアリストテレス、女性解剖医のアテナとビーナス、その他アンドロイド多数である。以前に地球で捕獲された実験体や奴隷達もそのまま搭乗させられていた。3週間かけて、ネオガイア星より約1万光年離れたキマイラ星へと到着した調査船はその衛星軌道へと乗った。

「なんだか不気味な星ですな」

パイロットのプラトンがモニターに映る乳白色に輝く惑星表面の映像を見て、感想をもらした。

「うむ、正直、俺も気持ちが悪い。調査のためとは言え、この星に降下するのは気が進まないね。なにせ、この星は生きているのだから・・・」

惑星キマイラは約1000年前、宇宙人グレイの壮大な生物実験によって生み出された一つの生き物なのだ。星自体が、当時家畜として繁殖していたネオガイア星人の先祖達の遺伝子を滅茶苦茶につなぎ合わせ、培養した惑星規模の巨大な合成生物だった。実験終了後、キマイラは放置されたが、現在も生き続けている。大きさは地球の3分の2程度、酸素を主成分とした大気もあり、人間は宇宙服なしで生存が出来る。

「惑星に降下する調査班を編成するぞ・・・」

ソクラテス船長はあまり気が進まないようだった。

 

 調査班は瞬間物質転送機によって惑星キマイラの地表に降り立った。メンバーはソクラテス船長とプラトン、アテナ女医である。アンドロイド10体と研究資材も下ろされ、簡易キャンプが設営される予定である。荷物運びとして地球人奴隷の仲道竜也(21歳、元大学生)と内田美菜(元女子高生、19歳)の首無しのボディ部分、成長促進剤で育てられた実験体104号(性別女、肉体年齢22歳)も参加させられていた。

「この地面、生暖かいぞ!」

プラトンが叫び声を上げた。地面というより、ぶよぶよの女の肌のようである。所々に巨大な毛穴があり、30センチほどの産毛が生えている。

「空気もなんだか、女性の吐息のような甘酸っぱい匂いがするな」

フェロモンをたっぷり含んだ空気に、ソクラテス船長とプラトンの股間はスペーススーツの中で勃起し、治まりがつかなくなった。

「うっ、これではたまらん・・・」

二人はそれぞれ、首なし美菜と実験体104号を呼び、手と口をつかって抜かせた。しかし、呼吸する空気自体に多量のフェロモンが含まれているため、一度や二度抜いただけでは勃起が静まらない。

「どうすればいいんだ!」

「ガスマスクでもつけたら?」

アテナは素っ気なく言った。女性のアテナにはこの空気はムカムカして気分が悪い。3人のネオガイア星人はガスマスクをつけた。次にアンドロイドがキャンプ設営のために地面に支柱を打ち込んだところ真っ赤な鮮血が噴出した。

「この星の血液型はA型みたいね」

アテナが噴出した血液を計測器に入れて冷静に分析している。

「まったく、なんて気持ち悪い星なんだ!」

ソクラテス船長が悪態をついた時、地面がブルブルと震えだした。

「な、なんだ!」

「きっと、支柱を打ち込まれてこの星が痛みを感じているのですわ」

アテナが解説した。地面が波打ち、やがて立っていられないほどになった。

「と、とにかく、この場を離れよう。あっちの方角に林のようなものが見える。一旦あそこに避難しようじゃないか」

調査隊の一行は大急ぎで苦痛にもだえる、その場所を離れた。

 

林と思われる場所に近づいた一行は、さらに信じられない光景を目の辺りにした。そこに生えていたのは木ではなく、高さ5メートルほどの無数のペニスだったのだ。

「うわああっ、なんだこりゃ!」

あまりのおぞましさにプラトンが悲鳴をあげた。数百本のペニスの林の中には先端の亀頭に皮を被っているものもある。調査隊の中で、科学者のアテナだけは冷静に、立体カメラで映像記録を撮っている。

「ねえ、ちょっとこのペニスをこすってみて」

アテナが、首なし美菜と実験体104号に指示をした。地球人奴隷達は全員が全裸である。二人の地球人女性は、指示通り巨大なペニスに抱きつき、全身をこすりつけて刺激をし始めた。たちまち、ペニスは膨張をはじめ、約20メートルの高さにそびえ立った。

「もっとこすってみて」

アテナが純粋に科学的な探究心から、再度支持を出した。首なし美菜と実験体104号は汗だくになりながら、チンポに抱きついて上下にピストン運動をさせている。巨大チンポは、相当溜まっていたのか5分ぐらいで射精した。

「おいっ、落ちてくるぞ!」

100メートル以上の上空に飛び散った精液の塊が調査隊めがけて落下してきた。たちまち辺りは一面、落ちてきた精液で白い泥沼のような有様になった。

「とにかく、今日のところはこの付近にキャンプを設営しよう。だが、くれぐれも地面に支柱をうちこんではいかんぞ」

今まで長年の宇宙旅行で、数々の神秘に遭遇してきたソクラテス船長も、この惑星には辟易しているようだった。翌朝、再び、一行は出発した。推進装置付の反重力カーペットを組み立て、それに乗って移動する。地面から3メートルほどの高度をゆっくりと飛行するこの乗り物は、さながらアラビアンナイトに登場する、空飛ぶ絨毯のようだった。この星の空の色は、どんよりとした乳白色である。

「この星に生き物はいないのかしら」

「この星自体が生き物だろ」

「そうじゃなくて、この星に暮らしている普通の動物とか植物はいないのかってことよ」

科学者のアテナはこの星の生態系に興味深々のようである。

「あっ、あれは川じゃないか。行ってみよう」

操縦盤を操作するプラトンは、発見した川らしきものの方へ反重力カーペットを移動させていった。川のほとりに降り立ち、その成分を調べたアテナは顔をしかめた。

「なんてこと!この川の水は、女性の愛液と同じ成分よ!」

その液体は透明なのだが、妙にねっとりとしてドロドロしている。ガスマスクを外して匂いを嗅いだプラトンはむせこんだ。

「げほっ、げほっ・・・ほ、本当だ。信じられない、この匂いはまさに・・・」

「おいっ、生き物だ!何か上流へ泳いでいくぞ」

興奮したソクラテス船長が指差したそれは、体長50センチほどの巨大なオタマジャクシだった。

「オ、オタマジャクシ???」

「違うわ、あれは精子よ。あんなにたくさん、上流へ向かって泳いでいくわ」

アテナは群れを成して必死に上流へ泳いでいる巨大精子の姿に感動したようだった。

「どこへ行くのかしら・・・あっ、判ったわ、上流にはひょっとして・・・」

アテナは自分の思い当たった推論に興奮し、すぐにプラトンに反重力カーペットを川の上流へ向かわせるように依頼した。一行は愛液の川を数十キロ遡り、やがて川の源流とも言える巨大な湖にたどりついた。その湖は直径5キロの巨大なオマンコだった。この湖から湧き出した愛液が川となって流れ出しているのだ。川を遡る長い旅路の末、やっと湖にたどり着いた精子たちが、光の届かない湖の底へと、何かに導かれるように潜り込んで行き、姿を消していった。

「すげえ。あの向こう岸に見える小高い丘は、ひょっとしてクリトリス??」

「おそらくそうだ。うーむ、この湖に名前をつけねばならんな。そうだ地球風にマン湖という名前はどうだろう?」

ソクラテス船長が提案した。前回の調査旅行の地球での滞在期間が2年間にも及んだため、地球の文化、言語にかなり毒されていたのだ。アテナもプラトンも、この湖に付ける名前はそれ以外には考えられない、と思った。

 

第89話、工藤明日香の日常生活

 

さざなみ市の宇宙港には再び、星間航路の定期便が発着するようになっていた。工藤明日香の働く定期便も、ネオガイア星人の住む、いくつもの惑星をめぐり、地球に寄港する機会が多かった。

「ガラクタめ!今度という今度は廃棄処分にしてやる!」

ネオガイア星人の管理官が目を吊り上げて怒鳴り立てた。雑用サイボーグの工藤明日香(29歳)が仕事中に居眠りをしていたのだ。雑用アンドロイドとして登録されている明日香には睡眠時間を取るという規定がないため、仕事の合間に眠る以外に方法がないのだ。

「申し訳ございません。廃棄処分だけはどうか勘弁してください・・・、あたしの体はサイボーグで、生身として残っている部分がどうしても睡眠を必要とするのです。」

「それがガラクタの証拠だと言うのだ!他のアンドロイドを見てみろ。休息など必要とせずに、24時間フル稼働しているぞ!」

明日香の言い訳は、管理官の耳には届かないようだった。管理官は明日香をスクラップにするため、大型ゴミの処理施設へ連れて行こうとした。

(今度こそ本気だわ。逃げなきゃ・・・)

明日香は走り出した。機械化された下半身がガチャガチャとうるさく音を立てる。

「待てーっ!逃げるな、ポンコツ!」

管理官は制止しようとしたが、明日香の脳内に組み込まれたプログラムは、他のパーツと同様、不良品だったため、しばらく前から明日香の肉体を優先的に支配する効力を失っている。明日香は宇宙船のタラップを駆け下り、宇宙港の滑走路に降り立った。頭上にはさんさんと太陽の輝く、地球の青い空が見えた。

(2年ぶりになるかしら・・・)

拉致され、サイボーグ化実験の材料にされてから、宇宙中をたらい回しにされていたため、その後地球で起こった事件については明日香は何も知らない。地球の人々に、機械化された明日香の肉体を見られた時どう思われるか、という心配よりも、今は管理官の手を逃れることに必死だった。宇宙港は、戦火の跡がまだ完全に修復されておらず、敷地を取り囲んでいるフェンスも所々が、裂けたままになっている。警備体制もズサンだったため明日香はあっさりと宇宙港の外へと逃げ出した。宇宙船の管理官も元々、明日香をスクラップにするつもりだったので、それ以上追跡しようとはしなかった。

(逃げる前にどうしても必要なものがあるわ)

それはコンセントの変換プラグアダプターだった。明日香の下半身と両腕は機械化されているため、3日に一度は充電しなければならないのだが、コンセントの先をネオガイア星の規格から、日本の規格に変換するアダプターを手に入れないと、この先、バッテリーが切れた時に動けなくなってしまうのだ。サイボーグである明日香にはいくら働いても給料は支払われず、今、お金は一銭も持っていない。万引きするしかなかった。

「こらーっ、ドロボーだっ!誰か捕まえてくれ!」

宇宙港の近くの、ネオガイア人が経営する雑貨屋で店主の悲鳴が上がった。さりげなく店内に入った明日香が、プラグアダプターを万引きしたのだ。ガチャガチャと無様な音を立てて明日香が逃げていく。右腕のマジックハンドにはしっかりとプラグアダプターが握られていた。

(ううっ・・・惨めだわ。でも生きていくためには仕方がない・・・こんな姿になっても、あたし、まだ生きようとしている・・・)

明日香の脳裏に遠い昔のスチュワーデス時代の記憶や、改造手術を受けたあと、サイボーグ戦隊のリーダーとして、仲間とともに戦っていた頃の記憶が、走馬灯のように脳裏を横切っていった。

 

 一ヶ月後、工藤明日香は東京、新宿のオフィス街の歩道を歩いていた。万引きした長いロングコートで、機械化された体を隠しているが、歩くたびにガチャガチャと鳴る金属音は消す事が出来ない。べっとりと油がつき、ほつれた髪の毛とヨレヨレのコートを着た姿は浮浪者そのものだった。明日香は夜になると飲食店のゴミ箱を漁って残飯を貪り、肉体部分の栄養を補給している。そして、店舗などの建物で外側にコンセントプラグの差込を探し出して、こっそりと機械部分の充電をして日々、生きているのだ。気をつけないと、充電出来ないままにバッテリーが空になり、明日香は歩けなくなってしまう。一度は自宅に戻ろうかとも考えたが、変わり果てた肉体を家族の前にさらけ出す気にはなれなかった。何のために生きているのか、明日香はわからない。やがて明日香は立ち止まり、一つのオフィスビルの看板に目を留めた。『JAM航空』の本社ビルだった。以前、明日香がスチュワーデスとして勤めていた会社で、なつかしさのあまり、涙がこみ上げてきた。

「うっ、うううっ・・・あの頃に戻りたい・・・」

明日香は歩道にうずくまったが、変わり果てた、浮浪者同然の明日香に声を掛けるものは誰もいなかった。

 

 そのころJAM航空の本社ビルでは緊急経営会議が開かれていた。

「何者かが、我社の株式を市場で大量に買い占めている!」

上席に座った取締役社長の小笠原信照が切羽詰った表情で叫んだ。

「社長、落ち着いてください。一体誰が買い占めていると言うのです?我社の発行済株式数は莫大です。ちょっとやそっとの資金では我社を乗っ取る事は不可能です」

専務が興奮する社長をなだめようとした。

「しかし、現実に、数日前から、物凄いスピードで買い集められているのだ!最近では例のテレビ局の事件もある。私は経営者として最悪の事態も想定しなくてはならない・・・」

その時、一人の社員が会議室に駆け込んできた。

「社長!買収をかけてきている相手が判明しました!」

「どこだ?」

「そ、それが、ネオガイア星のソロン財閥の代理人のようです・・・」

「なんだって!」

社長以下、重役達は思いもかけない事態に絶句した。

 

1週間後、あっけなくJAM航空は、ソロン財閥によって買収されてしまった。ソロングループ地球支社長のクセノフォンがネオガイア星人の部下数名と護衛のアンドロイド兵数体を伴って、JAM航空本社ビルへと乗り込んできた。

(地球の株式制度という習慣は面白いものだな。金など印刷された紙切れに過ぎんというのに。こんなものに価値を感じ、神の様にあがめている地球人は、やはり間抜けな原始人にすぎん)

クセノフォンがJAM航空を買収した資金は、ネオガイア星の高度な技術を使って大量に複製された偽札だった。地球人の科学力では本物の紙幣と、コピーを識別することは不可能である。ネオガイア星人がこの技術を多用すればやがて日本にインフレが起こることは間違いなかったが、日本の経済がどうなろうと、ネオガイア星人にとっては知った事ではなかった。正面玄関で、クセノフォンを出迎えたJAM航空の重役一同は顔面蒼白だった。

「軍に依頼して、武力でお前達の会社を丸ごと接収しても良かったのだがな!ま、君達、地球人とはこれから長い付き合いになるわけだし、今回は地球の風習に従った、と言うわけだよ」

クセノフォンは上機嫌だった。地球人たちはどう答えて良いのか判らない。

「恐れ入ります・・・」

「早速だが、今後の事業方針について話し合いたい。現在、地球で唯一の宇宙港が、さざなみ市にあるのだが、この星の各主要都市から宇宙港までの連絡便を、お前達の原始的な航空機を使って運行させるのだ」

「は、はあ・・・」

「その前に例の儀式を」

ネオガイア星人の部下の一人がクセノフォンに耳打ちをした。

「あ、そうだ、忘れていた。まずは服従の誓いを立てて貰おう。お前ら全員、裸になって我々の靴の裏を舐めろ!」

「ひ、ひいいっ!」

アンドロイド兵が、地球人達にレーザー銃の銃口を向けた。抵抗することは出来ない。

「最初に言っておくが、我々の傘下に入ったからには、逃亡は許されない。表向きは地球の他の会社と同じように振舞ってもらうが、全社員は我々の奴隷だ。我々の定めた社内規定や命令には絶対服従し、どんなに仕事が辛くても、退職は許されない。判ったか」

「ははああっ」

JAM航空の重役一同は、跪いて深々とお辞儀をし、おのれの不運を呪いながら保身のために衣服を脱ぎ始めた。

 

早乙女芹菜(25歳)はJAM航空入社3年目の国際線スチュワーデスだった。主に成田空港とロサンゼルスを結ぶ路線の旅客機に搭乗することが多い。入社1年目には、突然フライト中に行方不明になった工藤明日香と同じ旅客機で働いたこともある。芹菜はフライト中に、同僚の村上真知子(23歳)からJAM航空が、ネオガイア星企業の傘下に入ったというニュースを聞かされた。

「えっ?それってどういうこと?あたし達どうなっちゃうの?」

「わからないわ。成田に着いたら、もっと詳しい説明があるんじゃないかしら」

不安を胸に抱いたまま、旅客機は成田空港に着陸した。スチュワーデス、パイロットを含むJAM航空の職員は空港内の事務所に集められ、新しい業務改善命令を聞かされた。

「すでに知っている者もいるかもしれないが、我社はネオガイア星、ソロングループの傘下に入ることになった。今後はソロングループの名に恥じぬよう、誠心誠意勤務に励んで頂きたい。」

通達を読み上げる所長自身の声も震えていた。

「ソロングループの意向で、業務に変更があった点がいくつかある。書類を配るから各自、目を通してくれ」

芹菜と真知子も書類を受け取って目を通し、ぎょっとした。

「げっ!何これ?乗客へのフェラチオサービス、セックスサービス、パンチラサービス???・・・奴隷奉仕の徹底って、どういうこと?」

「読んで字のごとく、その通りのことだ・・・」

所長は伏し目がちに答えた。プライドの高い芹菜は逆上した。

「あたし、こんな事出来ません!こんな事するぐらいなら、辞めますっ!」

「残念ながら早乙女君、退職は認められないのだよ・・・我社はネオガイア星占領軍の輸送任務も受け持つことになり、勝手な職務放棄は逃亡罪で死刑だそうだ」

「そんな!理不尽ですう!」

「新しい制服だ。客室乗務員(スチュワーデス)の諸君は、今日からこれを着てくれ」

渡された制服は、股下ゼロセンチの超ミニスカートと、ヘソの上までしか丈のないブラウスと紺色の上着だった。袖の部分もノースリーブスに加工されている。

「帽子とスカーフは、変更がないから、今までの物をそのまま使ってくれ」

「ちょ、ちょっと待ってください!こんな制服、恥ずかしくて着れません。他の航空会社の人間に見られたら物笑いの種です」

真知子も抗議した。しかし、所長は取り合おうとしなかった。

「仕方ないだろう。拒否すれば死ぬことになる。下手をすると親兄弟にまで危害が及ぶかもしれん。死にたくなければネオガイア星人の命令には従うことだ」

芹菜と真知子は顔を見合わせたが、あきらめて黙るしかなかった。

 

JAM航空はネオガイア星人の手によって生まれ変わった。日本の各都市と、さざなみ宇宙港を結ぶ路線が開拓され、芹菜と真知子の搭乗する便もロサンゼルスから成田を経由して、さざなみ市まで飛ぶ事になった。

「アテンション・プリーズ。当機は只今より成田空港を離陸し、ロサンゼルスへと向かいます。シートベルトをお締め下さい」

芹菜、真知子をはじめとするスチュワーデス達が、乗客の座席を回り、シートベルトが締まっているかを確認していく。当然、超ミニスカートの下からは、ストッキングの着用を禁止された生足が伸び、黒いパンティが丸見えである。乗客の男たちは大胆な制服を着たスチュワーデスに遠慮のないスケベな視線を送り、ニヤニヤを笑いながら、貪るように、スチュワーデス達の姿を目に焼きつかせていた。

「恥ずかしいわ・・」

真知子が芹菜に囁いた。顔を紅潮させている。

「大丈夫よ、すぐに慣れるから」

ジャンボ旅客機が無事離陸し、安定飛行に入ると、すぐにスチュワーデスは乗客へのサービスに取組まなければならなかった。

「お飲み物、機内食・・・フェラチオサービスはいかがでしょうか?」

プライドの高い彼女達は、卑猥な言葉を口にする度に頬を赤らめている。

「おーい、フェラチオを頼む。」

「こっちもだよ」

スチュワーデスは、乗客から引っ張りダコだった。芹菜と真知子も顎がガクガクになるまで、フライト中、ずっとフェラチオを続けた。

「ファーストクラスにも顔を出さなくちゃ」

芹菜は階段を上がり、ファーストクラスの乗客がいるキャビンに入っていった。ここではスチュワーデスによるセックスサービスが行われている。数人のスチュワーデスが制服のまま、乗客の座席の上に跨って、喘ぎながら腰を動かしていた。

「おいっ、俺へのセックスサービスはまだか!同じ金を払ってファーストクラスに乗っているのに、これほど待たせるとは不公平じゃないか」

横柄な乗客が芹菜の姿を見て怒鳴りつけてきた。

「申し訳ございません。お客様」

芹菜はその乗客のシートの傍らに跪いて、お詫びをした。曲げた太腿の間からパンティが剥き出しになる。

「もう我慢出来ない!早くしてくれ・・・・」

乗客はよほど溜まっていたのか、自らズボンを下ろすと芹菜の肩を強引に抱きすくめた。

「お客様、落ち着いて下さいませ」

芹菜は表面上は冷静に応対し、乗客に身を任せたが、こんなことがこの先、永遠に続くのだろうかと思うと、目の前が一瞬、暗くなっていくような気がした。

 

ロサンゼルスまでフライトし、成田空港まで戻ってきた時、芹菜と真知子はクタクタになっていた。

「真知子、あたし、顎と腰がガクガクだわ」

「でも、これから空港で、もう一仕事あるのよ」

フライトを終え、旅客機から降りたスチュワーデス達は、空港ロビーでの催し物であるスッチーショーに出演しなくてはならないのだ。スッチーショーと言うのはJAM航空が宣伝と顧客サービスのために始めたショーで、ようするに、本物のスチュワーデス達が制服を着たまま、歌ったり、踊ったりするのだ。もちろん、ストリップやSMショーの様なことまでやらされる。

「なんでこんな事までやらなくちゃいけないの?あたし見世物じゃないわ」

芹菜は不満気だった。それでも出演を拒否することは出来ない。スッチーショーの舞台の周りには大勢の旅行者やビジネスマン達が集まり、黒山の人だかりだった。

「日本、エキゾチックナ、国デスネ!」

アジア系の外国人たちが下卑た笑い声を上げ、恥ずかしい姿で、オマンコを剥き出しにして踊るスチュワーデスに声援を送った。

「私ノ国デハ、コンナ破廉恥ナコト、考エラレマセン!」

戒律の厳しいイスラム系の外国人たちは憤慨している。欧米の国々から来た人達はこの痴態を見ても、いたって冷静だったが、心の底ではネオガイア星人の軍門に下った日本人を、それ見たことか、と軽蔑しているようだった。ストリップで制服を脱いだ芹菜は、白い裸身を、女王様役の真知子に鞭で叩かれ、赤いローソクを垂らされて悶絶した。

 

JAM航空本社ビルの社長室は、恐ろしい様相に変わっていた。社長の小笠原信照は目を覆いたくなる衝動を必死にこらえた。

「どうしたんだね。小笠原君。顔色が悪いじゃないか。まあ、掛けたまえ。この椅子はなかなか座り心地がいいぞ。」

ネオガイア星人のクセノフォンは上機嫌だった。彼が腰掛けている白い物体は、人間椅子に改造された、元秘書課の女性だったのだ。女性は全裸にされ、中腰で両手両足を床についた形で固定されている。口は塞がれ、喋ることは出来ない。生きていくために必要な栄養は肛門からチューブで注入されるのだ。

「人間の秘書なんてものは必要ない。ネットワークシステムに直接コンタクト出来るアンドロイドの方がよっぽど役に立つ。というわけで秘書課の面々は全員リストラし、社長室を飾る、生体家具やインテリアに改造させてもらったよ」

淡々と語るクセノフォンに対して、小笠原は恐怖のあまり、言葉さえ失った。

「そんなことより、これを見たまえ、小笠原君。最近のJAM航空の株価動向だ」

クセノフォンはコンピューターの端末のキーを叩いた。コンピューターからはコードが延びており、その先はテーブルの上に設置されている、人間インクジェットプリンターに改造された若い女性の口につながっている。コードを通して信号を受け取った女性は、ビクッと痙攣を起こしたように反応し、用紙の上にオマンコを押し付け、小刻みに腰を動かし始めた。オマンコから噴射される愛液は黒く着色されており、瞬く間に、精細なグラフと文字が描かれていく。

「株価が、この数週間で、10倍に値上がりした!」

とクセノフォンが叫んだ。

「ネオガイア星企業との提携と、スチュワーデスによる徹底した顧客サービスが材料視されたようですね・・・」

小笠原は解説したが、喜ぶ気分には到底なれなかった。

「そのようだな。まっ、ネオガイア星人の私には地球のマネーゲームなど興味ないがね・・・」

貨幣はネオガイア星の技術で複製すればいくらでも手に入るのだ。小笠原は無残にも人間性を奪われ、用途に合わせて改造されてしまった、自分の秘書達の事を考えると、心の底では涙が止まらなかった。

 

第90話、インカ帝国

 

不老不死の女、久石千鶴は紀元1520年に梅毒を完治した後、宇宙人に反抗するための手がかりを求めて放浪の旅を続けていた。体内には免疫が出来たため、もはや、いくら不特定多数の人間とセックスをしても梅毒に感染することはない。千鶴は売春に励みながら太平洋岸沿いにアメリカ大陸を南下していった。

「なんなのこれは!」

ある時、千鶴は、インカ帝国に属する海岸沿いの町を通過する際、丘の斜面に描かれた、巨大なサボテンのような絵を発見して驚愕した。

(これはひょっとして、ナスカの地上絵???実物を見るのは始めてだわ。宇宙人に関係する、何かの手がかりが掴めるかもしれない・・・)

もともと行く宛のない旅である。しかも不老不死のため時間はいくらでもあった。千鶴はナスカの地上絵を詳しく調査することにし、進路を変更して内陸部のナスカ平原へと入り込んでいった。

 

 宇宙人グレイのギ・アン・ガスと4人の密猟仲間はこの時代でも、地球におけるハンティングを楽しんでいた。数千年の寿命を持つグレイは、紀元前より、数え切れないぐらいの回数、地球を訪れている。小型の自家用宇宙船で地球に飛来したグレイ達は、今回はインカ帝国の首都クスコで人間狩りを楽しんだ後、ナスカ平原に着陸して、打ち上げパーティを催していた。

「この地球人の女。なかなか、オツな味がするぞ。」

ギ・アン・ガスが、インカ人の娘の肩にかじりつくと、娘は恐怖に顔を引きつらせ、鋭い悲鳴を上げた。娘は神殿に仕える『太陽の処女』と呼ばれる巫女達である。ハンティングの獲物として捕らえられた彼女達は、生きたまま、爬虫類であるグレイに貪り食われる運命なのだ。

「やっぱり、野生の地球人は格別にうまい!筋肉のしまり具合が、養殖モノとは全く違う。・・・そう言えば、この前、養殖場になっていた牧畜惑星のひとつが放棄されたらしいな。地球人を繁殖させ過ぎて供給過剰になったのが原因だと言うことだ」

「まあ、放っておくと地球人はセックスばかりして、すぐに妊娠しますから」

密猟仲間であるグレイのゴ・オイ・モイが、尖った口から血を滴らせながら答えた。宇宙船のキッチンは、生きたまま、調理用アンドロイドに料理されている若いインカ人男女の呻き声で、満ち溢れている。ちなみにナスカの地上絵は、約千年前にギ・アン・ガスがこの地を訪れた際、原住民に神と崇められ、食用に多数の生贄をささげさせた後、ふざけて描かせたものだった。

「俺は今まで、いろいろな星で、様々な文明人を食ってきたが、哺乳類から進化した地球人が一番うまい!我々グレイの味覚にはたまらん味だ」

「私も同感です」

地球人の生血をすするグレイ達は、ギ・アン・ガスの意見に対して口々に賛同した。

 

「ナスカ平原ニ、時間犯罪者11532号ヲ発見シタ。」

16世紀を捜査中のタイムマシンのコクピットでイエスイの相棒である時間管理局員が報告した。時間管理局の駐在員および、捜査員は全て高性能アンドロイドで構成されている。理由は、各時代の人間に溶け込むための言語、風習を完璧にマスターすることが容易で、しかも長い年月、危険な状況下で任務を遂行することが出来るからである。もちろん、アンドロイドなので定期的に整備点検さえ受ければ、彼らも実質的に不老不死である。

「ヤット見ツケタゾ。手間ヲカケサセヤガッテ。今度コソ逮捕シテ。永久時間牢ニ放リ込ンデヤル」

イエスイは歓喜した。彼女は時間犯罪者11532号の専属捜査員に指名され、300年以上もの間、時間犯罪者11532号こと久石千鶴を、追跡しているのだ。イエスイはナスカ平原を一人で歩く久石千鶴に向けて、タイムマシンを降下させようとした。

「待テ。近クニ『グレイ』ノ宇宙船ガイル」

「コノ時代ノモノカ?」

「オソラク、ソウダ。彼ラトノ接触ハ、ナルベク避ケタイ」

「シカシ、目ノ前ニ、時間犯罪者11532号ガイルノダゾ。ミスミス逃ガスノカ?」

「仕方ガナイダロウ。慌テズニ次ノ、チャンスヲ待テ」

「残念!残念!残念!」

イエスイは無念のあまり、ふてくされて活動機能力を低下させ、省電力モードに入ってしまった。

 

 ナスカ平原を歩く、千鶴は東の空に銀色の円盤状のものが飛び去っていくのを見た。ハンティングを終えたグレイが宇宙へと帰って行ったのだ。

UFOだわ。やはりナスカの地上絵は宇宙人と関係があったのよ)

千鶴は確信し、なおもナスカ平原を歩き回ったがそれ以上、何も発見することはできなかった。千鶴はその夜、平原で野宿をすることにした。

(あと500年間生き延びれば、現代に戻れるわ。でも、宇宙人に復讐することなんて出来るのかしら。・・・それに、仮に成功したとしても、不老不死のあたしは、その後も永遠に生き続けなければならない)

千鶴が寝袋に包まり、物思いにふけってウトウトとしていると、突然、大勢の人間の足音と怒声で目を覚ました。

「こんなところに女が寝ているぞ!」

「生きているのか。生きているのなら捕まえろ」

パッと立ち上がって、身構えた千鶴は青ざめた。槍や棍棒で武装した大勢のインカ帝国の兵士に取り囲まれていたのだ。千鶴は隠し持っていたナイフを取り出そうとしたが多勢に無勢だった。

「神殿を襲った化け物について何か知っているかもしれん。厳重に縛り上げて、皇帝陛下の元へお連れしろ」

インカ兵たちは、千鶴を棍棒で滅多打ちにして抵抗する力を失くさせると、両腕を縛り上げた。そして軍勢を指揮しているインカ皇帝アタワルパの本陣へと連れて行った。アタワルパは、首都クスコの神殿を襲って多数の巫女や神官、参拝者達を殺戮したグレイを、討伐するために、大軍勢を引きつれナスカ平原まで出陣してきたのだ。

「女。このような妖しい地で何をしておった。ここは太古の昔より、時折、人間を食らう化け物が現れるという呪われた場所だぞ」

アタワルパ皇帝は尊大な態度で、目の前に引き据えられた千鶴を見下していた。後ろ手に縛り上げられた千鶴は身動きすることが出来ない。

「私はただの売春婦でございます。たまたま平原を旅していただけでございます」

千鶴はとぼけたが、かえってそれがアタワルパを刺激したようだった。

「こんな不気味な場所を一人で旅する女がいるものか!お前、化け物について何か知っておるな?答える気がないのなら、その気になるまで痛めつけてやるまでだ」

アタワルパ皇帝は部下に命じて棍棒とロープを持ってこさせた。そして、千鶴を支柱に逆さ吊りにさせると、青銅のナイフで衣服を切り裂いて丸裸にした。

「なんとまあ、傷だらけの体だ!よくこんな汚い体で売春婦が務まるな。いったい、どうすれば、こんなに体中に傷がつくんだ?」

アタワルパが驚いて言った。千鶴の体は世界中で、拷問にあったり、戦ったりした時についた古傷で、ところ狭しと埋め尽くされていたのだ。

「まあいい。これから余がもっと酷い傷をつけてやる」

アタワルパは、千鶴の全身を棍棒で殴り始めた。

「うぐうう!」

いくら殴られても千鶴には、16世紀のインカ人に説明出来るような情報は何も持っていない。宇宙人について話したとしても、彼らに理解させることは不可能だろう。千鶴は頭に血が上って、顔が紫色に鬱血してくるのを感じながら、ひたすら拷問に耐えるしかなかった。

 

「食え、女。」

アタワルパは、地面に放り投げたジャガイモをサンダルの底で踏み潰した。足首と両手首を縛られて地面に転がされている千鶴は、芋虫のように這い蹲り、グチャグチャニに潰れて泥まみれになったジャガイモに口を直につけて、貪り食った。千鶴に与えられる食べ物はいつもこのようにして与えられる。

「どうだ、化け物について知っている事を、話す気になったか?」

「何度も言っているでしょう。あの化け物は、遠い星からやってきた宇宙人です。500年後の未来では、地球は彼らの侵略の脅威にさらされることになります。私の使命はそれを食い止める方法を探し出し、宇宙人に復讐することです」

千鶴は若きインカ皇帝に訴えたが、やはり言葉の内容は理解できなかったようだ。

「わけのわからん事を言ってごまかそうとしているな!素直に喋るようになるまで、拷問の手は緩めんぞ」

アタワルパは荷物運搬用のリャマを一頭連れて来させた。リャマと言うのはラクダ化の動物で、かなり小型のため、人間が騎乗することは出来ない。

「この売春婦をリャマと性交させるのだ」

アタワルパは兵士達に命じた。千鶴はM字開脚のポーズで縛り直され、うつぶせに地面に転がされる。長く巨大な、異様な形のペニスを勃起させたリャマが、兵士達に誘導されて覆いかぶさってきた。

(うううっ!こ、このぐらいのことで・・・あたしは負けたりしないわ。どんな屈辱にも耐えて、21世紀まで生き延びてやる・・・)

千鶴はリャマに犯されても、顔色一つ変えず、毅然とした態度で長いペニスを受け入れていた。

「なんとしぶとい売春婦だ。ならば、いっそのこと昼夜を問わず、全ての兵士の慰み者にしてやろうか。お前の命が尽きるのが早いか、屈服して余に許しを請うのが早いか、見ものだな!」

アタワルパは残忍そうな笑みを浮かべると千鶴の顔面に蹴りを入れた。

 

ナスカ平原で、それ以上化け物に関しての手がかりを、得る事の出来なかったインカ帝国の軍勢は、首都クスコに戻ることなく、そのままアンデス山脈の太平洋岸沿いを北上していった。今度は、北部地方に白い神ピラコチャが出現した、という情報が伝えられて来たのだ。白い神は巨大な四足の獣に跨り、雷鳴を轟かせる鉄の棒を持っているという。彼らの正体は、黄金に目が眩んだスペイン人の荒くれ者達で、ついに南米にまで押し寄せてきたのだ。帝国領内の各地で無差別に略奪を行っているという白人にインカ皇帝は強い怒りを覚えた。皇帝の威信にかけて、彼らをこのまま放置しておく事はできない。北上するアタワルパの軍勢はインカ帝国領内の町、カハマルカで、とうとうスペイン人の略奪者フランシスコ・ピサロの一隊を捕捉した。

「どうされますか、皇帝陛下?」

側近の一人がアタワルパに訪ねた。ピサロの率いているスペイン人兵士は僅か300人にも満たない。

「ここは、我帝国領内だ。インカ常備軍20万人の兵力で包囲し、押しつぶす事は簡単だが、私は彼らに興味がある。皆殺しにしてしまう前に彼らがどういう者達であるのか、知っておきたい。」

数々の征服戦争で名を挙げ、兄ワスカルとの皇位をめぐる内戦にも勝利してきたアタワルパは自信に満ち溢れていた。

「では、白い神に会見を申し入れますか」

「そうだな」

数日後、インカ皇帝アタワルパとスペイン人の隊長フランシスコ・ピサロは一触即発の緊張状態の中、会見を行うことになった。御輿に乗ったアタワルパは多くの衛兵に守られて会見場へと現れた。千鶴も連日のように輪姦され、傷ついた全裸の体で、御輿の一番重心のかかる真ん中の位置を担がされている。他の御輿担ぎ達はれっきとした皇帝の従者で、千鶴は彼らにセクハラや嫌がらせを受けていた。御輿の底で千鶴が、両肩にのしかかる重量に苦しんでいると、突如異変が起こった。会見中にピサロが、待機させていたスペイン人の兵士達に一斉射撃を命じたのだった。アタワルパの衛兵達は銃弾を浴びて一瞬にして皆殺しにされ、皇帝は、生き残った僅かの従者と共に、生け捕りにされてしまった。御輿の底にいた千鶴も銃撃をまぬがれ、スペイン人たちの捕虜になった。

「おのれ、異人どもめ!」

アタワルパは汚い手を使う、スペイン人達にさらなる怒りを募らせた。

(しかし、余が人質になったとはいえ、ここが我帝国領内であることには変わりが無い。やつらを騙して、我が身さえ、逃れる事が出来れば、たかだか300人の異人どもなど一瞬にして殲滅することが出来る)

アタワルパはピサロに、無事釈放してくれるなら、代償に莫大な黄金を支払うと提案した。インカ人たちは皇帝の命を救うために帝国中から黄金をかき集め、スペイン人の立てこもる宿舎に積み上げた。

(どうだ、異人どもめ。黄金に目が眩んで、余を釈放するのだ。まあ、その時が貴様らの最後になるのだがな・・・)

アタワルパは自分の目論見通りに事が運ぶことを信じて疑わなかった。黄金を目にしたスペイン人達の心は揺れ動いた。しかし極悪非道のスペイン人の隊長、ピサロはさらに上手だった。いきなり、アタワルパに処刑を宣告したのだ。いかにインカ皇帝といえども、この人質同然の状況で抗う事はできなかった。

「太陽の子である余を斬首にするなど、異人ども、決して許さんぞ!必ず生まれ変わって、復讐してやる!」

千鶴は処刑場でのアタワルパの悲痛な叫びを聞いた。紀元1532年、権力の絶頂期にあったインカ皇帝アタワルパは処刑され、高度な文明を誇ったインカ帝国は、皇帝を失ったために、あっさりと滅亡した。

 

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